「廃棄物」と一口にいっても、実はそのなかでも細かく分類がされていて、まずもっとも大きな分け方としては「一般廃棄物」と「産業廃棄物」です。これはどちらも聞いたことがあるのではないでしょうか。
今回のメインテーマである「安定型産業廃棄物」は、産業廃棄物のうちのひとつとして分類されているものです。名称にはなじみがないかもしれませんが、品目を聞けば日常で目にする身近なものばかりだということがわかるでしょう。
廃棄物は、正しい分類を知ることで適切な分別・処理を行うことができます。安定型産業廃棄物は、廃棄物のなかでも危険の少ない品目ばかりではありますが、処分の仕方にはきちんとしたルールが設けられています。
順番に、詳しく見ていきましょう。
安定型産業廃棄物とは
安定型産業廃棄物の定義
人々が日々の生活を営んでいるなかで発生する廃棄物は、もっとも大きく分けると「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類となります。
さらに産業廃棄物は、安定型産業廃棄物・管理型産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の3種類に分類されています。
この3種類のなかでもっとも生活環境に支障を及ぼす恐れの少ないものが、安定型産業廃棄物です。「有害物質や有機物などが付着しておらず、また雨水などにさらされても性質や状態がほとんど変化しない、安定した廃棄物」と定義されています。
3種類のうち、毒性などがあってもっとも危険なものは、特別管理産業廃棄物です。そしてそのほか安定型産業廃棄物でもなく、特別管理産業廃棄物にも該当しないものが、管理型産業廃棄物と呼ばれます。
安定型産業廃棄物の品目
安定型産業廃棄物と呼ばれる廃棄物の品目は5種類です。これらは「安定型品目」「安定5品目」という呼び方がされることもあります。それぞれどのようなものであるのか、具体例を挙げて紹介していきます。
がれき | 新築、改築、解体工事などで発生する、コンクリートやアスファルト破片など |
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ゴムくず | 天然ゴムくず(ゴム、金属、廃プラスチック、自動車等破砕物、廃プリント配線板などの廃容器包装は除く) |
金属くず | 足場パイプ、鉄骨鉄筋くず、金属加工くずなど(ゴム、金属、廃プラスチック、自動車等破砕物、廃プリント配線板などの廃容器包装は除く) |
廃プラスチック類 | 廃ビニール、合成くず、廃シート類、廃塩化ビニール、廃発泡スチロール等梱包材など(ゴム、金属、廃プラスチック、自動車等破砕物、廃プリント配線板などの廃容器包装は除く) |
ガラスくず、コンクリートくず、陶器くず | ガラスくず、陶磁器くず、コンクリートくず、耐火レンガくずなど(廃ブラウン管側面部、廃石膏ボードなどが除く) |
このように見ると、解体工事や建築工事の現場でよく見る廃材ばかりですね。工事現場で発生する産業廃棄物は、ほとんどが安定型産業廃棄物といえるのです。
処分場による定義
「安定型産業廃棄物」ということばは、法律用語として存在しているわけではありません。
産業廃棄物の最終処理場は「安定型」「管理型」「遮断型」と分類されていて、施設の能力に差がつけられています。
このうち「安定型」の処分場で最終処分しても問題ない、とされているものが、すなわち安定型産業廃棄物である、ということなのです。つまり、処理場の分類が先んじて存在しており、廃棄物にはそれに応じてどこの処理場で処分されていいかという基準がある、ということなのです。
安定型最終処分場の特徴
安定型産業廃棄物を処理する「安定型最終処分場」は、生活環境に支障が少ない廃棄物のみ扱う処分場であるため、ほかの処分場と比べて構造はもっともシンプルです。地中空間にそのまま埋め立てができるほか、埋め立て空間と外部を仕切るための遮水工といったものも必要ありません。
有害物質や有機物の付着がなく、性質や状態にほとんど変化がない廃棄物のみとなるので、穴を掘って土をかぶせるだけ、という埋め立て方法でも問題がないからです。したがって、処理費用も比較的安価で済みます。
ただし、埋め立て前に「安定型産業廃棄物以外のものが混ざっていないか」ということを調べる検査や、浸透水の水質分析を定期的に行うこと、および雨水が流入しない措置は義務づけられており、そのための設備を備えていることも必須となっています。