現代人は、睡眠をおろそかにしすぎといわれています。睡眠時間がどんどん短くなり、しかも時間の長ささえ確保できればいいかというとそういうわけでもなく、睡眠の質も軽視されてしまっています。
睡眠が満足できないものだと、体にも心にもさまざまな支障をきたします。毎日たくさんの時間を「費やす」睡眠だからこそ、最高に気持ちの良い、快適なものにしたいですよね。
今回は「質の良い睡眠を得るために」という点にポイントを置き、寝室をどのように調えたらいいかということをじっくり解説していきます。できることから始めて、今夜からさっそくぐっすりと満足のいく睡眠時間にしましょう。
睡眠の大切さ
健康を維持するための要素はさまざまありますが、そのなかでも「睡眠の質の高さ」はトップクラスの必須事項といえるでしょう。それも「量より質」がものを言う最たるものです。
睡眠時間は足りているはずなのに、朝起きたときに疲れが抜けていない、体調がすぐれない、ということはないでしょうか。
睡眠は、単に体と脳を休息させるためだけのものではありません。記憶の定着を助け、ホルモンバランスを調整し、免疫力を上げて病気への抵抗力をつける、といった働きもある非常に重要なものです。そのためには、睡眠は量だけではなく質も重視しなければならないのです。
睡眠の質には、環境の影響も大きいといわれています。寝つきが良く、中途覚醒しないような環境を作り、そのなかで眠ることが大事なのです。
では睡眠の質を上げるためには、具体的にどのように環境を整えたらいいのでしょうか。
寝室の重要性
人間は1日の約3分の1を睡眠時間に充てています。つまり、人生の3分の1は眠っているといっても過言ではないのです。
それは言い換えると、寝室は人生の3分の1を過ごす場所です。ここが快適でないと、当然良い睡眠は得られないのです。
寝室は「寝るための場所」ということを重視し、快適な睡眠が得られる部屋であることに全力を注ぐのが望ましいのです。ついデスクやパソコンも置いて仕事もできる部屋にしてしまったり、テレビを置いてくつろぐスペースにしてしまったりしがちですが、部屋数の許す限りそれは避けたいところです。
また、逆に「寝るだけなら間取りやレイアウトにそんなに気を配る必要もないだろう」という考えも禁物です。リラックスできる空間を作るためにも、細かいところまで気を配る必要があるのです。
次項からは、五感で感じるあらゆる要素を快適な睡眠につなげるためにどう工夫したらいいか、ということを順に見ていきましょう。

間取り・レイアウト
寝室は、7帖以上の広さがあるのが理想といわれています。家具は極力配置しないといっても、ベッドの大きさや最低限の家具(サイドテーブルなど)の配置、人が通れる通路の確保、窓や収納などが干渉しないスペース、といったものを総合的に考えると、やはり最低でも7帖の広さはほしいところです。
寝室の場所も大事です。朝日が自然に入り込むことを考えると、理想は東向きの部屋がいいでしょう。南向き・西向きは冬は暖かいですが夏は暑すぎになりがちであり、北向きは夏涼しくても冬は寒いからです。
また、トイレや浴室・台所の水音など生活音が響かない場所であればなおよしといえます。
ベッドの位置は、できるだけ部屋の真ん中あたり、スペースの広さがベッドの両脇で左右対称となるのがよいでしょう。頭側を壁につけ、足側には背の高い家具を置かないようにします。こうすることで精神的にも安定し、圧迫感を感じません。
また、窓から入ってくるひんやりとした外気を睡眠中に浴びないように、窓際も避けた方がよいでしょう。
さらに可能であれば、ドアを開けてすぐ正面にベッドがあるような配置にしないことです。ドアから誰かが入ってくるのではないか、となんとなく落ち着かない気分になる恐れがあるからです。
内装・色
寝室の内装は、落ち着いた雰囲気の色合いにしましょう。原色では覚醒が促されてしまうため、中間色を選ぶと間違いありません。ベージュやオフホワイト、またブラウン系がおすすめです。リラックス効果のあるグリーンやブルーもよいでしょう。
家具
寝室には極力ものは置かない、というのが大原則です。ごちゃごちゃとものが多いと、視覚から入ってくるたくさんの情報で脳が休まらないからです。
とはいえ、ベッド脇に置くサイドテーブルや間接照明など、最低限のものは置いてもよいでしょう。その際も、シンプルなものが望ましいといえます。
逆に置かない方がいいものの代表が、テレビです。寝る直前まで視聴していると脳が情報処理のために働き続けてしまい、スムーズな入眠が妨げられます。加えて、ブルーライトも目を冴えさせてしまう原因となってしまいます。
また、無意識に置いてしまっている鏡も要注意。寝そべっている自分の姿が目に入るのは、落ち着かない気分になるものです。また、夜中にトイレなどで目を覚ましたときに自分の姿が映って驚くこともあるでしょう。鏡は寝室に置くとしても、睡眠時には目に入らないようにするのがよいでしょう。
照明
就寝時間が近づいてくると分泌が増える「メラトニン」というホルモンは、睡眠を促すはたらきを持っています。
このメラトニンは、あまりにも周囲が明るすぎると分泌が減ってしまうので、明るすぎる照明は脳が覚醒して眠気を吹き飛ばしてしまう原因になります。
スムーズに入眠するためには、寝る1時間前には青みの強い寒色系の強い照明を避け、赤みの強い暖色系の間接照明に切り替えることをおすすめします。ホッとリラックスして、眠気が誘われます。
また、眠るときにあまりにも真っ暗だと、感覚刺激が少なすぎて不安感や緊張感が高まってしまい、逆に覚醒を促してしまうこともあります。無音であればなおさらです。そのような場合は、周囲のものがぼんやりと見える程度の明るさがあるように調整しましょう。

音
睡眠時、周囲の音の大きさは、40dBA以下が理想とされていて、それ以上になると睡眠の妨げになったり覚醒を促してしまったりする恐れが出てきます。40dBAとは、図書館や風に吹かれる木の発する音程度の大きさなので、相当静かであることがわかりますね。
生活音や窓の外からの騒音を防ぐためには、家具の配置を工夫したり、厚めのカーテンにしたりといった方法を取りましょう。
また、個人差もあるため、時計の針の音などかなり小さい音でも気になる人はなるでしょう。アナログ時計をデジタル時計に換えるなどの工夫をしておくとよいですね。
リラックスする音楽を入眠時に流すのは良いですが、眠りについてしまってからもずっと音が鳴っていると脳が休まらないため、タイマーなどで切れるようにしておきましょう。テレビやラジオをかけっぱなしにして眠るのも同様なので、禁物です。
温度・湿度管理
夏は暑くて寝苦しく、冬は寒くて手足が冷えて眠れない…室温も睡眠の質のためには大事な要素です。
最適な寝室の温度は、夏は25~28度、冬は15~20度くらいが目安です。湿度は季節問わず50〜60%が理想で、寝床の中の温度は30度前後、湿度は50%前後が快適といわれています。
眠くなるときというのは、体温の落差が関係しています。手足の末端に血液を流して血液の温度を下げて、それを体中に循環させることで体温自体も下げるため、眠るときには体温が1度くらい下がります。それが眠気を誘うのです。
スムーズな入眠のためには、入浴でしっかりと深部体温を上げ、入眠時にタイミングよく深部体温を下げることが推奨されているのは、このためです。
また、これは夏に寝苦しい原因にも関係があります。暑くて湿度が高い夏は、深部体温を下げようとして手足に血液を流し体温を下げるために汗を出しても、湿気が多いためにその汗が水蒸気になってくれません。いつまでも皮膚に汗がとどまってしまい、効果的に体温を下げられないので、入眠が妨げられてしまうのです。
気温も湿度も、快適な睡眠のために適した状態に保っておきましょう。
さらに、寝室は清潔にしておき、窓を開けるなどして1日1回は換気をして新鮮な空気を取り入れることも大事です。冷気や暖気が部分的にこもらないように、静音タイプのサーキュレーターを使うのもいいですね。

香り
視覚・聴覚のほかにも、嗅覚による安眠効果もぜひ導入してみましょう。アロマオイルを取り入れるなら、脳を休ませて眠りを誘うラベンダー、脳をリセットさせてくれるといわれるスイートオレンジ、筋肉のこわばりをほぐして身体を癒してくれるというカモミールなどがおすすめです。
アロマを焚く際には、キャンドルではなく電気式のディフューザーがよいでしょう。火災の心配がないので、そのまま安心して眠りにつけます。
また、睡眠前にコーヒーを嗜むことはカフェインの効果で覚醒を促してしまうため、おすすめできませんが、香りだけ楽しむなら効果的なものがあるといわれています。グアテマラやブルーマウンテンの香りには安眠効果が期待できるといわれているのです。ただしブラジルサントスやマンデリンは香りだけでも目が冴えてしまうので、要注意です。
寝具・服装
寝具の選択も気が抜けません。高価なものはたしかに寝心地が良いものが多いとはいえますが、もっとも重要なのは「自分の身体に合っているか」「自分自身の寝心地が良いか」です。
枕は後頭部が安定し、首筋にぴったりフィットするものを選びます。合わないものを使うと、なかなか寝つけないだけでなく、起きたときに肩こりなどを引き起こしてしまいます。
マットレスは、体が沈んでしまうくらい柔らかすぎると腰痛の原因になるため、こちらも自分に合った硬さのものを選びましょう。体圧分散と寝姿勢の維持ができることが大事です。
掛け布団は適度に軽く、寝返りのしやすいものを。敷布団やシーツは通気性や吸湿性が高く、汗を吸い取ってくれるものがよいでしょう。
季節によって寝具を使い分けるのであれば、夏には放熱性の高いもの、冬には保温性の高いものに交換するようにしましょう。
また、寝具のカバーをこまめに洗ったり、寝具を干したりということもこまめにすることで、快適性が維持できます。
寝間着の選び方も妥協しないでください。不必要な装飾がなく、通気性が良くて体を締めつけないものを選びます。腕や足首がゆったりしていると寝返りも打ちやすくなります。

まとめ
質の良い睡眠を得るためには、さまざまな要素が絡み合っているということがわかりましたね。朝のすっきりとした目覚めには、何事にもかえがたい気持ち良さがあるものです。どうせ毎日寝るのですから、最高な睡眠時間を得たいものですね。
できることからひとつずつ、ぜひ試してみて、快適な寝室を手に入れてください。