アパートの建て替え時期の目安と、必要な費用を紹介します。アパートの建て替えを行うメリットやデメリットも詳しく解説!建て替えで必要になる立ち退きの手順や、立ち退き費用の相場、建て替えの注意点についても紹介しているので、参考にしてください。
アパートの建て替え目安や費用について詳しく解説!

古いアパートを所有している人の中には、物件のリフォームや建て替え時期を悩んでいる人も多いでしょう。親などから引き継いだ物件は、かなりの築年数が経過しており、老朽化が進んでいるものも多いです。
物件の老朽化が進むと、家賃を下げなければ入居者が集まらず、収入が減少してしまうことも考えられます。また、同時に物件の修繕を行う必要があるため、修繕費が必要になります。このような場合に検討したいのが、アパートの建て替えです。
本記事では、アパートの建て替え時期の目安や、メリットやデメリットを解説します。建て替えで必要となる立ち退きの手順も紹介しているので、参考にしてください。

アパート建て替えの流れ
アパート建て替えの具体的な流れ

アパートは、ただ古くなったからといって、むやみに建て替えてはいけません。建て替え後のプランを検証し、工事後にどのような効果を見込めるか、よく考える必要があります。
アパートの建て替えの流れを簡単に説明します。まず、建て替えを決めたら、住民の立ち退きに着手します。
住民の立ち退きが完了したら、更地にしアパートの新築プランを進めていきます。新築プランを進めるまでに、建て替え予算の決定や請負工事会社を決める必要があります。
建て替えプランの検討
アパートの建て替えは、まずはじめに建て替えプランの検討から行いましょう。建て替えには、取り壊し費用や新築費用がかかるため、プランを明確にした上で、作業を始める必要があります。
プランを検討する場合、依頼する業者は初めから1つに絞らず、複数見積もりを依頼しましょう。複数の業者に依頼することで、さまざまなプランを見れるため、建て替えの参考にもなります。
アパートの建て替えを検討する時期の目安
目安①アパートの築年数

アパートの建て替え時期は、築年数を目安に考えましょう。築年数が30年以上経つ物件は、建て替え時期の目安となります。アパートの構造によって耐久年数が異なりますが、木造アパートは22年、鉄骨造アパートは27年が耐久年数といわれています。
そのため、築30年以上が経過したアパートは、ほとんどが耐用年数を満了することになります。一般的にアパートローンは、耐用年数内でしか借りることができません。そのため、築30年以上経った物件は銀行からの借り入れが終了していることがほとんどです。
銀行からの借り入れが終わるタイミングということもあり、築30年以上経ったアパートは建て替えのタイミングとなります。建て替えは、解体費用や新築費用、設計費用などがかかりますが、銀行からの借り入れが終了しているため、オーナーの負担も軽減されます。
目安②アパートの空室状況

空室が5割以上になった場合は、建て替えの検討を始めましょう。しかし、建て替えには住民の立ち退きなどで、立ち退き費用を支払う必要があります。
残っている世帯が多いと、膨大な立ち退き費用が必要となります。そのため、空室状況が8割以上になったら、本格的に建て替えを検討しましょう。
これは、10戸のアパートであれば、入居している世帯が2世帯以下というイメージになります。立ち退きは失敗すると、裁判沙汰になるため、慎重に行う必要があります。
アパートの経営は、借入金額が多い場合、空室状況が4割以下でも経営が難しくなります。そのため、空室状況が4割以下で建て替えを行うと、アパートの経営自体が苦しくなります。また、建て替えには、住民の立ち退きが必須です。
立ち退きには立ち退き交渉が必要となるため、交渉相手が多いと、立ち退きが難航する可能性もあります。建て替えを検討している場合、空室状況が5割になったら無理に入居者を募集する必要はありません。
入居者を募集せず、空室が目立ってきたら建て替えを行いましょう。空室状況が2割になったら、本格的に建て替えを検討する必要があります。
目安③アパートのデザイン

アパートが経って数年経つと、部屋の間取りや外観などのデザインが現在のニーズとマッチしなくなります。入居者は、ライフスタイルによって好みの間取りやデザインが異なります。
20年~30年経つと、周囲の環境や家族構成も異なります。そのため、単身向けのアパートを経営していた場合でも、周囲に核家族が増えた際には、家族向けのマンションに建て替えるだけで、入居者が増える可能性もあります。
特に注目されているのが、室内の洗濯機置き場の有無や洗面台などの水回りです。水回りが古いと、現代の生活に合わずに、入居者が集まりません。
間取りだけでなく、最新設備を導入したアパートは人気があり、多くの入居者が集まります。最新の設備を体験したい人は、家賃が高くても入居を希望します。立地が良い場所にあるアパートは、建て替えの際に最新設備を導入してみましょう。
キッチンやトイレ、風呂などを全面的にリフォームするオーナーも少なくありませんが、大規模なリフォームを行う場合は、建て替えで新築にした方が入居率が上がります。
目安④高額なリフォーム費用がかかる

古くなった物件は入居率が下がり、家賃収入も減少します。入居率を上げたり、賃料を上げるためには、キッチンなどの水回りや間取りを大幅にリフォームする必要があります。また、和室を洋室に変更するなど、現代のニーズに合ったリニューアル工事が必要です。
大規模なリフォームを行うことで賃料を上げられますが、リフォーム費用がかかります。莫大なリフォーム費用がかかる場合は、建て替えを検討しても良いでしょう。
アパートの建て替えを行うメリット
メリット①収入が増える

アパートを建て替えることで、収入が増えるというメリットがあります。一般的にアパートは年数が経つほど、賃料が安くなります。一度、賃料を下げると、賃料を上げることが難しくなります。
アパートの建て替えは、一度更地にしてから建設を行うため、賃貸物件紹介時には新築と表記されます。新築物件や築浅物件を望む人も多く、入居率を上げて、家賃収入を増やせます。
また、同じ立地の場合でも、現在のニーズに合った間取りやデザインにすることで、建て替え前の家賃よりも高めの家賃設定にできます。最近では、収納スペースを重視する人も多いですが、リフォームでは収納スペースを確保することが難しくなります。
建て替えは、部屋の間取りを大幅に変えられるため、ニーズに合った収納スペースやキッチン、浴室などを間取りに取り込めます。建て替えは、デザイン性にこだわった、おしゃれなアパートに建て替えることも可能です。
おしゃれなアパートは、入居者が集まりやすく、従来の賃料よりも高い賃料に設定できます。また、建て替えの際は屋根や設備を耐久年数が長いものにすることで、メンテナンス費用や修繕費も抑えられます。
メリット②災害に強くなる

住居の安全を重視している人も多く、建物の安全性は最優先で考える必要があります。旧耐震基準で建てられた物件は、安全面に不安が生じます。しかし、アパートを建て替えることで、新耐震基準を満たす建物が建てられます。
また、耐火性能に優れた素材を使用することで、火災に強いアパートを作れます。近年、自然災害の被害に合う人も多いため、災害に強い建物は注目されています。
メリット③相続税対策効果が高まる
アパート経営の目的として、相続税対策が挙げられます。老朽化したアパートの建て替えは、相続税対策にも効果的で、相続税を軽減できる可能性もあります。
老朽化が原因でアパートの空室が増えている場合、空室部分は賃貸をしていることにならず、相続税評価額を下げられません。建て替えを行い、空室を埋めることで、相続税評価額を下げて節税につながります。
アパートの建て替えを行うデメリット
デメリット①立ち退き費用が必要

入居者がいる場合、建て替えを行う際に立ち退きしてもらう必要があります。当然、立ち退きを依頼する際は、入居者に対して立ち退きの説明と、立ち退き費用を支払う必要があります。
デメリット②時間がかかる
建て替えとリフォームを悩むオーナーも多いでしょう。しかし、物件の建て替えはリフォームより工期がかかります。もちろん、工事中は家賃収入がないため、収入がなくなります。
デメリット③費用がかかる
アパートの建て替えで、最も大きなデメリットといえるのが、費用がかかるということです。アパートの建て替え費用は、アパートの新築費用だけではなく、立ち退き費用や解体費用がかかります。解体と新築工事を行う業者は基本的には別になるため、業者によって必要な費用が異なります。
建て替えより現状維持する方が良いケースも

かなりの築年数が経過し、老朽化している物件でも現状を維持する方が良いケースもあります。空室がほとんどなく、アパートのローンの支払いが残っている状態での建て替えは不向きです。
空室がない状態とは、確実な家賃収入を見込めるため、経営に不安がないことがほとんどです。そのため、無理に建て替えを進める必要はありません。
また、建て替えには立ち退き費用など、さまざまな費用が発生します。築年数が経っている場合でも、よほど老朽化が進み、深刻な問題ではない限り、建て替えを急ぐ必要はありません。
また、築年数が20年未満の物件は、比較的デザインや設備が新しいものが多いです。そのため、老朽化が進んでいない場合はリフォームによって、新たな入居者を見込める場合があります。
アパートの建て替えにかかる費用と注意点
アパート解体費用

アパートの建て替えを行う際、老朽化したアパートを解体する必要があります。アパートの造りによって、解体費用は異なります。
また、広大な敷地を持つアパートを解体する場合、アパートの敷地内に解体に必要な工事車両の乗り入れが可能となるため、解体費用が安くなることもあります。
一方、狭い道の奥にあるアパートは、警備員や作業員を多く配置する必要があるため、解体費用が高くなります。このように、施工条件によって解体費用が大きなバラつきがあります。
木造アパート
木造アパートの解体費用の目安は、1坪4万~5万円です。床延面積150坪の2階建て木造アパートを取り壊す場合、600万~750万円が必要になります。
鉄骨造アパート
鉄骨造アパートの解体費用の相場は、1坪3万~6万円です。床延面積が100坪の鉄骨造アパートであれば、解体に300万~600万が必要となります。
鉄筋コンクリート造アパート
鉄筋コンクリート造アパートの解体費用の相場は、1坪あたり4万~10万となります。床延面積が100坪のアパートの場合、解体費用は400万~1000万です。
新築工事費用

アパートを更地にしたら、アパートを新築する必要があります。アパートの新築工事に必要な費用は、木造で坪80万円前後、軽量鉄骨造で坪75万円前後、重量鉄骨造で坪90万円前後となります。
建築業界は高齢化にともない、職人が減少しています。人手不足もあり、年々建築費が上昇しており、建築費が下げることが困難になっています。そのため、アパートの建て替えも早ければ早いほど、費用を安く抑えられます。
多くの職人が在籍している会社は、新築工事費用を安く抑えることも可能です。類似したプランでも、会社によって新築工事費用が全く異なります。複数の業者に見積もりを依頼し、新築工事費用を比較してみましょう。
立ち退き費用
アパートの住民は、建て替えが決まったら転居先を探す必要があります。引っ越しには、かなりの労力と費用がかかるため、オーナーは立ち退き費用として、引っ越しに必要となる費用を負担します。
立ち退き費用は、入居者とオーナーの信頼関係によって異なります。良好な関係を築けている場合、立ち退き費用を払わずに、手続きを進められることもあります。
アパートの建て替え費用の注意点

アパートの建て替え費用には、解体費用と立ち退き費用、新築工事費用が必要です。すべての費用を銀行のローンを組んで支払う予定のオーナーも多いでしょう。
しかし、解体費用と立ち退き費用は、銀行から融資を受けることができません。そのため、解体費用と立ち退き費用は、オーナーの貯蓄から捻出する必要があります。
100坪の木造アパートで3世帯が残っていた場合、解体費用として400万、立ち退き費用で150万円が必要になります。合計で550万円の現金が必要となるため、オーナーにとっては負担になります。
立ち退き費用は残っている世帯数が多ければ多いほど必要となるため、空室状況を把握する必要があります。建物の規模は変えられないため、解体費用を抑えることは難しくなります。
そのため、物件の建て替えにかかる費用を抑えたい場合は、立ち退き費用を抑えることがポイントです。融資の受けられない解体費用と立ち退き費用は、コストをかけないように注意しておきましょう。
アパートの建て替えで必要になる立ち退きの手順
手順①立ち退きの説明

アパートの建て替えが決定したら、住民に立ち退きの説明を行います。まず、決定した段階で、書面にて立ち退きの経緯や、おおよその時期を説明します。書面の作成は弁護士にも依頼可能で、作成した書面はポストに投函しましょう。
書面だけでは、立ち退きに納得しない住民も少なくありません。そのため、書面で立ち退きについて伝えた後、口頭で立ち退きの時期などの説明を行いましょう。
手順②立ち退き料の交渉

説明会で住民の納得を得られる場合もありますが、住民の納得を得られない場合は、住民との立ち退き料の交渉が必要です。立ち退き費用を支払わずに済むケースもありますが、ほとんどのケースで立ち退き費用を支払うことになります。
立ち退きの理由に納得していない住民も、立ち退き費用の額を増やすことで納得してもらえることもあります。
立ち退き料の相場
住民に支払う立ち退き費用は、決まった額やルールはありません。しかし、住民から納得を得られる金額を提示することが必要です。
立ち退き費用は、家賃の6ヵ月分、または、40万円~80万円が相場と言われています。しかし、入居者との交渉がスムーズに進めば、相場よりも安い費用で済むこともあります。
特に、入居者が家賃を滞納していたり、建物の老朽化が著しい場合は、立ち退き費用を安く抑えられます。
一般的に、立ち退き交渉は長引けば長引くほど、オーナーに負担がかかります。長く居座ることで、立ち退き費用を吊り上げようとする入居者もいるため、オーナーと入居者の信頼関係を築いておく必要があります。
手順③退去手続き

すべての住民が立ち退きに納得したら、住民の退去手続きを行います。住民に転居先を紹介するケースもあります。
立ち退きをスムーズにするポイント
アパートの立ち退きは、オーナー都合で行われるため、立ち退き費用を支払ってもスムーズに交渉が進まないこともあります。立ち退きをスムーズに行うためには、立ち退きの理由や時期を明確にする必要があります。
オーナー都合で行われる立ち退きは、入居者にとっては納得しづらいものです。耐震基準の関係で立ち退きを行う場合は、入居者も損害を被る可能性があることを、しっかりと説明しましょう。
また、転居先の情報を提供することも効果的です。入居者が立ち退きを言い渡された時に、転居先の問題が発生します。老朽化が原因で建て替えを行うアパートは、家賃が低く設定されているケースがほとんどです。
そのため、同等の家賃のアパートを探す必要があります。転居先問題を解決するためには、建て替え時期が決まったら、早急に不動産会社などで転居先となるアパートを探しましょう。
所有する物件がある場合は、その物件を紹介したり、知り合いのアパートのオーナーに相談するのもおすすめです。
また、立ち退き時期が決定したら、立ち退き期間を設けましょう。入居者にとって、短期間で退去準備を行うことはストレスになります。立ち退き期間が1年あると、入居者はゆっくりと次の物件を探したり、準備を行えます。
引っ越しは大変な労力がかかるため、立ち退きが決まったら、早い段階で書面での説明と住民への説明会を行いましょう。
立ち退きの注意点

立ち退き交渉がうまくいかず、オーナーと住民の間でトラブルが発生するケースもあります。立ち退き交渉でトラブルが発生した場合は、早めに弁護士や専門家に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、法的なアドバイスを受けることも可能です。また、弁護士が仲介に入ることで、スムーズに交渉が進むこともあります。
また、トラブルを未然に防ぐために、住民との交渉記録を残しておきましょう。立ち退き費用を多く支払うことで解決するケースもありますが、住民が納得しない場合は、最終的には裁判に発展します。
アパートの建て替え目安や費用を覚えておこう!
アパートの建て替え時期の目安や、建て替えを行うメリットやデメリットを詳しく解説しました。アパートの建て替え時期は、築年数や空室状況、物件のデザインが目安です。
建て替えには、立ち退き交渉や退去手続きなど、さまざまな手続きが必要になります。アパートの建て替え時期の目安や費用を抑えて、物件の建て替えを行いましょう。

