発破解体について詳しく解説します。発破解体がどのような建物に使われている工法なのか、メリットや日本国内での発破解体の実例も合わせて紹介!また、日本で発破解体が採用されにくい事情も合わせて説明していきます。発破解体の特徴について、一緒に見ていきましょう。
発破解体とは、爆薬を使って大型建物を解体する工法のこと。

発破解体とは、鉄筋造や鉄筋コンクリート造の大型の建物を解体する時に、火薬や爆薬、火工品を使う工法です。そのため、爆破解体とも呼ばれています。
火薬とは、ガス圧力を利用して力を加えるものを指します。また、爆薬とは、大量の熱やガス、衝撃波を起こして破壊するもののことです。こうした火薬や爆薬を加工したものを、火工品と呼びます。
出典:弾補所豆知識⑬火薬と爆薬の違いとは(呉弾薬整備補給所)
発破解体の言葉の意味

発破解体は、建物に爆薬や電気雷管と呼ばれる電気式の着火装置を仕掛け、瞬時に解体する工法の名称です。
建物では高層ビルや煙突など、土木建造物では橋梁の解体やトンネル、ダムの建設で使われています。鉱山の坑道の掘削も同様です。
発破解体を行うメリット

発破解体の特徴は、工期の短さと必要な重機の種類・数が少ないことです。これは、解体費用の安さというメリットに直結します。
通常の解体工事では、解体用の重機や、廃棄物を運搬するための車両、そしてそれぞれの作業を担当する人員が必要です。また、部材を一つ一つ解体していくので、相応の時間もかかります。
しかし、解体そのものの所要時間が短い発破解体では、必要なのは現場から廃棄物を搬出する重機と作業員だけです。このため、工期や作業員の人件費を圧縮できます。
理想的な発破解体の条件①垂直方向に建物が崩れるようにする
発破解体には、理想とされる条件がいくつかあります。1つ目は、建物が垂直に崩れ落ちていくように設計することです。
海外の初期の発破解体は、基部構造のみを火薬で爆破するというものでした。この手法は、失敗すると、飛び散ったがれきが見物人に当たって死傷者が出る可能性もあります。
現在行われている発破解体では、建物を垂直に崩すことで、がれきの飛散量を減らすことができるようになりました。
理想的な発破解体の条件②爆破を最小限に抑えるようにする
発破解体では、がれきの飛散などを最小限にするために、建物の外壁や内部の構造が、中心に向かって倒れていくように爆破の方向を調整します。
具体的には、がれきが建物の中心に畳まれる形になるよう、事前に内部の鉄筋・鉄骨を切断し、爆薬を仕掛けるための円錐形の穴を開けていく工程です。

日本で発破解体が行われていない理由①建物の密集度が高いため
発破解体は海外では活用されていますが、日本国内で行われる解体工事ではあまり採用例がありません。そこには、我が国ならではの事情がいくつかあります。
1つ目の理由は、建物が密集している日本では、発破解体時に飛び散った廃棄物が近隣に被害を与える可能性が高いためです。
こうした場所での発破解体に失敗すると、がれきの飛散や落下による損害が発生します。ましてや、人にけがをさせるような事故は絶対に避けなければなりません。また、発破解体による爆風の音や衝撃が、周囲の環境に悪影響を与えることも想定されます。
日本で発破解体が行われていない理由②法規制が厳しいため

日本では、発破解体に不可欠な火薬の取り扱いに対して、法律による厳しい制約が課せられています。失敗による事故防止策は不可欠ですが、費用や手間もかかるため、発破解体の最大のメリットである、コストの安さが失われることもあります。出典:火薬類取締法施行規則第54条の3(e-gov法令検索)
日本で発破解体が行われていない理由③頑丈な建物が多いため
日本の建物が、発破解体に向かない理由として、鉄筋コンクリート造建物の火薬の分量の調整が諸外国に比べて難しい点も挙げられます。これは、耐震補強としてせん断補強筋という鉄筋が使用されていることが多いためです。
諸外国に比べて地震が多い日本では、建物の強度を高めるうえで有効な反面、発破解体がやりにくくなる原因でもあります。

日本で行われた発破解体事例
国内の代表的な発破解体の施工事例である、国際連合平和館と、木の岡レイクサイドビルの2例を紹介します。
- 国際連合平和館
国際連合平和館は、茨城県つくば市で1985年に開かれた国際科学技術博覧会のために建てられたパビリオンの一つです。1986年に、国内では初となる発破解体によって撤去されました。
- 木の岡レイクサイドビル
木の岡レイクサイドビルは、滋賀県大津市の琵琶湖湖畔にて、観光ホテルとして建設が進められていた建物です。この発破解体工事は1992年に行われ、日本国内における20世紀最後の発破解体事例となりました。
発破解体を行う時の注意点

発破解体は、国家資格である発破技士の免許、もしくは火薬類取扱保安責任者の免状を持った者の監督の下で行わなければなりません。
発破技士は、火薬類を用いて発破業務を行うための資格です。また火薬類取扱保安責任者は、火薬類の保管をはじめとした、作業の保安に関連する免状です。
これらの資格の保有者は、現地で建物に適切な量の火薬類を仕掛けて発破をかけるほか、不発だった場合の点検・事後処理業務を行います。出典:発破技士(公益財団法人安全衛生技術試験協会)