マイホームの外観は、外壁や庭に加えて、屋根の形や素材、色によって大きく印象が変わってくるため、屋根の形状や屋根材の種類の選択というのは、マイホームの設計においてとても重要です。
そのため、今回は外観の印象を大きく変える屋根のカタチについて重点的にお話していきます。デザインやコンセプトに沿って造り込むことによって失敗のない好みのマイホームにすることができるでしょう。
屋根の形状の種類
切妻屋根
切妻屋根は、二枚の平面で作るとてもシンプルな屋根の形状です。そのため、絶妙なバランスでオシャレかそうでないかが分かれてしまう難しさがあります。
屋根のこう配がきついと、より三角屋根がダイナミックになり、特徴的なデザインとなります。そのため、屋根の色や素材と、外壁などを合わせるのは、非常に難易度が上がってしまいます。
屋根が大きい分、赤や緑のような濃い色の配色を選び、外壁は落ち着いた色にすると、屋根のダイナミックさが損なわれず表現できるいい組み合わせとなるでしょう。
屋根の素材も厚みや曲線のある粘土瓦のようなものにすると、より重厚感が増して屋根を強調できます。
屋根部分にドーマーなどを設けると、採光に一役買うだけでなく、家のアクセントにもなり、また違った印象を与えてくれるでしょう。
採光だけの用途であれば、天窓を設置することでも補えます。
天窓やドーマーによっては、デザイン的に幅が広がり、どこにでもある家ではなく、しっかりと好みのコンセプトを主張できるはずです。
寄棟屋根
寄棟屋根は、世界中で見られる一般的な屋根の形状です。切妻屋根と違い、4面で構成されていて、2面が三角形で残りの2面は台形となっています。
その形状から、重厚感と安定感がバランスよく感じられ、とても落ち着きのある雰囲気の外観となります。
大きく張り出した軒先と屋根の素材はシャープなものの方が相性もよく、色も濃い目のものがよく似合います。
せっかくなので、大きく伸びた軒先の裏には一般的な白い板を使うのではなく、木目をしっかりと出したウッド系の素材を使用することでアクセントをつけて、屋根を演出するのもよいでしょう。
外壁材には、一部分に石のブロックなどを使用すると重厚感が増して、より安心感や落ち着いた雰囲気が作れます。
さらに安定感を出すのであれば、いくつもの寄棟屋根で形成された屋根を作るのではなく、間取りもシンプルにして大きな寄棟屋根の方が、より効果的に演出できます。
招き屋根
招き屋根とは、切妻屋根(三角屋根)の辺の一方が長く、もう一片を短く、2面の屋根部分の連結に段差がある形状の屋根です。
屋根裏にスペースを確保でき、採光が取りやすく、それでいてモダン。そんな招き屋根にはバラエティー豊かなスレート系の屋根材などが合うでしょう。屋根の形状が個性的なので下手に重厚な屋根にしなくても、存在感があります。
加えて、屋根の大きな面ができることから、方角にもよりますが、太陽光パネルを設置するのにも好条件となります。
モダンかつシンプルな造りをしているので、雨漏りやメンテナンスにも十分配慮した機能面と、デザイン面をも兼ね備えた、次世代の屋根といえるでしょう。

家のテイストによる屋根のデザイン
屋根のデザインは、コンセプトやテイストなどに沿って、トータルでコーディネートするのがよいでしょう。
もちろん一つの部分を主張させて目立たせるやり方もありますが、家のコーディネートは前者の方がバランスもよくなります。そこで、屋根や外壁、玄関、庭などの組み合わせでテイストを重ねていき、好みの家にしていきます。
古くからある家の様式などを紹介します。
アメリカ様式
アメリカ住宅の歴史の始まりは、開拓初期の頃。イギリスをはじめとするヨーロッパ各地からの移民がアメリカに渡り、自分たちの国の文化や各地の住宅様式をそのままアメリカで建築し、徐々にさまざまな文化が融合したのがアメリカ様式の特徴ともいえます。
特にヨーロッパ建築の伝統的な要素を取り込み、独自のカラーとしてアメリカの文化ができあがりました。
コロニアル様式
植民初期にイギリス移民が建築したのが、このコロニアル様式の原型となっています。
外壁は木造の下見板張り、イギリスの漁村で網小屋として使われていた小屋の様式に似ているといわれています。コロニアル様式はアーリーアメリカンともいいます。
明るくさわやかなイメージのデザインになるため、窓枠の色と屋根の色を合わせるなどすると、そのさわやかさがぐっと増してきます。
ジョージア様式
17世紀のイギリスの建造物がルーツになっている家の様式で、アメリカでは特に南部の農村で発達し、富裕層のステータスとして愛されました。
家の特徴としては、箱型の左右対称の形をしていて、総レンガ張りの外壁に屋根はグレーや黒の暗い色合いでいかにも重々しく重厚感のある点です。
窓にはアクセントとして、白い窓枠を施していることもあります。

南欧プロヴァンス風
イタリアや、フランス南部、スペインポルトガルなど、地中海や大西洋に面した温暖な環境に建設された家をイメージした作りです。
切妻屋根にはオレンジや黄色、赤の洋瓦との相性がよく、瓦自体はスパニッシュ瓦やS瓦といった曲線のあるものが選ばれます。少し色の違う瓦を無作為に並べるのも、味が出ていい表情になるでしょう。
また、外壁は白の漆喰が基本となりますが、色はオフホワイトやイエロー、薄いピンクなどもかわいいかもしれません。
南欧の家のほとんどが、屋根は暖かみのある色で、外壁は白か淡い暖色系となっています。
伝統的な北欧風
スウェーデンのような北欧にある伝統的な木造住宅は、深い赤色と白のコンビネーションが特徴です。この赤い塗料は16世紀から今なお続く伝統的な外壁の色で、鉱山業が盛んだったスウェーデンのダーナラ地方の鉱山で採取した顔料です。
木材の強度や防腐効果を上げるために、酸化第二鉄を主成分とした顔料を木材に塗り込むことで、深い赤の家が多いそうです。
雪深い北欧では、外壁には赤い木材を使用し、大きな三角の切妻屋根やマンサード屋根と呼ばれる切妻屋根の二段折れしているものに、ドーマーがあるのが特徴です。
マンサード屋根は北欧だけではなく、北海道でも牧草地の納屋で見かける少し変わった形状の屋根です。
リゾート風
リゾート地にでも居るような開放感いっぱいの、くつろぎ空間が広がるヴィラスタイル
個別の一軒家の宿泊施設などにもヴィラといった名前が使われていますが、上流階級のカントリーハウスを意味し、古代ローマが起源だとされています。
中世頃から次第に現代のような形に代わっていき、ゆったりとした一軒家を意味するものにもなっています。

屋根の色選びのポイント
新築にしても、塗り替えにしても、屋根の色選びは大きな決断となります。色選びに失敗してしまったら、せっかくのマイホームも台無しになってしまいます。
まわりの家との調和を無視し、家単体のテイスト、あるいはコンセプトなどに合わせた色を選択することで、自分の家だけ目立ってしまったり、妙にバランスがおかしくなったりということもあるでしょう。
そうならないためにも、色の持つ印象や特徴などを知っておきましょう。
塗装業者と打ち合わせをしている際に、いくつかサンプルを見せてもらうことがありますが、家造りに対してのコンセプトがあればしっかりと伝えておきましょう。
塗装業者は一番無難で失敗のしにくい色や塗料を用意することが多いからです。
グレー系やブラウン系
こちらはオーソドックスな色ですが、色で迷っているのであれば選択肢のひとつとしておくといいでしょう。
無難だからこそ人気があります。大抵の外壁や家にも馴染む色合いだから、というのも大きいのでしょう。
白やアイボリーといったホワイト系の外壁にも、黄色やベージュといった暖色系の外壁にも、程よく馴染むため、迷ってしまったらグレー系かブラウン系はおすすめです。
このような理由から、グレー系の色は新築にもよく使われています。加えて色の濃いものは熱を吸収しやすく、白は太陽光を反射しすぎるため、その中間になるグレーが選ばれる、という事情もあります。特に白系は汚れやカビ、コケなども目立ってしまうため、機能性の面でも中間のグレーを選ぶ人が多いのも納得ができます。
ブラウン系は外壁との調和がとりやすく、長期的に大きな支持を得ています。屋根の存在感を抑えることで外壁のデザインを引き出すことができる色だといえるでしょう。

外壁との相性
グレー系やブラウン系はオーソドックスで馴染みやすいとお話しましたが、外壁と馴染まないのであれば、避けるべきではあります。
相性が良いということは言いかえると、馴染む色同士にするということでもあります。
たとえば、水色とピンクでは同じ系統の色ではありませんが、2つともトーンは同じであるため、馴染む色同士といえるのです。
対して、原色同士になってしまうと、馴染むどころか目がチカチカしてしまい、相性が悪いえといえます。外壁との色のバランスは、このあたりにも注意したいですね。
庭や塀・駐車場とのバランス
家の周りには、通常たくさんのもの(エクステリア)があります。それらとのバランスも考えることが必要です。
たとえば、アルミ製のモダンで背の高い塀がある家には、色鮮やかな色合いは避け、落ち着きのある色を選択すると、失敗するリスクは少なくなるでしょう。
反対に、塀がなくオープンなイメージの家の屋根には、少々奇抜な色合いの屋根でもかえってかわいらしく、全体のイメージもまとまりやすくなります。
植木などで木々が多い家には、思い切って屋根も緑系にすると馴染みやすく、統一感も出て全体のバランスもよくなります。
赤い花や実がなるのであれば、ブラウンや赤系の屋根の色もよいでしょう。
周辺の家との調和
周囲の街並みに調和して溶け込むような色にすると、景観を損なわないものとなります。一軒だけ奇抜な原色などにしてしまうと、塗りたてはとても鮮やかできれいですが、時間と共に色あせが出てしまい、逆に悪目立ちしてしまう可能性もあります。
そして、場合によっては近隣とのトラブルに発展してしまう恐れもあります。
景観地区なら、形態意匠の制限もありますので、さらに注意しましょう。

まとめ
家のテイストやコンセプトは、日本では平安時代から、世界では古代ローマ時代から、存在していました。古い歴史の中で風土や環境も変わり、現代に受け継がれてきたのです。
家の印象を決めるのは屋根だけではありません。外壁や扉なども含めた家全体で表現することで、好みのスタイルに近づいていきます。
ただ、屋根はイメージ付けとしては大きな要素のひとつであることは間違いありません。屋根の方向性がある程度のコンセプトに沿っていかなければ、好みとはかけ離れてしまいます。屋根選び、屋根の色選びは慎重に行いましょう。
屋根の素材も、地域性や特徴を押さえつつ、理想に近づけるように選ぶことによって、マイホームへの愛着もより増していくことなるはずです。