湿度が高いと、不快に感じる要素が多くなります。単に身体的な感覚だけでなく、暮らしに悪影響を与える現象も起きてくるからです。
特に湿度の高い季節だけではなく、お住いの地域や住宅の環境によっても湿気に悩まされている方は多いのではないでしょうか。
ここでは特に、湿度が高いことによって悩まされる2つの現象「生乾き臭」と「カビの発生」について、その原因や防止策を解説していきます。
生乾き臭
きれいに洗濯して、汚れもにおいも取れたはずなのに、その洗濯物からなんともいえない嫌なにおいがする…いわゆる「生乾き臭」です。特に梅雨の時期や、普段外干ししているものをたまに部屋干しすると、感じやすいものですよね。
この生乾き臭には、湿度が密接に関係しています。原因や対策をそれぞれ見ていきましょう。
生乾き臭の原因
嫌なにおいの原因は、一言でいうと「雑菌」です。それも特別なものではなく、空気中や人の体、衣服などいたるところに普段から存在している菌であり、また菌そのものはにおいを発するわけでもありません。においの原因となる要素が重なることで、あの嫌な生乾き臭が発生するのです。
まずは、菌のえさとなるもの。これは洗濯で取り切れなかった皮脂汚れや、洗剤の残りカスなどが該当します。
加えて、水分。さらに、時間です。洗濯物が乾くまで時間がかかることで、衣服についていた菌が爆発的に増殖します。そして菌の活動によって生み出される代謝物(要するに排泄物)が、嫌なにおいを発するのです。
湿度が高いと、洗濯物の水分はなかなか抜けていかず、乾くまで時間がかかります。そうすると、菌がどんどん増殖してしまい、においがし始めてしまうというわけなのですね。
菌が増殖し始めるのは、湿度60%以上、気温20〜30度、においを発し始めるのは5時間程度が経過してからといわれています。菌の増殖を抑える、においを発し始めるまでに乾かす、これがポイントとなってくるでしょう。

生乾きを撃退するには
つまり、「梅雨だから生乾きになる」「部屋干しだから生乾きになる」というふうに、それらの要因が直結するわけではないのです。梅雨の時期は湿度が高いから、部屋干しは太陽に当たらずなかなか乾かないから、たしかに生乾きにはなりやすいのですが、では湿度を下げてやったり、風通しをよくしてやったり、菌の栄養となるものが残らないような洗い方をしたりということで、生乾きは防ぐことができるのです。
逆にたとえ外干しであっても、汚れの洗い残しがあったり、干し方が悪くて洗濯物が密集してしまって、乾くまで時間がかかったりすると、生乾きになり得るということでもあります。
生乾きにしない!~干し方のポイント~
風通しをよくする
外干しで洗濯物がカラッと乾くのは、太陽のおかげもありますが、実は「風通しがよい」というのも大きなポイントとなっています。
そのため、部屋干しする際には各洗濯物の間に適度な間隔をあけて密集しないようにし、空気の通り道を作りましょう。さらにサーキュレーターや扇風機で直接風を当てるのも大きな効果があります。
干し方そのものにも工夫をします。たとえばフード付きの服は、フードの中部分が乾きにくいため、逆さにして干したり、専用のハンガーを使ったりします。
厚手の服は、2本のハンガーを服の内側に入れ、空洞ができるようにかけることで、風通しがよくなるでしょう。同様に、ズボンも筒状に干せば乾きが速くなります。
縫い目やポケットがたくさんあるような衣服は、裏返しにして干すという方法もあります。
専用のハンガーや洗濯バサミも売られていますが、家にあるものでも工夫するだけで、洗濯物にあたる空気の面積を増やすことは可能です。
湿度を下げる
湿度が高いと衣服が乾くまで時間がかかるため、生乾き臭のもととなることは、前述した通りです。湿ったままの状態が長く続くことが問題であるため、洗濯したあとの洗濯物を干さずにそのまま放置しておくことも、やってはいけません。すぐに干せない事情がある場合は、脱水の前、すすぎの最中に洗濯機を一時停止しておくとよいでしょう。
湿度を下げるもっとも効果的な手段は、除湿機を使うことです。湿気は部屋の下に溜まるので、除湿器は干した洗濯物の下部に置くのがおすすめです。近年は除湿機とサーキュレーターがひとつになっているような製品もあり、除湿しながら乾いた風をあててくれるため、より速く洗濯物の乾燥が期待できます。
除湿機がない場合は、干した洗濯物の下に新聞紙を置くのも効果的です。新聞紙は湿気をよく吸い取ってくれるため、置いておくだけでかなり湿度は変わってくるでしょう。
干す部屋・場所を工夫する
室内に干すなら、意外な適所は浴室です。湿度が高いイメージのある空間ですが、居室よりも狭いため、換気扇を回していると広い部屋よりも湿度が下がりやすいのです。浴室乾燥機がついていればなおよしです。積極的に活用しましょう。
浴室が難しいなら、家の中でもできるだけ面積の小さい部屋に干すとよいでしょう。狭い部屋は湿度も温度もコントロールしやすく、洗濯物を干すには適しているのです。また、前述したように湿気は下に溜まりやすいので、なるべく高いところに干すようにします。

生乾きにしない!~洗い方のポイント~
浴槽の残り湯は洗いのときのみ
節水のため、浴槽の残り湯を洗濯に使っている方は多いでしょうが、残り湯は温度も高く、人の皮脂もたくさん浮いているため、翌日にはすでに雑菌がたくさん繁殖している状態です。
できれば残り湯洗濯は避けるか、するとしても洗いのときのみにし、すすぎはきれいな水で行うことを推奨します。
洗濯洗剤の選び方を工夫する
近年は「部屋干し用洗濯洗剤」という商品が多く出ています。抗菌成分がほかのものよりも多く、生乾き臭が発しにくい製品なので、積極的に取り入れるとよいでしょう。
ただし、部屋干し用洗剤も万能ではありません。洗剤だけ変えてもにおわないとは限らないため、ほかのにおい防止策と併用していきましょう。
洗剤は適量を守る
洗剤は、たくさん入れればいいというものではありません。むしろ入れすぎてしまうと溶け切らず、衣服に残りカスがつき、菌の栄養分となってしまいます。洗剤の投入量は、製品の使用説明に書かれている適量を守るようにしましょう。
冷たい水ではなくお湯で洗濯する
雑菌のエサとなる皮脂汚れは、水ではなくお湯で洗うことでかなり落ちやすくなります。40〜60度が望ましいですが、ぬるま湯でも冷たい水よりは効果が上がるので、おすすめです。

生乾きにしない!〜その他のポイント〜
洗濯機を清潔にする
洗濯機というのは、カビが生えやすく菌が繁殖しやすい環境になりがちです。手入れを怠ると内部の見えない部分にも汚れが広がっていき、せっかくきれいにするために洗濯をしているのに逆効果、ということにもなりかねません。
まずは、洗濯槽も洗浄することを習慣にしましょう。専用の洗剤が売っていますし、洗濯機の機種によっては「槽洗浄」というモードがあります。それを利用して、定期的な洗浄を心がけましょう。
また、洗濯機は使うたび、終了後フタを開けておきましょう。閉めてしまうと内部に湿気が溜まり、やはりカビや菌の絶好の住処となってしまいます。
汚れた洗濯物を長時間放置しない
数日おき、あるいは週末にしか洗濯をしない、という場合、汚れた状態の洗濯物が長時間放置されることになります。そうすると、洗濯前にはすでに衣服に菌が増殖した状態になりやすく、洗濯中に拡散してしまったり、洗っても菌が落ちなかったり、という恐れが出てきます。
できるだけこまめに洗濯するのがベストですが、難しい場合は汚れの部分だけ手洗いしておいたり、通気性のよいランドリーボックスなどに洗濯物を入れておいたりするとよいでしょう。また、手洗いして濡れたもの、初めから濡れているものは、洗濯前であってもハンガーにかけて軽く干しておきます。乾いたものと濡れているものを分けておくのもポイントです。
また、前項の「洗濯機を清潔に保つ」という観点からも、汚れものを長時間洗濯槽のなかに入れっぱなしにしておく、というのはもっともやるべきではありません。洗濯槽の中にも菌が増殖してしまいます。
どうしてもにおいが取れないときは
嫌なにおいがするから、もう一度洗い直してみたけれど、やっぱりにおう。におわなくなったから着てみると、汗をかいたらまたにおう…このようなことも起きることがあります。
これは、一度増殖した菌は洗濯しても全滅せず、残ってしまっているからです。そして、また増殖する…この嫌なループにはまってしまったときは、以下のような方法を試してみてください。
酸素系漂白剤を使う
シミ抜きには塩素系漂白剤を使うこともありますが、衣服へのダメージも大きく、特にデリケートな素材には使ってはいけません。
においを消すには、漂白剤のなかでもマイルドな酸素系がおすすめです。洗剤と一緒に投入して洗濯すればオーケーというタイプのものが、手軽でよいでしょう。頑固なにおいは、ぬるま湯に酸素系漂白剤を溶かし、洗濯前にそこに浸け置きしておけば、ほとんどのにおいはなくなるはずです。
アイロンをかける
脱水したあとすぐ、もしくは半乾きくらいの状態で、アイロンをかけてみましょう。熱で菌が死滅することが期待できます。
もちろん、アイロンをかけられない素材の衣服には使えない方法なので、対象をよく選んで行いましょう。
煮洗いをする
「熱で殺菌する」という意味合いでは、アイロンと同様の効果を得られるのが、煮洗いです。沸騰したお湯を張った鍋ににおいの取れない衣服を入れて、さっと一煮立ちさせたらすぐに取り出して、その後普段通り洗濯します。
煮洗いは昔ながらのやり方ですが、現在でも十分効果的な方法です。ただし、衣服の素材には十分気をつけなければなりません。

カビ
じめじめした季節や空間では、カビも気になるもののひとつです。生乾き臭は(不快ではありますが)まだ直接体に害はないものの、カビはダイレクトに人体に悪く作用するため、日常から防止に努めるとともに、繁殖の兆候が少しでも見られたら即対応策を取らなければなりません。
カビの原因
カビも生乾き臭のもととなる雑菌同様、「湿度(70%以上)」「温度(20〜30度)」「エサとなるもの(ホコリや食べカス、人の髪の毛や皮脂など)」がそろうと、活発に増殖します。
近年の家屋は断熱性を上げるために気密性が非常に高く設計されているため、空気の循環があまりなく、湿気がこもりがちです。そのため、意識して換気を行わないと、昔の家よりもはるかにカビが生えやすい環境となってしまうのです。
カビは、人の目に見える状態になっているときには、すでにコロニー化して相当増殖していると思っていいでしょう。普段から胞子が空気中に漂っているものが姿を現しているのは、かなり危険度が高い状態です。すぐに除去、そして再発防止の策を取りましょう。
カビの防止ポイント
生乾き臭同様、カビの発生を防止するには「空気の循環」「養分となるものの除去」「湿度のコントロール」が大事です。細かく見ていきましょう。
カビ防止のポイントその1〜空気の流れをよくする〜
前述した通り、空気がこもると湿気もたまり、カビが繁殖しやすい環境になります。
2003年以降に建てられた建築物には「24時間換気システム」の設置が義務付けられているため、気密性が高くても常にある程度空気は入れ替わっていますが、それより前の建築物では意識した換気が重要になります。こまめに窓を開けたり、収納スペースにはモノをぎゅうぎゅうに押し込まず隙間を作ったり、閉め切った空間を作らないようにするとよいでしょう。
また、押し入れにはすのこを敷く、家具は壁から少し離して設置する、など壁や床・天井との間にもしっかり隙間を作り、空気の通り道を作りましょう。
カビ防止のポイントその2〜しっかり掃除をする〜
ポイントその1が空気の流れに関するものなら、その2はカビの栄養分に関するものです。
こちらも前述した通り、カビはホコリや人間の髪の毛などを養分として繁殖するため、掃除をして空間を清潔に保っておくことが、防止策のひとつとなります。
特に浴室は、湿度も高く、人の髪や皮脂が溜まりやすい場所です。家の中でもっともカビをよく見かけるのが浴室であるのは、カビの繁殖の条件が多くそろっているからです。使い終わったら、少し熱めのシャワーで浴室全体を洗い流し、その後冷たい水を再度かけましょう。
浴室の扉はできれば開放し、換気扇や浴室乾燥機を作動させ、あるのであれば窓も開けておくとさらによいですね。
カビ防止のポイントその3~湿気を溜めない~
空気の流れをよくしようと換気を徹底しても、外気の湿度が高ければ窓を開けてもその湿気が室内に流れ込んできてしまいます。
そのため外も内も湿度が高い季節は、除湿機も利用するのが最善です。ただし除湿機の使用は室温の上昇にもつながるので、換気やエアコンの使用も併せ、湿度と温度の両方を調節して快適な環境にしていきましょう。

まとめ
湿気は害ばかりのように思えてしまいますが、乾燥しすぎももちろん害になります。適度な湿度を保つことで、快適な環境を整え、健康な生活ができるといえます。湿度の高い時期でもうまくつきあっていけるよう、ここで紹介した方法をいろいろ試してみてくださいね。