土蔵の解体にかかる費用や、土蔵解体の手順について解説します。土蔵の建築様式の特徴や土蔵解体費用の相場、土蔵の解体や撤去の手順を詳しく説明!解体費用を減らす方法も紹介します。土蔵の解体手順や費用を覚えて、効率よく解体を行う参考にして下さい。
土蔵の解体に係る費用や手順を確認しよう
日本の建築様式の一つである土蔵は、構造や建築材料が複雑です。そのため、解体も通常の木造建築物の解体よりも多額の費用がかかります。
土蔵の解体にかかる費用単価の相場や、解体工事の流れや撤去の手順を知ることで、費用の負担が少なくなることもあります。土蔵の解体費用相場や解体の手順を覚えて、効率よく土蔵の解体を行いましょう。
土蔵とは?
土蔵の解体について解説するためには、まず土蔵の構造について知る必要があります。土蔵とはどのようなものなのかを説明します。
日本の伝統的な建築様式のひとつ
土蔵は、一般的に蔵と呼ばれる日本の伝統的な建築様式の建物です。通常、柱を1mくらいの間隔で立てて、その外側を竹を格子状にしたものを縄で編んだ竹小舞で覆います。
その上から藁を混ぜて作った壁土や砂の入った白土、さらに仕上げに漆喰で20~30回壁土を塗り、厚さ30cmほどで仕上がりです。ユーチューブの動画などを見ると、土蔵の造りがよくわかります。
土蔵がいつから建てられるようになったかは不明ですが、江戸時代に盛んに建てられるようになりました。昔ながらの街並みが残る川越や倉敷などには、倉庫と店舗や住宅を兼用した見世蔵と呼ばれる土蔵も多くみられます。
漆漆喰の技術による防火構造建築物
土蔵は、日本建築における耐火構造建築物です。外壁を土壁として白土を塗り、水酸化カルシウムを主成分とした漆喰の上塗りで仕上げるので、真っ白な壁に仕上がります。
土蔵は耐火性能が高いため、主に防火・防犯のための倉庫や貯蔵庫、酒蔵として用いられていました。土壁なので通気性がよく内部の湿度が低く保たれるため、カビが発生しにくく家財を長期的に保存できます。
ただ、土蔵の屋根は木造部分の骨組みの上にそのまま置かれているようなものがほとんどです。そのため安定性がなく、解体には注意が必要でしょう。
土蔵解体における単価の相場
土蔵の解体にはどのくらいの費用がかかるのか、単価の相場を紹介します。また、なぜ費用が高額なのかの理由も解説しましょう。
解体にかかる単価の相場
土蔵の解体費用は状態によって違いますが、坪当たりの単価の相場の目安はおよそ3.5~5.0万円です。普通の木造建築の建物の解体費用は3.0万円~なので、土蔵の場合は少し割高といえるでしょう。
解体費用が高くなる理由
土蔵の解体費用が割高になる理由はいくつかあります。まず、土蔵の壁は土と藁、木からできているので、それらの分別が必要です。
土蔵の壁に土を練りこむ際には、にがりを使用します。このにがりは農作物に被害を与えるので、そのまま土に埋めることができません。そのため、分別をする必要があります。
分別するためには、重機での解体が難しくなり、手作業が必要な場合もあります。その際に古い建物のため、多くの埃が発生し、体に良いとは言えません。そのため、マスクなどの装備が必要になります。
また、土蔵の解体には専門性が必要ですが、その技術を持つ土蔵解体業者は年々減っています。供給できる業者が少ないことも、費用単価が割高になる原因と言えるでしょう。
土蔵の解体や撤去の手順
手順①土蔵内のつくりと中を確認
土蔵の解体を検討した際には、業者に依頼する前に土蔵の内部に残っている家財道具などをチェックします。中には、価値のある骨董品が眠っていることもあるので、専門の買い取り業者などに頼むとよいでしょう。
また、土蔵内の造りもチェックしておきます。土蔵の柱にも価値のある古材が使用されている場合があるので、古材専門の買い取り業者に調査してもらうとよいでしょう。
ただし、土蔵の柱を買い取ってもらうためには工事が難しくなってしまう場合があり、工事費用が割高になってしまうことが多いので注意してください。
手順②解体業者に調査依頼
土蔵の中を確認後、解体工事業者に見積もりを依頼します。業者によって強い分野が違ったり、中には親身になってくれなかったりする業者もあるでしょう。自分に合った業者を見つけるために、見積もり依頼は少なくとも2~3社から取るのがおすすめです。
見積もりを依頼した際には、土蔵にある現地の調査をしてもらってから打ち合わせを行います。現場の状況や土蔵の状態によって、かかる費用は違ってくるでしょう。
土蔵のサイズだけで見積もりを取ろうとする業者は、後からトラブルになる可能性があるので、依頼しないほうが無難です。
手順③見積もりの確認と契約
実際に現場を調査してもらった後、見積書を提出してもらい依頼するかどうかの検討をしましょう。見積もりが詳細まで記載されていないと、後で追加料金が発生する場合があります。どの作業に、どれくらいの費用が必要かがわかる明細を出してもらうのがおすすめです。
契約後は、業者の人とともに近所へ挨拶回りを行います。土蔵の解体工事は騒音や粉塵など、クレームになりがちな作業が多いです。そのため、挨拶回りは地域でのトラブル回避のために必要不可欠でしょう。
手順④足場組立と養生シートの設置
土蔵の解体は先述のように分別が必要なため、重機で一気に壊すことができません。そのため、まず屋根を取り壊すための足場を組み立てます。また近所への粉塵や騒音を抑えるために、足場の周りに養生シートを設置します。
手順⑤土壁や残留物の撤去・処理
実際の作業の前に、土壁や土蔵の中にある不用品をすべて撤去する必要があります。これは、自分でできる作業も多いので、ある程度しておくと工事が早く進み、費用も減らせるでしょう。
作業は屋根の瓦の取り外しから行い、屋根瓦がなくなれば土蔵解体作業を開始します。重機が使えない場所は手作業になってしまうので、費用がかかるでしょう。また、土壁の土と藁を手作業で分別します。
手順⑥産業廃棄物の分別と撤去
作業の終了後、産業廃棄物を分別して撤去し、処分場に運びます。産業廃棄物を処分場で処理しないと法律違反になるので、業者にきちんと廃棄したか確認するとよいでしょう。
手順⑦整地後に現場確認と引き渡し
最後に、整地工事をして終了です。整地がされていないと、土地を売却する際に整地費用がかかる場合もあります。そのため、仕上げとして整地まできちんとしてもらいましょう。
整地が終わったら、自分の目で現場確認を行います。整地に問題がなく、近隣への配慮がされており、産業廃棄物がきちんと撤去されていれば、引き渡しになります。
今後のトラブルを回避するためにも、気になるところがあれば遠慮なく依頼し、対応してもらうことがおすすめです。
手順⑧解体業者に代金を支払う
現地確認をして納得すれば、引き渡しをして代金の支払いです。土蔵の解体工事のマニフィストと、建物滅失登記などの書類を確認して、それらの書類と引き換えに代金を支払います。
土蔵解体費用を減らす方法
無駄なものは自分で撤去しておく
土蔵の解体費用を減らすには、自分で出来る作業は工事開始前に前もってやっておくとよいでしょう。
家庭ゴミとして出せる布製品や陶器類も、業者で廃棄すると産業廃棄物として扱われます。そのため、処分費が割高になってしまうので、これらの自分で捨てられる物は事前に処分しておくとよいでしょう。
また、土蔵の中にある不要な物は撤去しておきます。業者の作業が少なくすむようにすれば、工事がスムーズに行われ、工事日数が減らせられます。これにより、人件費を削減でき、コスト削減に繋げられるでしょう。
土蔵内で買い取ってもらうものを見つける
古い土蔵の中を片付けると、骨董品などが残っていることがあります。がらくたのように見えても、中には思いがけないお宝が眠っていることもあります。捨てる前に専門家に鑑定を依頼し、価値のある物は業者に買い取ってもらうとよいでしょう。
解体の補助金制度を確認する
地方の自治体によっては、空き家や建物の解体に補助金制度を導入している地域があります。中には、土蔵でも補助金が受け取れる場合があるので、工事前に役所に問い合わせて必要な書類などを揃えておきましょう。
ただし、補助金の受付は4月からの場合が多く、予算に達すると受付終了になってしまいます。また、補助金の交付が決定する前に工事を始めてしまうと対象外になってしまう場合もあるので、工事時期には注意しましょう。
複数の業者で見積もりを行う
工事費用の見積もりは業者によって差があるため、複数の業者に見積もりを依頼することがおすすめです。業者は解体の仕方や後始末、仕上げの整地まで、それぞれの得意分野を活かした工事を行います。そのため、自分のニーズに合う工事をしてくれる業者を選びましょう。
気をつけないといけないのが、見積もりの費用が極端に安い場合や、一式いくらという表示をする業者です。この場合、後から追加費用を請求されるなどのトラブルに発展してしまいます。必ず、何にいくらかかるかの詳細を明記した見積もりを提出してもらいましょう。
土蔵の解体手順や費用を覚えておこう!
火事が多い江戸時代に、倉庫としてさかんに建てられた土蔵の造りは大変複雑です。そのため解体や撤去をするには、費用が割高になることがあります。
しかし、土蔵解体の手順や費用の相場を把握しておくと、業者との打ち合わせもスムーズにでき、無駄な費用を請求されることもありません。手順や費用を覚えて、効率よく土蔵の解体を行いましょう。