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空き家が増えた背景とは?

近年、我が国が抱える問題の1つとして「空き家問題」があります。空き家が増加した1つの背景として挙げられるのが、「固定資産税の住宅用地特例措置」です。
固定資産税は、各自治体の固定資産課税台帳に登録されている人に課税され、毎年1月1日時点における土地・家屋の所有者がこれに該当するというものです。
固定資産税は土地と家屋の両方に課税されるため、更地の場合と敢えて建物を残す場合とで金額が異なります。
一般的に更地の固定資産税は、ほかの不動産と比較しても高くなり、また更地であると固定資産税の軽減措置が適用されないといった点が、空き家の増加を促進していると懸念されています。
空き家対策特別措置法とは

全国各地で放置された空き家の増加が問題視されている昨今において、「空き家等対策特別措置法(空き家法)」が2014年11月に成立しました。
この法律では、「空き家の実態調査」や「空き家の所有者への適切な管理指導」、「空き家の跡地についての活用促進」、「適切に管理されていない空き家を特定空き家にすることができる旨」、「特定空き家に対して助言、指導、勧告、命令措置ができる旨」が記されています。
また、「特定空き家に対して罰金などの行政代執行を行うことができる旨」も明記しています。
居住、その他の使用がなされていないことが常態化している建築物が「空き家」と定義されており、具体的には1年間を通して人の出入りの有無や水道、電気、ガスの使用状況などから総合的に判断されます。
出典:空家等対策特別措置法とは|NPO法人 空家・空地管理センター
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特定空家等と判断される4つの基準

建物が建っている状態であれば、固定資産税の軽減が適用されます。しかし、管理が不十分で放置されている、いわゆる「空き家」の場合は空き家対策特別措置法において「特定空家」に指定される可能性があるでしょう。
この「特定空き家」に指定されると、「住宅用地の軽減措置特例」の対象外となります。
「特定空家」に指定される具体的な要件としては、2015年に施行された「空家等対策特別措置法」に基づき、国土交通省がガイドラインを掲げています。ここからは、特定空き家等と判断される4つの基準について確認していきましょう。
1:倒壊の恐れのある建物
特定空き家と判断される基準の1つに「放置することで倒壊など保安上危険となるおそれのある状態」といった項目が設けられています。
具体的には部材の破損や不同沈下などによって、建築物に顕著な傾斜が見受けられる場合や基礎に大きな亀裂や多数のひび割れ、変形または破損が発生している場合です。
そのほかにも、腐食や蟻害によって土台に著しい断面欠損が発生していたり、柱やはりに大きな亀裂や多数のひび割れ、変形または破損が発生していたりしている状態もこれに該当します。
2:衛生的に問題のある建物
特定空き家と判断される基準の1つに「放置することで衛生上有害となるおそれのある状態」といった項目も設けられています。
この項目では、「建築物や設備等の破損などが原因」の場合と「ゴミなどの放置や不法投棄が原因」の場合の2つのケースがあります。
具体的な例としては、浄化槽などの放置や破損などによって汚物の流出や悪臭の発生が見受けられ、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態が挙げられるでしょう。
また「将来そのような状態になることが予見される状態」においても、この項目に該当するケースがあることに注意が必要です。
3:景観を損なう建物
特定空き家と判断される3つ目の基準として「適切な管理が行われていないことによって景観を損なっている状態」といった項目も設けられています。「既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態」や「周囲の景観と著しく不調和な状態」などがこれに該当します。
具体例としては、屋根や外壁などが汚物や落書きなどによって外見上、著しく傷んだり汚れたりしたまま放置されている場合です。
そのほかにも、多数の窓ガラスが割れたまま放置されていたり、敷地内にごみなどが散乱、山積したまま放置されていたりすることも「特定空家」と判断される可能性が高くなります。
4:その他周囲の治安を乱す建物
特定空き家と判断される最後の基準として「周りの生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」といった項目が設けられています。「立木が原因」の場合や「空き家等に住み着いてしまった動物が原因」の場合、「不適切な管理が原因」の場合がこれに該当します。
具体的には立木の腐朽や倒壊、枝折れなどが生じ、近隣の道路や家屋の敷地などに枝などが大量に散らばっていたり、動物の鳴き声やその他の音が頻繁に発生し、近隣住民の日常生活に支障を及ぼしたりする場合が挙げられるでしょう。
空き家が特定空き家と判断されるまでの過程

空き家対策特別措置法に基づいて「特定空き家」の指定に至るまでには、自治体からの指導、命令といった手順を踏む必要があります。空き家が特定空き家に指定されるにはまず、空き家の近隣住民の苦情や通報などが必要です。
これらを受けた市町村の自治体職員が、特定空き家の基準に該当しているかの調査を実施します。「特定空き家」に該当する可能性が高いと判断されれば、空き家の所有者に連絡がいき、空き家対策についての「助言」が与えられます。
助言に従わなかった場合には強く改善を求める「指導」が行われ、指導にも従わない場合、「勧告」を受けることになりますが、この勧告を受けると「住宅用地の特例措置」の対象外です。
市町村からの勧告にも従わない場合には、行政処分に値する「改善命令」が発出され、これに従わない場合は、空き家等対策の促進に関する特別措置法に基づいて罰金が科されることとなります。
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)【概要】|国土交通省
特定空き家と判断される前にできる5つの対処法

ここからは、特定空き家と判断される前に実践できる5つの対処法について紹介していきます。5つの対処法を大きく大別すると「空き家を手放す対処法」と「空き家を所有・利用する方法」です。
それぞれの対処法においてはメリット・デメリットがあるため、より良い対処法を判断して実践してみることをおすすめします。
1:売りに出す
空き家を利用する予定がなかったり、相続人が複数人いたりする場合には、空き家を売りに出すことも1つの対処方法です。相続によって取得した空き家を売却した場合は、3,000万円までの控除を受けることができます。
控除を受けるためには、相続日から3年を経過する年の12月31日までに売却するといった要件を満たす必要があります。
出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国土交通省
2:修繕する
現状は空き家の状態であっても、将来的には居住用として利用したいと考えている場合は、修繕や定期的な清掃を行い、空き家を清潔に維持しておくことが大切です。景観などを損なってしまうと特定空き家と判断される恐れがあるため、草むしりなども必要な対処法といえます。
3:人に貸し出す
空き家を売却する対処方法を紹介しましたが、売却以外にも賃貸として空き家を貸し出し、賃料収入を得るといった方法もあります。
売却したり、賃貸に出したりする方法はいずれも購入者や賃借人のニーズを含むため、より売りやすく・貸しやすくするために空き家を清潔に保っておくと良いでしょう。
また不動産取引となるため、不動産会社などに売却価格や募集賃料の査定を依頼してみることをおすすめします。
4:別荘として使う
現在住んでいる住宅はあるが、相続などによって不動産を取得した場合、空き家を別荘として利用することも可能です。
建物や住宅設備機器などは人が住まなくなり、使われなくなると劣化が早くなりやすいため、別荘として利用することで建物や住宅設備機器などの劣化を遅らせることも有効な対処方法の1つでしょう。
5:管理サービスを利用する
空き家を清潔に保つため、定期的な修繕や清掃は大切な対処方法の1つですが、遠方などに住んでいるため頻繁に空き家に足を運ぶことができないといったケースがあります。そのような問題で悩んでいる方は、空き家の「巡回管理サービス」の利用を検討してみましょう。
このサービスの利用では、たとえ遠方に住んでいたとしても、管理サービス会社が代行して空き家の管理・清掃を行ってくれます。ただし、このサービス利用には、ある程度の経費を要する場合があるため注意しましょう。
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固定資産税の増税以外にもある空き家を放置する4つのデメリット

ここからは、空き家を放置することによって固定資産税の増税以外にも生じるデメリットについて解説していきます。これまで空き家対策特別措置法を中心に空き家のデメリットについて解説してきましたが、実際にはそれ以外にもデメリットが潜在しています。
また所有者だけではなく近隣住民にとっても不利益となることもあるため、これらのポイントは十分に確認しておくと良いでしょう。
1:防犯面で危険が高まる
空き家は人が住んでいないため、防犯面で危険が高まりやすくなります。放置された敷地内に人が入り込んで、失火による火災の発生も考えられます。
不審火や放火などによって近隣住民にまで被害が及んだ場合には、空き家の所有者が損害賠償責任を負う可能性があるため、注意が必要でしょう。
2:劣化が加速する
空き家となった建物は、人が住まないことで風を通さない状態が長く続き、木材が腐りやすくなるといわれています。築年数がかなり経過した家屋は老朽化が一層加速するため、注意しましょう。
3:損害賠償責任を負う可能性が高まる
放置された空き家は樹木が伸び放題になったり、雑草が生い茂ったりする状態になりやすいです。このような状況下ではシロアリの発生源になったり、野良化した犬や猫の住処になったりと、近隣住民に対して迷惑を及ぼすことがあります。
また、老朽化した建物や樹木などが倒壊したことによる被害には、損害賠償責任を負う可能性もあります。損害賠償額が数千万から数億と高額になるケースも想定されるため空き家の所有者は、他人に危険を及ぼさないよう適切な管理を行う必要があります。
4:土地の価値が落ちる
空き家があるだけでその土地・エリアの資産価値が下落するといわれています。これは近隣全体における景観が、空き家によって損なわれているからです。
空き家となったまま放置されたエリアを見て、良い印象を持つ人は少ないことからも空き家の価値だけでなく、周りの家の資産価値にも悪影響を及ぼしてしまうことを念頭に入れておく必要があります。
固定資産税以外の空き家にかかる4つの税金

空き家に関わる税金は、固定資産税だけではありません。ここでは、空き家を取得した場合や、保有・維持に課税される税金について紹介していきます。
前述したように空き家に対する対処法はさまざまあるため、これらのことを念頭に置いて対処法の参考資料として活用してみてください。
1:相続税
人が住んでいない空き家であっても、土地と建物という不動産であることには変わりないため、空き家を相続した場合には取得者に相続税が課税されます。
通常、亡くなった人が生前居住していた不動産を相続する場合、一定要件を満たすことによって「小規模宅地等の特例」が適用されます。
しかし、人が住んでいない不動産においては「小規模宅地等の特例」が適用されません。そのため、家族が住んでいる不動産を相続する場合に比べて相続税が割高になってしまう場合もあります。
2:都市計画税
特定の市街化区域内にある建物や土地に対して課税されるのが「都市計画税」です。
毎年1月1日時点における所有者に対して固定資産税と一緒に通知され、固定資産税と同時に納税します。税率は0.3%以内とされ、各自治体によって決められています。
3:固定資産税
利用していない空き家であっても土地と建物に固定資産税が課税されます。住宅の建っている土地においては「住宅用地の特例」によって、固定資産税が最大6分の1の減免措置を受けられる場合もあります。
ただし、この「住宅」とは「居住できる建物」であることが条件になります。そのため、適切な管理をせずに、そのまま放置して景観を損なっている空き家については、「居住できる建物」には該当しないことがあります。
4:所得税
購入、贈与、建築などによって不動産を取得した場合に取得者に対して課税される税金が「不動産取得税」です。これは有償・無償にかかわらず課税されることから、無償譲渡であっても課税されることになります。
原則として、価格は固定資産税課税台帳に登録されている「取得した不動産の価格」によって決定され、「取得した不動産の価格(課税標準額)×税率」によって算出されます。
空き家対策特別措置法について知り早めの対策をしよう

ここまで空き家対策特別措置法を中心に空き家対策について解説してきました。空き家を放置したままにしておくと、固定資産税などの税金や特定空き家と判断されるなどのさまざまな弊害が生じてしまいます。
空き家対策特別措置法を適切に理解し、早めの対策を講じることが大切です。
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