擁壁工事について解説します。擁壁工事とはどういった工事であるのか、その内容や種類、かかる費用や単価相場などについて詳しく説明します。擁壁工事の注意点や費用を安く抑えるポイントについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
擁壁工事の費用や単価の目安が知りたい!
新しく家や土地を買う場合、近くにがけや傾斜地があると土砂崩れなどの危険が高まります。安心して暮らすためにも、そういった危険性のある場所には擁壁工事が必要となってきます。
本記事では擁壁工事の内容や費用、単価相場の目安などをまとめました。擁壁工事を検討している人は、ぜひ一度目を通しておいてください。
擁壁工事の必要性
擁壁工事は一般的にあまりなじみがないので、初めて聞いたという人もいるでしょう。しかし、擁壁工事は自治体の条例でも制定されており、意外と身近な工事でもあります。まずは擁壁工事とはどういったものであるのか、その内容や目的などを確認しておきましょう。
傾斜地が崩れないようにするための工事
住宅地や道路を歩いていと、斜面をコンクリートで覆っている場所を見かけることがあります。このように、傾斜のある土地をコンクリートやコンクリートブロックで固める工事のことを擁壁工事といいます。
高低差のある傾斜をそのまま放置しておくと、雨などで土砂崩れを起こしてしまうこともあるでしょう。そういった危険性をなくすためにも、擁壁工事は必要となるのです。
確認申請が必要な場合も
自分が所有している土地だとしても、擁壁工事をする場合には申請が必要な場合もあります。各自治体には通称「がけ条例」といった条例が定められており、高低差2m以上ある土地の場合であればたいていこの条例に当てはまります。
この条例に当てはまる土地の場合は擁壁工事が義務となり、各自治体への申請が必要です。申請してから許可がおりるまでには1ヶ月前後かかってしまうので、早めの申請を心がけましょう。
また、特にがけ崩れや土砂災害のおそれがある土地は、「宅地造成工事規制区域」に指定されていることもあります。これらの区域では、許可が必要となる工事がしっかりと定められています。工事を検討し始めたら、まずは自治体に確認を入れるようにしましょう。出典:宅地造成工事規制区域(東京都市整備局)
自治体によって規定は異なる
がけ条例は各自治体によって名前が異なり、内容もさまざまです。土地の高低差が2m未満でも申請が必要な場合もあるので、条例をしっかりと確認しておきましょう。どこで確認すれば良いかわからない時は、市役所などに問い合わせてしまうのが一番です。
5m以上の急傾斜地の場合
がけの高さが5m以上ある場合は、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていることもあります。この場合は市町村ではなく、住居がある都道府県の許可が必要です。
ただ、がけ条例の場合は施主が工事を行わなければなりませんが、急傾斜地崩壊危険区域の擁壁工事は一般的に都道府県が行います。出典:急傾斜地崩壊危険区域の解説(国土交通省)
擁壁工事には種類がある
一言で擁壁工事といっても、工事の方法にはいくつか種類があります。工事の種類によって、費用だけでなくメリットやデメリットも変わってきます。どの方法が自分に一番適しているか、工事内容をしっかりとチェックしておきましょう。
種類①関知ブロック擁壁
工事費用を抑えたい場合は、関知ブロック擁壁がおすすめです。まずは傾斜地をコンクリートや割石で固め、そこに関知石やブロックを積み上げていきます。
擁壁工事の中でも比較的簡単にできますが、斜めに擁壁を設置しなくてはならないことがデメリットです。傾斜地の形をそのまま使うため、土地の利用面積が狭くなってしまいます。水の逃げ場がなくなるため、水抜き穴を必ず設置する必要があります。
種類②コンクリート擁壁(RC擁壁)
擁壁を設置したい現場で型を作り、その場でコンクリートを打設する方法がRC擁壁と呼ばれるものです。RCとは鉄筋コンクリートのことを指しますが、鉄骨を入れないで作ることもあります。
メリットとしては、その場で建造するため工事の自由度が高くなることです。また、擁壁を垂直に設置するため、利用できる土地面積を広くなります。ただ、工事の時間がかかることと、工事費用が高くなるところがデメリットです。
種類③コンクリート擁壁(L型擁壁など)
L型擁壁は、既製品の擁壁を現場で積み上げていく工事方法です。RC擁壁と同じように擁壁を垂直に作れるため、土地面積を増やすことができます。
擁壁を組み立てるだけですので、工期が短くてすむところが最大のメリットです。工事費用は高額となりますが、現在ではL型擁壁が主流となっています。関知ブロックと同じく、水抜き穴の設置も必要となります。
擁壁工事費用の相場
擁壁工事を行うためには、まとまった額の費用が必要となってきます。いざという時にお金が足りなくならないように、工事費用の相場を知っておくことも大事です。工事をする段階になって慌てないためにも、だいたいの目安をチェックしておきましょう。
擁壁工事費用の目安
擁壁工事の費用の目安は、一般の住宅でだいたい数10〜数100万円ほどだといわれています。高さが1mで横幅が8mくらいの比較的小さな傾斜地であれば、40万円ほどで工事することが可能です。
逆に面積の大きな傾斜地をRC擁壁などで工事すれば、工事費用は高額になります。目安として高さ3mで幅10mの傾斜地をRC擁壁で工事した場合は、費用は400万円ほどに跳ね上がります。
擁壁工事の単価相場
擁壁工事には1m×1m当たりの土地を基準とした単価があり、単価がわかればある程度の工事費用がわかるようになります。1m×1m当たりの単価相場は、だいたい3〜5万円ほどだといわれています。
ただ、業者によっては、1m×1m当たりの単価相場の幅を広く持たせていることもあるようです。中には単価相場を3〜13万くらいだと公表している業者もあるように、条件によって単価はかなり変わってきます。
擁壁工事の費用・単価は変動する
擁壁工事の単価相場になぜこれほど幅があるかといえば、さまざまな条件によって費用が大きく異なるからです。工事の種類はもちろん、傾斜地の面積によっても単価相場や費用が変動してきます。工事の種類や面積以外の細かい条件についても見てみましょう。
擁壁工事の費用・単価が変動する理由①土地の状態
同じ面積の傾斜地でも、土地の状態によって費用は変わってきます。例えば地盤が安定した緩やかな傾斜地であれば、比較的安価で工事をすることが可能です。
しかし、急な傾斜地で土地も軟弱であれば、その分擁壁を高く頑丈にしなければなりません。その分単価が高くなり、最終的な工事費用もかさむことになります。
擁壁工事の費用・単価が変動する理由②作業工程と立地
擁壁工事を行う場所や工程も、費用や単価が変動する一因となります。例えば、大きな重機が入らないような場所であれば、小さめの重機を使って工事するしかありません。すると重機の回送数が上がったり工程が伸びたりしてしまい、結果的に費用が高くついてしまいます。
また、残土処理場までの距離が遠ければ、その分費用もかかります。残土処理の相場は1m×1m当たり6千円程度ですが、残土が汚染されている場合はこの限りではありません。汚染された残土は浄化費用がかかるため、1m×1m当たり4万円かかる場合もあります。
擁壁工事の費用を抑えるポイント
単価相場や費用が大きく変動しやすい擁壁工事ですが、できれば少しでも工事費用を抑えたいものです。費用を抑えるためには、いくつかのポイントを抑える必要があります。具体的にはどうすれば良いのか、そのポイントをひとつずつ見ていきましょう。
擁壁工事費用を抑えるポイント①元請け業者に依頼
家を新築したり土地を購入した際に、一緒に擁壁工事を行うケースもあります。その場合、ハウスメーカーや不動産業者にまとめて擁壁工事を依頼してしまうこともあるでしょう。しかし、ハウスメーカーや不動産業者は、擁壁工事に関しては専門外です。
結局は専門の業者に頼むことになり、そこで余計な仲介手数料が発生してしまいます。仲介手数料は数10万〜数100万円かかることもあり、施主にとっては大きな出費となってしまいます。
この仲介手数料を節約するためにも、擁壁工事は元請けの工事業者に頼むのがおすすめです。自分で探す手間はかかりますが、その分費用をぐんと抑えることができます。
擁壁工事費用を抑えるポイント②見積もりを複数依頼する
元請けの工事業者に頼むにしても、業者によっても相場はかなり変わってきます。1社だけに依頼するのではなく、実績のある業者を3〜4社ほど探して見積もりを出してもらいましょう。その見積もり内容を検討した上で、実際に依頼する業者を選ぶことが大事です。
費用の総額が安いだけでなく、しっかりと現地調査をして詳細な金額を出してくれる業者がおすすめです。疑問に思うことがあれば遠慮なくどんどん聞いて、疑問に対してしっかりと説明してくれるかどうかもチェックしましょう。
擁壁工事費用を抑えるポイント③助成金が使える場合も
自治体によっては、擁壁工事に助成金が出る場合もあります。高さ2mを超える大規模な工事には助成金が出る可能性も高くなるので、居住地の自治体にしっかりと確認を取りましょう。
基本的には自分で手続きを進める必要がありますが、業者によっては申請手続きを代行してくれることもあります。
擁壁工事の注意点
工事にはいろいろなトラブルがつきものですが、擁壁工事でもそれは一緒です。特に長くそこに住む場合は、工事トラブルが後々の生活に影響を与えかねません。近隣トラブルや施工トラブルを起こさないためにも、注意点をしっかりと把握しておきましょう。
分譲地を購入する場合
分譲地の場合、危険な傾斜地をそのまま放置していることはまずありません。擁壁工事を完了した状態で引き渡すのが一般的ですが、その分工事費用が土地代に加算されます。
すでに擁壁工事がされている場合でも、その擁壁が古くて後々作り直しが必要となることもあります。分譲される前から擁壁がある場合は、現在の条例などの基準をクリアしているか確認しておきましょう。
中古住宅を購入する場合
他の住宅と隣接している中古住宅で擁壁工事をする場合は、隣人トラブルに注意が必要です。たいていの擁壁は隣の敷地との堺に存在しているため、所有者同士で話し合いをしなければなりません。
一般的には高い場所の土地の所有者が工事を行いますが、所有者同士が共同で行うこともあります。どちらの所有者が擁壁工事を行うのか、費用はどうするのかなどあらかじめ取り決めておきましょう。
また、すでに擁壁がある中古住宅を買った場合も、その擁壁工事は誰が行ったのかを確認しておくと安心です。万一擁壁を作り直さなければならなくなった時に、話し合いがスムーズに行われます。
擁壁はメンテナンスが必要
擁壁は一度作ればそのままで良いというわけでなく、劣化に伴いメンテナンスが必要となります。メンテナンスを検討する目安は、コンクリートのひび割れや変形、ふくれなどがあった場合です。また、排水に問題がある場合もメンテナンスを行う目安になります。
水抜き穴の中に土や草が詰まっていたり、コケが生えている場合は注意が必要です。そもそも必要な箇所に水抜き穴が設置されていないこともあるので、その時はすぐに作り直しをするようにしましょう。
コンクリート擁壁の耐用年数は、だいたい30〜50年だといわれています。ただ、築20年くらい経つと劣化が激しくなってくるので、見た目に変化がなくても一度調査してもらうのがおすすめです。
新しく擁壁を設置し直す場合は、1m×1mの単価相場も新築の場合と変わりありません。ただ、ひび割れなどの簡単な補修工事の相場は、1m×1m当たり1万〜2万くらいが目安となっています。
擁壁工事の解体費用は?
擁壁に問題がある場合は解体しなければなりませんが、解体するにも費用がかかります。解体費用も擁壁の種類や大きさによって異なり、工事例などの目安もあまり当てにはなりません。
ただ、数10〜数100万円はすると考えておいたほうが良いでしょう。しっかりとした費用を知りたい場合は、プロの解体業者に見積もりを出してもらいましょう。
擁壁工事費用は条件によって変動することを知っておこう!
擁壁工事の特徴や費用、単価の相場などをまとめました。擁壁工事は、土砂崩れなどの災害を防ぐためにも必要な大事な工事です。
ただ、工事費用は高額になるため、業者選びなどしっかりとした下調べが必要となります。費用を安く抑えるポイントなどを参考に、後悔のない擁壁工事を行いましょう。