建設現場や解体工事現場には欠かせない「養生シート」。でもその言葉の響きは、日常生活ではあまり聞かないかもしれませんね。養生シートとは、簡単にいうと工事現場をぐるりと囲んでいるシートのこと。目にしたことはあるのではないでしょうか?
今回はこの養生シートの役割や必要性だけではなく、養生シートの設置の仕方から「業者のよしあし」を見分ける方法まで見ていきましょう。
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養生シートとは
養生シートとは、建築・解体工事現場を覆うシートのことで、その役割は多くあります。たいていの場合、現場ではこの養生シートを使用して安全や安心を確保してから工事に取り掛かるため、設置がない場合にはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
もし養生シートがなかったら
養生シートの詳しい役割については後述しますが、もっとも重要なものとして「騒音軽減」と「防じん」が挙げられます。これらは作業員や施主のためというよりも、周辺の住民や住居に対しての配慮という色が濃いものといえます。
工事現場というのは、周囲への迷惑がどうしてもつきものであり、中でも騒音と粉じんの飛散という二点については容易に大きなトラブルに発展しやすいものです。そういった近隣トラブルをできるだけ防いでくれるのが養生シートなのです。
また、養生シートの丁寧な設置はそれだけで近隣住民に「きちんとした業者なんだな」という安心感を与える効果も期待できるでしょう。
養生シートは設置しなくても違法ではない
養生シートは安全・安心の面で欠かせないアイテムということがわかりましたが、実はその設置が法的に義務付けられているわけではありません。
騒音規制法というもので定められている基準値以下の騒音レベルであれば、養生シートで防音する必要もないし、散水などを行って粉じんの飛散対策をしていれば、こちらも必ずしも養生シートで防じんしなければいけないというわけでもないのです。
また、国土交通省の「建築物解体工事共通仕様書」というものには、騒音・粉じん対策をはじめ安全に工事を行うための対策が示されており、業者はこれに従って工事を進めるのですが、こちらにも法的拘束力はないため、要は養生シートを使用しなくても「法的に罰せられることはない」ということなのです。
しかし、だからこそ養生シートの扱いでその解体業者の質を見極めることもできるといえるでしょう。こちらも詳しく後述しますが、法的拘束力がないからといってシートを使用しない…という業者が果たして優良といえるのか?ということですよね。
養生シートの役割
粉じんの飛散防止

解体工事では、細かい粉じんやホコリなどが舞い散ることが多く、近隣住人や通行人へ健康被害を与えてしまったり、外に干している洗濯物・車などを汚してしまったりすることもあります。
そこで養生シートで現場全体を覆うことによって、発生したゴミが外に舞い飛ぶことを最小限に防ぐ効果が期待できるのです。
騒音軽減
解体工事現場の騒音は、思った以上に大きなものです。重機の作動音や建物が崩れる音、がれきが下に落ちる音などなど、普段の生活では聞くことがあまりない、大きくて不愉快な音が鳴り響くことも珍しくありません。これはどんなに丁寧に作業していてもある程度は仕方のないものですよね。
これらをなるべく外に漏らさないようにするのも、養生シートの役割のひとつです。シートで大きな音が防げるとは驚きですが、解体工事現場で使われる養生シートは遮音性に優れた素材で作られているものが多く、大きな効果を発揮します。
物や人の落下防止

工事現場での落下事故というのは、さまざまな状況で起こりうるものです。たとえば、誤って高所から工具や資材を落としてしまった場合、下に作業員や通行人がいた場合大きな事故になりかねません。このようなことが起きてしまったときも、養生シートがきちんと設置されていればシートの外に物が落下することを防止する手助けにもなるでしょう。
物だけではなく、人の落下事故もありえます。足場を踏み外したり、強風にあおられたり、ということが原因として考えられますが、これらの要因も養生シートで現場及び足場を覆っていればある程度危険を軽減することができるでしょう。
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養生シートの大きさ
一般的な養生シートの大きさには、1.8m×3.6mサイズや1.8m×5.4mサイズといったものがあり、業界では前者が「一間二間」、後者が「一間三間」と呼ばれています。これを現場の大きさに合わせて組み合わせ、単管という鉄パイプのようなものに接続して設置していきます。
養生シートは重機や資材を引っ掛けるなどすると、破けたり汚れたりする消耗品です。現場の広さや建物の高さに比例して、使用する養生シートの数も当然増えるため、解体工事では消耗品である養生シートの費用負担が施主にもあることを、ある程度は把握しておくべき点といえます。
養生シートの扱いからわかる業者の質
そもそも養生シートを使っていない業者

前述した通り、養生シートは主に騒音軽減・防じんなどの効果を期待して使用するもので、近隣住民への迷惑を最小限に抑えることや作業員の安全を目的としています。したがって、使用することに法的拘束力はないからといって養生シートの設置を怠るような業者は、安全面についての配慮に著しく欠けているといっても過言ではないでしょう。
養生シートは消耗品ですが、そこにきちんとコストをかけられない業者はとても優良とはいえない、ということですね。
破損した養生シートをそのまま使っている業者
遮音性・防じん性が求められる養生シートなのに、破れているようなものだったらその性能には疑問が生じますよね。音も粉じんも、破損部分から漏れ出てしまうでしょう。そのような状態のシートを使い続ける業者には、やはり安全面の管理や配慮に不安が生まれます。 破損してすぐに取り換えるのはコストもかかることですが、その点についてどう考えているかがわかる部分です。
古い養生シートを使い続けている業者
養生シートは防じん効果も求められるため、汚れているのが当然です。見るからに汚れていて古いけれども破損のない養生シートを使い続けているということは、それだけシートの扱いが丁寧なのだといえるでしょう。こういう業者は、作業も慎重で丁寧な施工をしてくれることが多いものです。
養生シートの設置自体も、ずれていて隙間ができていたり、大きさが合っていないシートを使っていたり、というようなことがなくきちんとした張り方をしている業者は、やはり丁寧な工事をしてくれる業者だといえそうですね。
会社名がプリントされた養生シートを使っている業者
消耗品である養生シートに、会社名を入れるコストをかけられるということは、経営が安定している業者だといえます。また、大々的に社名を宣伝できるということで、それだけ自信があるということもうかがえるため、安心してまかせられる業者だと判断してよさそうです 。
まとめ

解体工事現場の安全や、近隣住民への安心感と信頼を得るサポートをしてくれる養生シートは、解体工事では欠かせないものだということがわかりました。さまざまな役割を果たすとともに、シートの扱い方ひとつでもその業者が信頼に足りるかどうかも判断できてしまいます。解体工事の業者選びの際には、こういった面からもチェックしてみるといいでしょう。
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