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空き家活用とは?

今や社会的な課題になっている、空き家の増加問題。人の住まなくなった家屋というのは、驚くほど急激に老朽化が進み、周囲に危険を及ぼし迷惑をかける存在となりえるものです。
では、空き家はもう使わないからといって簡単に解体してしまっていいものなのか、相続上で何か問題はないか、税金などはどうなるのか等、疑問点はいろいろわいてくるでしょう。
そこで今回は、空き家問題とその解体工事について、いろいろな観点からおさえておくべきポイントを網羅しています。順に見ていきましょう。
空き家問題に対処する手段5選

全国各地の空き家の増加、所有する空き家の維持管理…「空き家」にまつわる問題にはさまざまなものがありますが、行政などがいろいろな側面からの対策や措置を用意してくれています。いくつか例を見ていきましょう。
1:空き家類焼損害補償特約
通常、隣の家屋の火事により自宅が損傷したという場合、損害賠償を請求することはできません。故意だった、もしくは重大な過失があったと判断された際には可能な場合もありますが、ほとんどの場合、補償は受けられないのです。だからこそ火災保険の加入の重要性が見えてきます。
これが反対の立場だったとき、つまり自分の家の火事が原因で隣家に損害を与えてしまった場合も当然同様で、責任を追及されることは通常ありません。自宅だけでなく「自分の所有する空き家」の火事が原因であっても同じです。
ただ、法的な責任の追及がないとしても、道義的な責任(つまり罪悪感)を抱く心情もあります。こういったときに活躍してくれるのが「類焼損害補償特約」なのです。
これは、「類焼してしまった隣家が火災保険に未加入もしくはそれだけではカバーしきれない損害を与えてしまった際に、支払われる保険」です。これがあれば、多少の償いは可能となります。
火事の原因でもっとも多いものは、放火だといわれています。廃屋や廃墟、廃坑などは放火の対象となりやすく、自分の所有する空き家からも火事が出る可能性は否定できません。そのようなときにはこの類焼損害補償特約が強い味方となってくれることもあるでしょう。
2:空き家等対策特別措置法とは
適切な管理がなされず、防犯や衛生上の観点からも周囲に迷惑や危険を及ぼしていると判断される空き家が増え続けている昨今、危険な空き家に関して適切な処置が迅速に行われるよう促すために定められたのが、「空き家等対策特別措置法(正式名称:空き家等対策の推進に関する特別措置法)」です。
それまで多くの自治体で「空き家条例」が制定され、独自に空き家問題に取り組んでいましたが、法的拘束力があるものではなかったため、なかなか根本的な解決が進まなかった状態でした。
そんな中、空き家対策特別措置法という法律では、自治体が「空き家所有者への適切な管理の指導」「特定空き家の指定」や、「特定空き家に対して助言・指導・勧告・命令や行政代執行」、さらに「敷地への立ち入り」「住民票や戸籍などの個人情報の確認」まで行えるようになったのです。この法律の施行によって、空き家対策の総合的な推進が可能となりました。
3:空き家の防犯対策
長く使われていない空き家は、犯罪行為の対象となることも多くあります。たとえば不法侵入や住み着き、内部にある物品の窃盗、さらに放火なども考えられます。
空き家の防犯・防災には「危機管理に力を注いでいる」という点をアピールするだけでも変わってきます。所有者が定期的に出入りしている、管理をしっかり行っている、ということを示すのです。
雑草が茂らないようにする、ポストに入っているチラシなどを処分する、ダミーの監視カメラやセンサーライトなどを設置する、という対策を行うことで大きな防犯効果をあげることが期待できるでしょう。
また、侵入者は「大きな音が鳴る」ことは避けたがり、「手間や時間がかかる」ことには手を出しづらくなるという傾向があります。そのため、窓ガラスに防犯シートを貼る、ドアに補助錠を何重にもかける、という方法も効果的だといわれています。
4:空き家を売却する際の税金における特別控除
不動産を売却する際には、その売却金額に対して所得税や住民税といった税金がかかります。課税対象は譲渡所得という部分の金額で、「収入金額 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得」という計算式で算出します。譲渡所得の約20%が税金として徴収されるのですが、これが自宅の売却であれば最大3,000万円の控除が受けられる「特別控除」というものが存在するのです。
ただし、この特別控除を受けるためには条件がいくつもあり、多少複雑です。まずは不動産会社に相談して確認しましょう。
5:空き家解体のための補助金
空き家の解体にはまとまった費用が必要になるため、倒壊の危険などを考慮して解体に踏み切ろうと思ってもなかなか決断できず、せめて補助金はないものかと思う方も多いでしょう。
実は、空き家の解体工事に特化した補助金というものは存在しています。ただしそれは国土交通省、すなわち「国」から支給される補助金ではなく、「地方自治体」からの補助金だという点に気をつけましょう。
ちなみに国土交通省からの補助金は、「個人に対してではなく地方自治体に対して」という位置づけであるといえます。そのため、個人で解体工事の補助金を申請する相手はあくまで国ではなく自治体であるということを注意しておくとよいでしょう。
補助金支給はどのような条件なのか、最大いくらまでの補助金が出るか、などといった詳細は自治体によって違います。まずは自治体のウェブサイトで、情報を確認することから始めてみましょう。
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空き家を管理するうえでの5つの注意点

空き家は普段人が住んでいないため、通常の住まいとは違う形で維持管理が必要になります。これを怠ると、場合によっては周囲に危険を及ぼしたり、大きな迷惑をかけたりということや、空き家自体の老朽化を早めてしまう恐れがあるため、注意すべき点を5つ例に挙げて解説していきます。
1:空き家の電気代
空き家は、当然普段は使用していない家屋であるため、光熱費は全くかからないのでは?というイメージがあります。
しかし、防犯面や衛生面で定期的に管理が必要な場合、掃除をするときに「明かりもつけられないし掃除機も使えない」、「給湯器も使えないからお湯も出ない」というようなことがあっては不便なので、電気の契約自体を解除するというのは得策ではありません。
そうはいっても空き家の光熱費はできるだけ節約したいものですよね。
大体の電気会社の契約では、電気の使用量にかかわらず基本料金や月額最低料金は発生するものです。料金が安い電気会社もあるので、そこに切り替えるということもひとつの方法です。
また、基本料金がかかる契約の場合でも、アンペア数を最低段階まで下げておくという手も有効です。アンペア数は大きくなればなるほどその基本料金も高くなるからです。めったに使わない空き家の電気であれば、最低段階のアンペア数でも問題はあまりないでしょう。
2:空き家の水道
空き家において水道は、電気よりも契約を維持しておくべきといえるライフラインです。
というのも、空き家になって使用が少なくなるもしくは全くなくなることにより、水道管はむしろ劣化してしまいやすくなるからです。傷んでサビが出たり水漏れしたりということにつながると、水道管の交換など修理の必要も出てきてしまいます。
これを防ぐためには、定期的に水道管に水を通す「通水作業」が必要になります。台所や浴室、洗面所などの蛇口をひねり、水を出すという作業を1ヶ月に1回以上、掃除や換気とともに行うようにしましょう。
また、ネズミや害虫などの侵入を防ぐ「排水トラップ」という部分に一定量の水を貯めておくためにも、通水作業は不可欠です。
空き家になっても水道の契約は解約せず、このように定期的なメンテナンスが必要になります。
3:空き家の庭木伐採
空き家の庭の手入れについては、隣家などとのトラブルに発展しがちな要素のひとつです。
たとえば、伸び放題の雑草が景観上や衛生面で問題になったり、庭木が伸びて隣家の敷地内に入り込んでしまったり、ということが起こりうるからです。
法律上、空き家の所有者以外の人が、空き家の庭木などを伐採することは禁じられているため、隣家の住民がもし迷惑を被っているとしても自分たちでできることはなく、我慢している相談事例も多く見受けられます。
雑草を刈ったり、庭木を伐採して切り株の処理までできたりすれば完璧ですが、最低でも景観を整える・衛生面に配慮するという観点である程度の庭の手入れはしておくべきですね。
4:空き家のブロック塀
近年、「危険なブロック塀」に注意が払われています。長年の劣化により地震などがきっかけとなって倒壊し、通行人などに害を及ぼす可能性のあるブロック塀が非常に増えているのです。
こういったブロック塀の撤去を進めようとした際、大きな課題のひとつに空き家のブロック塀が挙げられるのです。空き家の所有者に連絡がつかない、そもそも所有者がはっきりしないという事態も多いからです。まずはブロック塀、すなわち空き家の所有者を明確にすることから始めて、撤去までつながなければいけないため、大変な労力や費用がかかることもあるのです。
自分の空き家にブロック塀がある場合、くれぐれも倒壊などの事故には留意し、場合によっては早めに撤去しておくことも視野に入れておくべきです。
5:空き家のブレーカー
前述したように、空き家においても電気の契約は解約せずに残しておいた方がいいのですが、できるだけ余計な料金がかからないようにする対策のひとつとして、普段は「ブレーカーを落とす」ということも忘れずにしておきましょう。
また、電気料金の節約という点だけでなく、安全面においてもブレーカーを落とすことは重要です。
たとえば配線の劣化などが進んでいても、空き家だと気づくのが遅れてしまい、修理に至らずに漏電を起こし火災につながる…などといった事故も防ぐ効果が期待できるでしょう。
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空き家のメリット・デメリットとは

使っていない空き家は、解体して更地にすべきなのでしょうか?それとも、そのままにしておくべきなのでしょうか?
それは、不動産の「目的」によって結論が変わってきます。そのため、ここでは空き家のある土地を更地にしないでそのままにしておくメリット・デメリットについて両方見ていくことにしましょう。
空き家のままにしておくメリット3選

1: 資産運用を考えることができる
空き家にまだ十分住宅としての機能が残っていて、賃貸物件などとしての資産価値がある場合は、そのまま資産運用をすることも可能です。リフォームや修繕のための費用が必要になる場合もありますが、それを見越しても家賃収入によって利益につながるのであれば、考えてみてもいいでしょう。
2:古家付き土地として売り出せる
上記同様、空き家にまだ資産価値が十分に残っているのであれば、「古屋付き土地」として売り出すことが可能です。この場合、空き家を解体する費用を浮かすこともできます。
もちろん、すべての空き家に買い手がつくほどの価値があるとは限らないので、十分な見極めが必要になることには注意しましょう。
ただし資産運用を考える場合、メリットとデメリットは裏表です。空き家に資産価値があるのなら、もちろん残しての運用が良いでしょうが、更地にすれば「駐車場やコインパーキングとして運用」などといった別の資産運用の方法も出てきます。
どちらが良いかは、状況によって異なるため、不動産会社などによく相談して考えることが重要です。
3:固定資産税の減免措置が受けられる
不動産というものは、所有しているだけで固定資産税と都市計画税という税金を納めなければなりません。
これらの税は、土地に建物が存在している場合、条件を満たしていれば金額の軽減措置が受けられます。固定資産税が最大約6分の1、都市計画税が3分の1までという軽減になるため、税金の節約としては非常にありがたいでしょう。
もしも更地にしてもすぐに売り出す予定がない、更地での運用を考えていないということであれば、空き家は解体せずに残しておく方が税金面では節約になりえるのです。
空き家のままにしておくデメリット2選
1:管理が大変・維持費用がかかる
空き家を不動産として売り出すにしても、今後の利用を考えるにしても、その間に管理は必要になります。
たとえば管理が行き届かず雑草が伸び放題で外から家が見えづらくなるなどすると、犯罪に利用されたり、不審者が住み着いたり、動物や害虫の巣窟になってしまう恐れがあります。放火の対象にもなりえるでしょう。
また、単純に景観的に良くないうえ、そのような空き家が近所にあるということで近隣住民に大きな迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
そのような事態を防ぐためには、定期的に空き家を訪れて防犯チェックをしたり、安全面の確認や手入れをしたりなどの管理が必要で、そこに手間や時間、また維持費用がかさむことにもつながってしまいます。
2:資産価値によっては、買い手がなかなかつかなくなる
先述したように、メリットとデメリットは裏表の関係です。前項にもありましたが、まだまだ価値も需要もあるような古家であれば、空き家付きの土地にはその分付加価値もありますが、すでに資産価値がほとんどない空き家が建っていると、その土地の買い手がなかなか見つからないです。リフォームが必要だったり、解体費用が必要だったりということになると、買い手側としては初めから更地になった状態の土地を探す方がいいからです。
空き家がある方が土地は売れやすいのか、その逆なのか、きちんと見極める必要があるでしょう。
空き家の活用成功事例を知ろう
空き家をそのまま放置することの危険性やデメリットは、これまで述べてきた通りです。加えて、状態が悪い空き家を放置することで「空き家等対策特別措置法」により「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税の軽減措置が受けられなくなるというさらなるデメリットも発生します。
ここでは、そういった危険性を排除し、うまく空き家を活用する方法について見ていきましょう。
空き家のリノベーション
劣化して資産価値のない、住居としても適さなくなってしまった空き家は、リノベーションやリフォームで新しい形で利用することが可能な場合があります。
倒壊の危険や犯罪の温床となる危険性を除くことができ、なおかつ資産価値を上げることができるため、自宅として使うにも性能が向上する他、賃貸運用をしたり売り出したりしても借り手・買い手がつきやすくなるというメリットが発生します。古い柱や構造、現在では貴重となった資材を活かし、おしゃれなヴィンテージ感を出すなどといった付加価値を乗せることも可能になることがあります。
費用の面においても、新築するよりコストを抑えることができるだけでなく、耐震リフォームに対する補助金を利用することができたり、リフォーム減税といって所得税の減税制度や固定資産税の減額措置が受けられたりすることもあるのです。
特に補助金については、自治体によって受けられる条件や金額に大きく違いがあります。うまく活用すれば非常に頼もしい味方になってくれるでしょう。
空き家のサブスクリプション
サブスクリプション、略して「サブスク」とは、一言でいうと「定額制サービス」のことです。一定の期間、一定の金額を支払えば、その範囲内で好きなだけサービスを受けられるというもので、最近は空き家サブスクというものも注目されてきています。要するに「定額全国住み放題サービス」です。
定額料金を支払えば、全国どこへでも、好きなときに好きなだけ移住・居住することができるので、ライフスタイルに合わせて住まいを変えることが可能です。「リモートワークをしながら環境のいい場所を転々としたい」「さまざまな土地でいろいろな出会いをしたい」「都会と田舎の両方で暮らしたい」「旅をしながら生きたい」など、いろいろなニーズに対応できるのです。
現在展開されている代表的な空き家のサブスクは、定額料金に光熱費も含まれ、家具家電つきで敷金・礼金・仲介手数料無料、なおかつ面倒で煩雑になりがちな賃貸契約が必要ない、というものがほとんどです。そのような気軽さ・手軽さから幅広い年齢層のさまざまな生活スタイルを持つ人々が利用しています。
都会など人の出入りの多い土地でないと、空き家を賃貸住宅にしたところでなかなか居住者が現れない恐れなどがあります。売りに出したとしても、買い手がなかなかつかないということもあるでしょう。
空き家サブスクの登録空き家として活用するのであれば、そのような心配も解決できるかもしれません。
空き地のおすすめ活用方法
空き家のある土地を資産運用したいと考えたとき、「空き家を利用する場合」と「更地にして運用する場合」に分けて考える必要があります。
空き家として利用する場合は、前述のようにリフォームやリノベーションも視野に入れた戸建賃貸・賃貸併用住宅としての活用や、空き家サブスクの物件として登録するといった資産運用の方法があるでしょう。
空き家を解体して空き地にするのであれば、たとえばそこに駐車場やトランクルーム、太陽光発電などの設備を用意して活用することができます。また、資材置き場としての利用など土地のまま貸すという方法も見えてくるでしょう。
土地の環境や状況などさまざまな要素を踏まえて、どう活用するのがベストなのかをしっかり検討する必要があります。
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空き家に関する6つの疑問点について解説
空き家を所有・管理していると、さまざまな面から疑問点が出てきます。ここでは税金や相続について等、維持管理や近隣住民との関係などの観点から特に6つ例に挙げて、疑問を解消していきましょう。
1:空き家の固定資産税と譲渡所得税の特別控除
空き家問題周辺の税金関連で、まず気になるのが固定資産税でしょう。「更地にしてしまうと固定資産税が跳ね上がってしまう」というお話を耳にしたことがあるかもしれませんね。
これはどういうことかというと、元々固定資産税には「住宅用地の特例」というものがあり、住宅用地であれば、建物がある(=更地ではない)場合固定資産税が6分の1まで減免されるのです。
この措置があるため、空き家をいつまでも解体せずに置いておき、これが空き家増加問題の原因の一端となっているという節もあります。しかし、前述した「空き家等対策特別措置法」によって、管理の行き届いていない老朽家屋は「特定空き家」に認定されてしまい、この固定資産税の特例措置が受けられなくなるという恐れがあるのです。
また、空き家の税金としては売却した際の譲渡所得税における「3,000万円特別控除」というものもおさえておきたいポイントです。これについては前述の項を参照してください。
2:空き家の相続
親から相続したものの中に空き家があった場合、注意すべき点がいくつかあります。
まずは所有権移転登記。空き家となってしまった家屋の所有権を相続人に移したという登記が必要になります。
次に、相続といえば多額の相続税を納めなければならないのでは…というイメージ。大した資産価値もない空き家を相続して高額な相続税を払わなければいけないのかと心配になりますが、実は相続税の基礎控除額は「3,000万円 +(600万円×法定相続人の数)」もあるため、相続財産がこの額を上回らなければ、相続税もかからないのです。実に日本国民の9割以上は、相続税の納税義務の基準を満たしいていないといわれています。
また、相続放棄といって相続の権利をすべて放棄することも可能ですが、相続を放棄しても管理責任は残ってしまうというデメリットもあります。空き家を相続しても遠方にあるため管理ができない、資産価値もない…という理由で相続放棄したら、権利は放棄したのに維持管理責任だけ残る、という事態になるため注意が必要です。
空き家に限らず、相続に関してお困りのことがありましたら、下記フォームからお気軽にご相談ください↓

3:空き家の苦情
空き家をそのまま放置しておくことは、所有者だけの問題にとどまらず、周辺住民からの苦情やトラブルにもつながることがあります。
たとえば老朽化が進み、屋根や壁が剥がれ落ちて隣家を傷つけたり通行人にケガを負わせたり、というリスクや、雑草が伸び放題で害虫や動物の住処になるなどして衛生面の問題が起きるという恐れなどが考えられます。
また、空き家を解体する工事の際にも近隣との関係は気をつけたいところです。危険な工事における安全管理や粉塵対策、工事中の騒音対策は、もちろん工事を担当する業者が注意すべき点ですが、施主にも責任の一端はあります。開始前に行う解体工事のお知らせ、工事完了後の片付けも含め、業者がきちんと行ってくれているかどうかを施主も自ら確認すべきといえるでしょう。
4:空き家の維持管理
人の住まなくなった家屋は、劣化が加速するものです。いずれどのように処置するかに関係なく、管理はしなければいけません。
たとえば、定期的に通水(蛇口をひねって水道に水を流すこと)や換気、掃除、草刈りなどを行うこと、屋根や壁に破損はないかチェックすること、防犯体制を整えておくことなどで、近隣住民へ迷惑をかけることを防げてトラブル回避にもつながります。
ただしある程度の維持管理費用が必要になることも念頭に置いておかなければなりません。光熱費や空き家まで赴く交通費、また不動産にかかる税金である固定資産税もかかり続けます。その際に、このまま維持管理すべきか、解体すべきかを考える段階においても重要なポイントとなるでしょう。
5:空き家の別荘
かつての別荘ブームで購入した別荘も、使用しなくなって放置してしまい何年も経過…今や廃墟同然で売却することも難しくなってしまった、という事例は少なくありません。
そのまま放っておいてはどんどん老朽化し、周辺に被害や迷惑を及ぼしたり、維持管理費用ばかりがかさんだり、とデメリットばかりです。
もしもまだ資産価値がある別荘であれば、早急に売却を検討し、そうでなければ解体して更地にしてからの売却も視野に入れるのがいいでしょう。最近では別荘のように遠隔地にある建物の解体工事でも、見積や立ち合いを代わりに行ってくれる業者なども存在するので、うまく利用できるとよいでしょう。
一方、親からの相続などで手に入れた実家を別荘として利用する、というケースでは、やはり維持管理の面での問題をクリアする必要があります。
老朽化した部分の修繕や、定期的な換気や掃除といった管理などで想像以上にコストがかかる場合もあります。
そのような問題をクリアできるのであれば、実家を別荘として利用するというのも効果的な空き家活用法のひとつであるといえます。
6:空き家の仏壇
「空き家に仏壇が置きっぱなしだが、どう対処していいかわからない、お祓いなどが必要なのだろうか」と考えるのは、さほど信心深い人でなくてもごく自然なことでしょう。他のゴミと一緒に処分することに抵抗がある、というのも当然の心理です。
仏壇や神棚は、細かいことは宗派などにもよりますが、まず「魂抜き」などと呼ばれる儀式を行ったうえで移動や処分を行います。空き家から別の家に移動した場合は、今度は「魂入れ」のような儀式も行いますが、処分する場合はお焚き上げなどを行ってくれる場所に持ち込むといいでしょう。
全国の空き家ランキング


空き家が少ない 空き家が多い
国土交通省による「空き家」の定義とは、「1年以上人が住んでいない、使われていない家」というもの。
今や空き家増加は日本全国各地で問題となっています。では、実際どんな地域でどれほどの空き家が発生しているのか。その数値が「住宅・土地統計調査」で明らかになりました。
空き家率の高い地域とは?
調査では、47都道府県で空き家率がもっとも高いのは、山梨県(21.3%)でした。
そこから2位に和歌山県(20.3%)、3位に長野県(19.5%)と続きます。
さらにそこから4位徳島県(19.4%)、5位高知県(18.9%)、6位鹿児島県(18.9%)、7位愛媛県(18.1%)、8位香川県(18.0%)、9位山口県(17.6%)、10位栃木県(17.4%)となっていて、10位内に四国の4県がすべて入っているという結果になりました。
別荘も空き家としてカウントされていることから、別荘地や地方での空き家率が高くなっているということがわかります。
空き家数の多い地域とは
ちなみに、空き家率では45位で一見空き家が少なそうに見える東京都(10.6%)ですが、空き家の「数」でいうとダントツの1位で、その数字はなんと80万9千戸。人口が多いので当然といえば当然ではあるのですが、さすがに目を見張る数ですね。次いで2位大阪府(70万9千戸)、3位神奈川県(48万3千戸)となっていて、やはり大都市には空き家の数も多いということがわかります。
空き家問題の解決に向けて
空き家率と空き家数の数値を見てみると、地方の一軒家だけでなく大都市のマンションなどでも空きが出ているという問題が見えてきます。
どこの地域でも新築物件に比べて中古物件の人気が低いという傾向があり、それが空き家問題に拍車をかけているという一面があるのです。特にマンションでは一戸一戸の部屋を新築同然にリフォームしても、マンション全体の管理の質が低いなどという要因があると、その物件はなかなか売れません。
欧米などで空き家率が高くない国の状況を見ても、やはり中古物件の利用をいかに推進できるかという点に、空き家問題解決の道筋が見えるといえるでしょう。
空き家バンクとは

空き家問題の解決の一助として、注目を浴び始めてきた「空き家バンク」という制度。仕組みや利用方法、メリット・デメリットを見ていきましょう。
空き家バンクとは何か
空き家バンクとは、全国の地方公共団体(自治体)が取り組んでいる制度で、地元の住民などから得た空き家の賃貸・売買の物件情報をまとめ、必要としている人に提供する、いわば空き家の「マッチング」サービスです。
地域への定住を目指して20年以上も前に設立された制度なのですが、近年の空き家問題への注目などからも広く人々に知られるようになったのは最近のことです。
制度要綱としては「空き家を有効活用し、都市住民との交流及び定住促進による地域の活性化を図る」「空き家の情報収集及び情報発信を行うことによりその有効活用を図り、定住促進による地域の活性化に資する」というものがあり、単に「手ごろな空き家に住む」ということではなく、その地域に「移住・定住したい、交流したい」という他地域からやって来る人々のための制度です。
運営しているのはほとんどが自治体の職員であるため、他地域から移住を希望して空き家バンクを利用しようとする人たちにとって、見知らぬ土地での不安を解消し理解を得やすくなるというメリットもあります。
空き家バンクの仕組み
空き家の所有者で、「貸したい」「売りたい」と希望している人からの物件情報を地方公共団体が集約し、地域の宅建業者とも実務上の連携をしながら、空き家を「借りたい」「買いたい」と思っている移住者などに仲介を行う、というのが空き家バンク制度の主な仕組みです。
各地方公共団体の空き家バンクを利用するには、まず「貸したい」「売りたい」側は物件の登録が必要になります。
「借りたい」「買いたい」側は、空き家バンクのサイトから希望物件の写真や間取りなどの細かい情報を確認し、内覧へと進みます。このとき、空き家バンクの利用者は他地域からの移住希望者であることがほとんどなので、内覧というよりも数日間実際に住んでみる体験入居となることも少なくありません。
このような手続きや流れは自治体によって多少の違いがあります。まずは自治体のホームページで確認するようにしましょう。また、そもそも空き家バンク制度自体がない自治体もあるので、注意が必要です。
空き家バンク利用の2つのメリット

賃貸物件を見つけやすい
田舎は人の出入りが多くないので、賃貸物件を探す場合も一苦労、ということが多いのですが、空き家バンクを利用すれば民間の不動産屋にはない空き家情報を得られる場合が多く、希望の物件に出会える可能性が高くなります。
金銭面で得がある
民間の不動産屋であれば、仲介手数料などの費用が発生しますが、空き家バンクであれば登録もマッチングも無料になります。また、空き家バンクにより自治体の補助金や助成金を受け取れる対象になることもあり、さまざまな金銭面で得な部分があるでしょう。
空き家バンク利用の2つのデメリット

能動的に動く必要がある
空き家バンクは民間の物件仲介とは性格を異にするため、売り手・貸し手側は空き家バンクに登録しただけで安心せず、空き家の積極的な管理や修繕、プロモーションや販促活動も自ら行う必要があります。
また、空き家バンク制度はあくまでマッチングが目的であるため、売買契約や賃貸借契約なども自分で行わなければいけません。
同様に買い手・借り手側としても、空き家の所有者と直接交渉・契約などを行う必要があるということになります。
無料で済む面がある分、手間はかかる側面があるということも念頭に置いておかなければいけないのです。
知名度が高くない
自治体によってもばらつきがありますが、知名度が高い制度とはいえないため、買い手・借り手が見つかるまでは時間がかかる、苦労することが多いでしょう。また買い手・借り手側からの視点でいっても、希望通りの物件が簡単に見つかるとは限らないのです。
メリット・デメリットを踏まえて、空き家バンク制度を活用するか、民間の不動産屋を利用するかを検討しましょう。
空き家を解体する際はよく調べよう

空き家を取り巻く課題は、ひとつの側面だけではなくさまざまな要素が絡まり合い、社会全体の問題となっています。老朽化が進んだ空き家の存在は、所有者の金銭面や管理面での問題だけでなく、周囲への危険や迷惑という観点からも大変差し迫った議論の対象なのです。
では、今すぐに空き家を解体すべきかというと、そうとも限りません。適切な維持管理を行ったうえで空き家を残しておいた方がいいケースもあるのです。空き家が建っていれば受けられる固定資産税の軽減措置というものもあるため、解体後すぐに売却する予定がないというようなときも、そのケースに当てはまります。
それでももし解体という方法を選ぶ場合、もっとも大きなメリットはその維持管理という手間やコストから解放されるという点でしょう。さらに、売却を予定しているのであれば、建物を解体して更地にしてしまった方が、不動産の買い手が見つかりやすいという利点もあります。
ただし、解体工事を行う際には、特に業者選びは慎重に行いましょう。実際に業者選び次第で避けられる近隣とのトラブルというものは存在します。立ち合いや見積でじっくりと、信頼できる業者を見極めることが重要です。
空き家の所有でお悩みの場合、まずは解体すべきかそうでないか、自分の状況に合わせてしっかり検討し考えたうえで決断してくださいね。
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