昨今では、戦後の第一次ベビーブームに生まれた「団塊の世代」が後期高齢を迎える中、住宅における設備が従来通りではまかないきれない部分が出てきています。
段差ひとつとっても、若い世代の方であれば何ともない問題なのかもしれませんが、高齢者となるとそういうわけにもいかないのが現状です。
そこで、高齢者にとってもよりよい住まいにするために、バリアフリーなどの助成金を活用した賢いリフォーム術や注意点などを紹介します。
バリアフリー
バリアフリーとは
「バリアフリー」とは、もともとは建築用語の一つで、バリア(障壁)フリー(除く)、直訳すると障壁を取り除くという意味があります。
建築業界では、建物内部の段差を物理的に取り除くという意味で用いられています。
バリアフリーの目的
バリアフリーの目的は、その家に住む方の安全性と快適さを確保し、住みやすい住環境を作ることです。
体の自由が利かず、今すぐにバリアフリーにリフォームをする方がいいといった方もいれば、今後の暮らしの上で、よりよい環境づくりのためにバリアフリーのリフォームを考えている方もいるでしょう。バリアフリーのリフォームをすることで、家の中で起こりうる事故のリスクを抑えることができます。
厚生労働省の調査によると、高齢者の救急搬送の原因で多いのは転倒や転落といったもので、全体の約80パーセントを占めているそうです。さらに、この搬送される原因の80パーセントのうちおよそ半数が、自宅などの普段過ごしている場所で起きています。
バリアフリーの必要性
家の中だけに留まらず、社会の中でもバリアフリーは見直されています。バリアフリーが必要な方は高齢者に限ったわけではなく、小さなお子さんから障がいを持っている方、さらには妊婦さんなどにも求められているのです。
需要も多岐に渡ることから、「ひとにやさしい街づくり」の一環として国や市町村が取り組んでいる分野です。

バリアフリー補助金の種類
補助金制度としての代表的なものは介護保険制度の「高齢者住宅改修費用助成制度」です。
高齢者住宅改修費用助成制度とは
この制度では、最高額が20万円まで支給されますが、最低1割は自己負担金が必要なため、9割分の18万円までが上限となります(上限内であれば複数回に分けて利用することが可能です)。
介護認定が、3段階以上進んだ場合や転居したときなどは、再度20万円までの9割の補助金を受けることができます。
補助金の受給対象者
介護保険の補助金受給対象者となるのは、要支援者及び要介護者であると行政から要介護認定が下りている方に限ります。
加えて、リフォームをする住居の住所が被保険者の住所と同一であることと、本人が居住していることが条件となります。
要支援者
要支援者とは、要支援1から2の認定を受けていて、介護が必要な状態ではないが、日常生活に不便をきたしているような方が該当し、最終的に要介護状態になる可能性がある方を指しています。
要介護者
要介護者とは、現在介護が必要な状態の方であることを指しています。要介護の状況に応じて要介護1から5までの段階が設けられています。

支給対象のリフォーム
従来の住宅にて、不便を感じることや場所などがある際、それに対して助成金の対象となるものがありますので、いくつか挙げていきます。
段差の撤去
転倒や躓き防止を目的としたリフォーム。敷居の段差、トイレや廊下の扉のレールなどが該当します。
また、浴室や玄関の高低差のある段差部分には、スロープの取り付けなども対象になります。
手すり
玄関はもちろん、廊下や階段、浴室、トイレなどに取り付ける手すり全般です。
移動や体勢を変える際の補助としての活用や、転倒防止のために取り付けるものが対象となります。
便器の交換
和式トイレで用を足すことに弊害があるなどの理由で、和式トイレから洋式トイレへの交換工事などが該当します。
洋式便器の高さの調整が必要になる場合にも対応しており、トイレ工事に伴う給排水設備の工事や床材の取り換え工事なども含まれます。
扉の交換
洋室やリビングに取り付けられている開き戸を引き戸に交換するなどが該当します。開閉時の負担を少なくするために、取り換える工事が対象です。
その他、握力の低下に伴って扉の開閉が困難になってしまった時に、扉の開閉が容易にできるようにドアノブや戸車の取り換えも対象となります。
間取り変更
間取り変更となると、費用も大幅にアップしてしまいますが、快適に暮らしていくために必要であれば避けては通れません。
廊下の幅を広く取ることや、車いすでも使い勝手のよいようにトイレや浴室などの設計を一からやり直すなども対象になります。
床の交換
段差だけではなく、床も滑りやすいと転倒の原因になります。
滑りやすい床材から、滑りにくい材質や衝撃を吸収するクッション性のある床材に交換する工事も対象になっています。

助成金の給付のための注意点
各自治体への最新情報の確認
バリアフリーのリフォームには、介護保険だけでなく各自治体が行っているものもあり、制度の内容や基準が異なる場合があります。そのため、住まいの自治体への確認は必ずしてください。
各自治体への必要書類の提出
リフォーム前
バリアフリーのリフォームを行う際には、介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成した住宅改良が必要な理由書を、自治体の担当課へ提出する必要があります。
工事完了後
バリアフリーの工事が完了したら、工事にかかった費用の内訳書や領収書、工事の完了報告書(施工前・施工後の写真付き)などの必要書類を添えて提出をする必要があります。
リフォーム業者によっては工事と一緒に申請業務も行ってくれるところもあるので、まずは業者に確認するとよいでしょう。
税金の減額対象になる
バリアフリーの工事を行った際には、所得税の控除や固定資産税の減額の対象となります。確定申告時に申告しておきましょう。
所得税の控除
投資型とローン型で異なりますが、一定のバリアフリーのリフォームであれば、工事を行った場合には確定申告をすることで、所得税額の控除対象となります。
固定資産税の減額
一定のバリアフリーのリフォームを行った場合、自治体の担当課に申告すると翌年度の固定資産税額の減額対象となります。

介護保険以外での助成金
自治体による助成金
自治体によっては、高齢者や障がいを持っている方への補助制度があります。
自治体が独自で設けた助成金制度であれば、支給条件や上限額、対象となる工事の詳細などが異なってきます。
自治体独自の助成金制度を利用すると、場合によっては、20万円より多く受給することが可能になったり、高齢者住宅改修費用助成制度で対象にならなかった場所でも工事が受理されたりと、幅広く補助を活用できることもあります。
しかし自治体独自の助成金制度は、介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度より受給条件が厳しいのが一般的です。
さらに自治体が負担してくれる割合も少ないため、あくまで介護保険の補助として考えておくとよいでしょう。
補助金制度の併用不可の場合
補助金制度の併用が不可の場合は、原則として、「国費の二重取りができない」といった決まりがあるからです。同一の補助対象に対して複数の国の補助金を受け取ることはできないのです
一方で、各自治体の独自の補助制度なら、国の財源とは異なるため二重取りにはなりません。
注意すべきは、一見問題のなさそうな自治体の補助制度であっても、国の財源で充当されている補助金制度がある場合です。この場合は、国費の二重取りとなってしまうため原則として併用は不可となってしまいます。

まとめ
補助金や助成金については、気が付きにくいことが多々ありますので、全ての支援制度を完璧に把握することは至難の業と言えます。しかし、後から知るといった機会損失をできるだけなくすことも大切です。
バリアフリーのリフォームは、各種の補助金はありますが、申請から工事が完了し、補助金を受理するまでの間の期間も短くはありません。加えて、必要になってから慌てて計画をするよりも、事前の調査や情報収集などをして備えておく必要があります。
「転ばぬ先の杖」ということわざにもあるように、備えておくと安心なこともたくさんあります。どういった申請内容が必要か、日数はどの程度かかるのかなど調べておくとよいでしょう。