所有する家やマンションの室内などで、不幸な事故や事件があったため「事故物件」となってしまい、どうしたら良いのかわからないと困っている方も多いのではないでしょうか?
「事故物件の土地は、売却することは難しいのですか?」
「更地にしたら、その土地は、「事故物件」ではなくなりますか?」
「事故物件の土地は更地にしたら売りやすくなりますか?」
この疑問を解説します。

事故物件の土地を売却することは、難しいですか?
では、売買に関して、留意するべきことを順に見ていきましょう。
あなたが所有している土地は、本当に「事故物件」に相当するのでしょうか?

事故物件とは、どのような物件のことを言うのでしょうか?
実は、「事故物件」と判断される「出来事」に関しては、国土交通省が策定したガイドラインがありますが、法的に明確に定義されたものはありません。
事故物件に明確な基準は存在ぜず、事故物件かどうかは、買主・借主がどのように感じるかという曖昧なものです。
今回は、「事故物件の土地売却について」と言うことで考えていきますが、土地の場合、「事故物件」として扱われるのは、「土地そのもの」であることよりも、そこにある「建築物」であることが多いと思います。
ここでは、まず、建築物が事故物件と判断される原因を見ていきましょう。
事故物件とは「心理的瑕疵」があるものです。
「心理的瑕疵」(しんりてきかし)?
難しい言葉ですね。
では、「瑕疵」とは何でしょう?
”瑕疵(かし)とは、通常、一般的には備わっているにもかかわらず本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと”
とされています。
簡単に言えば、瑕疵があると言うことは、一般的に、きず・欠点などがあると言うことです。
不動産において、瑕疵と考えられることは、以下の4種類です。
・心理的瑕疵 人が亡くなったことで不安や嫌悪感を抱かせる状態
・物理的瑕疵 雨漏りやシロアリ被害のように物理的な欠陥がある状態
・法的瑕疵 現行の法令等で求められる規制を満たしていない状態
・環境的瑕疵 騒音、異臭などの他、周辺に不快感のある施設がある状態
上記の例の中で、事故物件と考えられる物件は「心理的瑕疵」があるものです。
ごくごく簡単に言ってしまえば、人が亡くなったことで、
「それ、いやだな。」「それを知ったらここには住みたくない。」「それを知ったらこの家(土地)は買いたくない。」
と感じるポイントがあって、それがきちんと解決されていないことです。
実例をあげてみましょう。
・自殺
・他殺
・事故死
・孤独死
基本的に、上記4種類の中でも、事件性のあるものです。
事故死でも、
・転倒して打ち所が悪かった
・階段で足を踏み外し転落した
・浴室で転倒・浴槽内で溺れた
・食事中に喉を詰まらせた
・部屋の気温差でヒートショックが起きた
などは、生活していれば当然に予想されることなので、「事故物件」と判断されることは稀です。
また、孤独死のあった家(部屋)が、すべて事故物件に該当するわけではありません。
その一方で、発見が遅れて死体が腐乱していた場合、ニュースにより事件として大々的に取り上げられた場合などは心理的瑕疵にあたります。
いかがでしょうか?
あなたが所有する土地(建物)が、事故物件と”思われる”条件に該当しますか?
「心理的瑕疵」がある不動産を貸す時、売却する時は、その「瑕疵」を告知する義務があります。

国土交通省にて令和3年10月8日に策定された『人の死の告知に関するガイドライン』によると、このような、いわゆる『事故物件』の告知事項は、賃貸の場合3年間という目安が明示されました。
(ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は除きます。)
その一方、売買の場合、告知義務に期限(時効)は、無いと考えられています。
これは賃貸借契約よりも金額が大きく心理的瑕疵による損害が大きくなるため、と言うことです。
事故物件と判断されれば、その不動産は、「印象が悪くなる=価値が下がる」と言うことは容易に想像が付くと思います。
ならば、いっそ、告知しない方が良いのでは?と、考えてしまうこともあるかもしれません。
現在は、ネット上に様々な情報がアップされています。
実は、「事故物件」に関しても、データベースのように検索できるサイトが存在しています。
そのようなサイトで、「事故物件」であるかどうかの判断がされることもあります。
(サイトの情報に誤りがある可能性がありますが、サイト運営者は誤った情報の削除依頼には対応するとしています。)
売主の告知義務違反は「契約不適合責任(旧民法における「瑕疵担保責任」)」として、民法で定められています。
物件の引き渡し後に、明らかに告知しなければいけないような瑕疵が発覚した場合、となり、買主側の判断により、以下のペナルティを受ける可能性があります。
・売買契約の解除
・代金減額
・損害賠償の支払い
「心理的瑕疵」がある不動産を売却する時は、必ず「瑕疵」を告知するべきです。
更地にしたら、その土地は「事故物件」ではなくなりますか?

事件・事故から年月が過ぎていても、たとえ事件・事故のあった建物自体がなくなっていたとしても、その事件・事故が、付近の住民の記憶に残っているであろうことは否定できません。
それは、土地に心理的欠陥があると判断される可能性があると言うことです。
土地が更地にされたあとに売買が行われ、告知しなかった事例でも、告知義務違反があると認めた裁判例<瑕疵を認めた事例>もありますし、認めなかった裁判例<瑕疵を否定した事例>もあります。
しかし、実際に売買するときに、更地にしても「心理的瑕疵」が消え去ることは無いと考えて「告知義務」もなくなることは無いと判断するのが正しいと言えます。
「事故」が起きた建築物を撤去して、更地にしても、「事故物件」ではなくなることはありません。
事故物件の土地は更地にしたら売りやすくなりますか?
事故物件の土地を更地にして売却するメリット

告知をしなくてはいけない物件でも、更地にしたことで売れやすくなる土地もあります。
それは、コインパーキングや駐車場(住居以外の用途)として活用できる場合などです。
このような、土地の活用であれば「事故物件」である「心理的瑕疵」は大きくないと考えられ、購入を検討してくれる購入希望者も現れやすくなるでしょう。
ただ、これは立地に大きく左右されます。
例えば、
・ 駅前
・ オフィス街
・観光地
・商業地域の近く
・飲食店や美容室等集客施設の近く
・周辺にコインパーキングがない
などです。
これは、「事故物件の土地は更地にしたら売りやすくなる」ことの一例です。
ただ、「事故物件」であることに変わりは無いので、一般的な土地相場より安くなってしまうことは致し方ありません。
事故物件の土地を更地にして売却するデメリット

実は、更地にすることで売却益がマイナスになってしまうことがあります。
まず、更地にするには、当然のことですが、既存の建築物の撤去が必要です。
これには、解体費用がかかります。
建物の規模で金額は大きく変わってきますが、解体には一軒家でも数百万円、大きな建造物であれば数千万円必要になります。
そして、その土地が再建築不可物件である場合があります。
再建築不可物件の土地では、現在建てられている建物を解体して更地にしても、新たに建物を建てることが出来ません。
売る土地が、都市計画区域か準都市計画区域にあるとき、家を建てるには、建築基準法で定められた「幅員4m以上の道路に2m以上接していないといけない」という接道義務があります。
接道義務の条件をクリアしていない土地には家を建てることが出来ません。
最後に、固定資産税の負担が重くなると言うことがあります。
更地の場合は固定資産税の軽減処置を受けることが出来なくなります。
建物が建っている場合、200㎡までの部分では、固定資産税が6分の1に軽減される処置があります。
200㎡を超える部分に関しても3分の1に軽減されます。
なかなか売却できないという状況で、更地にしてしまうと、高い税金を払い続けてしまうことになります。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
「事故物件」の建物、そして土地を売るときのポイントをお伝えしました。
ご参考になれば幸いです。