マイホームローンを検討していると、必ず出てくるワードとして、「団信」があります。
身近な保険として、車を運転する方なら自動車保険、賃貸住宅を探したことがある人なら火災保険などは、聞いたことがあるでしょう。しかし「団信」は初耳という方は多いかもしれませんね。
保険とは、日常生活で起こりうる様々なリスクに備える制度の一つです。長期にわたりリスクを抱えることにおいて、万が一の時に対策できるものとして使われています。
そういった観点から、長期にわたりローン返済をしていくためにも日常生活におけるリスクを何かの形で担保する。それが「団信」の役割ということになります。
マイホームをローンで購入するのであれば、検討しておかなければいけない団信。今回はこれについて、詳しくお話します。
団体信用生命保険(団信)とは
マイホームの購入の際の方法として、マイホームローンを利用する人が大半を占めていますが、銀行などに相談をするときやインターネットで検索していると必ずと言っていいほど出てくるのが「団体信用生命保険」です。
団信とは、万が一に備えるための保険

団体信用保険は、住宅ローンに特化した保険です。
万が一、住宅ローンの契約者に何か起こった場合には、住宅ローンの残高相当を団信が肩代わりしてくれるのです。
団信が、ローンの契約者の代わりに、借入をした金融機関に残債を支払う、というわけです。
原則的には、団信はいつでも加入できるものではなく、住宅ローンを借り入れる時と、新たに借り換えなどをするタイミングにのみ加入することができます。それ以外の場合に加入することはできません。
ただし金融商品の内容によっては、一部途中加入ができるものもありますが、それもローン契約者の健康状態によっては不可の場合もあります。
もしものために
団信は加入すると、住宅ローンの返済期間中にローンの契約者が死亡したり、障害を負ってしまったりした場合に、ローンの返済の必要がなくなります。
残った家族に負担を負わせないためにも、加入するべきといえるでしょう。
加入は必須?
団信への加入は必須ではありませんが、ほとんどの金融機関が団信への加入を融資の条件としているので、団信に加入しないケースはほとんどありません。
そして、団信の一般的な保障内容は、ローンの契約者の死亡及び高度障がいになってしまった場合に適用されることが多いのですが、その内容だけであるなら、一般的には金利に上乗せされません。そのほかの特約については金利の上乗せがあるため、詳しくは後述します。
とはいえ、住宅金融支援機構のフラット35のように任意での加入の場合もあります。しかし未加入自体があまりにもリスクが高く、推奨されるものではありません。
保障範囲
団信の目的は、上述した通り契約者に万が一のことがあった場合に、マイホームのローンの残債をローンの契約者に代わり返済することです。
しかし、保障される範囲は金融機関によって異なります。がんや脳卒中、急性心筋梗塞などの3大疾病と呼ばれるものや、要介護状態にも保障対象となる特約があるなど、細かな内容は金融機関や加入のプランによっていくつかあります。
基本的な保障範囲
団信は、一般的には契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、マイホームのローン債務がなくなる仕組みですが、厚生労働省の2019年の人口動態統計の年間推計によると、戦後は医療技術の進歩などで治療のできる病気も増え、死亡のリスクは全体的には低下傾向になっています。
しかしその一方で、けがや病気により今までのように働けなくなったり、職場復帰したとしても収入が下がってしまったりするケースはまだまだあります。
収入が下がってしまうと、マイホームのローンの支払いは厳しくなってしまうので、そのような場合に備えて、手厚い保障内容の団信を検討しておくことをおすすめします。
これだけは押さえておきたい保障

3大疾病と呼ばれている「がん、脳卒中、急性心筋梗塞」。これらの疾病は団信の保障の中では代表的な特約となっています。
そのほかにも押さえておきたいものとして、所定の身体障がい状態というものがあります。
病気やケガによる人工透析を受けていることや、心臓にペースメーカーを付けている人など、所定の身体障がい状態に該当している場合に保障される特約です。
それ以外のリスク、たとえば要介護状態になってしまった場合などに該当するような特約もあります。公的介護保険制度で、要介護状態の認定を受けた場合に保障される特約というものです。
・3大疾病
・所定の身体障がい状態
・要介護状態
以上の場合にも適用される特約を付けておくことで、万が一に備えた保険になるといえるでしょう。同じ団体信用生命保険でも、そもそもの内容や特約などで全く違ったものになってしまうのです。
団体信用生命保険の支払方法

一般的な保険料は、毎月支払うか、年払いにて支払うことが多いでしょう。
住宅系の保険になると10年分といった単位もありますが、団信の保険料は、金融機関が負担します。といっても、見た目は金融機関が負担する形式にはなっているのですが、金融機関でローンを組む際のローン金利に上乗せする形となることから、実際にはローンの契約者が支払っているのです。
また、団信に特約を追加することで、金融機関はその分を金利に上乗せすることが多くなっています。
3大疾病や所定の身体障がい状態、及び要介護状態などの保障も含む内容の特約を付けるのであれば、ローン金利に特約分が加算され、マイホームのローンとともに支払うことになります。
団信の保障内容を充実することによって、毎月のローンの金額は増えてしまいますが、長い間に起こりうるリスクを考えると、住宅にかかる部分でのみのローンではなく、団信の内容も加味したローンの返済計画を立て、無理のないようにすることが大切です。
一般的な団信(金利上乗せなし)
死亡及び高度障がいの場合。
高度障がいとは、終身的に介護を要する、著しく身体の機能が損なわれた状態のことを指します。
がん保障の特約を付けた場合(金利上乗せなし~プラス0.2パーセント程度)
「がん」と診断されると、保険金が支払われます。ローンの残高が半分になる50パーセント保障や、全額が保障される100パーセント保障などがあります。
一部のがん(上皮内がん、悪性黒色腫以外の皮膚がん)などに適用。
3大疾病の保障の特約を付けた場合(プラス0.3パーセント程度)
がん、急性心筋梗塞、脳卒中にり患した場合に適用。
その他の病気の場合
その他にも、7大、8大、11大疾病といったものもあり、それぞれに金利の上乗せがあります。
しかし、保障条件は各金融機関などでも細かく設定があり、同じ扱いにならないものや、条件などが異なります。
金融機関によって、特約に付けられるものも変わってきます。中には病気以外のけがによる就業不可状態になった月の返済を免除されるものや、働けない状態が続くとローンを支払わなくてもよくなるものもあります。
このように団信に特約を付ければ付けるほど中身が充実したものになると思われますが、対象となる疾病の条件が厳しければ、それはほとんど役に立たない特約となってしまうため、よく比較し検討することをおすすめします。
団体信用生命保険に付けておきたい特約

マイホームのローンを組むときに加入した通常の団信なら、死亡、高度障がいに対して保障されますが、金利の上乗せがあったとしても付けておきたい特約があります。
特約の選び方
付けておきたい特約の上位に挙がるものとして、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」があります。
3大疾病ともいわれていて、大抵の特約にはセットになっていますが、これらの疾病は特にり患率の高いものとなっており、この3つに備えていればある程度は安心といえるのではないでしょうか。
がん
積極的に検討したい代表的なものが「がん」です。近年では、医療の進歩により、早期発見の可能性や5年後生存率が飛躍的に向上していますが、がんの治療は大変つらく、闘病に長引くこともあり、その間のローンの返済は苦労する可能性があります。
がん特約を付けていれば、その内容にもよりますが、がんと診断されたらローンの残高の多少にかかわらず、返済が免除されるものもありますので、特約を付けることによって安心して治療に専念できます。
疾病ごとの平均入院日数
年や病状にもよりますが、35~64歳の平均入院日数を見ると、心疾患では9.0日、脳血管疾患は45.6日となっています。
がんに比べると比較的短期間で退院できるケースが多いのですが、後遺症が残りやすい病気であることから、退院後に以前のように働くことが困難になる恐れがあります。
団体信用生命保険のメリット

万が一のときに家族に家を残せる
団信のメリットは、ローンの契約者が死亡、または高度障がいになってしまった際やその他の特約に適用される事態になってしまった場合には、マイホームのローンの残債がなくなります。そのため家族に家を確実に残すことができます。
万が一の事態になってしまうことは、大変ショックですが、家が残ることでその後の残された家族の金銭面的な不安を少しでも和らげることができるでしょう。
特化しているので一般的な生命保険より割安
団信は生命保険なので、同じような保険商品は一般的な生命保険と同じで、いろいろと出回っています。
例えば、生命保険会社が出している「死亡保険」や「収入保障保険」などが挙げられます。
対するがん保障の特約がある団信は、一般的な「がん保険」に比べると内容は充実していることが多くなっています。
生命保険会社で販売しているがん保障の保険商品は、がんと診断されたら一時金として100から200万円程度が支払われるだけの保険が多く、入院や通院にしても1日当たり1万円程度という内容がほとんどです。
団信の場合には、マイホームのローンの残高分がなくなるので、非常に多くのメリットがあるのです。
所得税の納税義務がないこと
一般的な生命保険の金融商品には、満期になると一時金を取得できる場合がありますが、その際には一時金という所得の扱いで所得税が発生します。
ところが、団信の場合には所得税は発生しません。
当たり前と言えば当たり前なのですが、ローンの契約者が死亡または重大な障害になった場合には、債務が免除されることになります。
しかし、それは「債務免除益」という形で利益がローンの契約者に生じることになりながらも、死亡が原因で債務が免除となった場合には、被相続人の債務が相続人に継承される前に喪失しますので、相続人に対する所得税は生じません。
また、障がいが理由で残債が免除となった場合においても、その免除益が身体の障がいに起因するため、所得税は発生しないのです。
簡単にいうと、残された家族には税金での負担もないということになります。
団体信用生命保険のデメリット

保険料の総支払額が高い傾向にある
一般的な生命保険に比べると、団信の保険料の総支払額は高くなりがちです。
団信はマイホームのローン残高に応じて保険料が安くなるため、返済すればするほど安くなっていきます。しかし、住宅ローンとして、一般的な生命保険に加入する方が、結果として保険料の支払いは安くなる傾向にあります。
マイホームのローンと、生命保険を別のものでそれぞれ行う場合には、支払総額が計画の範囲内に収まるように試算しておくとよいでしょう。
保障内容が稀薄
団信の最大のデメリットといってもいいでしょう。
一般的な生命保険と比べると、保障内容が薄いことが挙げられます。
最近ではがんや疾病に対する補償もありますが、基本的にはローンの残債を免除するものであるためら病気やけがによる通院や入院、手術などの費用が補償されるわけではありません。どのような基準で、特約などが適用されるのかを確認しておく必要があります。
所得控除が受けられない
団信は所得税での生命保険料控除の対象外となっています。所得の控除が可能な生命保険は、「保険金の受け取りが、本人または配偶者、その他の親族とする生命保険契約等」となっています。
一方で、団信は、保険金の受取人は機構が受取人であり、マイホームのローンの契約者やその家族ではないために、所得税での所得控除分には当てはまらないのです。
加入には健康状態も関係する
団信も一種の生命保険ですので、加入の際には事前に告知しなければならない事柄があります。
病気の既往歴や持病について、さらには服用している薬などです。一般的な生命保険会社のものより審査は厳しくありませんが、場合によっては団信への加入を断られるケースもあります。
ローン途中で内容の見直しができない
団信は、マイホームのローンとセットで加入します。そのため、団信だけを解約することはできません。
同様に、途中からの加入や特約の追加または解除も不可となっています。
ただし、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などには、途中で解約が可能な団信も別途用意されています。保険料が安くなっている分、保障内容も薄くなっています。
うつ病や精神障がいは対象外
通常、団信は、加入後に「うつ病」などの精神疾病にかかってしまったとしても、保障の対象外となると思って間違いないでしょう。
もし、心配なのでしたら、一般的な生命保険会社の「就業不能保障」の、精神疾患も保障の対象となるタイプのものも併用すると安心です。
団体信用生命保険への加入ができなかったら

万が一、通常の団信に加入できなかった場合にも、通常タイプより条件が緩和されている「ワイド団体信用生命保険」などに加入できる可能性があります。
ただし、通常の団信への加入が認められなかった方に対してのものとなりますので、金利の上乗せがあるものがほとんどです。
糖尿病やうつ病、高血圧など、中には肝機能障害や心筋梗塞、脳卒中などの病気になっていたとしても加入できたケースもあり、通常のものより基準が穏やかにはなっているとはいえ、病状などの程度で審査基準に引っかかる可能性があります。
そのため、無制限で加入できるものではありません。
他には、住宅金融支援機構が用意している「フラット35」では、団信に加入しなくてもマイホームのローンを組むことができます。
保障がないということによって、不安は生じますが、借入と保険を分けて考え、保障の面では一般的な生命保険会社で補うといった考え方もできるでしょう。
まとめ
長期のローンを採用してマイホームを購入するのであれば、将来のリスクに備えるために保険の加入を強くおすすめします。
保険に加入せずローンを組んでいて、何事もなく進めばそれで何も問題はありませんが、万が一の際には残された家族に負債まで残してしまうことになります。
一家の大黒柱が居なくなっただけでも大変なことなのに、その上負債まで背負うことになると残された家族の苦労は計り知れません。保険は不測の事態に備えたもので、保険金を受け取るような事態にならないならそれに越したことはありませが、あとから後悔しても時間や大切なものは帰ってはきません。
団体信用生命保険は加入には条件がありますが、付けておける必要な特約は付けての加入をおすすめします。団信はローンの開始時にのみ加入することができるため、後から必要だとなったとしても加入することはできないものです。
しっかりと返済計画の中に保険をしての枠を設けて考えるようにしましょう。