タワーマンション(略してタワマン)というと、「高級である」「富裕層が住んでいる」「景色が良い」などのイメージがあり、総じて「資産価値が高く、売却時は高値で売れる」と思われているかもしれませんね。
しかし、タワマンは歴史がそこまで長くないので、売却の前例もあまりありません。そのため、売却するときには他の不動産にはない注意事項がいくつかあるのです。
今回はタワマンの売却を考えた際に、どのような部屋であれば高く売却できるのか、高く売れる時期はあるのか、などということを挙げながら、売却のコツを解説していきます。
タワーマンション(タワマン)とは

どんなマンションをタワーマンションと呼ぶかということに明確な定義はありませんが、一般的には高さが60m以上、階層は20階以上存在する超高層マンションを指すことが多いようです。
タワマンは、高層階と低層階で部屋の価格に大きく差があるため、両者を比較すると住民の層が違うということも珍しくありません。「タワマンというと富裕層が住んでいる」というイメージは、一部は正しいけれど必ずしもそうではない、といえるのです。
タワマンは管理体制が整っており、共有施設も充実していて、なかには駅に直結しているという抜群の便利さを持ち、さらに高層階は眺望も良くて非常に資産価値が高そうだというイメージもあります。しかしだからといって実は必ずしも売却時に高値がつくとは限りません。
タワマンは高く売れるとは限らない?
タワマンが登場したのはごく最近のことであり、本格的な大規模修繕などを経験したものが少ないということもあって、さまざまな問題を抱えている可能性があるといわれています。
超高層であるがゆえに足場を組むのが難しく、大規模修繕の難易度が非常に高くなり、その分修繕積立費が高額になる傾向があるのです。しかし修繕ができなければ老朽化は進みます。
また、タワマンともなると居住用だけでなく投資用目的で所有している人もいます。特に所有者に外国人が多い場合は、大規模修繕に関する考え方がなかなか足並みそろわず、進まないということも考えられるのです
超高層マンションだからこそメンテナンスはしっかり行うべきですが、それができないかもしれないという不安があれば、購入を控える人も出てくるでしょう。
このように、なかなか先が読めない要素が多いタワマンは、売れば必ず高値がつく、という保証がどこにもないのです。だからこそ、売却のタイミングはよく見極めなければなりません。
タワマン売却を考えるときってどんな節目?

タワマンの売却は、ライフステージの節目において考える人が大半です。たとえばどんなときに検討するのでしょうか。
子どもが成長してきて
タワマンは外見こそ巨大で、高層階は室内からの眺望の良さも際立ちますが、一戸ずつの間取りはそこまで大きなものではないことが多く、子どもが成長して個室が欲しい年ごろになってくると手狭に感じることが出てきます。
そのようなときに、タワマンを売却してもう少し広い物件に移ろうという希望が出てくる可能性があります。
高齢化してきて
歳を取ることで、地に足をつけて生活したい、と望む人が多くなることも事実です。高層マンションは何かと高齢者にとって不便な部分が多いものなので、不都合を感じ始めたら売却・引越しを考えるタイミングかもしれません。
災害に不安を感じたら
近年は大きな地震や風雨災害が多く、高層階に住んでいると停電時にエレベーターが止まるなどで不安や危険を感じることもあるでしょう。
さらにタワマンは高さがあるため、揺れ自体も大きく感じます。
災害リスクに対する心配が自分にとって大きな不安につながるのであれば、思い切ってタワマンは手放した方がいい場合もあります。
高く売れるタイミングとは?

築年数
物件は、新しいほうが高値で売れる傾向にあるのはある程度当然ですが、タワマンもその例に漏れません。築浅であればあるほど高く売却でき、特に築5年以内であれば場合によっては新築とさほど変わらない値段がつくこともしばしばです。
所有期間
不動産は、その所有期間によって譲渡所得税という税金の税率に変化があります。
所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得の税率が適用され、所得税は30.63%、住民税は9%、合計39.63%となります。
一方、所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得の税率が適用され、(5年超)所得税が15.315%、住民税が5%、合計20.315%となります。
実に2倍近くも税率に差が出ることがわかりますね。税額を少しでも抑えたいのであれば、所有期間が5年を超えてからの売却がおすすめといえます。
ただし「5年超」といっても、マンションを購入したその日から5年経過した日以降ではなく、マンションを売却した年の1月1日の時点で5年を超えていなければならない、という計算方法であるため、注意が必要です。
大規模修繕工事の実行前
前項で少し触れましたが、タワマンでも修繕工事は行われます。工事後は、修繕積立金が高く設定し直されることが多く、買主が見つかりづらくなる恐れがあります。
修繕工事は12~15年周期で行われることが多いため、この数字を目安にして、工事前に売却できるようにタイミングを合わせられるとよいですね。
再開発のあと
再開発が行われてタワマンのある地域の利便性が向上すると、周辺地区一帯の資産価値が全体的に上がります。そのため、再開発計画が挙がっているのであれば、それが完了してからの売却の方が、高値がつくことを期待できます。
タワマン売却を考えたら、まずは周辺地帯に再開発計画がないかどうかを確認してみましょう。
実は中古のタワマンは売れにくい?

タワマン売却のタイミングについてお話してきましたが、実は中古のタワマンはそもそも売れにくいといわれています。それはなぜなのでしょうか。
価格が高い
タワマンは、同じ間取りであっても一般的なマンションと比べて価格が高い傾向があります。そのため、タワマンを選ぶのはある程度の資金がある人に限られてきます。
しかし、ある程度の資金がある人は、中古ではなく新築を選ぶという傾向にもあります。「どうせ買うなら中古よりも新築」ということですね。だから中古のタワマンの需要は多いとはいえないのです。
需要が少なければ、買主もなかなか見つかりません。中古タワマンが売れにくいといわれる大きな理由はそこなのです。
大規模修繕工事に対する不安が残る
前述したように、タワマンの大規模修繕工事は難易度が高いと思われており、その分工事にかかる費用も高額になります。
修繕工事には住人からの修繕積立金が充てられますが、万が一足りなかった場合は、住人が一時金として負担するなどの方法が取られることになります。
このように、タワマンの大規模修繕工事に関しては不透明な点が多いため、買主が躊躇してしまうポイントとなってしまうのです。
タワマンの弱点が見えてきている
近年は大規模な自然災害が多く、停電などによりエレベーターやトイレが使えなくなるなど、タワマンでも被害がたくさん報告されています。高層階でエレベーターが動かない。水が出ないということがあると、大変不安になります。このようにタワマンの懸念されていた弱点が露呈してきて、買い控えにつながっているともいえるでしょう。
特に売れにくいタワマンの特徴とは
低層階の部屋である
タワマンには「眺望の良さ」を求める人が多く、低層階のタワマンならもっと低価格の一般的なマンションを選んでしまう、という傾向が大きくなります。そのため、低層階の部屋は高層階の部屋より資産価値も低くなってしまいます。
利便性が悪い
眺望の良さとともに、タワマンに求めるものの上位に来る要素といえば「利便性の良さ」です。駅から直結している、商業施設がすぐそばに集まっている、という利便性の良さがなければ、タワマンに価値を感じない人も多いのです。
タワマンの価格の高さは「時間を買っているから」という感覚でいる人にとっては、利便性が良くないタワマンを買いたい気持ちにはならないでしょう。
どんなマンションでも立地は大事ですが、タワマンでは特にその傾向が強いといえます。
日当たりが良くない
タワマンは入っている戸数が多いため、ある程度の高層階でも日当たりが良くない部屋というのは存在します。タワマンにはやはり「日当たりが良いもの」というイメージも強いため、方角や階層で日当たりが悪い部屋にはなかなか買い手がつかないでしょう。
学校の生徒が定員数に達している
同時期にタワマンが一気に建ったような地域では、引っ越してきた住人の数も多く、そこに通う小中学校の生徒が増して定員数を超えることもしばしばです。
すでに定員オーバーで最寄りの学校に通わせられないと、離れた地区の学校に交通機関で通学する必要が出てくるため、ファミリー層からは人気が落ちてしまいます。
高額売却が期待できるタワマンの特徴

利便性が良い
前項のちょうど裏返しだといえることですが、タワマンには利便性を求める人が大多数であるため、駅から近ければ近いほど高値で売れる可能性は高くなります。
特に駅から「徒歩5分以内」という条件の威力は絶大で、たかが1分の違いが大きく明暗を分けることもあるほどです。
駅からさほど近くなくても、商業施設などが充実し、生活が便利であればその物件も高額になりやすいといえます。
眺望の良い部屋である
高層階で眺望が良いという他にも、海が見える・展望価値の高いものが見えるという方角も大事です。ビルや工場などの景色ばかり見えるような部屋は、やはり人気の面で劣ってしまいます。
中層階以上の部屋である
タワマンには眺望の良さを求める人が多い一方、利便性や共有設備の充実を求める人もいるため、そういった人にとっては価格の高い高層階ではなく中層階の方が好まれることもあります。
8階以上になると眺望もそれなりに良く、日当たりや通風も申し分ないため、売却の際には高層階でなく中層階であっても高値がつく可能性が大きいということですね。
地域でも人気である
周辺地帯で人気があり、ブランドのようになっているタワマンは、売却物件が出たらすぐに購入しようと待っている人も多く、高値がつく可能性が高くなります。
タワマンをできるだけ高く売却するコツ

不動産価値が上がる時期に売り出す
タワマンに限ったことではありませんが、1年のうちでも人の移動が多く、新居を求める人が増える時期、具体的には1~3月を狙って売りに出すことで、高値がつきやすくなります。
需要が多くなる時期に高く売れるのは、タワマンでも一般的なマンションでも同じことなのです。
適切な不動産会社に仲介を依頼する
不動産会社には得意・不得意な分野があり、タワマンに特化している会社というのももちろん存在しています。そのような会社をうまく見つけられれば、売却活動もうまくいくでしょう。
しかし、その見極めがなかなか難しいという場合は、そのタワマンを購入した際に仲介してくれた不動産会社に相談してみるという方法もあります。
物件の長所やアピールポイントをよく知っているはずなので、売却の際にも親身に相談に乗ってくれて、熱心な売却活動を行ってくれることが期待できるでしょう。なかには「認定保証付き物件」として売り出してくれる、という制度を設けている販売元もあります。
また、中古物件が出てくるのを待っている購入希望者を紹介してくれることもあるかもしれません。
銀行に相談する
銀行自体は不動産の仲介を行っているわけではありませんが、中古のタワマンを欲しがっている資産家を紹介してくれることがあります。
タワマンは市場価格に対して相続税評価額が低く抑えられる傾向にあり、そのため相続について対策を考えている資産家のなかには、タワマンの購入を検討している人もいるのです。資産家はそれを銀行に相談することも多いため、そういった人を銀行が紹介してくれる可能性もあるのです。
ホームステージングを行う
通常、モデルルームの公開というのは新築物件の売り出しの際に行われるものですが、ホームステージングはそれを中古物件で行うものです。部屋を家具やインテリアで演出して、モデルルームのように印象付けることができます。
ただし、居住中の物件では不可能であるため、空き家の状態であることが前提となる手法です。費用も数十万円ほどかかりますが、その分物件を良い状態で見せることができるので、高層階の部屋など特に条件の良い部屋であれば検討してみてもよいでしょう。
媒介契約の種類の選び方に注意する
不動産の仲介を不動産会社に依頼する際には、媒介契約というものを結びます。これには「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」という3種類があり、通常は制限が多いけれども積極的な売却活動を行ってくれることが期待できる前者2種類を選ぶのがおすすめですが、タワマンに限っては一般媒介契約の方が良いケースが多くなります。
なぜかというと、タワマンは資産価値が高く、人気があるからです。そこまで積極的に売却活動を行ってもらわなくても買主が多く現れる可能性が高いのです。
一般媒介であれば、複数社の不動産会社と契約が結べるため、よりたくさんの買主に物件が売り出されていることを広めてもらえるので、最適な買主を見つけることが期待できるでしょう。
もちろん、利便性があまり良くないとか、周辺に競合物件が多いとか、比較的売りにくい条件のタワマンであれば、積極的な売却活動を要する場合もあるでしょう。そのときは専属専任媒介や専任媒介を選んだ方がいいケースもあります。
売却を考えるタワマンの条件に合わせて、媒介契約の種類を選択することも大切です。
まとめ
とにかく高級で人気が高いイメージのあるタワマンですが、抱える問題点も少しずつ見えてきている昨今、「売りにくい」という噂もささやかれています。
しかし、どんなものでも売り時やタイミングというものがあり、タワマンも何も考えずに売却に出すのではなく、その特性をきちんと考えて適切な売り方を選択すれば、売却活動も成功するはずです。