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日本での空き家を取り巻く環境を知る3つのポイント
我が国では人口減少や少子高齢化によって、空き家の数が増え続け、深刻な問題となっています。特に管理されていない空き家は、安全性や衛生的な問題の元となり、街の景観も損ねてしまうでしょう。
近年では空き家問題を解消するために、国や地方自治体が対策を講じています。我が国での空き家を取り巻く環境について詳細を見ていきましょう。
- 空き家が増加している理由
- 日本の空き家の割合
- 空き家が引き起こすトラブルやデメリット
1:空き家が増加している理由
日本では少子高齢化が進むとともに、核家族化が進んでいます。かつての二世代・三世代で住むという住宅事情が変化し、一世代で1軒の家に住むことが多い現代では、実家が空き家になっていくのも自然なことでしょう。
また、日本では新築住宅の需要が欧米に比べて高い傾向にあります。人口に比べて新たな住宅の供給が過多となり、家が余ってくるというのが現状です。
一方、税金面の要因もあります。家屋を解体して土地のみにすると、固定資産税の「住宅用地の特例措置」から外れて高税率になるため、更地にせずに放置されるケースが増えています。
出典:【土地】2 住宅用地及びその特例措置について|東京都主税局
2:日本の空き家の割合
総務省統計局が調査した「平成30年 住宅・土地統計調査 住宅概数集計」によると、平成30年時点で空き家は846万戸あり、平成25年に比べて26万戸(3.2%)増加しています。また、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%で、過去最高になっています。
空き家の種類については、管理されていない空き家である「その他の空き家」の割合が、近年増え続けているのも問題です。賃貸用や売却用、二次的住宅用(別荘など)の空き家は、市場で流通する可能性の高い空き家だからです。
出典:「平成30年 住宅・土地統計調査 住宅概数集計 結果の概要」|総務省
3:空き家が引き起こすトラブルやデメリット
空き家を放置しておくと、景観を悪化させる以外に、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
たとえば、周辺住民にとって危険性が高いのは、家屋の老朽化による倒壊や、放火・自然発火による火災などでしょう。
また、ゴミの不法投棄や棲みついた害虫・害獣の臭いなどで、近隣住民に多大な迷惑をかけてしまうこともあります。さらに、不審者が住みついたり、家屋内のものが盗難されたりして、治安も悪くなるでしょう。
空き家を活用するために押さえておきたい「住宅セーフティネット制度」とは?

平成29年に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」が施行されました。
この法律によって示された新たな住宅セーフティネット制度では、入居者の負担を軽減するための支援と、登録住宅の改修への補助などが設けられています。空き家を活用するにあたって、この住宅セーフティネット制度を知っておくことは大切です。
出典:「新たな住宅セーフティネット制度の推進について」|国土交通省
家賃と家賃債務保証料の低廉化のための補助制度
住宅セーフティネット制度の経済的支援の1つとして、住宅確保要配慮者(低額所得者や被災者、高齢者、障がい者など)専用住宅の家賃と家賃債務保証料を安価にする場合の費用に対する補助があります。
低廉化の対象となる低額所得者は月収15.8万円以下の世帯です。国と地方自治体が協力して支援し、国が2分の1、地方自治体が2分の1をそれぞれ補助します。
出典:新たな住宅セーフティネット制度の推進について|国土交通省
登録住宅の改修への補助制度
住宅確保要配慮者専用住宅の改修費用に対しても補助があります。対象の工事は、共同居住用住居への変更やバリアフリー化、防火・耐震、子育て世帯対応、などについての改修工事です。
国が3分の1、地方自治体が3分の1をそれぞれ補助します。子育て・新婚世帯や高齢者世帯、障がい者世帯、低額所得者(月収15.8万円以下)、被災者世帯などが対象となります。
出典:新たな住宅セーフティネット制度の推進について|国土交通省
地方自治体が取り組む空き家への主な4つの対策

空き家に関する深刻な問題は、過疎化が進んでいる地方だけでなく全国的に広がっています。そして、その問題は相続した親族や購入した所有者などが、個人で解決するのが困難な問題となっています。
放置することによってトラブルが予想される空き家に対して、近年では国や地方自治体も対策に取り組み始めました。地方自治体が取り組んでいる空き家対策を紹介します。
- 空き家にかかる費用や活用のための援助を行う
- 空き家の活用を推進する
- 特定空き家に対して行政代執行などの処置を行う
- 空き家の情報を収集する
1:空き家にかかる費用や活用のための援助を行う
空き家問題に関する地方自治体の主たる対策は、空き家の解体や活用にかかる費用の援助です。多くの地方自治体では、一定の条件の元、空き家の解体費用や内部の家財処分へ助成金を支払う援助を用意しています。
また、空き家の活用事業として、公共施設化やバリアフリー化などへの改修工事に対する助成金制度を設けている地方自治体もあります。
2:空き家の活用を推進する
空き家対策の1つとして、国と地方自治体が連携して「空き家再生等推進事業」を実施しています。
これは、地方自治体が主体となって空き家を活用し、地域の居住性や利便性を向上させる取り組みです。
空き家を体験・交流・文化施設などの公共施設に再生するなど、空き家を取り壊すだけでなく、活用・再生も目的としています。
3:特定空き家に対して行政代執行などの処置を行う
多大な迷惑をかける空き家が問題となり、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。これにより、不適切な管理で危険性が高い、著しく景観を損ねる、などの空き家は「特定空き家」と指定されます。
また、特定空き家に対しては、地方自治体が取り壊し・修繕などの助言や指導、勧告、命令などをすることができ、行政代執行によって強制執行が可能になりました。
出典:「空家等対策の推進に関する特別措置法」|e-Gov 検索
4:空き家の情報を収集する
前記した「空家等対策の推進に関する特別措置法」によると、地方自治体(市町村)は空き家についての情報収集を行なうよう努める必要があります。
情報収集のために、空き家への立入調査や固定資産税情報の内部利用が可能であり、空き家に関するデータベースも整備しています。
出典:「空家等対策の推進に関する特別措置法」|e-Gov 検索
地方自治体の空き家に関する助成金の事例5選

前述したとおり、トラブルを未然に防ぐために、国や地方自治体は空き家に対してさまざまな対策を講じています。助成金制度の対象となるのは、空き家の除却・改修・取得に分けられ、それぞれ対象が異なります。
また、地方自治体によっても異なるため、注意が必要です。地方自治体の空き家に関する助成金の事例を紹介します。
1:空き家の取得に対する助成金
栃木市では、他地域からの転入者に対して助成金を交付しており、その対象となるのが、新築住宅もしくは中古住宅に住む転入者で、空き家は中古住宅に属します。
同市に5年以上定住することを誓約する、市税を滞納していない、などの条件はあるものの、中古住宅の購入では最低20万円が支給されます。また、所有者の年齢や子供の数などでさらに助成金が加算されるでしょう。
出典:「まちなか定住促進住宅新築等補助金『IJU(移住)補助金』 」|栃木市
2:旧耐震住宅のリフォームに対する助成金
「耐震改修工事費等補助金交付制度」を実施している鎌倉市では、市が行った耐震診断の結果が一定水準以下の場合には、耐震改修工事費の助成金を受けることができます。
対象建築物は昭和56年5月31日以前に建築工事に着手した住宅で、助成金額は工事費用の2分の1(上限100万円)です。
地方自治体が古い住宅の耐震工事を支援することで、空き家の倒壊リスクの軽減や再利用促進への一助となるでしょう。
3:空き家を利用する事業に対する助成金
藤沢市の空き家対策として、「藤沢市空家等対策計画」を策定し、空き家利活用事業補助金の申請を募りました。
また、藤沢市は定期的に空き家移動相談会を開催し、官民一体となって空き家対策に取り組んでいます。起業と空き家対策を結び付け、店舗や交流施設などへの利活用などを推進しています。
4:空き家のリフォームに対する助成金
海老名市では、空き家の補修や修繕工事に対して助成金制度を用意しています。助成金額は、10万円以上の工事に対して2分の1(上限50万円)で、対象者は同市内にある空き家の所有者や購入者、同市内施工業者に空き家のリフォームを依頼する人、などです。
なお、改修工事完了後、空き家に居住する、もしくは居住用として賃貸・売却する、などの条件があります。
出典:「令和3年度「空き家活用促進リフォーム助成金」について」|海老名市
5:空き家の解体に対する助成金
老朽化した空き家の解体工事費用に対して、横須賀市では助成制度を設けています。対象となるのは、同市内にある老朽化した空き家、もしくは新耐震基準を満たしていない空き家に関する解体工事です。
前者は工事費用の2分の1(上限35万円)、後者は工事費用の2分の1(上限15万円)が助成金額です。解体工事業者も同市内にあること、工事着手前申請が必要、などの条件があります。
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空き家を解体・活用するための助成金を調べる方法は?

空き家の解体工事や改修工事などに対する助成金については、まず空き家がある地方自治体のWebサイトで確認しましょう。
助成制度には、比較的新しく危険性の低い空き家には適用できない、住民税を滞納していると受けられない、などさまざまな条件が設けられています。
一方で、空き家に関する対策や支援制度は国や地方自治体が推進しているにもかかわらず、広く認知されているとは言えません。また、地方自治体によって対象となる目的や内容、費用、対象者が異なります。そのため、詳細に関しては必ず地方自治体の窓口に問い合わせましょう。
空き家を活用する方法4つ

放置しておくとデメリットが多い空き家ですが、方法によっては資産として有効活用することもできるでしょう。
不労所得が見込める賃貸物件として活用できると、所有者にとっては魅力的です。また、事業用などに活用すると、景観の問題だけでなく、地域の活性化にも繋がります。空き家を活用する方法を見ていきましょう。
- 空き家バンクに登録する
- 宿泊施設に改装する
- 店舗に改装する
- 賃貸物件として貸し出す
1:空き家バンクに登録する
「空き家バンク」とは、空き家を処分したい人と空き家を購入・活用したい人をマッチングするWebサービスで、主に地方自治体が運営しています。
古くなった空き家は買い手が見つかりにくいうえに不動産価値も低いため、不動産会社に依頼しても仲介手数料が見込めず、動いてくれない場合が多いでしょう。
しかし、空き家バンクは、地方自治体の補助金制度によって買い手が見つかりやすい、仲介手数料なしで空き家が売却できる、などのメリットがあります。空き家バンクに登録すると、本当に空き家を活用したい人に出会える可能性が上がるでしょう。
2:宿泊施設に改装する
空き家の老朽化がそれほど進んでいない場合は、改装工事をすることによって資産価値が上がり、宿泊施設として活用できるでしょう。
2018年に「住宅宿泊事業法」が施行され、従来よりも簡単な手続きで民泊を始めることができるようになり、空き家の活用方法としても注目が集まっています。コロナ禍が明けたら全国で旅行者が増加し、宿泊先としてのニーズが増えるでしょう。
3:店舗に改装する
改装工事などによって生まれ変わった空き家は、店舗用に活用することもできるでしょう。飲食店などの店舗のみならず、企業のオフィスや事務所として改装して貸し出し、家賃を支払ってもらえれば、個人向けに貸し出すより滞納リスクが低いというメリットがあります。
事業用施設は地域活性化に繋がるため、地方自治体からも歓迎される傾向にあります。また、事業用に改装したら、自身で起業や事業経営を始めるという選択もあるでしょう。
4:賃貸物件として貸し出す
もっとも事例が多く手軽な空き家の活用方法は、賃貸物件として貸し出すことです。特に駅に近い物件や利便性の高い都市部にある物件は、ニーズが高いでしょう。
ただし、空き家は古い物件が多いため、リフォームや修繕が必要になるケースが多いでしょう。設定家賃との兼ね合いを考慮してリフォーム範囲を決める必要があります。
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空き家の活用を考える前にしておくべきこと

空き家の活用方法を考える前に、まず空き家の市場価値を正確に診断しましょう。たとえば、賃貸物件として貸し出したら借り手がつかなかった場合や、安易に売却したら実は立地条件が良く、賃貸物件にしたほうがよかった場合など、想定外のケースがあります。
また、予想以上に解体費用や改修費用がかかった例もあります。不動産業界は規制や制度が複雑なうえ、素人では的確な判断が難しい世界です。
空き家の立地条件や周辺環境、家屋の現状、地方自治体の制度などを考慮し、不動産屋や地方自治体などに相談しながら活用方法を決めましょう。
空き家にかかる助成金について知識を深めよう

空き家は放置しておくとさまざまなトラブルを招く可能性が考えられるため、空き家の所有者は早急に何らかの対処を考える必要があるでしょう。
空き家の取り壊しや改修、購入にはさまざまな助成制度が用意されています。空き家の活用や処分を考えている人は、空き家がある地方自治体の助成制度を確認しておきましょう。
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