競売不動産取扱主任者という資格をご存知でしょうか。
同じ不動産業界における主要資格の宅地建物取引士や不動産鑑定士などに比べて、知名度は低いため、耳にすることも初めてという方は多いでしょう。
そもそも、「不動産の競売」というものがあること自体、一般的にはあまり知られていないかもしれません。それゆえ、競売不動産取扱主任者が一体どのような仕事かもなかなかピンとこないですよね。
今回は競売不動産取扱主任者について、その仕事内容やニーズ、宅地建物取引士との関係性などを詳しく解説していきます。不動産が競売にかけられるケースというのはどのようなときに起こりうるかということにも触れていきます。
競売不動産取扱主任者とは
民間資格ながら不動産競売のプロ
競売不動産取扱主任者は、「不動産の競売」という、日常ではあまりなじみのない取引の発生の際に、アドバイスやサポートを行う資格者です。
不動産取引において宅地建物取引士(以下、宅建士)が設置されていることに対して、競売による不動産の購入者に対しては、助言やその代行について、もともと法律によっての制限や助けがなく、さまざまなトラブル発生の要因となっていました。
そのような状況を改善し、競売不動産の購入者が安心して取引できるよう、競売不動産取扱主任者の資格が設けられたのです。
国家資格ではなく、一般社団法人不動産競売流通協会(FKR)というところが認定する民間資格であり、一定の知識や能力を持った証となります。2011年に設立された、新しい資格でもあります。
競売不動産取扱主任者の将来性
平成10年の民事執行法の改正で、競売不動産にも抵当権を設定することができるようになりました。
これは簡単にいうと、「競売物件を取得する際にも住宅ローンが組めるようになった」ことを意味します。この改正によって、投資家だけでなく一般の人でも不動産競売に参加しやすくなったのです。
不動産の競売取引をする人が増えれば、そのサポートを行う競売不動産取扱主任者のニーズも増えていくことが予想されます。
競売不動産取扱主任者の資格単体ではなく、他の不動産系・金融系・法律系の資格と組み合わせていくことによっても、活躍の場やビジネスチャンスは大きく広がっていく可能性があるといえるでしょう。
競売不動産取扱主任者の業務内容
不動産業界において
顧客に対して、競売不動産の相談・入札から落札を経て明渡しまでをサポートします。
競売手続きに関する深い知識はもちろんのこと、幅広い不動産知識や、民法・債権法などの法律に関する専門知識も必要とし、また競売物件は落札前に「内覧ができない」という特殊な事情があるため、物件の選択眼も求められます。
詳しくは後述しますが、競売不動産取扱主任者は最終的に宅建士の資格を持っていることが資格取得の条件となるため、宅建士とのダブルライセンスは当然の状態となります。
宅建士は、不動産取引のプロであり、不動産業界では絶大な信頼を置かれています。そこに競売不動産取扱主任者の資格も組み合わせれば、通常の不動産売買の知識に加えて競売不動産の専門知識も総動員した活躍ができる可能性が出てきます。
競売に関しては大手の不動産会社がなかなか参入しづらい部分もあるため、地元密着の不動産会社において「不動産のプロ」になることも可能でしょう。
競売物件の存在は、以前よりも一般の人に知られてきているため、これからもニーズが増えることもあるでしょう。競売不動産についての助言やサポートを通じて、顧客の信頼を得たり、新規顧客の開拓につながったり、ということも期待できるかもしれませんね。
普段は通常の不動産事務所の従業員や宅建士の従事するような業務を行いつつ、競売に関する業務には専門的に携わる、という仕事のしかたが考えられます。
金融業界において
競売不動産の取得の際にも住宅ローンが組めるようになったことで、金融業界においても競売不動産についての相談に訪れる顧客は増える可能性があります。
宅建士の資格も金融業界で大いに活かせるものですが、同時に競売不動産取扱主任者の資格も持っていることで、業務や活躍の幅は広がると思われます。
普段は、ローンや融資の相談・債権回収・土地評価などの分野でその知識が必要とされることが多いでしょう。
競売不動産取扱主任者の資格を取得するメリット
不動産業界でも、競売物件に関する体系立ったアドバイスをできる人材はまだまだ少ないというのが現状です。
また、競売不動産そのものも、まだまだ不動産業界においてもニッチな分野であるといえますが、市場の拡大が期待されています。
今後は、競売不動産を専門に扱う唯一の資格である競売不動産取扱主任者の有資格者のニーズが高まり、就職や転職に有利に働くということも考えられるでしょう。
一般の人や投資家においても、みずからが競売物件を取得しようと考えた際に、競売不動産取扱主任者の資格を取得する過程で得る知識は十分に役立ちます。
知識がない状態での初心者が競売に参入する際にはリスクが大きく、体系的に勉強して正しい知識を得て市場に乗り込むことは、大いに有効だといえます。
競売不動産取扱主任者の試験
試験概要(2022年11月現在・最新情報は公式サイトでご確認ください)
・出題形式…四肢択一式マークシート方式
・出題範囲…不動産競売実務・民事執行法・民事訴訟法・民法・宅地建物取引業法・都市計画法・建築基準法・税法・裁判所資料の正確な理解・競売不動産の出品から落札・明渡しまでとその付随するものの法律知識など
・出題数…50問
・試験時間…120分
・受験料…9,900円(別途事務手数料350円)
・受験資格…なし(ただし合格後、登録の際には宅地建物取引士の資格が必要)
・受験地…札幌・仙台・新潟・金沢・埼玉・千葉・東京・横浜・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・那覇
・合格基準…2020年度は50点中35点(2021年度は非公表)
難易度や合格率
近年の合格率は30~40%で推移しており、比較的易しめであるといえます。ただし試験範囲は宅建士とはかぶらない部分もあるため、そこに関しては専用の学習が必要です。
また、試験の受検段階で宅建士の資格は必要ではありませんが、競売不動産取扱主任者試験の合格後は、宅建士の資格がなければ「登録」ができません。したがって、最終的には宅建士の資格を有していることが競売不動産取扱主任者になることの条件ともなります。
合格後は、主任者証が発行されます。この有効期限は5年であるため、そのたび更新が必要となります。
物件が競売にかけられるケースとは?
最後に、競売不動産取扱主任者が活躍する「不動産が競売にかけられるケース」というものがどのようなときに発生するのかについて見てみましょう。
不動産が競売にかけられる理由としてもっとも多いのは「住宅ローンが払えなくなってしまった」というものです。
不動産は高額です。戸建のマイホームを現金一括で購入できるような人はなかなかいないでしょう。たいていの場合は住宅ローンを組み、金融機関から融資を受けて家を買い、1か月にいくらという返済額を決め、数十年かけてそれを支払っていきます。
しかし、何らかの事情で、途中で住宅ローンの支払いができなくなってしまうケースがあります。この場合、数か月ローンの返済が滞ると、しかるべき手順を経たのちその住宅ローンの対象となっている物件が差し押さえられてしまいます。
そして、最終的には競売にかけられ、その売上代金がローンの返済に充てられることになるのです。
これは金融機関が、高額な融資を行えるための担保として用意されている制度であり、もちろん合法的なものです。こういった流れで競売にかけられることになってしまった物件が、競売不動産と呼ばれるものになるのです。
まとめ
競売不動産取扱主任者は民間資格であり、現在はさほど知名度も大きくなく、試験の難易度も決して高くはないといわれています。しかし不動産知識に加え、法律知識も必要となるため、合格にはそれなりの努力が必要であり、今後不動産業界においてのニーズも高くなっていくと期待されています。
宅建士と競売不動産取扱主任者の資格を得ておくことで、キャリアアップなどに活かしていきたいですね。