在来工法ともいわれている木造軸組工法とはどんな工法なのでしょうか?木造軸組工法はツーバイフォー工法とどんな違いがあるのか?どんなメリットやデメリットがあるのか?在来工法の特徴、壁や耐震性などに関してのツーバイフォー工法との違いなどを解説します。
木造軸組工法(在来工法)とツーバイフォーの違いを解説!
木造住宅には、木造軸組工法と木造枠組壁工法の2種類に分けることができます。木造軸組工法は在来工法と呼ばれています。一方、木造枠組壁工法はツーバイフォー(2✕4)工法とも呼ばれています。
木造軸組工法とツーバイフォー工法の違いを簡単に説明すると、木造軸組工法は点を結ぶようにして構造物を造る工法です。ツーバイフォー工法の場合、面を組み立てて構造物を造る工法だといえます。この記事では、木造軸組工法(在来工法)とツーバイフォーの違いを解説します。
木造軸組工法とツーバイフォーの特徴
木造軸組工法とツーバイフォー工法では、それぞれの特徴や違いがあります。基本的にどのように違うのか、分かりやすく説明します。
木造軸組工法は日本古来の工法
木造軸組工法は日本で昔から利用されてきた、伝統の工法を発展させた古来の工法であることから、在来工法と呼ばれてきました。
在来工法は柱と梁によって建物を支えるのが特徴です。コンクリートの基礎に柱を立てて梁を水平に渡してフレーム状の骨組みをつくり、壁や屋根などを取り付けて建築する工法です。
柱と梁で作られた枠の間に、筋交いと呼ばれる建材を斜めに補強することで体力壁をつくります。このように柱と梁、筋交いなどを使うことで、空間上の点を結ぶようにして構成するのが木造軸組工法です。
ツーバイフォーは北米生まれの工法
一方、ツーバイフォー工法と呼ばれている木造枠組壁工法は、戦後に北米から輸入された工法が代表的です。ツーバイフォー工法は、木製パネルと2インチ✕4インチの太さの角材で作ったパネルによってつくられます。
壁や床、天井などの面を作り、この面によって組み立てた6面体の構造を基準として家を建てる工法です。ツーバイフォー工法は、パネルを使った壁式構造であるため、地震の揺れによる変形に強いというメリットがあります。
木造軸組工法とツーバイフォーの違いやメリット・デメリット
木造軸組工法とツーバイフォー工法では、点と点で結んでいるのか、面の構成で建てるのかの違いがあります。そうした違いによってそれぞれのメリットやデメリットが異なっています。耐震性や防火性など、さまざまな側面から較してみましょう。
間取りの自由度の違い
木造軸組工法は点と点を結ぶようにして柱や梁を設置するため、さまざまな空間の形やサイズを決めることができます。
ですから、ツーバイフォー工法の工法と比べて、あと何cmか広げたいといった希望に対応しやすい工法です。
たとえば、階段の下に収納スペースをつくりたいとき、木造軸組工法だと自由に空間を確保できます。また、変形した土地や狭い土地の形状にも合わせやすいのが特徴です。
開口部の違い
木造軸組工法では点と点の距離が自在になり、面で構造物を支えるツーバイフォー工法と違って壁を抜きやすくなっています。ですから、柱と柱の間隔が広い空間のある間取りや大開口の窓をつくりやすいメリットがあります。
リフォームのしやすさの違い
間取りの自由度が高い木造軸組工法は、建てた後でもリフォームで間取りを変更しやすいメリットがあります。たとえば子供たちが成人し、夫婦2人になったときに間取りを変更するなど、子供夫婦と同居する場合にも対応しやすい工法です。
一方、ツーバイフォー工法では壁が建物を支える構造であり、抜けない壁が多く、空間を後から広げることが難しい工法といえます。
また、木造軸組工法だと昔からある工法のため、リフォームを手掛ける施工会社も多く、別の会社でもリフォームすることが可能です。一方、ツーバイフォー工法だとリフォームする場合は、新築時に施工した会社に依頼することになります。
耐震性の違い
耐震性については、どちらの工法も耐震基準をクリアしているのは当然です。ただ、それぞれの工法を比べた場合、面で構成しているツーバイフォー工法の方が有利です。
なぜかといえば、ツーバイフォー工法ではモノコック構造と呼ばれる、パネルを組み立てて6面で支える構造になっているためです。モノコック構造は飛行機や新幹線、F1マシンにも採用されているほど強固な構造ですから、耐震性においては優れています。
防火性の違い
防火性については、柱と柱の間を空けている木造軸組工法に比べて、ツーバイフォー工法では面が多くなります。面によって炎を跳ね返しやすくなることから、防火性に関しては優れているといえます。
しかし、木造軸組工法でも防火地域や準防火地域で建てられているのが現状です。そのようなことから、外壁材などで防火性の高い素材を選ぶことで、十分に防火性を高くできます。
品質・工期の違い
在来工法といわれる木造軸組工法は、工期が多少長いというデメリットがあります。というのも現場での作業量が多く、職人の能力に依存するといったケースが多くあるからです
在来工法では、一般的に一棟を建てるのに約4ヶ月から半年ほどかかります。工期は人件費に直接関係してきますから、工期が長くなる分費用もかかってしまうというデメリットがあります。
また、在来工法では工法が複雑になるため、大工などの能力や熟練度によって仕上がりに差がでてしまうといったこともあります。
木造軸組工法などの木造住宅にメリット・デメリットはある?
木造軸組工法などの木造住宅にはメリットやデメリットがありますが、それぞれを詳しく解説します。
耐久性・耐火性について
木は腐るというイメージから、木造の耐久性に疑問を持っている人もいるかもしれません。しかし、きちんとした対応によって、木造住宅はとても長持ちすることが分かっています。
たとえば、世界で最も古い木造建築物である法隆寺の五重塔は、築1200年以上経っていますが健在です。また、最近では築100年以上の木造古民家を、カフェやホテルにリノベーションして人気になっているケースもあります。
シロアリ被害について
木造住宅といえば、シロアリの被害を想像する人も多いでしょう。しかし、結論からいえば現在の木造住宅では、シロアリ被害はそれほど心配する必要はありません。
確かに以前の木造住宅の基礎は布基礎と呼ばれる、家の下にある地面が露出している基礎が一般的でした。これも、現在では地面を厚いコンクリートで覆われたベタ基礎といわれるものが一般的です。
シロアリは、ガラスや陶器でも食べるといわれていますが、厚いコンクリートを食べ続けることはできないでしょう。
高層建築物について
集建材(板材を張り合わせた材料)の進化やCLT(繊維方向が交差するように積み重ねた集建材)の開発によって、木造でも高層建築が建てられるようになりました。
ヨーロッパや北米ではCLTによる高層建築物が建てられていて、日本でも10階~12階の高層建築の建設が計画されています。
木造軸組工法で有名なハウスメーカー
従来工法は現在でも戸建住宅の代表的な工法ですが、全国規模のハウスメーカーの数は多くありません。その中から、在来工法で有名なハウスメーカーを3社紹介します。
ハウスメーカー①一条工務店
一条工務店は、以前から耐震性を重視した家造りを目指してきたハウスメーカーとして有名でした。一条工務店がモデルハウスで他社に負けないような体制を構築したのが、一条のヒット商品である『夢の家』I-HEAD構法です。
一条工務店の引き渡し物件では、全棟気密測定を実施しています。床暖房や太陽光発電など、ユーザーが望むようなことを100%近く可能にしている点が大きな強みとなっています。
ハウスメーカー②日本ハウスホールディングス
日本ハウスホールディングスは、2015年に東日本ハウスから改名し現在では在来工法の中堅ハウスメーカーになっています。
また、日本ハウスホールディングスは、1993年頃から『新木造システム』としてパネル化工法の住宅を販売しています。そうしたことから、業界に先駆けて在来工法のパネル化に着目したハウスメーカーだといえるでしょう。
ハウスメーカー③住友林業
住友林業も日本を代表する在来工法のメーカーであり、老舗のハウスメーカーです。モノコック構造に安易に逃げず、マルチバランス構法の『きづれパネル』は高く評価されています。
木造軸組工法(在来工法)とツーバイフォーの違いを覚えよう!
在来工法である木造軸組工法とツーバイフォー工法の違いを見てきました。それぞれにメリットやデメリットがありますから、それらをしっかりと学習しておくことで、どの工法が自分の理想的な住宅になのかが分かるでしょう。
もし在来工法で家を建てたいと思っているとしたら、有名なハウスメーカーに依頼してみるのもいいかもしれません。