万年塀の解体・撤去にかかる費用の相場を知っていますか?重くて頑丈な万年塀の解体・撤去には多くの費用がかかります。
隣の敷地との境目に立っている万年塀を解体・撤去する場合、隣の敷地に入って解体・撤去作業をしなければならないケースもあり解体・撤去工事において不安要素が多いのです。
このページでは万年塀を解体・撤去しようか検討している方に向けて、万年塀の概要や倒壊などの危険性、費用の相場、解体・撤去工事の手順などについて紹介します。
万年塀とは
万年塀とは、鉄筋コンクリート製の支柱と、その間に平板を挟んでつくられた塀です。「万年塀」「万代塀」などさまざまな呼び方をされていますが、正式名称は「鉄筋コンクリート組立塀」とされています。鉄筋コンクリート製の支柱を建て、その間に平板を落とし込んで作られたコンクリート塀です。支柱の下部分には、固定するための基礎部分が地中に埋まっています。
万年塀は、風・雨・犯罪・事故などから家を守り、安心して暮らせる環境を保つうえで役立ちます。隣家や道との仕切りにもなっていて、周囲からの視線を遮りプライバシーも守ってくれています。塀は建材によって耐久性や機能の程度に違いがありますが、万年塀は、耐久性や防犯、プライバシーの確保により高い機能があります。
万年塀は震度7の地震がきても倒れません。震度7の激震がきても倒壊せずに安全が守られるように設計・製造されています。万年塀は大型の台風にも耐えることができます。万年塀は瞬間風速60m/secの台風がきても倒壊しないように造られています。
万年塀は1950~1970年代に多く立てられていました。しかし社会の考え方が徐々に変わっていき、敷地内を見えないようにしっかりとガードする万年塀に対して、「景観へ配慮すべき」「地震などに対する倒壊リスクを減らすべき」「敷地内も外部から見える方が防犯上良い」という意見が寄せられるようになりました。このような理由から、新たに万年塀が造られることは減っていると考えられます。
万年塀と似ている塀との違い
下記に紹介する塀は、万年塀と似ていますが異なる塀です。
コンクリートブロック塀
コンクリートブロック塀とは、ブロックを積み上げ、ブロックの間に鉄筋を入れて、モルタルを施した塀のことです。より頑丈な万年塀比べると、簡易的でもろいです。
組積造(そせきぞう)の塀
組積造(そせきぞう)の塀は、コンクリートブロックや大谷石、煉瓦等を積み上げて造られている塀です。コンクリートブロック塀との違いは、鉄筋を使っていないことです。
万年塀の危険性
万年塀は年月が経つと、傾いたり、ひびが入る危険性があります。建築当時の万年塀は、地震などに対しての耐久性も高いものでした。しかし、50年と月日が経つにつれ、支柱の鉄筋が錆びてしまいます。そして大人の背の高さぐらいになる万年塀は、自らの重さで傾いてしまう危険性が多いのです。
また、経年劣化によって塀にクラックが発生する場合もあります。クラックとはひび割れの事を指します。もし万年塀にあるクラックを放置してしまうと、クラックから水が染み込み、鉄筋が錆びてしまいます。鉄筋が錆びることで支柱が膨張し、表層のコンクリートが爆裂してしまい、鉄筋が露出する危険があります。年数が経過した万年塀は、倒壊する可能性があるので危険です。
「ブロック塀が倒壊した」というニュースはときどきあります。塀の近くを通っていた方が倒壊した塀の下敷きになったという事故もありました。
もちろん、地震などの災害が倒壊の理由であれば、所有者に直接の責任があるとは言い切れません。しかし、このような事故が起きた際に、倒壊するであろうことが簡単に想像できる状態であるにもかかわらず放置していた場合は、所有者の管理責任が問われてしまうことがあります。
いつどのようなことが起こるかわかりません。重くて危険な万年塀の所有者はこういった事態を引き起こさないように、日々しっかり管理することが大切です。倒壊しそうな場合は早めの解体・撤去工事をおすすめします。
倒壊しそうな万年塀のサイン
倒壊しそうな万年塀には、倒壊しそうなことを表しているサインがいくつかあります。ぜひ万年塀に下記のサインが出ていないかチェックしてみてください。
サイン1:傾きやぐらつきがある。
サイン2:ひび割れている。
サイン3:破損している。
サイン4:変色している。
サイン5:風化している。
サイン6:笠木の欠落。
変色や風化している箇所の建材は劣化しています。笠木とは塀の上部に乗っているもので、これが欠けていたりしていないかもチェックしましょう。
万年塀の解体・撤去工事の特徴
万年塀の解体・撤去工事の特徴についてご紹介します。
万年塀は支柱の下部分の基礎を、地中に埋めることによって支えています。なので万年塀を解体し撤去するためには、地中に埋まっている基礎部分を取り出す作業が必要です。重機で周りの地面を掘って、支えとなる土を無くしてから、支柱を取り除いていきます。
万年塀の解体・撤去には職人の技術も必要万年塀の支柱を取り除くには、十分なの知識を持った職人の技が必要です。万年塀の周りの土をよく掘らないと、倒した時に途中で支柱が折れてしまいます。こうなると万年塀の下部分のコンクリートが地中に埋まって残ってしまうことになります。
周りがコンクリート土間などで覆われている場合は、支柱周りと、下部のコンクリートを取り出す必要があります。周囲の状況などをしっかり把握して、作業をしなければいけないので、職人の技術が必要になります。
万年塀の解体・撤去工事の流れ
万年塀の解体・撤去工事の流れを紹介します。どのように工事が進むのか確認してみてください。
隣の住民に立ち入りの許可をもらう
万年塀は、隣地や道路との境界線に建てられることが多いです。隣地との境界線に建てられている場合は、隣地のブロック塀との隙間がほとんどないケースがよくあります。
工事の際に一歩間違えてしまうと、隣地の塀や建物の壁などを傷めてしまう可能性があります。なので作業時に隣地に入り、業者が養生を行わなければなりません。事前に施工主が隣の住民の方と話して、隣地への立ち入り許可をもらう必要があります。
隣の住宅側の敷地には入らずに万年塀を解体し撤去するとなると、作業範囲が限られてしまうので、工事に時間がかかり想定されていた工事日数を大幅に超えてしまい、追加費用が発生してしまうこともあります。事前に万年塀の位置と、作業スペースが確保できるかどうかを確認しておき、必要に応じて隣の方に立ち入り許可を得ておきましょう。
近隣にあいさつまわりをする
隣の住居をはじめ、近隣住民に「これから工事を行うのでご迷惑をおかけします」あいさつまわりをしておきましょう。
作業員複数人で、専用の電動工具を使い解体・撤去工事を行うことになるので、事前に近隣住民の方に話がいっていないと、騒音や粉塵の被害を訴えられてしまい、トラブルに発展してしまう恐れがあります。
近隣に住んでいる方から「工事があるなんて聞いていない」「工事を止めろ」などとクレームが寄せられると、工事をストップさせることになってしまったり、音を出さずに工事することになり電動工具が使えずに予定より多くの日数がかかってしまったりします。
トラブルを防止するためにも、隣の住居をはじめ、近隣住民にあいさつまわりをしておきましょう。
マーキングをする
マーキングとは、解体・撤去作業に入る前に解体する場所とそうでない場所に印をつけて区別する作業のことです。印をつけたらさらにそこにコンクリートカッターで切れ目を入れて印をつけます。こうすることでミスなくスムーズに解体作業を進めるようになります。
しかし、中にはこのような作業を飛ばして解体・撤去作業に入ってしまう業者もいるので注意が必要です。見積りをもらった時点でマーキング作業が含まれているかどうか確認してみてください。
養生する
解体・撤去する万年塀のまわりを養生します。電動ピックで万年塀を解体・撤去する際などに、細かいコンクリートガラが飛び散ります。また解体・撤去時に発生するコンクリートの粉塵がまわりに溜まってしまう可能性があります。これらを防ぐために、解体・撤去する万年塀のまわりをブルーシートなどで養生します。
ブルーシートなどで養生することで、解体・撤去で飛び散ったコンクリートガラを掃除する時に、シートをまとめることで自然と細かいものまで集めることができます。
万年塀の解体・撤去|平板を外す
万年塀の解体・撤去は、まず初めに、平板を外していきます。まず笠木という、堀の上のにある蓋のような役割をしている部分を取り外す作業です。その後、上から一枚ずつ取り外していきます。平板を取り外す作業は、基本手作業で行います。
万年塀はコンクリートで作られているため、1枚であろうとも非常に重いです。なので複数人を1セットとして解体・撤去作業をします。解体・撤去している人と支える人を用意しないと、倒れてきた場合のフォロー役がいなくなり、家などを傷をつけてしまう恐れがあるからです。
万年塀の解体・撤去|必要に応じて支柱周りをはつる
平板が外れたら、次は支柱撤去のための準備作業を行います。コンクリート土間であれば、万年塀の支柱としっかりとくっついています。なので撤去の前に支柱周りの土間をはつる作業が必要です。はつるとは、コンクリートなどの表面などを削る作業です。
万年塀の解体・撤去|重機で掘削する
支柱撤去の準備ができたら、重機を使って地中を掘削します。重機を使うので、隣地スペースが十分にないと重機が搬入できません。もし、隣地に十分なスペースがない場合、地中に埋まっている基礎部分は残したまま、地上部分の万年塀を解体・撤去することになります。
支柱の隣地側の地面を掘ることで、支柱の支えとなっている土を排除します。そうすることで、地中に基礎部分が残らず、支柱が途中で折れることなく、撤去することが可能になります。この段階で、しっかりと土を掘削していくことがポイントです。
万年塀の解体・撤去|万年塀の支柱を撤去する
十分に万年塀の支柱の周りを掘削できたら、次に撤去作業に移ります。しっかりと掘削ができていれば、支柱を倒した時に、下のコンクリート部分が折れることなく完璧に撤去できます。
もし土の掘削が不十分だと、支柱が途中で折れてしまい、下部分が地中に埋まったままになってしまうでしょう。完全に撤去作業が終われば、重機で掘り起こした土を戻し、作業で汚れた箇所を水洗いして終了です。万年塀を撤去後の溝は、そのまま放置すると危険なため、カラーコーンの設置やロープで囲うことで対策を行います。
万年塀の解体・撤去に使用する工具
万年塀の解体・撤去に使用する工具を紹介します。
セットハンマー&電動ピック
万年塀は重いので、そのまま1枚で撤去するのは不可能です。なので電動ピックである程度の部分の切り出しを行ったり、面部分をセットハンマーで砕いたりして解体していきます。
ダイヤモンドカッター
支柱を切除するために使います。
舟
練り舟ともいわれます。解体した廃棄物を積載し、運ぶためのものです。昔は金属製が多かったのですが、今はプラスチック製がほとんどです。
モルタルと水
カットした部分を補修するために使います。
万年塀の解体・撤去工事にかかる費用の相場
万年塀の解体・撤去工事にかかる費用の相場は14~40万円ほどです。住宅周りのちょっとした塀の撤去であれば約7万円から撤去できることもありますが、万年塀となると大規模な施工になることが多く、工事にかかる費用は高額になるケースが多いです。
作業する場所や条件によって金額が異なり、万年塀の大きさにもよっても作業量が変動し金額が変わってきます。前もって撤去費用の見積もりをもらって確認しておきましょう。
万年塀の解体・撤去工事にかかる費用の内約
万年塀の解体・撤去工事にかかる費用の内約をご紹介します。約60m2など広範囲にわたって万年塀の解体・撤去を行うとなると、費用がより高額になってしまいます。また、古くなった万年塀は傾いていることもあり、万年塀が傾いている場合は、頑丈な支柱をコンクリートカッターで丁寧に解体していくことになるので、施工費用が多くかかってしまいます。
人工費用
人工費用とは、解体・撤去作業にかかる作業員の人件費です。2020年時点で、建設現場での作業員の人件費は高騰しています。
建設業界では東京都内近郊で1人工20,000から25,000円(法定福利費含む)が相場になっています。たとえば、万年塀の撤去作業に5人で2日間にわたって行われた場合は、人件費で200,000から250,000円の費用がかかることになります。
重機を使えるような場所であれば、人件費を抑えることができます。しかし人力で手作業で解体・撤去を行う場合は、人件費が多くかかるのです。作業条件によっても金額は異なります。
隣接する住宅との距離が近い場合などは手作業で解体・撤去工事を行うことがあり、こうなると費用が多くかかります。
運搬費用
運搬費用とは解体・撤去で発生した解体材をトラックで運ぶための費用です。費用の計算方法については、まずトラックの購入代、年間使用した燃料代、メンテナンス費用を作業日数で割った金額を算出します。その金額から一日利用した場合の金額を算出します。
目安として1台5千円から1万円程度です。たとえば、4台の3tダンプで運搬を行った場合は、2〜4万円ほどになります。金額はトラックの大きさによって異なるので、事前に確認しておきましょう。
解体材の小運搬では、解体・撤去で壊したブロックのコンクリート平板や柱、基礎をダンプまで運びます。解体材の積込では、運んだ解体材を作業員の手で2tまたは3tトラックの荷台にのせます。
万年塀の平板1枚で約40kgもあります。1列に5枚のコンクリート平板が入っていると、それを運ぶのには相当な力と人手が必要になるのです。
解体材の運搬では、産廃屋さんに2tまたは3tトラックやダンプで運びます。
現場諸経費
現場諸経費とは、たとえば万年塀を解体・撤去する時に使用したサンダーやセイバーの歯代、発生した解体材をまとめるための袋(通称ガラ袋)代などがあたります。
産廃処分費用
産廃処分費用とは、解体・撤去解体作業時に発生したでた廃棄物を処理するのにかかる費用です。近年、解体・撤去解体作業で排出されたような産業廃棄物に対して、処分費用が大きく高騰しています。
2011年の東日本大震災、そして近年の廃プラスチックの輸出が難しくなってきたことで、事業から排出されたような産業廃棄物は、処分にかかる費用が高騰しているのです。
万年塀であれば、処分量がかなり多くなるので、費用が多く発生します。
解体材の処分では、業者が発生した解体材を産廃屋さんで産業廃棄物として処分します。解体・撤去で発生したブロックをコンクリートガラとして産廃屋さんで処分を行うなどして処分します。
作業時の状況や条件によって追加費用がかかる場合も
万年塀解体・撤去費用については、作業時の状況・条件によって追加費用が発生することがあります。たとえば、隣地立ち入り許可がない場合だと、作業範囲が限られてしまうので、隣地の立ち入り許可がある場合は追加費用が発生しませんが、許可がない場合は追加費用が発生することがあります。
また、解体・撤去工事の話をしておかないと、近所の住民からクレームが入る可能性があります。万が一クレームが入って、解体・撤去作業を中断すれば作業日数が増え、追加費用が発生してしまいます。
アスベスト含有建材が見つかると工事費用が高くつく
万年塀の解体・撤去工事の際に、事前調査でアスベスト含有建材が見つかることがあります。アスベストが確見つかった場合は、業者は運搬・処分を収集運搬業者・処分場との委託契約・マニフェストに従って適正に処理する必要があります。
アスベストを撤去する場合は、特別な作業が必要になるので、その分追加費用がかかり工事費用が高額になってしまいます。
コストを削減した万年塀の解体・撤去工事方法
なるべく安く済ませたい方のために、コストを削減した万年塀の解体・撤去工事方法を紹介します。古くなった万年塀を全て解体・撤去する場合、金額が高くなってしまい大変です。
なるべく安く済ませたい場合は、全て解体・撤去する場合に比べて安全性は劣りますが、万年塀の上の方だけフェンスを撤去するという方法もあります。フェンスを撤去し柱もカットして、モルタルで補修します。上の部分を撤去して軽くするだけでもかなり安全になります。下部の万年塀が残っている部分の上部のフェンスを撤去したら、それをアルミフェンスなどに交換することでかなり安全な塀になります。
もちろん、全て撤去する方がより安全ではありますが、コスト削減をしたい方はこのような工事の方法も必要に応じてご検討ください。