普段あまり聞き慣れないことばである「事業用地」とは、どのような土地を指すものなのでしょうか。賃貸住宅や事務所などに使う土地は、事業用地に含まれるのか、気になる点も説明していきましょう。また、ビジネスの拠点として事業用地を取引する場合の、留意しておく法律なども記載しているので、ぜひチェックしてみてください。
事業用地とは
事業用地の定義
事業用地とは、収益を得る目的で利用・所有される不動産のことです。一般的には「物の生産・流通・保管」に関わる産業施設用地を指し、工場・研究所・倉庫・配送センターなどが含まれます。
広義な意味では、オフィスや事務所・商用ビル・店舗・投資目的の賃貸マンションなどが建っている土地も、事業用地に含まれます。
私的な居住用である不動産の場合は、事業用地には含まれません。ただし、企業の従業員が居住する寮などの住宅に関しては、事業用地に区分することができます。また、事業用地を解体した場合、固定資産税の軽減措置は適用外になります。 出典:固定資産税|償却資産(東京都主税局)
事業用地の必要性
ビジネスを展開するには、その拠点となる土地が必要になります。たとえば、ビジネスに車が必要な場合は駐車場、物を生産する場合は工場、物を販売する場合は店舗など、すべてそれらを行うための場所がないと、ビジネスが成り立ちません。
そのような理由から、ある程度の規模でビジネスをするには、事業用地が必要だと考えられます。
事業用地の取引にはさまざまな法律が関係する
事業用地に関する取引を行うには、さまざまな法律に沿った手順で進めていかなければなりません。特に留意しておくべき法律は、都市計画法をはじめ、国土利用計画法や文化財保護法・工場立地法などです。
そのため、事業用地の取得においては、不動産業者の中でも事業用地のエキスパートの存在が欠かせないのです。
素人では見落としがちなこともあるため、事業用地の売買の取引をする時には、専門家に仲介してもらった方が良いでしょう。
出典:都市計画(国土交通省)
出典:国土利用計画法に基づく土地取引の届出(東京都都市整備局)
出典:国土利用計画法に基づく土地取引の届出(東京都都市整備局)
事業用地の探し方のポイント
ビジネスを成功させるためには、よい事業用地を見つけなければいけません。
事業用地を探すには、住宅地と同様にネットで検索してみたり、広く不動産会社にあたってみたりするのがよいでしょう。ただし、不動産会社にも住宅地を得意分野とするところ、事業用地を得意とするところが存在します。事業用地を探す際には、前述したように関連法律も多いため、不動産会社の得意分野を把握して依頼すると、用地選びの失敗のリスクが少なくなるでしょう。
また、漠然と「事業用地を探している」とだけ不動産会社に伝えても、「よい土地」には巡り会えません。まずはどのような点にポイントを置いて探し、選べばよいのか、ということから知っておく必要があります。順に見ていきましょう。
用途地域に沿ってエリアを絞る
まず、事業用地をどんな目的に利用するかで、大まかにエリアを絞ります。たとえば工場や倉庫などはどこに建ててもよいというわけではなく、都市計画法の「用途地域」によって建設可能な場所が定められています。
用途地域は13のエリアに分けられていて、工業用地としての区分は「準工業用地」「工業地域」「工業専用地域」の3つが該当します。建設する建物の危険性や周辺環境への影響度合いにより、同じ工業用地としても3段階に分けられているわけです。また、建設物の規模や用途によっては、工業用地以外で建てることができるケースもあります。
事業用地としてふさわしくない用途地域を購入してしまっても意味がなくなってしまうので、まずはこの点をしっかり確認し、大まかなエリアを絞っていきましょう。
立地条件を確認する
倉庫や配送センターを建設する目的であれば、幹線道路や高速道路にアクセスしやすいか、搬出・搬入のための大型トラックが出入りしやすいかどうか。
店舗やオフィスを建てるのであれば、公共交通機関の利便性はどうか。交通量は多いのか。
ビジネスの拠点として適しているかどうかというだけでなく、そこで働く人材を集めやすいかどうかという点もチェックしましょう。
土地自体の条件や状態をチェックする
土地には、その地域ごとに建ぺい率や容積率が定められているため、望み通りの建物を建てるための数値を満たしているかどうかも確認します。もちろん、敷地の面積も必要な広さを確保します。
さらに、地盤の強さや状態も重要です。軟弱な地盤だったり地中埋設物や土壌汚染があったりすると、まず土地の整備から費用がかかってしまいます。
インフラの整備状況を確認する
電気・ガス・水道はきちんと整備され、その敷地まで通っているのかという点も重要なチェックポイントです。わざわざインフラを整備するところから始めるのも、費用と時間がかかります。
必ず現地確認も行う
以上のような点は、書面などでも確認が可能なポイントですが、これらの条件を満たしてある程度エリアを絞れたら、最終的には必ず現地確認も行いましょう。実際に現場の状況や環境を見てみないとわからないことも多々あるからです。
〇敷地までの道路幅
〇騒音・振動・悪臭などの有無
〇日照の程度
〇周辺の建物との距離や境界
〇周辺住民の理解
昼と夜など、時間帯を変えて確認することも重要です。それによって見えてくる問題や対策ポイントも出てくる可能性があるからです。
事業用地の売買が人気上昇中!その理由とは
近年は事業用地の売買に人気が高まっています。どのような背景からなのでしょうか。3つの観点から見てみましょう。
物流施設のニーズが高まっているから
物流施設は、いうまでもなく事業用地のひとつです。
近年は「EC市場」の拡大が著しく、市場規模は大きくなっていく一方です。ではこの「EC」とは何なのでしょうか?漠然と「インターネット通販」のことであろうとご存知の方は多いでしょう。この認識は半分正解といえます。
ECとは、もともと「ネット回線を利用して受発注をおこなう取引全般」のことを指します。このなかでも「BtoC-EC(Business to Consumer)」という形態に、一般的にイメージされるようなインターネット通販が含まれているのです。
近年のネット通販市場が爆発的な速度で拡大していることは、消費者にとっても肌で感じられることでしょう。パソコン、インターネットに続いてスマホの普及が広まり、そこにコロナ禍の影響で外出を控える風潮になったことで、ネット通販はもはや私たちの生活に欠かせない位置づけに落ち着いたほどです。なかには、買い物すべてを実店舗ではなくネット通販で済ませるという人もいるでしょう。
EC市場が拡大したことで、インターネットショップの物流システムも増え、施設のニーズの上昇につながったのです。これを背景に、このような形態に適する事業用地の売買が活発に行われるようになりました。
インフレ対策に有効
資産は、現金のまま所有するよりも不動産として持っておくことで、インフレ対策ともなります。不動産の価値は、インフレによって値上がりする商品などと一緒に上昇しやすいからです。
インフレ時は、現金の価値が下がってしまいます。資産が大きければ大きいほど、現金ではなく不動産で所有しておくことにメリットが出てくるのです。
相続税対策に有効
資産を現金ではなく不動産で所有することは、相続税対策にも有効です。現金で相続するよりも、不動産の状態で相続したほうが評価が低くなり、結果として相続税の負担が減るからです。
現金のままで相続するよりも2~3割ほど相続税の負担が減るとなると、かなり大きな対策になるといえるでしょう。
まとめ
事業用地はビジネスを営むうえで欠かせないものです。大きなビジネスになればなるほど、必要とする面積は広大なものとなるでしょう。
事業用地の扱いは、売買も含めて、法律が絡んでくる部分が多いため、ほかの不動産取引よりもメリットが大きいと思われてもくれぐれも取引は慎重に。