新居を建てる場合や建て替えを検討している方が、必ずといっていいほど目にする「建ぺい率」。
「建物の広さに関する単語ということはわかるけど、具体的になんの割合かは答えられない」
「家を建てたあとにトラブルが起きないように建ぺい率のことを知っておきたい」
と思っている人も多いはず。 土地は国と自治体によって用途が決められていて、建てられる建築物の種類と大きさに制限があることも意外と知られていない事実です。 そこで今回は、建ぺい率に関する疑問をわかりやすく解説していきたいと思います。
建ぺい率は、自治体による建物の広さの制限に非常に大きく関わってきます。建ぺい率の割り出し方を知れば、制限内でできるだけ広い建物を作ることが可能です。
さらに、特定の条件を満たした土地と建物は、制限が緩和されることもあります。覚えておくと得をするはずなので、ぜひ最後までご覧ください。
建ぺい率とは土地の面積のうち建物の大きさの割合

建ぺい率は「敷地面積に対しての建築面積の割合」のことです。
敷地面積とは「土地の面積を上から見た場合の総面積」のことを指します。上から見た面積(水平投影面積)なので、高低差があったり斜面がある土地では実際よりも面積が狭くなることに注意してください。
建築面積とは「建物を上から見た場合の面積」という意味です。多くの場合で建物は2階よりも1階の方が広いので、建築面積=柱や壁をふくめた1階の面積と覚えるとわかりやすいでしょう。
建ぺい率と容積率は、住宅を建てる場合に行う建築確認申請に必要です。
建築確認申請をした後に増築や改築を行った場合、建ぺい率や容積率が変わってしまい結果として違法建築物になってしまうので注意しましょう。
建ぺい率の求め方

・建ぺい率(%)=(建築面積÷敷地面積)×100
敷地面積が100平方メートルの土地に、60平方メートルの家を建てる場合の建ぺい率は60%です。
建ぺい率が高すぎると、隣り合った建物とのスペースが狭くなるので日当たりが悪くなってしまいます。防災の面から見ると、火事になった場合にとなりに延焼しやすくなるため非常に危険です。
そのため、建築基準法によって建ぺい率の制限を設けることで、適切な建物のスペースと景観を確保するように定められました。
登記簿面積と実測面積の混同に要注意

敷地面積は、登記簿に記されている登記簿面積と実際に測った場合に算出される実測面積の2つがあります。登記簿の情報が古い土地の場合、登記簿面積と実測面積に差があることは珍しくありません。
建築確認申請では、原則として実測面積で建ぺい率を求めますが登記簿面積との差が思わぬトラブルを呼ぶ可能性があります。
特に、土地を担保にした住宅ローンを利用する時に問題が起こりやすく、登記簿面積と実測面積の差があると融資を断わられることがあるのです。
打開策として、登記簿面積を実測面積に合わせる地積更正登記を銀行側から提示される場合があります。
地積更正登記は境界確定測量が必要で、この2つをあわせた費用相場は40万円からと非常に高額です。また、境界確定測量はハウスメーカーの測量ではなく土地家屋調査士に依頼しなければいけません。
昨今ではコンプライアンスの問題もあり、登記簿面積と実測面積の差は軽視できなくなってきました。
心配な方は、住宅を建てる時の測量は土地家屋調査士に依頼しておくと、地積更正登記が必要になった時にスムーズに動けることでしょう。
容積率は土地の面積に対する延べ床面積の割合

ここでは建ぺい率とセットで出てくることが多い容積率についてかんたんに解説します。
容積率とは「敷地面積に対しての延べ面積の割合」のことです。
延べ面積は「柱や壁の中心線で囲まれた各階の総面積」のことを指します。場合によっては「建物面積」と呼ばれることもありますが意味は同じです。
容積率の計算式は、以下のようになっています。
・容積率(%)=(延べ面積÷敷地面積)×100
建ぺい率は用途地域によって上限が決まっている

建ぺい率と容積率は「用途地域」によって上限が定められています。
用途地域とは国や自治体が「Aの地域は商業施設、Bの地域は工業地帯」と、エリアを分けて計画的に街づくりをするために決めたものです。
用途地域は13種類存在しており、建てられる建築物の種類や建ぺい率と容積率の上限が細かく定められています。
ここでは、住宅にかかわる用途地域7種類の紹介を行います。
用途地域 | 建ぺい率上限(%) |
第一種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 |
第二種低層住居専用地域 | 30・40・50・60 |
第一種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 |
第二種中高層住居専用地域 | 30・40・50・60 |
第一種住居地域 | 50・60・80 |
第二種住居地域 | 50・60・80 |
準住居地域 | 50・60・80 |
用途地域の建ぺい率制限は建築基準法第53条によって定められており、ここから各自治体の都市計画にもとづいて上限が決定されます。
建ぺい率の上限が30%までの地域と60%の地域では、大きく印象の異なった街になるでしょう。
建ぺい率の上限が30%や40%と低い地域であれば、建物と建物の間が広くなるので閑静な住宅街が該当します。
反対に上限が80%の地域は、商業施設などがある繁華街が多く利便性の高い街が多いです。
建ぺい率を自分で調べる方法

用途地域と建ぺい率を調べたい場合は市役所の都市計画課などを訪ねるのが一番確実な方法です。
自治体のホームページ上に都市計画図が掲載されている場合もあるため、そこから検索する方法もあります。
販売されている土地であれば、チラシやパンフレットなどに物件情報として掲載されているでしょう。
建ぺい率の制限内で住宅を広くする方法
建物の建ぺい率や容積率は用途地域によって制限されていることがわかりました。
ここからは建ぺい率の制限内で建物の面積をより広くするための方法を紹介します。
このテクニックを知ることで、面積の広い建物の設計が可能になるので、新築や建て替えの際にご活用ください。
バルコニーとひさしは形状によっては建築面積に含まれない

建ぺい率の計算式に出てくる建築面積ですが、バルコニーは形状によっては計算に含まれません。
バルコニーやカーポートが、壁や柱からはみ出している部分が1メートル以下の場合は建築面積の対象外です。もし1メートルよりも突き出ている場合はそこから1メートル後退した部分までが建築面積に含まれます。
ただし、バルコニーの両側に壁があったり柱が立っている場合は、壁や柱の内側部分から建築面積に含まれるので注意してください。
カーポートは建築物として扱われる

建ぺい率を計算する場合、屋根と柱のあるものは建築物として計算に含まれます。
カーポートも建築物として扱われますが、構造によっては建ぺい率の緩和措置という例外にあたり除外されます。
・柱の間隔が2メートル以上
・天井の高さが2.1メートル以上
・外壁のない部分が連続して4メートル以上
・地階を除く階数が1階であること(1階建て)
上記は建築基準法第2条第2号により規定された内容で、この条件を満たしているカーポートであれば建ぺい率の計算には含まれません。
車庫やビルトインガレージの場合は、入り口以外の3方向が外壁に囲まれているため、建ぺい率の緩和条件を満たすことができません。
しかし、建ぺい率の緩和とは別に「車庫やガレージの面積は、延べ床面積5分の1を上限として延べ面積に算入しない」という容積率での緩和があります。
建ぺい率で有利にはなりませんが、容積率に関しては優遇されているため、結果としては住居のスペースを広くすることが可能です。
建ぺい率は2つのパターンで緩和される
建ぺい率は、一定の条件を満たすことで上限が緩和されます。
・2つの道路の角にある敷地(角地)
・「防火地域」「準防火地域」内で耐火建築物などを建てた場合
この条件のうち1つを満たすことにより建ぺい率が10%緩和され、2つ満たすと20%まで緩和することが可能です。
ここからは、この2つのパターンを満たす条件を解説します。
2つの道路の角にある敷地

2つの道路の角にある敷地で、以下の条件を満たした場合は建ぺい率の限度が10%緩和されます。
・敷地が角地にあり、道路がそれぞれ2メートル以上敷地に接している
・敷地を管轄する自治体が定めた「建築基準法施行細則」を満たしている
建築基準法施行細則の内容は自治体によって異なります。今回は東京都中央区の建築基準法施行細則を例に見ていきます。
中央区の場合は「周辺の3分の1以上が道路や公園または川に類するものに隣接」していて、「2つの道路が隅角120度未満で交わる角敷地」が条件です。
参考:東京都建築基準法施行細則
隣接するのが道路だけではなく「公園や川」などに接している場合でも適用されることがわかりました。
公園が民間施設だった場合などで扱いが変わるので、実際に建ぺい率が緩和できるかどうかは自治体に問い合わせた方がよいでしょう。
防火地域・準防火地域による建ぺい率緩和
敷地が防火地域にあり、建物が「耐火建築物」もしくは「耐火建築物と同等の延焼防止機能を有する建築物(延焼防止建築物)」である場合は建ぺい率の上限が10%緩和されます。
また、指定の建ぺい率が80%の敷地であった場合は建ぺい率の制限が無くなります。
防火地域とは、都市計画法で指定された区域になり用途地域とはまた別の区分けです。
駅前や商業施設の密集地のほかに、幹線道路が隣接する土地などが指定されます。火災が発生した場合に火事の延焼を防止したり、消防車などの緊急車両の通行を妨げないように決められました。
耐火建築物は建物の主要部分を耐火素材で構成し、火が燃え広がる速度をできるだけ抑えて倒壊を防止することを目的とした建築物です。コンクリートブロック造などが主ですが、耐火基準を満たした素材であれば木造でも建造が可能です。
準防火地域の場合も、「耐火建築物および延焼防止建築物」または「準耐火建築物または準耐火建築物」の場合は建ぺい率の上限が10%緩和されます。
準防火地域と準耐火建築物は条件が少し緩和されており、防火地位の周辺の延焼を抑えることが目的です。
建ぺい率・容積率をオーバーすると住宅ローンが組むのは難しい

建ぺい率・容積率が用途地域の上限を超えている場合「違法建築物」になってしまいます。
そうなった場合、住宅ローンを組むことが事実上不可能となることに注意しましょう。
違法建築物を不動産業者が取り扱うことはできないため、物件として無価値となってしまうからです。
カーポートを設置したために建ぺい率が上限をオーバーし、住宅ローン融資を受けられなくなったという事例も存在します。
カーポートを設置する場合でも、建築確認申請を行う必要があります。申請時に建ぺい率を超えていないか必ず確認するようにしましょう。
建ぺい率の上限を確認することで上手に住宅を作ることができる
今回は、建ぺい率がどういった計算式で求められるのか、用途地域によって建ぺい率の上限があるか、といったことを解説しました。
家を建てる前に建ぺい率制限を調べることは住宅づくりの基本ともいるでしょう。簡単に調べることができるので必ず確認するようにしてください。
また、建ぺい率の上限内で住宅を広くする方法や上限が緩和される条件も紹介しました。
もし角地や防火地域といった敷地に住宅を建てる場合は緩和の恩恵を受けることが可能です。
これらの知識をうまく活用することで、法律の範囲内で広い住宅を作ることができるでしょう。