事前に知っておくと安心できる解体工事の流れ
解体工事を業者任せにすると、トラブルが起きても業者に言いくるめられたり、自分でやらなければならないことが分からず、工事のスタートが遅れたりする可能性があります。
解体工事を依頼する前に、解体工事の流れを把握しておくようにしてください。
また、自分でやらなければならないことを知っておくことで、必要以上の費用がかかることを防げますし、補助金を受け取れるかどうか確認でき、損することを未然に防止できます。
解体工事の業者を決定するまでの流れ
解体工事は、大まかに「業者の選定」「工事に向けた事前準備」「解体作業」「工事後の作業」という流れで行います。解体工事中に無用なトラブルに見舞われないためには、各工程の細かな流れを理解しておくことも大切です。
ここでは、解体工事の業者を決定するまでの細かな流れを紹介していきます。
お願いする解体業者をいくつか選定する
解体工事業者を選ぶ場合、ハウスメーカーや知人からの紹介だから安心といった理由で、はじめから1社に絞るのはおすすめできません。自分が納得できる解体業者に工事を依頼するためには、いくつか業者を選定して比較することが大切でしょう。
おすすめは、地元の解体工事を専門に請け負う業者を3社以上選定することです。専門の解体工事業者の中でも、ベテランの職人が多い業者、解体工事の実績が豊富な業者、重機を多く所有している業者を選びましょう。
解体業者に現地調査を依頼する
現地調査で、建物の構造と状態・立地(近隣環境など)・搬入ルート・工事内容・境界線・地中物などの確認を行い、工事の工期や正確な見積もりを出してもらいましょう。
業者の対応の仕方や解体工事の流れを正確に把握し、疑問を解消しておくために、現地調査は業者任せにせず、できるだけ立ち会うことが重要です。工事を依頼する人が遠方で、直接立ち合うことが難しい場合には、信頼できる代理人を立てましょう。
見積書を比較する
現地調査が終了すると見積書を提示してもらえます。見積書の中に、必要な工事(廃棄物処理、養生、事務費など)や口頭で確認した内容が組み込まれているかチェックしましょう。
見積書にはいくつか種類があり、工事一式や総額で出される簡易的なものから、解体する部位や作業内容ごとに細かく記載されたものまであります。簡易見積は作業内容が分からず、後から追加費用を請求されるなどトラブルが起こる可能性があるので、要注意。
単純に安い金額を提示してくる業者を選ぶのではなく、詳しい見積書を提示してくれる丁寧な業者を選ぶようにしましょう。
解体業者と契約する
見積書を比較して、自分が納得できる業者が見つかったら、解体業者と契約を行います。
工事が期限内に終わらない、追加費用が請求されるなどのトラブルを避けるために、口頭で契約を行うのではなく、必ず契約書を交わすようにしましょう。
優良な解体工事業者ほど工事のスケジュールが埋まりやすいです。そのため、工事希望時期の3ヶ月前から業者を探し始め、工事開始1ヶ月前までには契約を交わす必要があります。
解体工事の事前準備の流れ
ここからは、解体業者と契約締結した後から工事開始までにやるべき、事前準備の流れについて紹介していきます。
解体業者と契約を締結したらすぐに建物の解体を開始できるわけではありません。事前に工事の依頼者がやらなければならないことがあります。事前準備をしっかり行い、トラブルを防ぎましょう。
近隣住人へあいさつをする
解体工事では、粉塵・騒音・振動などで近隣の住民へ迷惑をかけてしまいます。そのため、工事開始前に近隣住民にあいさつを行い、理解を得ておくことが重要です。
住民へのあいさつを行わずに工事を開始してしまうと、近隣からのクレームで解体作業が進まなくなるなどのトラブルに発展する可能性があります。
クレームを未然に防ぐためにも、工事開始前に業者が近隣に説明に行く日時を確認し、責任者に同行して住民へあいさつしましょう。
必要な届出を行う
解体工事を行うためには、状況に応じて適切な届け出が必要です。以下では、解体工事に必要な届出を2つ紹介します。
基本的に施主(依頼主)は、業者が用意してくれた委任状などの書類にサインするだけで良いのですが、プロに任せた方が安心だからと、完全に業者任せにするのはおすすめできません。
必要な届出が行われておらず、工事ができないというトラブルに巻き込まれる可能性が考えられます。施主として必要な届出について把握し、適切に行われているか確認しましょう。
建築リサイクル法
建築リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)とは、増大する建築廃棄物を分別し再資源化するために、平成12年5月に制定された法律です。
コンクリートなどの特定建設資材を使用した、合計床面積80㎡以上の建物を解体する場合には、着工の7日前までに建築リサイクル法にかかる届出を行わなくてはいけません。
この届出は工事の発注者である施主に課せられた義務ですが、委任状を提出して届出を解体業者に代行してもらうこともできます。
道路使用許可
解体工事では、資材の搬入や重機の使用のために道路を使用することがあります。道路は車や人が通行するために作られているため、通行以外に道路を使う場合は、管轄の警察署長に道路使用許可を取らなくてはいけません。
道路使用許可を取る義務があるのは、解体業者です。施主が道路使用許可を取る義務はありませんが、許可を取っていないと工事が途中で止まってしまうリスクがあります。
解体スケジュールにも支障が出る恐れがあるため、道路使用許可を取っている解体業者に確認しましょう。
ライフラインの停止や配線撤去の連絡をする
ガスや電気などのライフラインを停止や配線の撤去が行われないまま、解体工事を進めるのは大変危険です。そのため、ライフラインの停止や配線撤去の連絡をしておかなくてはいけません。
ただし、水道は業者が工事中に使うこともあるため、停止していいか確認してから連絡するようにしましょう。
ライフラインの停止や配線撤去の連絡は、基本的に施主が行います。解体業者に委任できますが、停止や撤去までに時間がかかってしまうため、自分で行うのがおすすめです。
解体工事の流れ
ここからは、建物の解体工事の流れについて紹介していきます。
事前準備が終わったら、建物の解体作業に移りますが、トラブルに巻き込まれずに工事を進めるためには、施主としてその流れについて理解しておきましょう。
外回りの解体を行う
解体工事ではまず、足場や養生の設置、重機を搬入するスペースを確保するために、ブロック塀や庭の植栽、カーポートなど外回りの解体を行います。
外回りの解体を行う場合、隣家との境界部分に設置されてあるブロック塀などの所有権を確認することが大切です。設置されているブロック塀などが隣家との共有物である可能性があり、知らずに撤去してしまうとトラブルになってしまいます。
足場や養生を設置する
安全に高所作業ができるように足場を設置し、近隣へ埃や粉塵が飛散するのを防いだり、騒音や振動を軽減させたりするために養生を設置します。
トラブルなく安全に解体工事を進めるために、足場や養生が正しく設置されているか確認しましょう。破れた古い養生シートを使っていないか、きちんと社名がシートにプリントされているかなどを確認しておきたいです。
建物の内部建造物を撤去する
前述したように、解体工事で出る建設廃棄物は分別し、再資源化しなくてはいけません。そのため、建物本体を重機で解体する前に、建物内部の建造物を人力で撤去していきます。
畳やサッシ、建具、石膏ボード、土壁、断熱材、瓦、住宅設備機器などを解体し、契約であらかじめ撤去予定となっている室内に残された不用品を業者が撤去していきます。
建物本体を解体する
内部構造物を撤去でき次第、建物本体に移ります。基本的には重機で解体しますが、重機が入りにくい立地にある建物は、重機でなく手壊しで解体を行います。
手壊しと重機の解体ではスケジュールが異なるため、現地調査の段階でどの方法で解体が行われるのか確認しておきましょう。
また、建物本体の解体工事は、騒音や振動、粉塵、埃で近隣の住民からクレームがくることが予想される期間です。騒音や振動に細心の注意を払いながら、粉塵や埃が大量に舞わないように適度に散水しながら工事を進めていきます。
建物の基礎を解体する
建物本体の解体が終わると、隠れていた基礎が出てくるため、重機を使って解体が行われます。
最近の建物は強度を高めるために、基礎部分に鉄筋やコンクリートが使われている場合が多いです。鉄筋やコンクリートで頑丈に作られた基礎を解体する場合、振動や騒音が大きくなってしまいます。近隣住民とトラブルにならないように、工事を進めてもらいましょう。
また、基礎部分のコンクリートの厚さによって基礎の解体にかかる日数や価格が異なります。追加費用を請求される可能性もあるため、事前に確認しておく必要があるでしょう。
解体工事後の流れ
解体工事は、建物本体や基礎を取り壊したら終わりではありません。必要な申請を行ったり、廃材を適切に処理したりする必要があるでしょう。
ここからは、解体工事後の流れについて紹介していきます。
廃材の分別や産業廃棄物の処理をする
解体工事で出た木材やコンクリートなどの廃材は分別し、産業廃棄物として処分場で処理しなくてはいけません。不法投棄や野焼きなど違法な処理が行われないように、施主は、産業廃棄物が適切に処理されたか確認する必要があります。
解体工事で出た産業廃棄物の運搬や処理を、ほかの業者に委託する場合は、マニフェスト制度に沿って、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を作らなくてはいけません。
産業廃棄物が適切に処理されたかを確認するために、マニフェストを交付してもらうようにしましょう。
出典:マニフェスト制度とは | 公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
地中を確認する
解体工事が終わると、地中に廃材やコンクリートが残っていないかの確認が行われるでしょう。
解体工事で出た廃材が埋もれている場合もありますし、元々、浄化槽などが埋まっている場合もあります。地中に埋まっているものがないか確認し、埋没物があれば撤去しなくてはいけません。
現地調査の段階では埋没物のすべてを確認することが難しく、解体後に見つかるケースもあります。埋没物が見つかった場合、撤去にどれぐらいの費用がかかるのか、事前に取り決めしておくといいでしょう。
きれいに整地する
地中の確認が終わり、埋没物や廃材の撤去が行われたらきれいに整地をします。
キレイに整地されていないと、更地として売りに出す場合に評価が下がるうえ、新築工事を予定している場合にはすぐに建物を建てられないという事態になる可能性があります。
解体後の土地の用途を業者に伝え、きれいに整地してもらうようにしましょう。
引き渡す
整地が終わったら、掃除をして、問題がなければ、土地の引き渡しを行って工事が完了します。
土地の引き渡し前に必ず、現地に行き、残留物が残っていないか、整地はきれいに行われているかなどの確認をしましょう。現地で確認して気になる箇所があれば、解体業者に伝え、改善してもらうようにしてください。
建物滅失登記を申請する
不動産登記法第57条で、解体工事で建物を取り壊した場合、1ヶ月以内に法務局で建物滅失登記を申請しなければならないと定められています。申請しないと、不要な固定資産税を課せられたり、土地の売却ができなかったりするため、速やかに登記を行いましょう。
建物滅失登記をするためには、解体工事業者に印鑑証明書や建物滅失証明書、登記事項証明書を準備してもらう必要があります。書類を準備して、自分でもしくは土地家屋調査士や司法書士に委任して登記を行ってください。
近隣住人へお礼や報告をする
解体工事が終わったら、近隣住民へお礼と工事が無事に終了したことを報告しておきましょう。
特に、解体工事中にクレームが発生した場合やスケジュールに遅れが出た場合には、「長期に渡り、騒音や振動などでご迷惑をおかけしました」と謝罪の意味を込めてあいさつに行きましょう。
解体工事と一緒に知っておきたい不用品を処分する方法
解体工事を行う前には、室内にある粗大ごみなどの不用品を処分しなくてはいけません。ここからは、不用品を処分する方法をポイントや注意点を含めて紹介していきます。処分方法を選ぶ際の参考にしてください。
自分で処分する場合
不用品は自分で処分すると費用を安く抑えられるというメリットがあります。一般ごみとして出せるものは、ごみ収集日に回収してもらい、粗大ごみはルールに沿って処分してください。
粗大ごみは地域により収集方法や費用が違います。自分の自治体がどのような収集方法を取っているのか確認しましょう。
ただし、家電4品目と言われる、エアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(乾燥機)は、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)で粗大ごみとして出せない決まりになっています。家電4品目は、家電小売店や指定引取場所などに持ち込み、処分しましょう。
解体業者に依頼する場合
解体業者の中には不用品の買取や処分を請け負っているところもあります。不用品の処分や回収は、解体業者に依頼することも可能です。
解体業者に依頼する場合、一般廃棄物収集運搬業務許可と古物商許可を取っていることを必ず確認する必要があります。許可を取っていない業者に依頼すると、不法投棄をするリスクがあるためです。許可番号の提示を受けるなどして、許可を取っているか確認しましょう。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | e-Gov法令検索
事前に流れを知っておき安心して解体工事をしよう
ここまで、解体工事の流れについて紹介してきました。
解体工事の流れを事前に知っておくことで、解体工事業者や近隣住民との無用なトラブルを避け、スムーズに工事を進めることができます。
解体工事を考えている人はこの記事を参考に、解体工事の流れを理解してください。