解体工事で発生しやすいトラブルをまとめました。家屋などの解体工事をする際に、どのようなトラブルが起こりやすいのか、騒音や追加費用のトラブルなど具体的に解説していきます。併せて、業者や近隣住民とのトラブルを回避する対策なども紹介しますので、参考にしてください。
解体工事で起きやすいトラブルや対処法を知りたい!
解体工事に関するトラブルについて徹底解説します。工事前、工事中、工事後によって、トラブルの内容も変わってくるので、それぞれの状況に分けて詳しく説明しましょう。
また、トラブルを起こさないように事前に対策を取る方法やトラブルが発生した時の対応の仕方なども、知識を持っておくと役立つのでチェックしてみてください。
解体工事前に発生しやすいトラブル
解体工事前の段階で起こるトラブルもあります。特にどのようなトラブルが多く見られるのか?説明しましょう。また、解体工事中や解体工事後にトラブルが発生しないように、事前に防止しておくことも必要です。その点も併せて解説していきます。
近隣への事前挨拶を怠る
解体工事中は少なからず工事による騒音や振動、粉じんなどで、近隣へ迷惑をかけることがあります。そのためにも忘れてならないのは、近隣住民への挨拶です。
また、解体工事用の大型車の出入りなどで、近隣住民の通行の邪魔になることもあります。近隣住民への挨拶なしに解体工事を開始してしまうと、気分を害するのは当然です。トラブルの原因になるため、必ず挨拶へ行きましょう。
解体業者が主導で挨拶に行くのが一般的ですが、施主も一緒に行くとさらに良いです。挨拶の際は、解体工事期間や工事の時間帯、大型車の出入りがあることなどを、伝えておくことをおすすめします。
養生や足場の設置が不適切
養生や足場の設置がしっかりしていないと、思わぬトラブルの原因になってしまいます。騒音や粉じんの近隣住民への被害を最小限に抑えるためにも、養生はしっかりしておく必要があります。
また、解体工事中に作業員が落下したり怪我をしたりしないように、足場の安全性も重要です。作業員にトラブルがあっても、解体工事は順調に進みません。養生や足場の設置は作業員の仕事ですので、施主から見て目に余るほど頼りない設置の仕方であれば、安全性を業者に確認しておきましょう。
業者が解体許可の認可を受けていない
業者の中には、解体工事の認可を受けていない場合があります。認可を受けずに解体工事をすること自体が、違法行為に当たります。そのようなずさんな業者を避けるためには、免許や許可証、登録番号を確認してから契約締結することが有効です。
何も問題がないのであれば、業者側もきちんと掲示してくれるでしょう。都道府県に問い合わせをすると、その業者が認可を受けているかどうかを、確実に知ることができます。出典:解体工事業者の登録について(福岡県庁HP)
損害賠償保険に加入していない
解体工事中は、思いもよらない事故やトラブルが発生する可能性もあることを、想定しておかなければなりません。また、近隣の家屋や庭の植木などを、破損させてしまうトラブルなども起こり得ます。万が一、そのようなトラブルが起きた時に必要になるのが、損害賠償保険です。
解体工事中に起きたトラブルは、基本的には解体業者側が責任を負う義務があります。しかし、損害賠償保険に加入していない業者であれば、しっかり対応できずにトラブルがトラブルを招きかねないでしょう。損害賠償保険に入っていない業者は、依頼を取り消すことも賢明です。
解体工事中に発生しやすいトラブル
ここでは解体工事中によくあるトラブルの内容を、具体的に解説していきます。また、解体工事中は現場だけでなく、外部でのトラブルが起きる可能性もあるかもしれません。ぜひ、チェックして事前に防げるトラブルは、回避していきましょう。
騒音や振動の問題
解体工事中の騒音や振動は、工事を進めるにあたりどうしても避けられない問題です。工事開始前の近隣住民への挨拶の時に、充分その旨理解と承諾をもらうことが、大きなトラブルを防ぐポイントになります。
また、工事の時間帯を早朝から始めたり、夜遅くまで行うことは避けてください。騒音規制法によると、住宅地や商業地(第1号区域)では午前7時から午後7時まで、工業地帯(第2号区域)では午前6時から午後10時までの時間帯に工事を行うよう定められています。出典:騒音規制法の概要(環境省HP)
埃や粉塵の飛散
埃や粉じんが発生してしまうのも工事中は避けられないことですが、最善の対策は必要です。少しでも埃や粉じんが飛散しないように、しっかりと養生シートなどを設置するようにしてください。
そうした点を怠ると、近隣住民に迷惑をかけ、トラブルを招いてしまいます。解体業者が適切に対策準備をして工事を開始しているのか、施主はきちんと確認しておくと良いです。
トラックや重機の路上駐車
解体工事中は業者の車をはじめ、トラックや重機などの大型車の出入りが多くなります。そのため、近隣住民の通行や車の出入りの邪魔になることもあるでしょう。一時的な出入りならまだしも、長時間路上駐車をすると通行人にとっては大迷惑で、場合によっては危険にさらすことになります。
業者の車などは、コインパーキングや、迷惑のかからない駐車場を確保しておくことも、トラブル回避の対策方法です。
解体業者との認識の違いや態度の悪さ
解体業者との認識の違いで生じるトラブルもあります。例えば撤去する予定のないブロック塀を解体された、事前に残してほしいと知らせていた庭木がなくなっていたなど、予定外のことが起こる場合も。
撤去されてしまったものは元に戻せないことがほとんどであるため、解体業者との綿密な打ち合わせをしておくことが重要です。口頭だけでは伝わらなかったり、忘れてしまったりすることもあるので、契約書などの書面に残しておいた方が良いでしょう。文書に残しておくと、トラブルが発生した時に役に立ちます。
業者側の都合で工事開始が遅れる
天候などの自然災害によって工事開始が遅れてしまうのは仕方がないことですが、業者側の都合で延々と遅滞するのは問題です。特に解体工事終了後に、土地の使用予定や売却予定などがある場合は、トラブルの原因になります。
このようなトラブルが起こった場合に対応できるように、打ち合わせの段階でよく話し合っておきましょう。業者側の都合で遅滞した場合、損害賠償の請求も含めて、どのような契約にしておくのか、きちんと考慮しておくのが賢明です。
隣家の借地許可を取っていない
養生や足場を設置する上で、自分の敷地内だけでは足りない場合があります。隣の敷地にはみ出てしまったり、状況によっては隣の敷地を少し借りて、足場などを設置するケースがあるかもしれません。そのような場合は、あらかじめ挨拶と共に許可を取っておくことが重要です。
内容によっては、借地料を支払うことも念頭に置いておきましょう。無断で隣の敷地にはみ出て作業を行っていると、トラブルの原因になります。また、了承なく他人の敷地を使用することは適切でないので、必ず事前に許可を取っておくようにしてください。
近隣の家屋や公共物の破損
工事中は予想もしないトラブルが起こる可能性もあります。工事によって隣りの家屋の壁や庭の塀、植木などを、破損させることがあるかもしれません。そのようなトラブルが発生した場合は、業者側が責任を持って対処し弁償する必要があります。
基本的には業者が加入している損害賠償保険を使用して、弁償をすることになります。もちろん、そうならないように細心の注意を払っておく必要がありますが、トラブルが起きてしまった時は、スムーズに対処できるようにしておきましょう。
アスベストの不適切な処理
アスベストの取り扱いがずさんであったり放置されたまま解体工事を行うと、健康被害を及ぼすことがあります。工事を開始する前に、必ずアスベストを撤去しておかなければなりません。
アスベストのレベル次第では、都道府県知事への届け出を求められる場合もあります。業者によっては、アスベストを使用しているかの調査もせずに、工事を開始するケースもあるようです。適切な対応ができない業者には、依頼を再検討することも考えましょう。出典:石綿(アスベスト)問題への取組 | 建物を壊すときにはどうしたら良いの?(環境省HP)
無断の追加工事や工期の遅延
契約内容にはない工事を、勝手に業者がすすめてしまうトラブルがあります。例えば、解体工事をしていると、建物や家屋の下に埋まっていた大きなブロックや浄化槽などが、見付かることがあります。
これらの地中障害物質を撤去する費用は、見積もりの中に入っていないことがほとんどです。本来は、施主に地中障害物質を撤去するか確認を取ってから行いますが、許可なく追加工事をして費用を請求されると、トラブルになってしまいます。
また、工事は順調に開始したのにも関わらず、工期が遅滞するトラブルもあります。これらのトラブルを回避するには、可能であれば時折施主も現場を確認し、業者と連携できる体制を整えておくと良いでしょう
解体工事の放棄や追加費用の請求
トラブルの中でも悪質ですが、工事費用を回収しているのに業者側が工事を放棄してしまうケースが、稀にあるようです。このようなトラブルの場合は素人では解決が困難ですので、弁護士や適切な機関に相談して、支払った費用を返済請求する方法を取るのが良いでしょう。
また、追加費用の請求に関するトラブルも、多くあります。予定より面積が広かった、廃棄物が想像以上に多く出たなどの理由で、追加費用を請求されることもあるようです。後になってトラブルになることがないように、契約書を作る時に追加費用に関しても深く話し合い、書面に残しておきましょう。
解体工事後に発生しやすいトラブル
解体後に発生しやすいトラブルに関して、解説していきます。工事が終了して安心したいところですが、最後までトラブルを回避できるように、しっかりチェックしておきましょう。
ずさんな整地作業
解体工事は建物や家屋の解体はもちろんのこと、その後の整地まできちんとしてから完了となります。家屋などが解体された後の土地は荒れているので、それを平らにならして整地しておくことが必要です。
整地を怠ると、土地を売却することも新しく家屋を建てることもできません。業者から工事完了の報告を受けたら、現場に行ってきちんと整地まで行われているか確認しておきましょう。
工事内容や範囲の契約不履行
解体工事後に分かるトラブルもあります。例えば、工事前に約束していた内容と違う作業をしていたり、撤去して欲しかったものを撤去していなかったなどです。
ひどいケースによっては、工事のやり直しや損害賠償を請求できることもあります。そのためにも、業者との大切な取り決めは口頭だけでなく、契約書などの書面にしておくと証拠にもなり、トラブルへの対応がスムーズです。
産業廃棄物の不法投棄
解体工事の際に出た産業廃棄物の不法投棄についてのトラブルです。廃棄物処理法に従わず、山林や空き地などに不法投棄する業者がいます。このような違法行為を業者が行うと、施主も責任を問われることがあるかもしれません。
マニフェストという産業廃棄物管理票があり、解体工事で発生した産業廃棄物が、規定の方法できちんと処理されているかを管理するものです。心配な場合は、業者に言ってマニフェストを確認させてもらいましょう。出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(環境省HP)
建物取毀し証明書が発行されない
建物取毀し証明書とは、家屋などの建物が取り壊されたことを証明するものです。これは解体業者が責任を持って発行しなければならない証明書ですが、いつまでも業者が発行しないトラブルがあります。この証明書がないと建物滅失登記ができないので、業者にしっかり催促することが大切です。
解体工事でトラブルが発生した時の対処法
トラブルが発生してしまったら、慌てずに適切な対処をすることがポイントです。しかし、自分だけで解決するのは難しい問題もあります。ここでは、どのように対処するのが良いのか?説明します。
対処法①業者との直接やり取りを避ける
トラブルが発生した場合は、直接業者に訴えても話がこじれることが多く、解決するのは困難です。専門の機関に相談してサポートしてもらうと、冷静に対応できると共に、良い解決法を見付ける近道になります。
対処法②弁護士に相談する
トラブルを解説するために一番おすすめの方法は、弁護士に相談することです。弁護士によって強い分野があるので、建築業界に詳しい人を選ぶことがポイントになります。スキルのある弁護士がサポートしてくれることで、最善のトラブル解決法が見付かるでしょう。
対処法③消費者センターに相談する
消費者センターに相談してみるのも、トラブル解決法の一つです。弁護士にお願いする場合は、それなりの費用がかかります。予算がない場合や消費者センターでも解決できそうな内容のトラブルであれば、ぜひ相談してみてください。
基本的には消費者センターの相談料は無料です。まずは消費者センターで相談してみて、解決が難しい場合は弁護士を頼るという手順でも良いでしょう。
解体工事で起きやすいトラブルを覚えて上手に対処しよう!
家屋や建物の解体工事で起きるトラブルについて、詳しく解説しました。トラブルを最小限に抑えるためには、事前の対策も大切です。
また、トラブルが起きてしまった場合でも、適切な対応ができれば、最小限に食い止められます。依頼する業者選びも重要なポイントになるため、記事を参考にしっかり下調べをして選びましょう。
この記事のライター
宮内直美