解体工事後の土地活用の方法として、「トランクルーム経営」という方法が増えています。
トランクルーム経営は、コンテナハウスを設置して、その中のスペースを貸し出して行う事業です。トランクルーム経営は、アパート経営などに向いていない土地であっても経営できたり、初期費用や維持管理費用が少なくて済んだりと、さまざまなメリットがあります。
この記事では、トランクルーム経営を行うにあたって知っておくべき内容を詳しく解説します。トランクルーム経営ができる土地や、かかる初期費用、始めるまでの流れなどについて解説しているため、これからトランクルーム経営をしようか検討している方はぜひご覧ください。
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トランクルーム経営とは
トランクルーム経営とは、コンテナハウスというコンテナのような建物を設置して、その中のスペースを貸し出し、賃料を受け取る事業のことです。
監視が緩かった頃は、コンテナを置くだけで経営する「置き型」というものがありましたが、今では国土交通省の指導が厳しくなっているため、コンテナを置くだけのトランクルーム経営はできません。
トランクルームの経営方式
トランクルームの経営方式には、「一括借り上げ方式」と「管理委託方式」の2つの方法があります。
一括借り上げ方式
一括借り上げ方式とは、トランクルーム事業者に建物全体を貸す経営方式です。サブリース方式であり、トランクルーム事業者が個々のトランクルーム利用者と契約して、トランクルームを経営します。
一括借り上げ方式では、トランクルーム事業者から固定賃料を受け取るため、収益が安定するというメリットがあります。ただし管理委託方式よりも収益性が低くなってしまうことがデメリットです。
管理委託方式
管理委託方式とは、建物の保有者が直接個々のトランクルーム利用者と契約して、管理の部分だけをトランクルーム事業者に委託する方式です。
管理委託方式では、トランクルーム利用者からの使用料を直接受け取るため、一括借り上げ方式よりも収益性が高くなることがメリットです。
ただしトランクルーム利用者の増減によって収入が変動します。そのため収益が安定しないというデメリットがあります。
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トランクルーム経営ができる土地・できない土地

中にはトランクルーム経営ができない土地もあります。そのためトランクルーム経営を始める場合は、経営する予定の土地がどの用途地域に区分されているのかを確認する必要があります。
土地によってはトランクルームを建てることができない場合もあるため、ここでしっかり確認しておきましょう。
トランクルーム経営ができる土地
トランクルーム経営ができる土地は次のとおりです。
第一種住居・第二種住居地域
第二種中高層住居専用地域
準住居地域
田園住居地域
商業・近隣商業地域
工業・工業専用地域・準工業地域
これらの地域ではトランクルーム経営を行うことが可能です。
ただし第一種住居地域では広さが3000平米以下である必要があります。また第二種中高層住居専用地域では、トランクルームの形状と広さが最大2階建てであり、かつ1500平米以下でなければなりません。また田園住居地域では農作物を保管する用途の場合のみ経営することが可能です。
トランクルーム経営ができない土地
トランクルーム経営ができない土地は次のとおりです。
第一種・第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
これらの土地では、トランクルームの形状に関わらずトランクルーム経営を行うことができません。
所有している土地がどの地域に該当しているのか、各自治体の役所やwebページで都市計画図を確認しておきましょう。
トランクルーム経営に適した土地
とくに近隣にマンションやオフィスビルがあるような土地では、荷物を保管することの需要が高いため、トランクルーム経営に向いています。
ただしトランクルームではコンテナハウスを敷地内に運び込むことになるため、敷地の間口や前面道路の幅員が一定以上ある必要があります。
一般的に土地の間口は6m以上、前面道路の幅員は6m以上ある場所がトランクルームに向いています。
前面道路の幅員が狭くて、間口の狭い旗竿状の敷地などは、コンテナハウスが建てられない可能性があるため注意しましょう。
トランクルーム経営にかかる初期費用

トランクルーム経営にかかる主な初期費用は次のとおりです。
トランクルーム本体の費用
整地費用
インフラ工事費
広告費用(看板など)
トランクルームは一基あたり100万円ほどかかります。そのため一基あたり3部屋のトランクルームを4基設置し12部屋で経営する場合は、トランクルーム本体の費用のみで400万円ほどかかります。
土地の整地には一坪あたり1万円かかります。水道や電気の引き込み工事を行う場合は30~40万円かかります。
その他にも看板や防犯カメラの設置などがかかる場合もあり、看板やカメラの設置にかかる費用はそれぞれ20~30万円ほどです。
トランクルーム経営の収益性
トランクルーム経営では、どれほどの収益性を期待できるのか見ていきます。
まずはトランクルーム経営の利回りを知りましょう。利回りとは、全体の投資額に対して1年間の収益はどのくらいの割合なのかというような利益率のことです。この利回りを計算することで、トランクルーム経営の収益性を知ることができます。
一般的にトランクルーム経営の利回りは15~25%ほどです。利回を20%とすると、1年間のトランクルーム経営の収益は次のようになります。
投資額 | 収入 |
300万円 | 60万円 |
400万円 | 80万円 |
500万円 | 100万円 |
空室が続くとトランクルーム経営のリスクになるため、集客に関して運営会社などと相談して、確実に収益が確保できるようなプランを立てましょう。
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トランクルーム経営を始めるまでの流れ
トランクルーム経営を始めるまでの流れについて確認しておきましょう。
1. 土地活用相談

トランクルーム経営を始める場合は、最初にトランクルーム事業者に土地活用について相談します。
できるだけ良い条件のトランクルーム事業者を見つけるために、複数のトランクルーム事業者に相談するのがおすすめです。
「一括借り上げ方式」と「管理委託方式」の両方を検討している場合は、相談時に両方のプランを提案してもらうようにお願いしましょう。
2. 現地調査・マーケット調査
事業者に相談すると、各事業者が現地調査やマーケット調査をしてくれます。法的な調査も無料で行ってくれるため、建築確認が通る地域かどうかについても調べてもらえます。そのため用途地域等についてはとくに自分で調べておかなくても問題ありません。
3. プラン提案・請負工事契約締結
調査が終わったら、事業者からトランクルームのプランを提案されます。プランでは、想定される収益シミュレーションや建築費、維持費等がわかるようになっています。
トランクルームは建物であるため、事業者が決まったら、施工会社と請負工事契約を締結します。
4. 着工・竣工・運用開始
トランクルームの工事は、2~3週間ほどで完了します。ただし着工前に建築確認申請手続きをするのに2カ月ほどかかります。そのためトータルの工期は3カ月ほどかかると見込んでおきましょう。
トランクルーム経営のメリット
トランクルーム経営のメリットについてご紹介します。
アパート経営などに向いていない土地でも可能

トランクルーム経営は、アパート経営などに向いていない土地であっても経営できることがメリットです。
30坪ほどの狭い土地であっても経営することが可能です。また駅から徒歩で10分以上かかる立地であっても不利にならずに経営することができます。
トランクルーム利用者の中には、一度荷物を預けたらほとんど訪れない方も多くいます。そのため地方の郊外の土地であっても問題なく経営することが可能です。
トランクルームはいったん借りたら長期間解約しない方も多いため、収益が安定しやすいこともメリットになっています。
初期費用や初期費用がかからない
トランクルーム経営は初期費用や維持管理費用が少なくて済みます。
ただし屋内型のトランクルーム経営では、工事やエアコンなどの設備を設置する必要があるため、屋外型に比べて多くの費用がかかります。屋内型のトランクルーム経営であってもアパート経営やマンション経営などの他の土地活用方法に比べると安い初期費用で始めることができます。
トランクルームは日常的に人が利用するものではないため、汚れたり破損したりしにくいです。そのため設備の清掃や修繕の手間もあまりかかりません。このように初期費用だけでなく維持管理にかかる費用も少なくて済みます。
少ない初期費用で始めることができ、維持管理費用もほとんどかからないため、費用を抑えて土地活用を行いたい人におすすめです。
他の土地活用に変更しやすい
トランクルーム経営は他の土地活用に変更しやすいこともメリットです。トランクルーム経営は始めやすくやめやすい土地活用であるといえます。
トランクルーム経営は他の土地活用方法に比べて、やめる際に費用や時間がかかりません。トランクルームはマンションやアパートに比べて規模が小さいため、撤去するのに費用や時間があまりかからないで済みます。そのためすぐにその土地で他の土地活用を始めることができます。
トランクルーム経営はすぐに別の土地活用方法に切り替えることができるため、所有している土地に適した土地活用方法を見つけるまでのつなぎとして、短期間だけ行うことも可能です。
市場が伸びている

日本においてトランクルーム経営の市場規模は現在右肩上がりです。
現在日本では都心部の人工集中や地価の上昇によって、都心部の居住スペースが狭くなっています。そのため都心部では衣類やレジャー用品などを収納して必要な時に取り出せるトランクルームのニーズが高まると考えられます。
日本でのトランクルームの利用率はまだ300世帯に1世帯の割合にとどまっていますが、これはまだ浸透の余地が充分にある状態であるといえます。今後は30~50世帯に1世帯の割合で普及していくのではないかと予想されています。
トランクルーム経営のデメリット
トランクルーム経営のデメリットについてご紹介します。
得られる賃料が少ない
トランクルーム経営では、あまり大きな収益を得ることができません。たとえば1コンテナを貸し出した場合で、得られる賃料は月々数千円~1万円前後ほどになります。そのため10個のコンテナを用意しても月々10万円行けば良いという程度です。
トランクルーム経営を行う場合では、初期費用と維持管理費用をかけすぎないようにすることが大切です。トランクルーム経営では初期費用と維持管理費用を少ない金額に抑えることができます。
得られる賃料そのものが高くなくても、初期費用と維持管理費用を少ない金額に抑えることで、最終的に手元に残る金額を多くすることができます。収益性を上げるために、うまくコストカットしましょう。
節税効果が低い
トランクルーム経営だと、マンション経営やアパート経営などに比べて節税効果が低くなってしまいます。
土地の上に住宅が建っていると、「住宅用地の特例」という固定資産税や都市計画税の優遇措置を適用することができるため、節税できます。
これに対してトランクルーム経営では、このような優遇措置が適用されません。そのため土地にかかる固定資産税や都市計画税の負担金額は更地の状態と同じになります。
土地の他にトランクルーム自体にも固定資産税は課税されるため、負担が増加してしまいます。
トランクルーム経営は、相続税対策効果も高くありません。「貸家建付地」や「借地権割合」などの相続税評価額を減額する措置が適用されないため、土地にかかる相続税評価額を減額させることができないのです。
税金をきちんと試算していないと赤字になってしまう可能性もあるため、支払わなければならない税金をきちんと試算して把握しておきましょう。
トランクルーム経営でよくある失敗2つ
トランクルーム経営でやってしまいやすい失敗を2つご紹介します。
固定資産税が上がることがある
トランクルーム経営を始めたことによって固定資産税が上がってしまうことがあります。
この失敗は、住宅を取り壊してトランクルーム経営を始める場合に起こります。
土地の上に住宅が建っていると、「住宅用地の軽減措置」が適用されるため、土地の固定資産税が安くなります。古家の木造の建物は固定資産税が少額になっている場合も多いです。
このような住宅を取り壊してトランクルームを建てると、住宅用地の軽減措置が適用されなくなってしまうため、土地の固定資産税が高くなってしまいます。
200平米以下の土地である場合は、約4.2倍も土地の固定資産税が上がってしまうのです。
土地だけでなく建物であるトランクルームにも固定資産税が生じます。トランクルームはJIS鋼材という鋼材で建てられるため、木造よりも建築単価が高く、規模の割に固定資産税が高くなります。
このように、住宅を取り壊してトランクルームを建てる場合は、固定資産税が高くなってしまいます。このことを知った上でトランクルーム経営を始めるか検討しましょう。
中古コンテナを購入すると建築確認申請に通らない
トランクルーム経営に使うための中古コンテナを購入すると、建築確認が通らないことがあります。
以前は国土交通省の監視が緩く、海洋輸送用コンテナを置くだけでトランクルーム経営ができました。そのため今でも中古の海洋輸送用コンテナを購入してトランクルーム経営を始めることができると勘違いしてしまう方がいます。
しかし現在は国土交通省の監視が厳しいため、このようなことはできません。トランクルームで建築確認申請に通るには、「トランクルームがJIS鋼材で作られている」など、一定の要件を満たしている必要があります。
中古の海洋輸送用コンテナは、建築確認申請を通すための要件を満たしていないため、建築確認申請に通ることができません。購入しても無駄になってしまいます。
失敗せずにトランクルーム経営を始めるためには、中古コンテナを購入するのではなく、新築するのがおすすめです。
まとめ
トランクルーム経営では、コンテナハウスを設置して、その中のスペースを貸し出して、賃料を受け取ることで収益を得ます。
トランクルーム経営では、アパート経営などに向いていない土地であっても経営できたりとさまざまなメリットがあります。しかし得られる賃料が少ないなどのデメリットもあります。
これからトランクルーム経営をしようか検討している方は、トランクルーム経営のメリットとともにデメリットや注意点についても把握した上でご検討ください。
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