アパートの建て替え費用について紹介します。アパートを取壊しするときの費用の相場や、建て替えに関する注意点を解説!費用の内訳も細かく紹介しているので、アパートを建て替える際の参考にしてください。退去に関係する、立ち退き料を抑える方法もまとめています。

アパートの建て替え費用の内訳や相場が知りたい!

ニュースで老朽化したアパートの危険性が報じられることが増え、建て替えを検討する人が多くなりました。では、そんなアパートの建て替えには、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?
アパートの建て替え費用の内訳や、相場についてまとめました。解体、建築、退去にかかる費用や、建て替え時期の目安や注意点を参考にしてください。
アパートの建て替え費用の内訳①解体費用

木造アパートの解体費用相場
構造別の解体費用の相場を確認していきましょう。後ほど詳しい内訳を紹介しますが、木造アパートの場合は坪あたり4~5万円の費用がかかります。80坪の木造アパートであれば、解体費用として約320万円かかるので覚えておきましょう。
鉄骨造アパートの解体費用相場
木造アパートに対して、鉄骨造アパートの解体相場は坪あたり6~7万円かかります。土地が広ければ広いほど、取壊しの期間や費用が必要です。その後の建て替えも含め、アパートの建設や取壊しでは、規模が大きく費用に影響します。
鉄筋コンクリート造アパートの解体費用相場
最も費用が高くなるのが、鉄筋コンクリート造アパートです。こちらの解体費用相場は、坪あたり7~8万円です。同じ80坪の場合、木造アパートは約320万円ですが、鉄筋コンクリート造では560万円もかかります。
注意点として、一般的に2階建てよりも平屋のほうが解体費用が高くなります。これは、屋根面積と基礎面積の違いのためです。80坪の平屋は屋根も競っも80坪の面積になります。2階建ての場合は、1階分が40坪と考えられるので、屋根面積と基礎面積も40坪です。
そこに、基礎部分の取壊しによる廃材が出て、処分費がかかってきます。こういった注意点を踏まえながら、費用を検討していきましょう。
解体費用に含まれるもの
解体費用に含まれるものとして、仮設工事、解体工事、整地費用、廃棄物処分費、諸経費がかかります。内訳の中で、解体工事費は約3~4割、廃棄物処分費が約4~5割を占めています。作業員や重機などさまざまな部分で、お金がかかるので内訳をしっかりと確認してください。
アパートの建て替え費用の内訳②建築費用

本体工事費に含まれるもの
アパートの建て替え費用内訳として、建築でかかるお金を確認しましょう。まず、本体工事費がかかります。建築費用として、本体工事費が大部分を占めることになります。
建物の基礎や構造、内装、外装、バス・トイレ・キッチンなどの設備費用が必要です。延べ床×坪単価を含め、きっちりと必要な金額の計算を行ってください。
別途工事費に含まれるもの
取壊しにおいて、別途工事費も重要です。基本的に、建物の本体価格の20%前後が別途工事費になります。これは付帯工事費、と表現されることもあり、敷地条件や建築プランが影響する部分です。
別途工事費の内訳は、給排水工事、ガス埋設管の引き込み工事、メーター設置費用、電気や空調工事になります。また、駐車場や地盤改良工事費用、市区町村の定める上下水道負担金なども別途工事費用です。引き込み距離などによって変化することを覚えておきましょう。
諸費用に含まれるもの
細かな諸費用も建て替えのときに忘れないようにしましょう。建設時の諸費用として、不動産所得税、登録免許税、印紙税、建築確認申請等の手数料などが必要です。また、司法書士に支払う報酬や各種保険、アパートローンの融資手数料なども自己資金で支払いましょう。
構造別の建築費用相場

構造別の建築費用相場を計算しましょう。ここでは例として、1階30坪、2階30坪、延床面積60坪のアパートの建築費用で計算します。60坪のアパートだと、25平米×8部屋ぐらいの規模になるので、計算とあわせてイメージしてみましょう。
木造(坪単価80万円) | 鉄骨(坪単価90万円) | 鉄筋(坪単価100万円) | |
---|---|---|---|
建物本体価格 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 |
別途工事費(本体の20%) | 960万円 | 1,080万円 | 1,200万円 |
諸費用 | 100~200万円 | 100~200万円 | 100~200万円 |
合計 | 5,860~5,960万円 | 6,580~6,680万円 | 7,300~7,400万円 |
坪単価は間取りや敷地の形にも左右される
1坪あたりの建築費が坪単価になりますが、統一的な算出方法の決まりはありません。そのため、坪単価は会社によって計算方法が異なることがあります。間取りや敷地の形に左右されることが多く、坪単価だけでは建築費が比較できません。
そのため、施工会社を選ぶ際には、実際の見積もりにある「総額」を比較しましょう。この点に気をつけて、建築費用を丁寧に確認してください。
アパートの建て替え費用の内訳③退去費用
立ち退きを求める場合の流れ

アパートの建て替えにおいて、立ち退きを求める必要があります。退去をお願いするときの注意点は、書面による退去通知や更新停止のお知らせが必要です。また、退去についてオーナーと入居者がお互いに合意することも重要になります。
退去してもらうために、立ち退き料を検討する場合もあるので、建て替えのスケジュールだけに気を取られないようにしましょう。入居者が退去をしてくれることで、建て替えの作業に移れるのです。
立ち退き交渉の開始時期
建て替えの費用などを検討すると同時に、立ち退き交渉も進めなければなりません。立ち退き交渉の開始時期は、半年から一年前に行いましょう。
ついつい、建て替え直前まで入居してもらって、家賃を振り込んでもらいたくなりますが、引っ越し準備を考えて半年前には通知してください。退去通知や更新停止の通知と、実際の退去までの時間が短いとトラブルに発展しやすいです。
また、入居者が多いアパートでは、それよりも早い時期に退去通知を行ってもよいでしょう。契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する「定期貸借契約」もおすすめです。
取壊しを行う直前には、アパートに住人がいない状態がベストです。そうすることで、建て替え作業がスムーズに進みます。
立ち退き料に含まれるものと相場

建て替えに納得してくれない住人に対し、立ち退き料を支払って、トラブルを回避することもあります。立ち退き料に含まれるものは、引っ越し代、新居に住むための敷金・礼金などです。
立ち退き料の相場は、家賃の数ヶ月~1年分が多くなっています。注意点として、家賃の安いワンルームは、立ち退き料も安くなりますが、ファミリー物件は要注意です。家賃が高い分、立ち退き料となる引っ越し費用も高額になるので注意しましょう。
立ち退き料の総額を安く抑える方法
立ち退き料の費用を安く抑えるためには、オーナー側からあえて提案しないこともおすすめです。建て替えに納得し、退去通知を素直に受け入れてくれる住人もいます。あくまで、相手側に納得してもらえない時に、立ち退き料の支払いを検討してください。
何よりも、残戸数が少なくなってから交渉をするのがおすすめです。アパートを建て替える場合は、自然退去を見守りながら、新しい入居者は入れないようにしましょう。そして、残戸数が1、2戸程度になった段階で交渉を行うことで、費用をおさえられます。
立ち退きのための費用は、多いと一人あたり50~100万円程度になることがあります。そのため、少ない残戸数と交渉することで、総費用を減らしましょう。また、残戸数が少ない状態であれば、立ち退き期間も短くなります。
入居者ごとの事情を汲んだサポートが大事

アパートのオーナーとはいえ、一方的に建て替えの事情を押し付けることは、トラブルにつながります。交渉が必要な住人の引っ越し代と新居の敷金・礼金、その他の諸費用を確認しましょう。
それでも退去を渋る場合は、引越しから落ち着くまでの家賃の差額分を、立ち退き料として提示してください。建て替えのスケジュールを優先し、立ち退き料の費用はある程度我慢することも必要です。
また、建て替えに関するサポートを行ってくれる、生協に相談することもよいでしょう。アパートの建て替えや立ち退きに関する手伝いを相談してみてください。
アパートの建て替え費用の工面はどうする?

自己資金を用意する
アパートの建て替え費用の工面も、十分に検討する必要があります。建て替えの費用は、アパートローンを利用する人が多いです。物件価格の7~8割をアパートローン、残りを自己資金で支払う形が多くなっています。
アパートローンの審査は、土地の担保価値や建て替え後の収益性、経営実績がチェックされます。金融機関によって、アパートローンの条件は大きく異なるので、複数の期間に相談してください。
国から融資を受ける
金融機関以外では、国から融資を受ける方法があります。日本政策金融公庫から、不動産投資目的の融資を受けられるか相談しましょう。注意点として、事業計画書などが必要になり、融資の審査は厳しくなっています。
また、取壊しを行って、新しく建築したアパートを担保に入れるのが条件です。建て替えを行う中で、どのように資金を用意するか、十分に検討しましょう。
アパートの建て替え時期の目安
法定耐用年数に近づいてきた

アパートの建て替え時期の目安を確認しましょう。アパートを取壊して建て替える場合、いくつかの目安が存在します。重要な目安として、法定耐用年数をチェックしてください。
住宅は法定耐用年数が定められており、木造では22年、鉄骨造は19~34年、鉄筋コンクリート造は47年です。注意点として、法定耐用年数はあくまで建物の価値に関係する部分です。
そのまま住み続けることも可能ですが、この法定耐用年数を参考にして、取壊しを行うオーナーが多くなっています。法定耐用年数を超えると、建物の構造やデザインなどが時代に合わなくなり、入居者が減る可能性もあるのです。
築30年や40年の建物も多く存在しますが、安全性やデザイン面を考えて、建て替えを検討しましょう。出典:耐用年数(国税庁)
空室が目立つようになってきた

先程の法定耐用年数につながることですが、古くなった建物はデザインや見た目の関係から、空室が目立つようになります。こういったタイミングであれば、立ち退き料を住民に支払う量も減らせるでしょう。
注意点として、空席が目立つ原因を解明することが重要です。後ほど解説しますが、建て替えで収益物件にするためには、いくつかの条件が必要になります。空席の原因がはっきりとしていないままでは、費用がかかるだけで返済計画にも支障が出るので注意してください。
設備やデザインが古くなってきた
アパート内に取り付けられている設備が老朽化した場合、取壊しを検討してください。中途半端に一部を直すよりも、取壊して建て替えを行うほうが、費用を抑えられることがあります。
また、建物のデザインも時代によって流行り廃りがあり、若い住人を増やしたい場合は取壊して、新しくするのもおすすめです。内部をリノベーションすることでも改善はできますが、外観は古いデザインのままになるので、建て替えを考えましょう。
アパートを建て替える際の注意点

建て替えの必要性が低いケースもある
アパートを建て替えるのは、費用や労力がかかります。そのため、建て替えの必要性があるか検討しましょう。空室状況やアパートのローン、築年数や建て替えによるメリットが判断材料です。
入居者が多い状態であれば、無理な取壊しは必要ありません。また、注意点として、以前のような入居率になるかも検討してください。せっかく取壊して新しい建物にしても、空室が目立つような状態では資金繰りに困ることになります。
注意点として、現在のアパートのローンが残っている状態では、建て替えのために担保にすることができません。この注意点とあわせて、自分の資金をよく考えて、建て替えを行ってください。
リフォームやリノベーションも検討する

アパートの建て替えが難しい場合は、リフォームやリノベーションを検討しましょう。それぞれにメリットとデメリットがあり、費用も大きく異なります。
リフォームでは、建て替えと比較すると費用が安くなるのがメリットです。工事期間が短いので、場合によっては立ち退きをせずに行えます。改修が必要になった部分だけで済むのも、メリットといえるでしょう。
しかし、根本的な建物の築年数は変わらないため、継続的にメンテナンスを行っていかねばなりません。新築扱いにならないので、警戒される可能性もあるでしょう。とはいえ、建て替えの相場と比較すると、6割から7割程度の費用で済むのは大きなメリットです。
綿密な収支計画を立てる
いずれの形を取るにしても、アパートの扱いは綿密な収支計画が必要です。現状のままメンテナンスを続けるのか、建て替えるほうがメリットがあるのか、考えなければなりません。
新しいアパートにすることで、賃料アップや最新の間取りを取り入れることができます。そのことで、入居者が増えれば建て替えの費用を支払っていけるでしょう。しかし、資金に余裕がない状態で見切り発車は危険です。
ローン年数の組み方や、建て替え費用の内訳など、さまざまなデータや情報をチェックしてください。綿密な収支計画を立てて、アパートの建て替えを決断しましょう。
アパートを建て替えて収益物件にするコツ
入居者の生活環境に配慮した設計プランを立てる

注意点の部分でも紹介しましたが、アパートは綿密な収支計画が重要です。そのため、アパートを建て替えするときに、収益物件にするコツをおさえておきましょう。
まず、入居者の生活環境に配慮した設計プランを立ててください。新しくアパートを建て替えるときに、間取りを住みやすい形にしましょう。日当たりや風通しのよい間取りにすることで、住人の満足度が得られます。
また、遮音性も重要です。遮音性が低いと住人同士のトラブルにつながり、アパートの評判を大きく損ねます。アパートの建て替えのときは、費用がかかっても遮音性の高い間取りにしましょう。
こういったポイントに注意することで、入居者を確保し、アパートの建て替えにかかった費用を返済することができます。
セキュリティ設備を整える

近年はさまざまな犯罪が増えており、アパートのセキュリティにお金をかけるオーナーが増えています。アパートの建て替えのときには、セキュリティが高い建物にしましょう。
建て替え費用の内訳の中に、防犯カメラやオートロックなども含めておくのがおすすめです。また、アパートの管理人や警備会社も検討してください。セキュリティの高いアパートであれば、安心感の高い住居を探す人が興味を持ちます。
こういった部分に初期投資しておくことで、結果的に費用やトラブルを減らすことにつながるでしょう。防犯意識の高いアパートに建て替えることで、トラブルを未然に防ぎましょう。
周辺環境・賃貸需要を確認する

アパートの建て替えでは、費用だけでなく周辺環境や賃貸需要を確認しましょう。せっかく新しいアパートを建てても、需要が低い状態では費用を返済できません。注意点として、需要や人口増加、周辺環境、再開発計画などを忘れずに確認するようにしましょう。
今のアパートを建てたときは、賃貸需要があっても、人口減少や周辺環境の変化で、新しい入居が見込めないこともあります。周辺にあった大学や大きな工場の移転は、賃貸需要に大きな影響を与える部分です。
この注意点に気をつけることで、アパート建て替え後の入居者を想定できます。また、賃貸需要があれば、費用をかけたアパートを建設しても、返済に困らない状態になるでしょう。
地域の人口の増減に対応した設計プランを立てる
建て替えの注意点として、地域人口の増減に対応した設計プランを立てるようにしましょう。近隣に再開発計画があるかは、今後のアパート運営に重要な要素です。地域全体に活気があれば、入居者が増えて建て替え費用も返済しやすくなります。
逆に人口流出が続いている場合、建て替え費用を計画通りに返済できないかもしれません。設計プランを立てる注意点として、周辺環境や開発計画は必ずチェックしておきましょう。もし、人口流出が続いている場合は、建て替えを断念することも検討してください。
アパートの建て替え費用を踏まえて収支計画を立てよう!

アパートの建て替え費用の相場や内訳について解説しました。アパートの建て替えでは、建物の構造だけでなく、立ち退き料も重要な要素です。また、アパートを建て替える費用だけでなく、新しくする場合は、無理のない計画にしましょう。
アパートの建て替えでは、セキュリティ面や入居者が住みやすい間取りにすることも重要です。建て替えにかかる費用を丁寧に確認し、新しいアパートに入居者が集まるように準備してください。
