陸屋根やベランダは、常に雨や太陽光にさらされていている部分です。そのため、雨水や湿気を防ぐために、何らかの防水工事が施されています。防水効果が持続することによって大切なマイホームを守る働きも持続するため、防水加工はとても大切です。
防水工事にもいくつかの種類があり、用途や費用によって分類することができます。
今回は屋根の防水工事について、その種類と用途をわかりやすくお話していきます。
屋根の防水 種類
塗膜防水
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事は、液状の防水材を下地に複数回塗り、防水層を構築することで防水効果を高める工法です。耐久年数は8年から12年程度。
液状の防水材は乾燥するとゴム状になることから、収縮性があり亀裂にも強く、建物に侵入する雨水や湿気などから家を守ることができます。
メリットとしては、ウレタン防水は比較的安価な上に、液状の防水材を重ね塗りするので、施工場所や形状を選ばないほか、工事期間も短いことが挙げられます。
デメリットとしては、機械化が難しく、職人による手作業になるため、熟練度によっても仕上がりに差が出てくる点です。加えて、年数が経過すると当然劣化が始まるため、定期的なメンテナンスは必要不可欠となります。
FRP防水工事
FRPとは、強くて軽い耐久性のある優れた繊維強化プラスチックのことです。
これをシート状にしたものとガラスマットで防水層を構築し、その上にトップコートを塗装し硬化させる工法で、耐久年数は10年から12年程度となっています。
メリットは、塗膜防水とシート防水を併せ持った工法のため、現場を選ばないだけではなく、つなぎ目がなくなるため仕上がりもきれいになることが挙げられます。
その上、耐水性、耐候性、耐食性に優れた効果があります。
デメリットとしては、太陽光や熱により、トップコートが劣化してしまうため、こちらも定期的なメンテナンスが必要になる点です。
また、伸縮性があまりないことから、クラックやヒビが発生しやすいことも挙げられます。
シート防水工事
塩化ビニールシート防水工事
塩化ビニールシートとは、塩化ビニール樹脂系の材料が一枚のシートで構成された防水層のことです。太陽光による紫外線や熱、オゾンに対して優れた耐久性を持っています。
近年では、塩化ビニールシートでの防水工事の需要が増えています。耐久年数は13年程度。
メリットとしては、塩化ビニールシートは素材自体にすでに着色されているので、色あせがしにくいことと、高い耐久性があるために、防水層としてのトップコートのような一般的な保護塗装が不要となる点が挙げられます。
しかし、いくら丈夫でメンテナンスコストが低いといっても、当然寿命はあります。
年数が経過した塩化ビニールは、古くなったビニールのホースのように硬くなってしまいます。原因としては、もともとは硬い材質である塩化ビニールに、可塑剤(かそざい)を添加することで柔軟性を持たせているのですが、経年劣化で塩化ビニールシートの可塑剤が気化してしまうために硬化が始まってしまうことです。こうなると、劣化と共にひび割れを起こしてしまいます。
また、シート防水において、「立ち上がり」の部分は非常に重要となります。立ち上がりとは、床面から壁にかけての折れ点のことを指します。
塗膜防水と違い、立ち上がり面に塗膜を施すことができないため、シーリング剤で防水シートの端部を処理することが必要となります。しかし、シーリング剤はシート防水よりメンテナンスまでの期間が短いためにそれだけに頼るのは、水漏れのリスクを高めてしまいます。
ゴムシート防水工事
ゴムシート防水とは、合成ゴム系のシートを一枚にした防水層で、その工法には接着工法と
機械的固定工法があります。耐久年数は13年程度。
メリットとしては、下地の動きに対しての追従性がよく、段差や凹凸にも柔軟に対応する点です。特にALCパネルの下地には相性も良く、その特長を生かすことができるでしょう。
デメリットとしては、防水層としては薄く、鳥のついばみなどで簡単に破けてしまったり損傷しやすかったりするという点が挙げられます。

アスファルト防水
アスファルト防水は、従来から広く使われている防水工事のひとつです。耐久年数は20年程度。
合成繊維不織布のシートに液状に溶かしたアスファルトをしみ込ませて、コーティングを施したルーフィングシートと呼ばれるシートを、二層以上で仕上げることによって、防水機能を高める積層工法と呼ばれているものです。
アスファルト防水は、広い面積の場所への施工が適しています、学校やマンションの屋上、公営住宅などの屋上や屋根に採用されることが多いです。
トーチ工法
トーチ工法は、トーチバーナーと呼ばれる一般的なバーナーを使用して、ルーフィングシートの裏面と下地を炙りながら溶かし、貼り重ねる工法です。
メリットは、シートを溶着するため高い防水効果を発揮する点です。また、施工中の煙やにおいも少ないため、周囲の環境にも配慮したものといえるでしょう。
トーチ工法は、費用も安く済むため民間工事で採用されることが多くなっています。
デメリットとしては、やはり火器使用での施工となるために、周囲に可燃物がある場合や強風の日などの施工には、十分に注意をしておかなければならないことが挙げられます。
また、そういった意味でも広い場所でなければ施工がやり辛いという側面もあります。

常温工法
熱を使用せず施工できることから、多くの現場で使用されています。熱を使わない代わりに、ルーフィングの裏面に自着層と呼ばれるゴムのアスファルトの粘着層をコーティングして、複数枚重ねて張り合わせることで防水効果を高めます。また、下地が軟粘着状態になるため、施工したコンクリートなどにもしっかりと定着します。
メリットは、火器を使用しないため熱によるにおいが発生しないことで、環境への配慮だけにとどまらず、安全性にも優れているといえる点です。火を使わないことから、狭い場所での作業や周囲に可燃物があるような場所にでも安心して施工できるため、近年では最も主流の工法となっています。
デメリットは、どうしても熱を使用しての溶着と比べると、防水層の密着度が劣ってしまうという点です。
場合によっては、防水の効果が低くなってしまう恐れもあります。
防水効果を長持ちさせる方法
防水効果を長持ちさせる方法にはいくつかありますが、簡単で基本的なものをいくつか紹介します。
定期的なドレンの掃除
枯葉やごみなどが屋根に落ちて、雨でドレンに詰まってしまうと、そこから水が流れにくくなり、湿気や水分が浸透してしまいます。ドレンの掃除はこまめに行っておきましょう。
水たまりを作らない
ドレンなどがつまり、長い間防水面が水たまりにさらされていると、そこから劣化が始まり結果として防水効果は低下してしまうため、水たまりには注意が必要です。
同じようなことで、ベランダに重い荷物を置いている時にも注意が必要です。重い荷物を防水面に置くとその重量で沈んでしまい、結果として水たまりを作ってしまうリスクがあります。
防水工事のタイミングと見分け方
屋根の色変わりは、塗り替えのサインです。防水工事の仕上げはトップコートと呼ばれるもので上塗りします。トップコートは紫外線から防水層を守っていますので、そのトップコートが剥離してしまうとたちどころに紫外線や熱による影響を受けてしまい、防水層が劣化してしまいます。
ウレタン防水なら黄色く変色してしまい、硬くなります。防水シートであれば中の黒い防水層が透けてきます。色が濃くなるので太陽光の熱を集めやすくなってしまい、より劣化を促進させてしまいます。
加えて、屋根は太陽光で温められているので室内に熱が伝わり、室内温度を上げてしまうことにもなってしまいます。
トップコートの塗り替えは、目安としては5年となっています。防水の劣化は、放置しておくと雨水の侵入を許してしまい、家全体に悪影響となりますので、メンテナンスはしっかりと行うことをおすすめします。
防水工事は、早めのメンテナンスをすることで費用は安くなる傾向にあります。
屋上やベランダを目視できるのであれば、以下のことを確認してください
- 室内で雨漏りが発生している、もしくは2階の部屋に湿気がある
- 屋根に雑草が生えている
- 防水にクラックがある
- 水たまりがある
- ドレンがごみや枯葉で詰まっている
- 防水工事をしてから10年以上経過していて変色している
- 防水層に水が入り込み膨れている
- 剥離している部分がある

まとめ
屋根の防水加工にも、いくつかの工法や手段があります。
防水をする場所や、用途、費用などによっても選ぶべき工法は変わってくるでしょう。一長一短ありますので一概にこれがいいとは絞れませんが、どれを選んでもメンテナンスが重要となってきます。
いずれの防水にしても、防水工事をして5年から10年経過しているのであれば、一日でも早めに専門の業者などによる防水の調査を依頼するのがいいでしょう。早めのメンテナンスは費用が抑えられるほか、家の寿命を延ばすことにもつながるでしょう。