住まいに対する意識が多様化し、必ずしも新築のマイホームを買うのではなく賃貸住宅を選択する人、中古住宅をリノベーションする人、利便性の良いマンションを購入する人、新築一戸建てでも建売住宅を選ぶ人、さまざま見られるようになりました。
それでも「マイホームには一戸建ての注文住宅!」と、注文住宅の人気はまだまだ根強いものがあります。
注文住宅の魅力は、なんといっても自由度が高いこと。理想と憧れを詰め込んだ自分の城を造りたい、と考えている人は多いことでしょう。しかし、いくら自由度が高いといってもそれなりの制約は存在します。それを左右する大きな要因となるものが、建物を乗せる「土地」です。土地の形状や向き、接道状況などによって、上に乗る家屋が大きく制約を受けてしまうこともあるのです。
今回は、注文住宅の新築を成功させるための「良い土地選び」のポイントを解説していきます。
注文住宅を建てたい!と考えたら、まずは「良い土地」を探そう

土地を探す前に考えておきたい3つのポイント
土地探しを具体的に考え始めるとき、何よりまず検討したいのが「エリア」「予算」「土地に求める優先順位」です。
エリアは、まずは「どの辺りの地域」にしたいかというざっくりとしたところから考え、次第に絞っていきます。駅近がいいなどの具体的な場所に関しては、次に考える「優先順位」のときにして、まずは「この街がいい」といった大まかな希望を挙げてみましょう。
予算に関しては、土地と建物のトータルで考える必要があるため、注意が必要です。土地にお金をかけすぎると、建物の建築費用に充てる予算が足りなくなってしまうという事態にもなりがちです。そのため、土地探しと並行して建物の設計もある程度考えていかなければなりません。
さらに、土地を手に入れる際には、土地の購入費用のほかにも手数料や税金が必要となるので、その分も予算に組み込んでおくことを忘れずに。
そして、買おうとしている土地には何を求めているのか、優先順位をはっきりさせることも非常に重要です。まずは「家を建てる目的」から考え、希望する条件をすべて挙げたうえで、何を優先するかを決めておきましょう。
これがしっかりしていないと、ターゲットが絞れず、良さそうな土地を見つけてもなんとなく「もっといいところがあるのではないか」と見送ってしまい、後悔するという事態になる恐れも出てきてしまいます。
土地探しの手順

上述したように、土地を手に入れたいエリアや大体の予算、そして土地に求める希望の優先順位を決めたら、それに合う土地を探していきます。探す方法にはいくつかあり、次項で詳しく述べていますが、ひとつの方法に絞らずにさまざまなやり方で調べていくのがよいでしょう。質と量、両方に偏ることなく探していけます。
そして、これも少し前項で触れましたが、土地探しを本格的に始める前に建築を依頼するハウスメーカーもある程度決めておくのがおすすめです。建物の予算が出ていた方が土地の予算も出しやすいですし、土地を決めてしまってからハウスメーカーを探すと「希望する建物はこの土地では建築不可」という事態にもなりかねないからです。
土地探しも行ってくれるハウスメーカーもあるため、土地とメーカーはどちらを先に決めるべきか悩んだら、どちらも並行して行うのがよいでしょう。
希望の土地をある程度絞ったら、その土地についてしっかり調査を行います。特に災害に強い土地なのか、なにか汚染物質などに汚染されていないかといったことなどまで確認しておきましょう。
問題がなければ、土地の購入契約を結びます。
土地探しはどう行う?

ハウスメーカーに土地探しもお願いする
ハウスメーカーは家を建築することだけが仕事ではありません。土地探しに強いメーカーも多いものです。特にそのメーカーで建築することを決めたうえで土地探しの相談をすると、親身になってもらえるでしょう。
建てたい家のイメージや設計から、それに条件がぴったり合った土地を探してもらえる可能性も高くなります。少し前述したように、土地と建物の両方込みでの予算を設定しやすいというメリットもあります。
不動産屋に行く
土地の専門である不動産業者に行けば、より多くの土地を提案してもらえるでしょう。家を建てたいと希望する地域に強い業者を探すと、有益な情報をたくさん得られるはずです。
インターネットなどでは掲載されていない独自の情報も用意されていることがあるため、できるだけたくさんの業者をまわってみることをおすすめします。
インターネットで検索する

最近はインターネットで物件検索も簡単にできるようになり、その情報量は膨大です。特に今住んでいる地域ではない場所で土地探しをしたい場合には、とても役に立つでしょう。
ただし、その土地の雰囲気などを感じることは難しいため、情報収集だけにとどめて、最終的には実際に現地を見てから決める必要があるでしょう。
現地に行く
住まいを建てたいと思っている地域に、直接行ってみるのもひとつの方法です。「売地」の看板を見つけられるかもしれませんし、何より町の雰囲気を肌で感じることができるのがメリットです。
「良い土地」を選ぶためのポイント

次に「良い土地」を選ぶ際のチェックポイントを確認しましょう。
土地の形状は「整形地」がよい
限りなく四角形に近い土地を整形地といい、そうではなくいびつな形や凹凸があるような土地は不整形地といいます。
土地は整形地のほうが価値は高く、建物を建てる際にもデッドスペースが生まれづらいため、できるだけこのような土地を選びましょう。
シンプルな形の建物を建てやすいため、建築費用にも余計なものがかかりづらくなります。
前面道路の状態
土地が接する道路の方角はどうか、交通量はどうか、ということによって、日当たりや騒音などを考慮し、間取りの工夫が必要な場合があります。目の前の道路がどのような状態なのか、私道なのか公道なのか、という点も含めて、しっかりチェックしておきましょう。
地盤の強さ

もともと畑だったような土地は、地盤が弱い場合があります。地盤改良工事が必要になると、その分工事費用が割高になります。地盤の強弱もしっかり確認しましょう。
周辺環境
土地の立地の利便性は、土地に求める条件の優先順位にも左右されますが、重要であることは間違いありません。交通網は発達しているか、近くに商業施設や病院は豊富か、学校の位置はどうか、ということも大事になってきます。
インフラの整備状況
電気や上下水道、ガス管が近くまで来ているかも確認しましょう。場合によっては引き込み工事が必要になってしまうこともあるため、ここでまた余計な費用がかかる恐れも出てきてしまいます。
土地探しをするときに知っておきたい用語集
「良い土地」を探すなら、必ず知っておきたい知識があります。土地探しをする前に、ぜひすべて押さえておきましょう。
用途地域

都市計画法という法律に基づいて、そこに建築可能な建物の種類や用途について定めたものです。建物の高さの制限や、住居専用で工場は建てられないなどの条件のことで、これを確認しておけば将来周辺にどんな建物が建築されるかという可能性を、ある程度予想することができるでしょう。
たとえば「第一種低層住居専用地域」では、高い建物の建築が制限されているため、周辺に高層ビルが建ってしまって日当たりが悪くなる、というような心配がなくなります。その代わり、自分の住居も低層のものしか建てられません。
ほかにも「第一種住居地域」「近隣商業地域」「準工業地域」など、13地域が存在しています。それぞれどのような用途なのか、一度確認してみるとよいでしょう。
建ぺい率
土地の面積に対して、どれくらいの割合の面積まで建物が建てられるかという限度の数字です。
敷地いっぱいに建物を建ててしまうことが可能だと、住宅がぎゅうぎゅうに密集してしまうおそれが出ます。日当たりや通風にも大きな影響を与えますし、万が一火災が起きた際には延焼の規模も大きくなることが考えられます。そのため、建ぺい率が定められているのです。
容積率
建ぺい率と混同されがちなのが、容積率です。
こちらは、土地の面積に対する、建物の「延べ床面積」の割合です。2階建て以上の建物にも定められているため、100%以上になることもありえます。
高さ制限
土地によっては、建てられる住居の高さの制限もあります。用途地域でも高さの制限はありますが、ほかにも「道路斜線制限」「高さ制限」「日影規制」「北側斜線規制」といったものがあります。
不動産情報には載っていないこともあるため、必ず確認しておくべき項目です。
まとめ
住まいを建てるにはまず良い土地探しから、ということを解説してきました。せっかくデザインや間取りに理想があっても、それを支える土地がきちんとしていなければ、良い家は建ちません。
土地探しと家の設計はできるだけ並行して行い、希望通りの家が建てられる土地を見つけてくださいね。