毎日の生活を送るために、当然欠かせない「住まい」ですが、居住性とともにその「資産価値」というものを考えたことはあるでしょうか?
普段の生活では、なかなか見つめ直す機会はないものですよね。
そこで今回は、少々おカタイこの「資産価値」というテーマについて考えていきましょう。
資産価値が重視されるのはなぜか

いつまでも賃貸住宅に住み続けるのではなく、持ち家を購入しようと考える人の多くは、「持ち家であれば資産として残るから」ということを理由にしています。
そこで重要になるのが「資産価値」という考え方です。
資産価値とは何か
価値観は人それぞれであるように、どのような点に注目して不動産の価値が高いと感じるかは、その人の考え方によるところが大きいでしょう。
とはいえ、一般的に不動産の資産価値とは、財産としての評価額や市場での取引価格、つまり「売却するときにどのくらいの値段で売れるか」という経済的価値のことを指します。建物の資産価値と土地の資産価値のふたつの要素があり、それぞれの計算式で算出することができます。
また、一戸建てとマンションを比較すると、一戸建ての場合は「土地の価値」の方がその資産価値に占める割合が大きく、反対にマンションは「建物の価値」の方が資産価値に占める割合が高くなります。
不動産の価値を左右する基本要素

需要と供給
まず基本的に、不動産であっても不動産以外のほとんどのものと同様、需要と供給のバランスでその価格は決まります。
需要が多い、つまり人気が高い、その物件を欲しがる人が多くいる、という場合には不動産の価格は上がりやすくなります。
供給が少ない、つまり欲しがる人よりも存在する不動産自体が少ない、希少性が高いという場合も同様に、価格は上がりやすくなります。
逆に価格が下がりやすくなるのは、需要が少ない、つまり人気があまりない、住みたいと思う人が少ない場合。同様に供給が多い、つまり希望者に対して売り出し物件数が多い、といった場合です。
この需要と供給のバランスが、大前提となります。
これはさまざまな要素にも大きく絡んでいて、たとえば間取りであれば、ファミリー層が多く住んでいる地域であれば3~4LDKの需要が大きくなり価値も上がりますが、独身世帯が多い地域であればそこまでの間取りを必要とする人が少ない、つまり需要が少ないため、価値は下がってしまうといえます。
建築時期にも関連性が出てきます。新興住宅街として同時期に一戸建て住宅が大量に新築された地域や、一気にマンションが建った街では、数十年後同じような時期に売りに出す人がたくさん出てきて、市場に似た物件が供給過多の状態で出回り、価格競争になってしまうという事態も考えられるのです。
利便性
その不動産の立地の良さは、資産価値に大きく影響します。交通アクセスが良くて、商業施設が充実し、医療体制や教育機関が整っていて治安が良い、など生活に便利な立地の不動産は資産価値が高い傾向があります。
周辺環境も大きく影響するため、火葬場や産業廃棄物処理場などの嫌悪施設と呼ばれるようなものが近くにあると、資産価値は低めになってしまいます。
また、特にマンションにおいてはブランドとして確立されているような人気エリアに建つものは資産価値が下がりづらく、売却の際にも需要が高いことが多くなっています。
物件のグレード
建物自体の価値は、後述するように経年劣化によってどんどん下がってしまいますが、築年数だけではなく構造やデザインも資産価値には影響が大きい要素です。最新の耐震性や防火性を備えていて、「長期優良住宅」のようなものに認定されている家は、多少築年数を重ねていても需要があると見込まれるため、資産価値は高めとなります。
ごく一般的であり、流行などに惑わされないデザインの建物であるということも重要です。個性的すぎる住居は、建てた住人の趣向が反映されすぎていて他の人には使いづらいということも多く、需要は多いとはいえません。購入希望者が限られてしまうため、資産価値は上がりづらくなります。
土地の広さや形状

土地の資産価値の評価基準には、単純に「面積が大きいと評価も高い」というわけではない点に注意が必要です。
というのも、たとえばマンションに適した土地であれば面積が広いと価値は高くなりますが、一戸建てに適した土地であれば広すぎる土地は逆に価値が低くなってしまうのです。
また、「需要と供給」のお話とも重なりますが、周辺の一般的な土地の広さがどれくらいかという点にも左右されます。たとえば、都市部であれば20~30坪の土地が一般的であるため、そこに100坪の土地があったとしても購入希望者は限られてしまうので、価値は低くなります。
逆に、郊外で周辺は100坪の土地が当たり前というところに20坪の土地を持っていたとしても、これまた価値は低くなってしまうのです。
さらに、土地の形状も価値の高低を左右します。正方形に近い形、接道面の長い長方形のような整形地は資産価値が高いのですが、旗竿地や接道面が狭い土地・デッドスペースの多い不整形地であれば価値は低くなります。
敷地内に高低差があるような土地も、階段を作るなどコストが高くなってしまうため、敬遠されがちになり、やはり資産価値は低めになります。
災害リスク
近年は大規模な地震や台風が多いため、自然災害のリスクが多いか少ないかということも資産価値に大きく影響を与えるようになりました。
すでに被害のあった地域はもちろんのこと、今後も沿岸部や川のそばなどは資産価値が下がっていく可能性があります。
管理やメンテナンス状況
特にマンションで重要視されるのが、管理体制の良好さやメンテナンス状況です。日々の管理はもちろんのこと、定期的な修繕が行われているか、管理費や修繕管理費は十分にストックされて適切に使われているか、といった点もポイントになります。
資産価値の算出方法

建物の場合
「建物は20年経てばほとんどタダ」といわれるのを聞いたことがありませんか。
建物の資産価値を決める要素としては、立地の利便性やデザイン・管理状態が挙げられますが、土地と違って建物は経年による劣化があるため、減価償却の概念が影響します。築年数が進めば進むほど、資産価値はそれに比例してどんどん下がっていってしまうのです。
法定耐用年数という、資産の寿命の目安を表示するものがあり、それが22年とされている木造建築物の場合は、要するに新築から22年経った時点で税法上での資産価値はゼロになるということです。
土地の場合
土地の価値にも基準があり、それが「路線価」です。不動産の土地が接している道路には、地価公示価格をもとにそれぞれ価額が設定されており、土地の面積とこの路線価を掛け合わせて土地評価額を計算するもので、課税時に使われます。
路線価は国税庁のホームページで見ることができるので、そこから不動産が接している道路の路線価を確認しましょう。土地の資産価値は、路線価を用いて次のような計算式で算出できます。
資産価格=路線価×敷地面積×補正率
補正率とは、土地の高低差や形状などの優劣を行政機関が評価して定める数値です。
この数式で、土地の資産価値の目安を知ることができます。
資産価値の具体的な算出方法
実際に資産価値を算出するときに用いられる方法には、以下のような種類の計算式があります。不動産の種類や資産価値算出の目的によって、どれを用いるかに違いが出ます。
原価法
資産価値を算出したい建物を、もし解体して新築し直すとしたら、どのくらいの費用がかかるか、ということを逆算して数字を出す方法です。
取引事例比較法
名称から推察できる通り、過去に類似した条件の不動産に対してどのくらいの売買価格がついたかということを参考にする方法です。主に、中古住宅売買の際の査定時に不動産会社が用います。
収益還元法
その物件が将来生み出せる利益を元に、資産価値を算出する方法です。「直接還元法」と「DCF法」の2つがあり、主に投資物件の資産価値を査定する際に用います。
資産価値の下がらない不動産を選ぶコツ
一戸建ての場合

どのような一戸建てであれば、資産価値は下がりにくいのか。前述した資産価値の基準となる項目を参照してまとめてみましょう。
まず、一戸建ての場合は新築から20年以上経つと建物の資産価値はほぼゼロになるため、価値が上下しにくい土地を選ぶことがカギとなります。
また、建物の価値が下がりきってしまうと、今度はその解体費用がかかるため、建物が建ったままだと価値はさらにマイナスになる可能性も出ます。したがって、売る前に解体して更地にしてしまった方が売却しやすくなり、資産価値が上がるということもあるのです。
一戸建てを建てるうえで資産価値の下がりにくい土地が持つ特徴は、「立地が良くて利便性が高い」「人気エリアにある」「土地の形状が使いやすい」「周辺に空き地が少ない(需要がきちんとあるということを示している)」「同じ時期に建てられた一戸建てがあまりない」「災害リスクが少ない」「希少性が高い(角地であるなど)」などということにまとめられるでしょう。
マンションの場合
こちらも、資産価値を左右する要素の項を参照してまとめると、マンションの建物全体としては「立地が良くて利便性が高い」「人気エリアにある」「管理状況が良好である」「共用設備が充実している」などの要素を持つものは人気が高く、重要も大きいため、資産価値は高くなるといえます。
部屋個別で見ると「日当たりや眺望・風通しが良い」「最上階角部屋など希少性が高い」といった部屋は、やはり購入希望者も多く、価値は下がりにくくなります。
今後注意したい、資産価値維持のポイント

「人気エリア」の定義が変化する?
「利便性が高い人気エリア」に建つ物件は、資産価値が下がりにくいというお話をしてきましたが、今後はこの「人気エリア」は、単なるブランド価値ではなく「充実した行政サービスが敷かれているエリア」という意味合いが高くなるかもしれません。
少子高齢化が進み、地方では都市部へ若者が移住してしまわないように、また別の地域から移住して来てもらえるように、サービスの向上に力を入れるところが増えてきました。
そのようなエリアは、今後人気が高まり、つまりは資産価値の維持も期待できる地域になっていく可能性があるといえます。
こういったことから、家を得る地域を選ぶ際には、物件自体のことだけでなく、その街や自治体についてもあらかじめしっかりと情報を集めておくのがよいでしょう。
人口の推移や行政サービスの内容、都市計画、再開発の予定などを知っておくことで、今後その地域は発展していくのか、衰退していくのか、ある程度読めるのではないでしょうか。
不動産価格の情報もあらかじめ得ておく
この地域に住みたい、という希望が出てきたら、不動産価格についても公示地価・基準地価などで確認してみましょう。取引事例などもインターネットで情報を集めることができます。
近年地価が暴落していたり、逆に高騰していたりという場合には、必ず何かしらの理由があるはずです。一時のものではなく、長期的なデータも知っておくことで役に立つはずです。
まとめ
不動産の資産価値を決める要素にはどのようなものがあるか、価値を下げないためにはどうしたらいいかということを見てきました。
しかし、大事なことは「資産価値だけが住まいのすべてではない」ということです。「快適で住み心地の良い家=資産価値が必ずしも高いというわけではない」のは、言い換えれば「資産価値が高い家が必ずしも住みやすい家ではない」からです。
売却の際に資産価値がどうなっているかよりも、住んでいる間の居住性の方が重要、という方ももちろんいるでしょう。
大切なのはバランスです。資産価値だけにとらわれず、自分にとってもっともよい住まいの形を探したいですね。