更地渡しとは何か、定義や現状渡しとの違いについてまとめました。更地渡しにかかる費用や値引き交渉のコツ、土地売却時にトラブルにならないための注意点についても解説します。更地渡しのメリットやデメリットも取り上げているので、ぜひ参考にしてください。
更地渡しとは何か知っておこう!
土地を売却するときに、古家付きのまま売却する方法と更地渡しという方法があります。古家付きのまま売却する場合と、更地渡しで売却する場合の違いや注意点について取り上げていきます。
さらに、更地渡しとは何か詳しく解説していくので、チェックしていきましょう。メリットやデメリット、値引きのコツについてもまとめているので参考にしてください。
更地渡しについて解説
更地渡しとは、不動産業界ではよく聞く言葉です。しかし具体的に、どのような状態なのか知っている人は少ないでしょう。まずは、更地渡しとは何か、その定義や現状渡しとの違いについて取り上げていきます。
更地渡しと現状渡しの違い
更地渡しとは、不動産取引において、建物がない状態で土地を売却することです。売主の負担で建物を解体撤去し、更地の状態で土地を売却します。
一方、現状渡しとは、建物を残したまま土地を売却することです。劣化した部分なども、そのままの状態で売却することになります。買主が古家を必要としない場合は、買主が解体撤去することになります。
更地渡しの定義
実は、更地渡しには、はっきりとした定義が設けられていません。例えば更地渡しの土地を購入し、住宅を建設したとします。建築には、しっかりとした基礎を作るために、地盤を掘り起こす作業が必要になります。
その際、地中埋没物が出てくれば、当然、処理費用が発生することになるでしょう。ここで、買主側、売主側どちらが費用を負担するかでトラブルになることがあるのです。
更地渡しの作業には「どこからどこまで」とはっきり定義がないため、このようなトラブルが起こる可能性があります。
更地渡しの定義は曖昧だということを認識しておかないと、後々トラブルに繋がりかねません。そのために、買主と売主で、問題点が出てきた時の取り決めをはっきりしておく必要があります。
更地渡しにかかる費用
更地渡しには、建物の解体費用と建物滅失登記費用がかかります。建物滅失登記費用は、手数料600円がかかります。
滅失登記申請は、基本的に建物の名義人か相続人が行いますが、土地家屋調査士へ依頼することも可能です。その場合、エリアによっても値段が変わりますが、4〜5万円程度の費用がかかります。
建物の解体費用は延床面積によっても変わりますが、大体100〜300万円程度です。建物の構造によって坪単価は変わり、木造の場合は4〜5万(坪)、鉄骨造は6〜7万(坪)、鉄筋コンクリート造は6〜8万(坪)が目安です。
また、解体費用とは別に、追加請求される費用があることも覚えておきましょう。アスベスト除去費用、花壇や樹木の撤去費用、地中埋没物撤去費用など、解体費用とは別の費用が発生する可能性もあります。
更地渡しの流れ
思わぬトラブルや余計なコスト発生を防ぐため、更地渡し売却の一般的な流れを把握しておきましょう。さらに、売買の際の注意点についても解説していきます。
更地渡しの流れ①売買契約
更地渡しは、建物の解体、責任を売主が請け負うことになります。そのため、更地渡しに関連する取り決めを、売買契約書に記載しておく必要があります。
「売主の責任と負担で解体すること」「解体する建物の抹消登記に関する取り決め」「土地の瑕疵担保責任」の3点について記載しましょう。さらに、売主と買主、双方で内容を確認することも大切です。
更地渡しの流れ②解体工事
売買契約を締結したら、実際に解体工事に着手します。解体工事自体は業者に任せることになるため、売主は基本的に何もする必要はありません。
しかし、トラブルを防ぐためにも、近隣挨拶は解体業者と一緒に行うのが望ましいでしょう。解体作業は、騒音や振動などが原因で、クレームやトラブルに発展することが多々あります。そのため、解体業者選びも慎重に行いましょう。
更地渡しの流れ③引き渡し
解体工事後は、買主から手付金などを除いた代金残額を受け取ることで引渡しとなります。しかし売主は、引渡し後に建物滅失登記を行わなければいけません。
建物滅失登記を行わないと、固定資産税がかかり続けるほか、罰金が科せられる場合もあります。さらに、新しく建物を建築できないといったトラブルにもつながります。建物滅失登記申請は、解体後1ヶ月以内に行わなければいけないので注意しましょう。
更地渡しのメリット
解体費用をかけて更地にすることには、どのようなメリットがあるのでしょう。主な更地渡しのメリットについて、詳しく解説していきます。
メリット①土地が売れやすくなる
古家を解体し更地にすることで、土地活用の選択肢は大幅に広がります。買主側も解体する手間が省け、すぐに事業を始めやすいため、古家付きの土地よりも売れやすくなります。
さらに、すでに更地になっていることで、買主に余計な費用がかかりません。不動産が売れやすくなることで、土地の査定額が上がりやすいというメリットもあります。
メリット②工事費用を経費に申請できる
更地渡しには、工事費用を経費にできるという大きなメリットがあります。不動産を売却すると譲渡所得になるため、所得税や住民税が発生します。
しかし、更地渡しにすることで、解体費用と建物の取得費を経費として計上することができるのです。譲渡所得の金額は「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で求めることができます。
しかし、国税庁が定める「3000万円の特別控除額制度」があるため、この特例を受けた場合は、経費申告する意味がないので(売却する土地が3000万円を下回る場合)注意しましょう。出典:No.1440譲渡所得 土地や建物を譲渡したとき(国税庁)
メリット③地中埋没物の調査ができる
地中埋没物は、新しい建物を建てる際に撤去が必要になるため、トラブルの元になることがあります。更地渡しすることで埋没物を発見できれば「地歴調査済み」と告知でき、安心な土地だとアピールできます。
埋没物に気がつかないで土地を売却することのトラブルも回避できるため、売主側にとってもメリットは大きいでしょう。
更地渡しのデメリット
更地渡しにはメリットがありますが、同時にデメリットもあります。デメリットも知った上で、更地渡しにするか決定しましょう。
デメリット①建物の資産価値を失う
建物を取り壊す際は、建物自体の資産価値をしっかり把握しておく必要があります。また、更地渡しにすれば売れやすくなるからといって、解体費用を全額、売値に上乗せすることはできないでしょう。
さらに、住宅があることで受けられていた、固定資産税の優遇処置も無くなります。更地にすることで、納税額も大幅にアップすることを考慮しなければなりません。更地渡しは、高く売れる人気エリアでない限り、リスクを伴う可能性が大いにあります。
デメリット②追加工事が必要な場合がある
地中埋没物は、解体作業にさまざまな影響をもたらすため注意が必要です。実際に工事を進めないと状況がわからないため、見積もりより大幅に費用がオーバーする可能性があります。
過去に何度か解体工事をしている土地では、基礎部分が埋まっている可能性もあります。古くから活用されている土地は、地中埋没物がある可能性が高いため注意が必要です。
デメリット③トラブルが発生する可能性がある
更地渡しの定義が曖昧であることは、前述した通りです。更地にするための事前調査や、埋没物処理費用などは、売主、買主どちらが負担しなければならないかはっきりと決まっていません。不動産会社によっても、その認識は異なります。
そのため、追加工事が必要になって費用が大幅に跳ね上がった場合や、住宅を建てようとして埋没物が新たに見つかった場合などに、トラブルに発展するケースがあります。更地渡しの場合、これらトラブルが起こらないように、しっかり打ち合わせや書面の確認を行いましょう。
更地渡しがおすすめなケース
更地渡しにはメリットもデメリットもあるため、どちらが良いのか迷うことも多いでしょう。更地渡しにおすすめのケースとは、どのような場合か解説します。
建物が老朽化している
人が住めないほど老朽化してしまった建物がある場合は、解体して更地にした方が買い手がつきやすいでしょう。建物は空き家になると、急激に劣化します。
空き家である期間が長ければ、柱や床が腐食したり、窓ガラスが割れるなど状態は悪くなる一方です。また、空家対策特別措置法により、空き家を放置することで指導を受けることもあります。そのため、人が住めなくなるほど劣化した住宅がある場合は、更地にした方が良いでしょう。
建物がアリクイ被害に遭っている
築年数が浅く、まだ人が住めそうな住宅でも、シロアリによるアリクイ被害にあっている場合は解体した方が良いでしょう。シロアリが発生した家は住宅価値も大きく下がり、売却時のトラブルにもつながります。
強度がない建物をそのまま放置しておくと、台風や地震などの災害で、倒壊、飛散する恐れもあり危険です。人命にも関わることですので、解体した方が安全で、余計なリスクを減らすことができます。
事故物件
孤独死や自殺などが起きてしまった事故物件は、買い手がなかなかつきません。建物自体に問題がなくても、解体して更地にした方が良いでしょう。
更地にした場合でも、心理的瑕疵を告知する義務はありますが、建物が残っている場合よりも買い手が見つかりやすくなります。入居者が見込めそうにない場合は、更地にする方がメリットは大きいといえるでしょう。
更地渡しの注意点について
一般的な不動産の売却とは異なる、更地渡しを行う際の注意点について解説します。更地渡しはトラブルが起きやすいため、どのような点に注意すべきか見ていきましょう。
契約内容を確認する
更地渡しの際は、契約内容をしっかり確認する必要があります。売買契約書には「売主の責任と負担の元で解体すること」「解体する建物の抹消登記に関する取り決め」「土地の瑕疵担保責任」の3点が記載されているか確認しましょう。
建物を撤去するという内容や瑕疵担保責任についての内容も、買主と売主双方でしっかり把握する必要があります。後々トラブルにならないよう、認識にズレがないか確認しましょう。
ローン特約について決めておく
ローン特約とは、買主の住宅ローン申請が承認されない場合に売買契約を白紙とする仕組みです。その場合売主は、買主から受け取った手付金を返金しなければなりません。
買主は住宅ローンの融資を受ける場合が多いので、ローン特約の解除期限内に、金融機関からの融資承認を売主に示すことになります。そのため、トラブルにならないよう、ローン特約の解除期限を決めておきましょう。
融資承認を確認してから着工する
買主がローンを組む場合は、解体工事をするタイミングにも注意が必要です。買主が新築を考える場合住宅ローンを組むのが一般的ですが、万が一融資承認されなければ契約は解除されます。
もしも、解体工事に着手していた後で、融資承認が下りずに契約が白紙になれば費用は無駄になってしまいます。そのため、解体工事は必ず、買主がローン審査に通った後に着手するようにしましょう。
引き渡し遅れに注意する
更地渡しを行うには、土地に建っている建造物を全て解体撤去しなくてはなりません。その際、近隣住民とのトラブルに気をつけないと、引き渡しが遅れる可能性があります。
解体工事で多いのが、近隣住民との騒音や振動によるトラブルです。騒音や振動などが原因でクレームが入れば、解体工事自体を中断せざるを得ない場合も出てきます。そうすると引き渡し日に間に合わず、買主とのトラブルに発展する可能性があります。
場合によっては債務不履行による損害賠償請求や、契約解除などの法的トラブルにまで発展することも考えられるでしょう。そのようなトラブルにならないために、解体業者にも騒音や振動には配慮してもらう必要があります。
固定資産税の精算タイミングに注意する
固定資産税は、その年の1月1日時点での所有者に課税されます。年末までに解体工事を終え建物抹消登記を行った場合、固定資産税は小規模住宅などの特例措置が適用されなくなります。
その結果、納税額が大幅に増えることになるので注意が必要です。年をまたいで更地渡しを行う場合は、解体工事日や引き渡し日についてよく検討しましょう。
解約手付と違約金について理解しておく
更地渡しを行う際には、解約手付と違約金についても理解しておく必要があります。解約手付とは、売主や買主が契約履行に着手するまでの間、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を返すことで契約解除できる手付金のことです。
解約手付と違約金は、似ているようで全く性質は違います。解約手付と違約金について、契約の前にしっかり把握しておきましょう。
地中埋没物に注意する
現在は産業廃棄物については、法規制がされています。しかし一昔前までは、ずさんな廃棄物処理が行われていたことも少なくありません。そのため、現在でも地中に、住宅を解体した残骸などが埋まっていることがあります。
地中埋没物は前述の通り、売主と買主との間でトラブルになるケースが多々あります。過去に解体工事をしている土地では、基礎部分が埋まっていることもあるので注意しましょう。
更地渡しでトラブルにならないためのポイント
更地渡しで起こりやすいトラブルを避けるためには、どのような点に注意すべきでしょう。トラブルが起こらないよう、気をつけるべきポイントを解説します。
近隣住民への配慮を忘れない
更地にするために解体工事を行う際には、近隣住民への配慮が大切です。解体工事は、振動や騒音が発生するだけでなく、近隣の建物に損害を与える可能性もあります。
解体工事中、近隣住民は大きなストレスを抱えることになるため、些細なことでもクレームに発展する場合もあります。近隣住民の不安を少しでも和らげるために、解体業者も配慮する必要があるでしょう。
解体業者選びも非常に重要ですので、複数社に見積もりを依頼して信頼できる業者を選ぶようにしましょう。また、解体前にしっかりと近隣住民に挨拶して、万全な体制で作業することが大切です。
解体内容はしっかり書面化する
売買契約後、売主側で建物を解体する際の範囲や内容は、しっかり書面に記載しておきましょう。更地渡しの定義は曖昧な部分が多いため、トラブルにならないためにも書面に残すことは大切です。
また、仲介業者任せにするとトラブルに繋がることもあるため、しっかり書面化することが重要です。一般的に解体内容については、売買契約書に記載することが多いと覚えておきましょう。
更地渡しと値引き交渉について
新築住宅の建設を検討している場合、土地をなるべく安く購入したいと考えるでしょう。土地を購入する際、解体費用を負担する代わりに値引きしてもらえるのか解説していきます。
解体費用分の値引き交渉は可能
土地を購入する際、建物の解体費用を買主が負担する場合、値引きしてもらえるのでしょうか?値引きは、買主と売主、双方で納得できればもちろん可能です。
交渉としては値引きは有効ですが、解体業者を自身で探し、手続きを進めなければいけません。値引き金額よりも、解体費用の方が高くつく可能性もあるでしょう。そのため、まずは更地渡しと値引きの双方から交渉を行うのが良いでしょう。
決めるのは売り主
値引き交渉はもちろん可能ですが、最終的に決めるのは売主です。売値は「この金額なら売ってもいい」という、売主の希望に基づく額です。
そのため、必ず買主の希望通りに値引きしてもらえるとは限りません。売主の希望額で購入したいという、新たな買主が現れる可能性も考慮しておきましょう。
まずは交渉してみる
値引きについては、要望を伝えないとわからないので、まずは売主に交渉してみましょう。その際、ただ値引き金額を提示するよりも、更地渡しと双方から交渉するのが有効です。
また、結果として更地渡しの方がお得なケースもあるため、必ずしも値引きにこだわる必要はありません。決定するのはあくまでも売主ということを念頭に置いて、更地渡しと値引きの双方からアプローチしてみてください。
更地渡しは注意点を把握してトラブルを回避しよう!
更地渡しの定義は曖昧なため、後々トラブルになることが少なくありません。また、解体工事を行わなければならないため、売主の負担は大きくなります。しかし、更地渡しにすることで、不動産が売れやすくなるケースもあります。
更地渡しの注意点や、メリット、デメリットを把握し、更地渡しにするべきか現状渡しにするべきか見極めましょう。