ビルを解体する方法についてまとめました。ビル解体で用いられる技術や解体方法、工事費用の相場や内訳について詳しく解説していきます。業者選びに失敗しないためのポイントや、解体工事にかかる工期についても説明していますので、参考にしてください。
ビルの解体方法や業者選びのポイントを紹介!

ビル解体には特別な技術を用い、周辺に配慮して行われます。解体技術は年々向上しており、さまざまな技術や方法で安全に留意して作業は進められます。
本記事では、ビル解体に必要な技術や解体方法についてまとめました。さらに、業者選びのポイントと、ビル解体にかかる工事費用の相場と内訳も解説していますので、参考にしてください。
ビルの解体工事で用いられる4つの技術

ビルの解体には、特別な技術が用いられます。ビル密集地や繁華街など、環境によって用いられる技術はさまざまです。どのような技術でビルの解体が行われるのか紹介します。
油圧圧砕
油圧圧砕は、ビル解体になくてはならない技術のひとつです。重機に油圧で動く圧砕機を取り付け、ビルの解体を行います。具体的には、圧砕機で部材を挟み込み圧縮したり、破壊したりします。
大型の重機を使うことも多く、コンクリート造りの柱や梁、基礎なども圧砕することができるのが特徴です。住宅街など、騒音が気になる場所での作業に用いられることもあります。
油圧ブレーカ
油圧ブレーカも、重機に取り付けて使用する装置です。油圧ブレーカは先端部分がタガネになっており、タガネ部分を振動させて部材を破壊していきます。
油圧ブレーカは、ビルだけではなく、道路工事や基礎工事、トンネル工事や採石場など、あらゆる現場に対応できる技術です。狭い範囲でも着実に作業を進めることができるため、ビル解体になくてはならない技術といえるでしょう。
ワイヤーソーイング
ワイヤーソーイングとは、建築物にワイヤーを巻き付け、高速回転させることで部材を切断する技法です。ダイヤモンド砥粒が埋め込まれたワイヤーをループ状に接続し、ガイドプーリーを用いて切断方向を調整します。
基本的にどのような建築物でも切断可能で、建築物の形状にも左右されません。複雑な建築物にも対応でき、遠隔操作で水中や高所、地下など、あらゆる場所で安全に作業ができるのが特徴です。
ただし、鉄骨や鉄筋の場合は時間がかかるため、油圧圧砕や油圧ブレーカと組み合わせることが多いようです。
フラットソーイング
フラットソーイングとは、床板や舗装など、水平面の部材を切断するための技術です。円形カッター状のダイヤモンドプレートで、オペレーターが歩きながら1人で作業を進めていきます。
切断している刃は高温になるため、水を出して冷却しながら作業するのが大きな特徴です。ビルだけではなく、舗装修理や目地切り、リフォーム、建築現場でも使われることが多い方法です。
ビルを解体する方法

ビルを解体する具体的な方法について紹介していきます。ビルは周辺の環境に合わせ、さまざまな方法で解体されます。ビル解体の中でも、代表的な5つの方法を見ていきましょう。
地上解体
地上解体は重機を地上に置き、ビルの上部から解体していく方法です。ハイリフト重機という特殊な重機を用いることで、高さ40m程度のビルであれば作業することが可能です。
ハイリフト重機の中には、超ロング解体機という、高さ65m程度のビルに対応しているものもあります。地面に重機を置くので、床面の強度に関係なく解体できるのが特徴です。
重機の先にカメラがついているなど、オペレーターの作業がしやすい環境が整っており、安全面にも配慮されています。さらに、騒音や振動が少ないので、周辺に迷惑をあまりかけずに作業を行うことができます。
階上解体
階上解体は、大型クレーンで重機をビル最上階に乗せて、上から下へ解体する方法です。ハイリフト重機が使えない現場や、ビルが密集している場合に用いられます。
比較的多く用いられるポピュラーな方法ですが、床抜けや落下、壁の崩落に注意しながら慎重に作業を進めなければいけません。
作業が終われば、コンクリートガラでスロープを作り、上から下へと降りていきます。オペレーターの安全はもちろん、通行人など、地上への安全も求められる方法です。
上部閉鎖式解体
上部閉鎖式解体は、高層ビルに適した新しい解体方法です。ビルの上部に天井クレーンなどを設置し、移動可能な閉鎖式の解体設備を設置するのが特徴です。
閉鎖空間の中で作業を行い、解体が終わると設備を階下に移動させます。このように閉鎖空間で作業を進めるので、騒音や粉塵、落下物などのリスクが低減します。
だるま落とし式解体

だるま落とし解体は、ビルを下から解体をしていき、上階部を下げていく方法です。その名の通り、だるま落としをイメージするとわかりやすいでしょう。
まずは最下部の柱を切断し、ジャッキを取り付け上階を持ち上げます。解体が終わるとジャッキダウンし、上階を下げる作業を繰り返して作業を進めます。
ビルが崩れるリスクはありますが、景観への影響がなく、粉塵や騒音を抑えることができる解体方法として注目されています。
ブロック解体
ブロック解体は、大型クレーンをビルの最上階に取り付け、ブロック単位でビルを解体していく方法です。高層ビルやビルの密集地でも作業が行えるため、多くの現場で用いられています。騒音が起きにくく、地震が発生しても安全で、工期が短縮できるなど、メリットが多い方法です。
ビルの解体にかかる工事費用の相場と内訳
ビル解体にはどのような費用がかかり、どのような内訳になっているのか気になるところです。ビルの構造や周辺環境によって費用は変わるので、ひとつの目安としてチェックしてみてください。
一般的な費用相場

ビル解体の費用相場は、構造や立地条件によって異なります。床面積やビルの高さ、アスベストの有無、使う重機の種類などによって費用は変わるため、一概にこのくらいと決定することはできません。
鉄骨造は坪単価3万5000円、鉄筋コンクリート造は坪単価4万5000円、鉄骨鉄筋コンクリート造は坪単価6万円が一般的な費用の目安です。これらはあくまでも目安なので、地域によって費用は多少変わります。
内訳①解体工事費用
解体工事費用とは、解体そのものにかかる費用です。頑丈な造りで危険を伴うほど、費用は高くなる傾向にあります。解体工事費用には、重機の使用量や工事費の他、届出に必要な経費も計上されることが多いです。
内訳②人件費
工事に必要な人数は、ビルの規模によって大きく変わります。人件費は人区×日数となっており、有資格者が多いほど費用は上がります。さらに、工事を安全に行うために、管理費(現場監督にかかる費用)も必要です。
内訳で人数について疑問があった場合は、どのような理由でこの人数必要なのか確認しておきましょう。
内訳③養生費用

養生費用は、ビルの規模や工期、周辺環境によって変わります。ビル解体には、足場や仮囲い、防音シートなど、多くの費用がかかります。養生費用をチェックするには、工程表と養生金額が合っているか確認しましょう。
しかし、必要以上にコストカットすることは、安全面でのリスクが大きいです。そのため、工事業者の言い分を、ある程度聞く必要があります。
内訳④重機の運搬費用・アスベストの解体費用
重機の運搬費用は、輸送車の走行距離に比例して高くなります。場合によっては初期の明細に入っておらず、後から実費で請求されることもあるので、確認しておきましょう。
ビルにアスベストが使われている場合は、工事実施の届出を行う必要があります。解体や養生も特別な作業が必要になるため、費用が数倍跳ね上がります。人的被害を防ぐためですので、必ずアスベストに対応した方法で作業しなければなりません。
ビルの解体にかかる工期
ビルの解体には、どのくらいの工期を要するのでしょう。ビル周辺の環境やアスベストの有無で工期は異なりますが、一般的な作業日数の目安について解説します。
構造別の工期目安

鉄骨造(S) | 工期 |
---|---|
50坪 | 10〜15日 |
100坪 | 20〜30日 |
300坪 | 40〜50日 |
鉄筋コンクリート造(RC) | 工期 |
---|---|
50坪 | 15〜20日 |
100坪 | 30〜40日 |
300坪 | 50〜60日 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC) | 工期 |
---|---|
50坪 | 30〜50日 |
100坪 | 60〜80日 |
500坪 | 90〜120日 |
工期は、ビルが頑丈な造りであるほど長くなります。土地売却期間が決まっている場合は、ビルの造りと延べ床面積を確認し、どのくらいの工期が必要か把握しておきましょう。また、アスベストが使用されている場合は、工期が大幅に伸びるので注意が必要です。
工期はアスベストの有無等によっても異なる

アスベスト(石綿)は天然鉱石で、細かい繊維状です。耐火性、耐薬性に優れたアスベストは、安価な工業資材として重宝されていました。その使用用途は3000以上ともいわれており、多くの建設現場で使用されていました。
アスベストの使用が全面的に禁止されたのは、ここ十数年のことです。そのため、アスベストを使用した古い建築物は、まだ多く存在しています。
アスベストそのものには毒性はありませんが、飛散したアスベストを吸い込むことで肺がんや中皮腫を引き起こすとされており、大きな問題となりました。そのため、アスベストの有無を調査し、都道府県に届出を出さなければなりません。
大気汚染防止法では、石綿の除去等に係る一連の作業を開始する14日前までに、都道府県等に届出を行い、石綿飛散防止のための作業基準を厳守しなければならないと記載されています。
有害物質であるアスベストは、対策を行わずに解体することで周辺に飛散し、作業員だけでなく周辺住民にも健康被害を及ぼします。アスベストが使われている場合は工期がかなり伸びるので、調査は早めに行うのが望ましいでしょう。出典:待機環境・自動車対策(環境省)
ビルの解体における業者選びのポイント
ビル解体には多くの費用がかかるため、業者選びは重要です。しかし、金額だけで業者を選ぶと、トラブルになる可能性もあります。後々トラブルにならないための、業者選びのポイントについて解説します。
ポイント①ビル解体に必要な許可の有無を確認

解体作業を行えるのは、建設業、とび・土木工事業、解体業の3業種のみです。これらの業種であれば解体作業を行えますが、500万円以上の費用がかかる場合は、さらに建設業の許可が必要になります。
ビルの構造や規模によって費用は変わるので、500万円以上かかる場合は、建設業の許可がある業者を選びましょう。
さらに、産業廃棄物の運搬には、産業廃棄物収集運搬業の許可も必要です。産業廃棄物の運搬だけ別に頼むこともできますが、産業廃棄物収集運搬業の許可も持っている業者を選ぶと、スムーズに作業を行えるでしょう。
ポイント②相見積もりで金額や内容を比較

見積もりは、できるだけ複数社に依頼しましょう。手間や時間はかかりますが、費用や工事内容を確認するのはとても重要です。複数社に見積もりを依頼することで、費用の相場もわかります。
見積もりを依頼する際は、費用の内訳を把握することが大切です。あとから追加費用を請求されないよう、しっかり工事内容と費用を確認しましょう。
複数社に見積もりを依頼しても、値段だけで業者を選んではいけません。なぜ安い費用で作業が行えるのか確認しないと、大きなトラブルになる可能性もあります。工事内容と費用を確認し、信頼できる業者を選びましょう。
ポイント③下請け業者に直接依頼する

大手建設会社に依頼すると、中間マージンが発生するので費用が高くなる傾向にあります。費用を安く抑えたい場合は、直接下請け業社に依頼する方法もあります。下請け業社がわからない場合は、自社で解体作業を行っている会社を選びましょう。
ビルの解体方法についてしっかり理解しよう!
ビル解体には、さまざまな技術や技法があります。さらに、ビルの規模や周辺環境によって、工期や費用も大きく変わります。アスベストが使われている場合は、工期や費用も大幅に増えるため、早めに確認することが重要です。
また、費用を安く抑えることも大切ですが、解体には安全性が求められるため信頼できる業者に依頼するようにしましょう。
