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空き家は遺産分割協議が難しい

亡くなった人の財産を相続するにあたり、法定相続人全員で話し合って、どのように遺産を分割するのか合意することを遺産分割協議と言います。
空き家は遺産分割協議が難しいと言われます。お金のように単純に分割することができず、また空き家にどのくらいの価値があるか、評価するのが難しいからです。そして空き家の場合、老朽化がひどく資産価値がないケースもあります。
そもそも不動産の価格には、公示価格、路線価、固定資産税評価額など、色々な基準がありますが、それぞれで価格が異なるのです。遺産分割協議では、どの基準を使うのか定められていません。
相続した空き家の活用例

空き家を相続した場合、もしくは相続した不動産が空き家になっている場合、どのような活用方法があるでしょうか。
ここでは、そこに自分が住む方法、人に貸す方法、売却する方法など、5つの場合について説明します。
そのまま住む
建物の状況、通勤や子供の転校など、問題がクリアできれば、相続した家にそのまま住むことは大きな選択肢の1つです。
注意点として、相続した建物は一般的に築年数が古いため、メンテナンスや修繕、リフォーム等のための費用が必要になる可能性があります。また、毎年、固定資産税等が発生するため、そのような負担も頭に入れておく必要があります。
そのまま貸す
売却する気がない場合やなかなか売却の決断がつかない場合、人に貸すことは有力な選択肢の1つでしょう。相続した空き家をそのまま人に貸すことができれば、その家賃収入によって固定資産税などの建物の管理費用に充てることができます。
問題は借り手が見つかるかということですが、建物の状態や立地条件などに左右されるため、場合によってはリフォームなどが必要になります。ただし、リフォームなどの費用が大きくなると、その費用の回収のリスクが大きくなるため、注意が必要です。
空き家のまま管理する
空き家をどうしたら良いか迷っている場合、将来的には空き家を活用したいが今は必要ない場合、空き家の借り手や買い手が見つからない場合など、とりあえず現状の空き家のまま管理する方法があります。
空き家を放置したままにしておくと、建物の劣化を早めたり、防災・衛生・景観等における近隣住民への迷惑につながりかねません。
老朽化した屋根や外壁の落下の危険、伸び放題の庭木の越境や落ち葉、ごみ放置や不法投棄による景観や環境の悪化など、空き家の放置は近年、社会問題化しています。
ちなみに空き家の管理サービスを行っている会社も存在します。遠距離であったり、高齢や病気などにより自分で管理ができない場合には、一度調べてみてはいかがでしょう。
そのまま売却する
空き家を保有しておく場合には手間や費用が掛かるため、売却してしまうのも1つの方法です。ただし、売却の際には譲渡所得税が課税される可能性もあり、それも頭に入れておくことが必要です。
老朽化して建物に価値がないような場合には、買い主に建物の解体費用を負担してもらう前提で、価格の値引きが必要になるでしょう。
解体して土地を売却する
空き家を解体して更地にしてから土地を売却する方法があります。状況によっては、更地にした方が早く買い手が見つかる場合があるからです。
また、更地の方が高い値段で売却できる場合もあります。ただし、建物の解体費用は自分で負担しなければならず、建物の内容や敷地状況によっては費用がアップします。あらかじめよく検討しておきましょう。
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空き家を相続した場合に気をつけること

空き家を相続するにあたっては、色々気をつけなければならないことがあります。空き家の管理責任が生じるだけでなく、所有権移転登記や火災保険に関しても必要なことを行わなければなりません。また、特定空き家についても知っておく必要があります。
空き家を安全に管理する責任がある
所有する空き家が原因となって、近隣の住民の方などに被害を与えた場合、所有者は損害賠償などの管理責任を問われる恐れがあります。これは、民法第717条で定められています。
また、平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空家等の所有者又は管理者に対し、「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする」(第3条)と定めています。
したがって、空き家を相続すると、空き家を安全に管理する責任も生じます。
相続放棄後も相続人が決まるまでは責任が伴う
あまりよく知られていませんが、実は相続放棄をしていても空き家の管理責任が伴います。民法第940条で定められている通り、たとえ相続放棄をしたからといっても、相続人が決まるまでは、空き家について知らない顔はできません。
相続したら所有権移転登記を行う
現在、相続登記は任意であり、相続後も所有権移転登記をせずに放置したままにされるケースもみられます。これは空き家が問題化する1つの要因になっています。
近年の所有者不明土地問題や空き家の社会問題化を背景に、令和3年に民法や不動産登記法等の改正が行われ、不動産の相続登記が義務化されることになりました。
相続登記をしないで放置しておくと色々なデメリットが生じます。相続関係が複雑になったり、当事者に所在不明の人ができたりするなど、いざ相続登記をしようとしても多大な時間と費用がかかる恐れがあります。
すぐに不動産を売却したくてもできない事態につながりかねません。相続したら所有権移転登記を行いましょう。
出典:令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント|法務省民事局
空き家に対応した火災保険の手続きを行う
多くの火災保険において、空き家の場合は加入できないとされています。したがって、まずは現在加入している火災保険が空き家を対象としているかどうか、保険会社に確認しましょう。
また、保険料の請求がきているからといって安心はできません。加入者から空き家になったことを連絡しなければ、保険会社の方で把握できず、保険料の支払いが継続している可能性があるからです。いざ火災になったとき、対象外で保険金が支払われない恐れがあります。
空き家を対象とする火災保険には、台風や水害などにも対応するプランがありますし、盗難被害に備えるものもあります。また、補償対象を建物だけでなく、家具や洋服などの家財まで幅広く補償をつけることも可能です。
いずれにせよ補償内容と補償額によって、保険料が大きく異なるため、よく考えて自分のタイプに合った保険を選ぶと良いでしょう。
特定空き家に指定されると固定資産税が上がる
近年、放置された空き家が、近隣住民の生活環境に深刻な影響を及ぼして社会問題化していることを背景に、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が平成27年に施行されました。
同法によって、特定空き家に対して、助言・指導・勧告・命令・代執行等の行政措置を行うことができるようになりました。特定空き家とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(第2条)で定義されています。
そして、特定空き家に指定されれば、固定資産税の軽減措置から除外されてしまいます。それは固定資産税が3~6倍にアップすることを意味します。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov法令検索
空き家を相続した場合に発生する税金

空き家を相続した場合、色々な税金が発生します。例えば土地や建物を相続することで、それぞれの価値に応じた相続税が発生しますし、所有権移転登記の際は、登録免許税がかかります。
また土地や建物を所有することになるため、毎年、固定資産税や都市計画税が発生します。さらに売却する場合には、その利益額に応じて譲渡所得税が必要です。
条件によっては、税の軽減や減免などの措置が受けられる場合があり、詳細については公的機関や専門家に確認する必要があるでしょう。ここでは、固定資産税、相続税、譲渡所得税について説明します。
固定資産税
家屋や土地を相続すると、毎年、固定資産税がかかってきます。固定資産税は、1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている所有者に対して課税されます。
原則として、課税標準額に税率1.4%を乗じた額が固定資産税の税額となります。ただし家屋が建っている土地の場合、住宅用地の特例が受けられ、税額が大幅に軽減されます。
200㎡までの部分は課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分は課税標準額が3分の1に軽減される制度です。これは人が住んでいるかどうかに関係がないため、空き家が放置される要因の1つにもなっています。
相続税
相続した財産(正味の遺産額)が基礎控除額を上回る場合には相続税が発生します。基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
空き家のタイプによっては、相続する場合に「小規模宅地等の特例」の適用を受けられなくなることから、相続税の負担が大きくなる可能性があるでしょう。相続する財産が基礎控除額を超えるような場合には、特例の適用を受けられるか確認しておくことが大切です。
譲渡所得税
土地、建物、株式などの資産を譲渡して得た所得を譲渡所得と言い、この譲渡所得に対する税金は、給与所得などの他の所得と区分して計算します。
譲渡所得税は、次の計算式で求められる課税譲渡所得金額に定められた税率を乗じることで算定されます。「課税譲渡所得金額」=「譲渡価額(売却価格)」ー「取得費」ー「譲渡費用」ー「特別控除額」
土地や建物を売却した年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超えるか(長期譲渡所得)、5年以下か(短期譲渡所得)によって税率が変わります。相続した土地や建物の場合は、亡くなった方(被相続人)の所有期間も含められます。
自宅を売却する場合、一定の要件を満たすことで「3,000万円特別控除」の適用を受けることができますが、空き家の場合は適用を受けられません。
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空き家に関する税金のポイント

空き家に関する税金には相続税や譲渡所得税等がありますが、ここでは特にメリットの大きい特例を2つ紹介します。
「小規模宅地等の特例」は相続税、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」は譲渡所得税に関する制度です。どちらも重要なため、ぜひ覚えておきましょう。
「小規模宅地等の特例」を利用する
「小規模宅地等の特例」は、亡くなった人が生前住んでいた土地や事業していた土地等を相続するにあたり、一定の要件を満たせば、8割の減額ができる制度です。
もともと空き家だった家屋を相続した場合は、この小規模宅地等の特例を受けられないのですが、次のような空き家の場合は定められた要件を満たせば受けることができます。
それは、亡くなった方(被相続人)が老人ホームに入居していたり入院していて空き家だった場合や、亡くなった方(被相続人)が住んでいた家屋を相続した後に空き家になる場合です。
前者は、要介護認定などの有無や、定められた入居施設であるかどうか等の要件を満たす必要がありますし、後者はその宅地を誰が取得したかで取り扱いが異なります。
この特例は内容も手続きも少し複雑で、原則として申告後の修正ができないため、注意が必要です。
出典:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」の特例を利用する
住むための土地や建物を売却する際に譲渡所得税がかかりますが、一定の要件を満たせば、譲渡所得から3,000万円を控除して計算できる特例があります。
この3,000万円控除に必要な要件は、「空き家の特別控除」と「居住用財産の特別控除」で異なり、特に空き家の特別控除では、要件や必要書類が複雑になります。
例えば、以下のような要件に適合していなければなりません。
・ 2013年1月2日以降に相続が発生し2023年12月31日までに売却
・ 1981年5月31日以前に建築(旧耐震基準)
・ 相続直前まで親が居住(※一定要件を満たした場合に限り、老人ホーム等も可)
・ 区分所有建物ではないこと
・ 一定の耐震基準を満たすようにリフォームしてから売却、もしくは建物を解体して更地として売却
・ 相続開始から3年以内の売却
出典:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)|国土交通省
空き家を相続する前にしっかり対応を検討しておこう

近年、空き家の数が増加しており、空き家の相続で悩む人も多くなっています。空き家の活用方法には色々種類がありますが、資産価値がなかったり立地エリアでのニーズがなければ、選択肢が狭くなってしまいます。
一方で空き家の管理責任の問題や、税金・維持管理費などの費用の問題等、頭に入れておかなければならないことがあります。
節税効果の高い税金の特例は適用期間が短いものが多く、また毎年変わるものもあります。空き家を相続する前に、いろいろ検討してしっかり対応できるようにしておきましょう。
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