親や親族が亡くなり、その遺産を相続する場合、遺産相続順位というものがあることをご存じですか?
身近な人であれば誰でも遺産を相続できるとはならず、法的に認められた遺言書などがなければ相続順位で決められた法定相続人が遺産を相続します。
- 法定相続人の範囲を知っておくべき理由
- 法定相続人の範囲
- 相続順位で法定相続割合が異なる
- 法定相続割合は変更できる?
身近に相続をするような人がいないと思っている人も、意外な人物の相続をする可能性があるので、相続順位や法定相続人の範囲について解説します。
遺産相続は親族すべてに相続の権利がある?相続の権利を知っておくべき理由
遺産相続というと大財閥の被相続人(故人)が亡くなったことで発生する、血生臭いドラマを思い浮かべる人も多いはずです。
実際に大金が関係する遺産相続の場合、家族間で問題が発生することもありますが、一般家庭ではテレビで見るような、血縁関係同士がいがみ合うような遺産問題は滅多に発生しません。
遺産は家族や身近な親族が受け取る権利があるものだと思っている人も多いですが、すべての人に権利があるわけではありません。
相続順位という順位をもとに遺産を受け取る権利が発生します。
この権利によって相続割合も異なるので、一律に皆同じ金額を遺産として受け取ることはできません。
多少の問題は発生することもあるので、トラブルを未然に防止するためにも相続権利を知っておく必要があります。

相続順位とは
被相続人(故人)との関係によって決められる相続順位ですが、どのような基準できめられるのでしょうか?詳しく解説していきます。
民法で定められた被相続人(故人)の財産を相続できる人
相続順位は民法で定められているものであり、民法の887~890条、900条、907条で決められています。
法定相続人になった場合、法定相続人の範囲になった人に相続権を与えることになっています。
相続人は法廷で決められた順位がある
法定相続人には法律で決められた順位があり、その順位によって受け取れる遺産の額に違いが生まれます。
順位によって変わるので、順位を知っておくことが必要です。

法定相続人の範囲とは
法定相続人の範囲は民法で決められていますが、法定相続人の範囲はどこまでなのでしょうか?図解にて詳しく説明していきましょう。
法定相続人になれるのは配偶者と子ども、両親、兄弟姉妹
法定相続人の範囲は直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹とされています。
血族相続人が基本であり、それ以外の人は法定相続人にはなれません。
配偶者は本来血族ではありませんが、配偶者は必ず相続人となります。
配偶者といっても、法律上の婚姻関係がある妻や夫に限られ、内縁関係の場合には法定相続人には該当しません。
内縁の配偶者の場合、民法上では権利がないということになります。
第1順位 | 子ども(直系卑属) |
第2順位 | 親(直系卑属) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
それ以外の人は法定相続人になれない
いくら親しくしていても、民法上の定義上では、内縁関係の妻や血族・兄弟姉妹ではなければ、法定相続人にはなれません。
血族関係であっても、被相続人から見て孫や兄弟姉妹の子ども(甥や姪)、祖父母は法定相続人になることができないです。
ただし、法定相続人である子ども、親、兄弟姉妹が既にいない場合はその権利が孫や祖父母、甥や姪に変わります。
遺言書があれば法定相続人でなくても相続は可能
しかし、法定相続人よりも効力があるのが「遺言書」です。
相続の方法や対象者は以下の順序によって決められます。
遺言者(被相続人)意思が最優先であり、その後に遺産分割行儀や法定相続分に優先することになります。
- 遺言書
- 遺産分割協議
- 法定相続分
しかし、遺言書があっても無効となった場合、遺言書があっても法定相続分に従って相続をすると皆が合意した場合は、法定相続分による相続が行われます。

相続順位によって法定相続割合が異なる
相続順位が決まることで、法定相続割合が決められています。
法定相続割合ではどのくらい差が生まれるのか紹介します。
配偶者がいる場合
配偶者がいる場合は、配偶者を優先し法定相続分が決定します。
配偶者だけが法定相続人となる場合、配偶者の法定相続分は遺産のすべてです。
子どもや孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹がいる場合では法定相続分の割合が異なります。
法定相続人 | 法定相続人の法定相続分 |
第1順位:直系卑属(子・孫) | 配偶者:1/2 子:(孫)1/2 |
第2順位:直系尊属(父母・祖父母) | 配偶者:2/3 直系尊属:1/3 |
第3順位:兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4 |
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合は、どの順位であっても法定相続人は遺産のすべてを人数分で分割したものが法定相続分となります。
法定相続人の順位に関係がないので、法定相続人であれば同じ条件ということです。
法定相続人 | 法定相続人の法定相続分 |
第1順位:直系卑属(子・孫) | 遺産のすべてを人数分で分割 |
第2順位:直系尊属(父母・祖父母) | 遺産のすべてを人数分で分割 |
第3順位:兄弟姉妹 | 遺産のすべてを人数分で分割 |

法定相続割合を変えることは可能か?
法定相続人で遺産を分割する場合、法定相続割合は絶対的なものなのでしょうか?
法定相続割合を変えることが可能なのか確認していきます。
あくまで法定相続割合は目安である
法定相続割合は、民法で定められている遺産取得分の「目安」であり、必ず法定相続割合で遺産の分割をしなくてはいけないということではありません。
遺言書が1番に優先され、遺産分割協議を行った上で遺産額の決定ができない場合に法定相続割合で決めることになります。
相続人が全員了解すれば割合や額を変更できる
遺産分割協議で話し合いで決められた割合や額を、法定相続人が全員了承すれば、割合や額は変更することが可能です。
たとえば、法定相続人の1人が相続を放棄した場合、放棄を了承し、放棄分を分割することで全員が了承すれば問題はありません。
寄付であったり、全員が放棄することも全員了承すれば問題なく変更ができます。

相続順位と遺言書
遺言書は相続順位よりも優先されますが、すべての遺言書が優先されるのでしょうか?
遺言書について、詳しく説明します。
遺言書は相続順位や法定相続割合より優先される
遺言書は民法では、法定相続順位よりも優先すべきとされています。
遺言書は優先すべきものですが、「留意分」に注意が必要です。
留意分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められている相続できる遺産の最低保証額になります。
留意分は民法で定められているものであり、直系尊属のみが相続人の場合1/2~1/3の留意分を請求することができます。
遺言書を作成する場合、留意分額を計算した上で、遺産配分をする必要があります。
留意分を考えずに遺言書を作成した場合、遺言書で遺産を残した相手が受け取る遺産が減ってしまうことになるので、結果的に遺産を手にできないということもあるので気をつけましょう。
優先される遺言書は遺言書と認められたものだけ
遺言書は被相続人が遺言書として作成すれば、すべて遺言書となるわけではありません。
民法所定の形に従って作成することが条件であり、従っていない場合はすべて無効となります。
無効の場合は、法定相続人と法定相続割合で遺産分与が決められます。
有効となる遺言書は以下の通りとなるので、遺言書を作成したいと考えている人は正しい遺言書を作成しましょう。
- 民法所定の形式で作成
- 公正証書遺言の方式で作成
- 判断力のあるうちに作成
- 弁護士・司法書士などに相談した上で作成
法定相続人以外でも相続人になれるのか
内縁関係の配偶者、直系と那覇習い再婚相手の子ども、これまでお世話になった人、寄付なども含め、法定相続人以外に遺産を残したい人がいる場合は遺言書を作成しましょう。
遺言書を作成することで、相続権を与えることができます。
この場合の遺産分与を「遺贈」と呼び、対象者は被相続人が贈りたいという相手であれば誰もが対象になります。
先にも説明しましたが、遺言書で遺産分与相手を指定しても、法定相続人には相続をする権利があるので、遺留分に配慮した遺言書の作成が必要です。
そして、法定相続人以外の人が遺産分与を受ける場合、遺言書は死亡後に必ず開封できるようにしなくてはいけません。

遺言トラブルを起こさないためにできること
遺言書を作成すると、法定相続人が法定相続分を受け取れない可能性があるので、トラブルが起きてしまうことがあります。
トラブルを防ぐためにも、弁護士や司法書士に相談し、遺言書の作成をしましょう。
遺言書の作成だけではなく、遺言書の保管や遺言執行者に指名をすることができます。
遺言書は自分たちで開封ができず、家庭裁判所での開封「検認」が必要です。
遺言書の開封には客観性や公正性が求められるため、その開封は家庭裁判所で相続人全員の立会いの中で行われるもの、と法律で定められています。
立ち会いに関しては、裁判所に申立をすると家庭裁判所から全員に通知されますが、実際には遠方に住んでいる方など参加できない場合もあり、参加の有無は個人にゆだねられています。
トラブルにならないためには、さまざまな手続きが必要であることを覚えておきましょう。
まとめ:【相続順位】はあくまで法律で決められた優先順位であり、話し合いで相続人を変えることもできる
相続順位と法定相続割合について紹介しました。
法定順位は民法で決められた法律ですが、あくまでも法律で決められた優先順位になります。
民法で決められた遺言書を作成していれば相続割合の変更も可能です。
話し合いによって全員了承すれば、法的相続割合も変更が可能なので、まずは話し合いをすることが必要なことを覚えておきましょう。
