一般家庭の一軒家の外壁は、塗装の材質やシーリング材の経年劣化と共に、その効力が薄れてしまい、大きなダメージになっていきます。数年単位で塗装をやり直す、あるいは上塗り塗装をしなければどんどん傷んでいくでしょう。
しかし、わかってはいても塗装をするとなると高額な費用を要する外壁塗装。なかなか手が出せないのも現状です。
そこで、各自治体が実施している助成金や補助金といった制度を利用することを視野に入れてはいかがでしょうか。自己負担を大きく抑えることができるので、費用のせいで二の足を踏んでいた方には非常に助けとなるはずです。
今回は一軒家の外壁塗装の際に使える、市町村や各自治体が用意する補助金や助成金制度について詳しく解説していきます。
外壁塗装で助成金・補助金を受け取れる

残念ながら、現在では国が設けている外壁の塗装工事に関する助成金制度はありませんが、市町村や各自治体が設けている制度は利用することができます。
しかしこれについても、期限が切れたものや定員に達してしまって終了したというものもあります。つまり、常に全国の市町村の全てに制度があるわけではない、ということでもあります。この点はしっかり押さえておきましょう。
助成金と補助金の違い
助成金や補助金といった言葉は知っていても、しっかりとした内容・違いについてはあいまいになっていませんか?
大きな意味の中では同じ扱いになっていることが多いのですが、違いを簡単にいうと、それぞれにある受給要件のハードルの高さの差といえるでしょう。
助成金は、国や自治体が提示する給付条件を満たしていれば、申請した方なら誰でも受給できるものとなっています。
一方で、補助金は他者とのコンペ形式(他の応募と比較し審査される)のため、申請数が多ければおのずと倍率も上がります。
ただ、外壁塗装だけでいうと、助成金も補助金も同じ意味で使われるケースの方が多いようです。
外壁塗装の助成金・補助金は各自治体によって異なる
外壁や屋根の塗装が対象の補助金・助成金は、自治体によって要件や内容がさまざまです。ここでは、いくつかの自治体を例にとって、どのような助成金・補助金が存在しているのかを見てみましょう。
東京都足立区
助成金名:エネリフォーム補助金
補助金額:補助対象経費(消費税は除く)の3分の1に相当する工事費の額(1,000円未満切捨て、上限5万円)
利用要件:
・申請者が足立区内に住民登録がある個人であること
・工事の着工前であること(足場をかけた時点で、工事を着工したと判断される)
・同一年度内に、本要綱に基づく補助金の交付を受けていないこと
・補助対象工事を行う種別が、過去5年以内に本要綱に基づく補助金の交付決定の対象となっていないこと
・補助対象経費が5万円(税抜)以上であること
・不動産登記上の一棟の建物単位での申請であること
・申請者に住民税の滞納がないこと
・補助対象工事について、区から他に補助に係る交付決定を受けていないこと
内容:
ガラスの交換…既存のガラスを中央部の熱貫流率が2.33以下であるものに交換工事をすること
窓の交換…既存の窓をガラス中央部の熱貫流率が2.33以下であるもの交換工事をすること
内窓新設…既存の窓の内側に新たにガラス中央部の熱貫流率が2.33以下である窓で設置工事をすること
断熱材の設置工事…熱伝導率が0.041以下である断熱材を設置すること。ただし、天井断熱工事に用いる吹込み断熱材の場合は、R値(熱抵抗値)が2.7以上であること
遮熱塗装…近赤外線領域における日射反射率が50%以上の塗料で塗装工事をすること
問合わせ先:
〒120-8510 足立区中央本町一丁目17番1号
環境部環境政策課管理係
電話番号:03-3880-5935
Eメール:kankyoseisaku@city.adachi.tokyo.jp
東京都狛江市
助成金名:狛江市地球温暖化対策住宅用設備導入助成
補助金額:改修工事費用の4分の1の額(上限20万円。一住宅に対して一回限り)
利用要件:
・市内に住所を有し、かつ居住する方、または、居住する予定の方
・共有者、または所有者がいる住宅に設置する場合、共有者または所有者の同意を得た方
・市税の滞納がない方
・助成対象工事について、市から他の助成金を受給していない方
内容:高反射率塗装
・塗料は蓄熱を抑制する塗料等であって、揮発性有機化合物の含有量が少ないもので、灰色(N6)若しくは類似色の試験体がJISK5602(塗膜の日射反射率の求め方)に基づき測定された結果、日射反射率測定値(近赤外線領域)が50パーセント以上であると第三者機関により証明されていることまたはそれと同等の性能を持つと認められるもの
・屋根面全体を塗装すること
問合わせ先:
〒201-8585 東京都狛江市和泉本町1丁目1-5
環境部環境政策課
狛江市和泉本町一丁目1番5号
電話番号:03-3430-1287
東京都品川区
助成金名:品川区住宅改善工事助成事業
助成金額:工事費用(消費税抜き額)の10パーセント
利用要件:
・品川区民である
・工事対象住宅に居住していること、または改修後に居住すること
・前年所得(所得税法に規定する前年の合計所得金額)が1200万円以下であること
・住民税を滞納していないこと
・工事対象住宅が賃借の場合には工事対象について所有者から承諾を得ていること
内容:遮断性塗装
・屋根、屋上、外壁、ベランダのいずれかに遮断性塗装(原則としてJISで定める試験法に基づき近赤外線領域における日射反射率50パーセント以上)を設置すること
問合わせ先:
住宅課 住宅運営担当
〒140-8715 東京都品川区広町2-1-36
埼玉県川口市
助成金名:川口市住宅リフォーム補助金
助成金額:税込み20万円以上のリフォーム工事を行う場合、工事費用の5パーセント(最大10万円)
利用要件:
・市税を滞納していないこと
・川口市内に住宅を所有し、その住宅に居住していること(2親等以内の親族が所有、または居住している場合も対象)
・これまで川口市住宅リフォーム補助金(旧川口市住宅改修資金を含む)を利用したことがないこと
・リフォームした箇所の立入り検査の立会いに応じられること
内容:
屋根、外壁のふき替え・塗り替え
問合わせ先:
住宅政策課 住宅政策係
〒332-8601 川口市三ツ和1-14-3
048-242-6326
兵庫県明石市
助成金名:明石市住宅リフォーム助成授業
助成金額:助成対象となる工事経費の10%で最高10万円
利用要件:
・明石市内の施工業者を利用すること
・工事費用(税込)20万円以上であること
・2009年から2020年度の間に本制度の助成を受けていないこと
・市税を滞納していないこと
内容:遮熱性塗装工事(屋根・外壁)
・屋根、屋上、外壁、ベランダのいずれかに遮断性塗装(原則としてJISで定める試験法に基づき近赤外線領域における日射反射率50パーセント以上)を設置すること
問合わせ先:
市民生活局 産業政策課
〒673-0883 兵庫県明石市中崎町1丁目5-1
TEL:078-918-5098
助成金や補助金が受給できる外壁塗装の種類と条件

補助金や助成金といった制度を受けるためには、それぞれに要件などがあります。誰でもどんな理由ででも受けられるとは限りません。
前項でいくつか例を挙げたように、各市町村または自治体により違いはありますが、ある程度の外壁塗装に使用される塗料の限定などがあります。
ヒートアイランド対策・遮熱塗料
各市町村における公的支援の対象となる外壁塗装工事の中に、ヒートアイランド対策における助成金があります。
この塗装工事は、屋根や外壁に太陽光を反射しやすい遮熱性の高い塗料を使うことで、屋根や外壁が太陽光によって熱され室内の温度が上昇するといったことを抑える効果があります。
エアコンの使用が軽減されることによってエアコンから室外に排出される熱量も減るため、ヒートアイランド現象の抑制効果が期待されます。
遮熱塗料に含まれる特殊な塗料によって、太陽からの近赤外線を反射し、熱の影響から住宅を守る性能があります。
温度の上昇自体も抑える効果があるため、省エネ対策推進にもなると近年注目を集め始めている塗料なのです。
しかし、遮熱塗料の価格は、一般的なシリコン塗料に比べると約2倍にもなるため、こうした公的援助を活用して工事を行うのが賢い倹約術といえるでしょう。
ちなみに、遮熱効果を最大限に生かすためには、光を反射しやすいホワイト系の色を選ぶことをおすすめします。
エコリフォーム
エコリフォームというのは、エコ基準を満たした特殊な素材を使用した窓や外壁・天井などを用いて断熱改修を施すという、省エネ対策に着目したリフォームをいいます。上述したヒートアイランド対策との項目で重なるものもありますが、こちらはエコジョーズやエコキュートのような高効率給湯器といったものへの交換も支援対象となることなど、省エネ対策全般に適用されます。
助成金や補助金を受け取るための条件
助成金や補助金を受け取るためには、各市町村または自治体によって基準があります。中には年収制限や支給対象の工事と併用しての実費工事を認めないなど、細かいものもあるため、各自治体のホームページなどを確認してみてください。
基本的な項目をいくつか挙げてみます。
・申請地域に居住していること、または転居すること
・リフォーム対象の住宅の所有者または居住者であること
・税金の滞納がないこと
・過去に同様の助成金を受給していないこと
など、ほとんどの方が該当しているのではないでしょうか。
補助金・助成金によく使われる塗料

一部の自治体では、断熱塗料あるいは遮断率の高い塗料の使用を、交付の条件にしているところもあります。どの塗料が対象であり条件を満たしているのかは、各自治体に直接尋ねるのが一番ですが、特に多いのが断熱塗料や遮熱塗料というものです。
断熱塗料・遮熱塗料を使用する場合においては、その塗料の性能が記載された性能結果報告書を作成のうえ、申請段階で提出し、当該の補助金・助成金の支給対象であることを証明しておかなければなりません。
塗料の選択は、大手のメーカーなどが公的に断熱や遮熱といった旨を表示しているものの中から、その対象の塗料を信頼できる塗装業者と相談して選び決定する、という慎重な対応が大切です。
断熱塗料
断熱塗料は、熱の移動を抑える機能を持つ塗料を指します。太陽光エネルギーによって屋根や外壁に当たり、熱エネルギーと変化をしたものが室内へも侵入し室温を上げますが、この断熱塗料は室内への侵入も制御します。
一方で、温めた熱を室外に逃さない働きもあります。夏の室内温度の上昇を抑え、冬の保温効果も期待できるのが断熱塗料の特徴です。
遮熱塗料
遮熱塗料とは、高効率で熱を反射する塗料を指します。通常の塗料だと、太陽光が屋根や外壁にあたることによって熱エネルギーに変化し、屋根や外壁そのものを温めて温度を上昇させてしまいます。
遮断塗料はこの熱伝導のメカニズムに着目して、太陽光を「より多く反射させる」ことで屋根や外壁の温度上昇を抑制します。
3-3 断熱塗料と遮熱塗料の違い
断熱塗料は熱の移動を抑え室内の温度の上昇を防ぐ塗料のため、夏の暑い日などに力を発揮します。
一方で、遮熱塗料は太陽光を反射することで室内への温度上昇を防ぐだけではなく、冬の保温効果もある程度期待できます。
断熱塗料・遮熱塗料のメリット

以上のことから、断熱塗料と遮熱塗料のメリットをまとめてみましょう。
電気代の節約になる
夏のギラギラとした太陽光を高効率で反射することによって、建物内へ侵入する熱エネルギーを抑えることで、エアコンの過度な使用を控えることが可能となり、設定温度を通常よりも上げることができるので、電気代の節約につながります。
環境に配慮できる
上述の通り、エアコンの温度設定をいつもより抑えることで、省エネルギーになり、地球温暖化やヒートアイランド対策にも有効といえます。
屋根・外壁のダメージを抑える
遮熱塗料で塗装した面は、太陽光を高効率で反射することにより、塗装面の過度な温度上昇を抑え、熱や紫外線による屋根や外壁のダメージを防ぐ効果もあります。クラックやチョーキング現象といったものに対しても、効果が期待できます。
1年を通して効果を発揮
断熱塗料に限ったことですが、熱の移動を抑えることで、夏は室内の温度を下げる効果、冬は温かく快適な環境を作る効果、つまり1年を通して活躍してくれます。
断熱塗料・遮熱塗料の注意点

もちろん、外壁に断熱塗料や遮熱塗料を施したとしても、完全にエアコン代をカットできるわけではありません。あくまで太陽光による熱を反射、または伝えにくくすることで、室内の温度の上昇や下降をある程度抑えるものです。
塗装剤だけではなく、素材や色合いによっても温度の上昇率は変化します。特に色については濃い色や深みのある色より、明るめな色の方が反射率は高く、効果は出やすくなるでしょう。
そういった要素も組み合わせて考えていくと、さらなる省エネ効果が発揮できると思われます。
まとめ
外壁塗装に関する助成金や補助金の制度は、今のところ国での制度としては用意されていませんが、市町村や各自治体によっては行っているところもあります。自身のお住いの自治体に、有無を確認するとよいでしょう。
十数年に一度の外壁の塗り替えですが、こういった助成金や補助金を活用して工事を行えば、費用を賢く抑えることができます。そのうえ、断熱塗料や遮熱塗料といったものを利用できれば、その後の環境保全や家計にも優しくなるはずです。