いざマイホームを建てようとなったとき、間取りや大まかなデザインはすぐに希望が出てくるものの、外壁は何色にしよう?というピンポイントなイメージはなかなか出てこないものです。家の外壁は、おおよそ10年に一度のタイミングで塗り替えすることが推奨されているので、いざとなれば塗り替えもできるし…といえども、外壁の色はマイホームの外観の印象を決定づけるものなので、安易に選択してしまうと後悔の元にもなりかねません。
外壁の色選びは、自分の好みだけではなく、家の形やスタイル、コンセプトなどによっても選択肢が変わります。どんな色がいいのか、周りの環境や家のスタイルにあっているのか。悩みは尽きないものです。
そこで今回は、ローラー塗りと吹き付けによる塗装の違いや塗料の性能や色味なども踏まえて、外壁の色選びについてお話します。
家の色や塗装のスタイルをイメージする際の参考になれば幸いです。
外壁塗料の種類
まずはなかなか知ることのない、外壁塗装に使われる「塗料の種類」について見てみましょう。
アクリル塗料

現在では家の塗装にはほとんど使われなくなりましたが、その理由の一つとして耐用年数が影響しています。新築して数年で塗り替えとなると経済的にも計画的にも頭の痛い問題となってくるからです。
ただ、発色は非常に良いため、数年だけもてばいいといった期間限定の建物などには使われることもあります。
そのため、単価面と発色の良さで折り合いがつくのであればおすすめです。
ウレタン塗料
こちらも後述するシリコン塗料との単価の差が縮まってきたので、あまり積極的には選ばれなくなってきましたが、木から金属まで塗る場所を選ばないことから、万能な塗料として今でもDIYなどで人気の塗料となっています。
シリコン塗料

最も一般的な外壁塗装に使われる塗料です。耐用年数もそれなりに長く、取り扱うメーカーや塗装業者が多いことから、単価も安定的に安くなり、迷ったらシリコン塗料といわれるくらいの塗料です。
しかし、近年ではシリコン塗料以上の耐用年数などの費用対効果に優れている塗料が出てきたため、ウレタン塗料と同じく、人気にかげりが出始めてきました。
フッ素塗料
高価で耐用年数も長いことから、一般的にはビルやマンションのように容易に塗装の塗り替えが困難な建物に使用されています。その耐候性と耐用年数の長さから、スカイツリーの塗料にも使われているほどです。
アクリル100パーセント塗料
ピュアアクリルとも呼ばれています。アクリル塗料の不純物を完全に取り除いたもので、フッ素塗料と同等の耐用年数があります。そのほかにも汚れが付着しにくく、弾性に優れているので、クラックへの追従性が高いことから、コンクリートやモルタル壁といった伸縮する下地との相性が抜群です。
外壁塗装の色の特徴
ナチュラル系

ふんわりとした優しさを演出してくれるナチュラル系の色は、親しみやすく、穏やかな印象を与えます。
高級感のある濃い屋根の色にも、ベージュを基調にそれより少しトーンの低い色を二階部分や玄関部分に使用することで、より落ち着きのある暖かな家のイメージになります。
赤系の屋根にはヨーロピアンスタイル
チェコのプラハやクロアチアのドブロヴニクという街の屋根は赤色が有名です。
そういった赤い屋根をした家には、自然色の茶色や濃い土器色、ベージュなどを採用すると相性がいいでしょう。
とても素朴で暖かい印象を与えます。
モスグリーン系の屋根にはアーリーアメリカン
緑系の屋根には、白やオフホワイトを基調とした外壁に、刺し色にはクリーム系や明るめのベージュなどが相性がいいでしょう。
落ち着きのある色をベースにしているので、太陽の光をさんさんと受けている家は暖かさもありつつ、森林の中でくつろいでいるかのようなイメージの配色です。
クラシックスタイル
璃寛茶(りかんちゃ)色(やや緑がかった黄みのある暗い茶色)のような伝統的な色をした屋根には、薄くて明るい白茶色が合います。その白茶色には伝統配色で見られる和紙の伽羅色(茶色がかった暗い黄褐色)で優しくアクセントを入れることにより、深みのある落ち着いた雰囲気となります。
重厚な色の屋根
マットなブラック系の屋根は、落ち着きのあるどっしりとした印象の配色が相性よく映えます。ベースを薄丁字(うすちょうじ)色などでやわらかくすることで、個性的で理知的なイメージを与えます。
屋根がマットなブラック系なので、一階部分には、小豆色や栗色の少し赤みがかったものを選ぶと、より効果的に演出してくれます。
人気色
外壁塗装の人気色について、いくつかのアンケート結果を見てみると、ベージュやグレーなど、汚れが目立たないほか、どの色ともバランスのいいミドルトーンが選ばれている傾向にありました。
そんななかで意外なのは、ホワイトも人気があることです。汚れが目立ってしまうといったデメリットはあるものの、塗料によっては、汚れが付着しにくいものもあり、家全体を白くすることで太陽の熱を効率よく反射して、断熱効果を生み出す効果を期待されているのでしょう。
また、屋根の人気色の中にも、同じ効果を狙ったホワイト系は上位に上がっています。
ローラー塗りとは

ローラー塗りの特徴
ローラー塗りとは、毛やスポンジ状のローラーに塗料をのせ、転がしながら塗っていく手法です。
外壁塗装の主流の工法は、このローラーを使用した塗り替えです。塗料が飛散しにくく、近隣の家との距離が近い住宅事情とマッチしたため、広く普及したともいわれています。
メリット
塗装時に塗料の飛散のリスクが少ない
上記でも触れていますが、ローラー塗装の場合は、周囲に塗料の飛散が少ないことが第一のメリットとして挙げられます。
ムラなく均一に塗ることができる
刷毛塗りに比べると、簡単でムラが出にくく均一に塗ることができるため、塗装の工法の中でも比較的簡単です。
施工時間の短縮効果がある
ローラーの大きさにもよりますが、広い面積を一度に塗ることができ、時間短縮にもつながります。
デメリット
機械での塗装に比べると施工時間がかかる
どうしても吹き付け塗装や、スプレー塗りに比べると、ローラー塗りは時間がかかります。職人の手作業のため、仕方のないことではあります。
仕上げ面に奥行きがない
職人の手作業で塗っていくローラー塗りは、ローラーを外壁に押し当てて塗り進めるため、仕上げ面に凹凸ができにくく、平らな仕上がりになります。そのため、重厚感を出しにくいという欠点があります。
仕上げの種類が少ない
ローラー塗りは美しく仕上げることができますが、ローラーでの仕上げは、均一に塗られてしまうことによって、刷毛での仕上げに比べると仕上げ方のバリエーションは少なくなります。
吹き付け塗装

吹き付け塗装の特徴
吹き付け塗装やスプレー塗装は、スプレーガンという専用の機器に塗料をセットして霧状にした塗料を塗っていく工法で、外壁を一気に塗ることができます。
吹き付け塗装は、仕上げの表面に凸凹があるのが特徴で、仕上げ方にも種類があります。
スタッコ仕上げ
セメントと砂、石灰を水で混ぜたものをスタッコといいます。そのスタッコを塗料に練り込み、吹き付けて塗装する工法です。
特長として、凹凸がはっきりとしていて重厚感があります。手触りとしては比較的なめらかです。
リシン吹き付け仕上げ
リシン吹き付け仕上げは、塗料に骨材と呼ばれる小さく砕いた砕石と砂をセメントや樹脂とともに塗料に練り込み、それを外壁に吹き付ける工法です。
特長として、スタッコ仕上げに比べると塗膜が薄く、ざらざらとした手触りになります。
塗膜が薄い分、浸透性や通気性のある外壁に仕上げられます。
メリット
施工時間が短く費用が安い
スプレーガンで一気に塗っていくため、ローラー塗装のように手作業で塗り進めるものに比べると、スピードが速く、そのため費用も抑えることができます。
凹凸があり立体感が生まれる
スプレーガンにセットできるものであれば、練り込んで塗装もでき、それによって仕上げの表面が立体的になるため、重厚感や高級感が出ます。
デメリット
飛散のリスクがある
機械にセットして広範囲に噴霧するため、塗料の飛散リスクがあります。
そのため、近隣住宅や足場などに飛散し、付着する可能性はゼロではありません。
防止策をしっかりと講じなければなりません。
施工の騒音が大きい
吹き付け塗装に使用するスプレーガンの音が大きいことも、デメリットとして挙げられます。音を抑えた防音のものありますが、完全に無音にはなりません。
長時間使っていたり、近隣に住宅が密集していたりすると、周囲からの苦情につながる恐れがあります。
汚れが目立つ
吹き付け塗装の仕上げ面は、重厚感や高級感がある堂々たる仕上りなりますが、時間が経つと凹凸部分に徐々に汚れやコケなどが溜まり、かえって汚く見えてしまうこともあります。
まとめ
家の印象を大きく決める外壁の色は、屋根の色と合わせるとより効果を発揮します。逆に、屋根を無視した配色にしてしまうと、チープになったり、ちぐはぐになったりしてしまうでしょう。
加えて、ローラー塗りのような手塗りと吹き付け塗装でも、仕上がりに差が出てきます。
外壁の色は同じ色を選択していても、塗装の工法が変わると見え方や与える印象も変わってきます。もちろん配色だけではなく、屋根の形状や、外壁の種類などもすべてが印象の決め手となる要素なので、トータルバランスをよく考えて検討していくといいでしょう。