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老朽化した家とは?
日本全国で空き家が増えており、原因は少子高齢化や中古より新築住宅が好まれること、家を相続しても他に住まいがあり住宅を必要としていないことなどがあります。
老朽化した家は、築年数が古ければ建物としての資産価値も低く、古い耐震基準で建てられていれば地震災害などに脆弱です。
築年数が20年以上経っている
国税庁「確定申告作成コーナー」「主な減価償却資産の耐用年数(建物/建物附属設備)」の表によると、木造戸建て住宅の法定耐用年数は22年です。
耐用年数は税務上の数字で、実際の劣化度合いを測ったものではありませんが、建築物の資産価値は築年数に応じて減少します。
築20年以上の木造戸建て住宅では、資産的価値がほぼなくなっている可能性があります。
旧耐震基準で建てられている
「旧建築基準法」で建てられている古い家屋は、耐震性が低い可能性があります。
「新耐震基準」は1981年(昭和56年)6月1日に改正した基準で、それより前に建てられている家は「旧建築基準」が適用されています。
「旧耐震基準」では「建物が中規模地震で倒壊しない」に対し、現在の「新耐震基準」は「中規模地震でほとんど損傷せず、大規模地震で倒壊・崩壊しない」とより厳しい基準です。
老朽化した家に起こりうる5つの問題
家は定期的に利用やメンテナンスがされない状況下では、劣化の進みが速くなります。荒れた家屋や敷地の植栽は、見た目にもよくありません。
自然災害などの際に、大きな力が加わることで家屋が倒壊する恐れもありますので、老朽化した家を持っている場合は周辺住民に被害を及ぼす可能性があることを十分に意識する必要があるでしょう。
- 自然倒壊に繋がる危険性がある
- 害虫・害獣が住み着く危険性がある
- 犯罪の現場に使われる危険性がある
- カビが生える可能性がある
- 増税や罰金が課される可能性がある
1:自然倒壊に繋がる危険性がある
建材の腐食、シロアリ被害、ひび割れ、雨漏りなどが発生しても、傷んだ箇所が空き家では気づかれずに放置されるため、さらに建物の痛みは広がっていきます。
脆くなった空き家は、台風や地震などの自然災害により大きな力が加わることで、自然倒壊する危険もあります。
2:害虫・害獣が住み着く危険性がある
空き家にゴキブリやハエ、ハチなどの虫が増殖したり、動物ではネズミ、ハクビシン、イタチ、アライグマなどの動物が住み着いたりすることもあります。
動物の糞による悪臭や虫が湧いてばい菌を運びこむことなど、いずれの場合も不衛生な環境や不快感を周辺住民に与えることになる可能性があります。
3:犯罪の現場に使われる危険性がある
敷地や家屋が全く管理されていないことで、誰も住んでいない空家だと認知されることでさまざまな犯罪を招くといわれています。
敷地への不法侵入、ゴミの投棄、家屋では盗難、放火、違法な薬物取引、性犯罪に使用される可能性もあります。
4:カビが生える可能性がある
人が利用する家は、人の往来や窓の開閉により空気が流れるため、溜まった湿気を逃しカビが増えにくくなっています。
空き家では人の往来もなく窓や戸は閉め切りで、湿気は家の中に留まりカビが発生しやすい状態となります。カビが増えることが建物の劣化に繋がります。
5:増税や罰金が課される可能性がある
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」は、「適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活に深刻な影響を及ぼしていること」から国が状況改善のために定めたものです。
市町村町は近隣住民などから苦情を受けた場合に、空き家を立ち入り調査し計画的に空き家の問題に対する措置をとることがあります。
持ち主に対して「助言、指導、勧告、命令」などが下されても従わない場合、「行政代執行法」により空き家に対して「除却、修繕、立木竹の伐採」などの措置がとられることになります。
この法律で市町村町の命令に違反すれば50万円以下、立入調査を拒否すれば20万円以下の過料となる場合があり、勧告に従わなかった場合、固定資産税の「住宅用地の特例」が受けられなくなるため、課税額が上がります。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(過料)第十六条|e-gov 法令検索
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老朽化した家を所有する4つの注意点
老朽化した家を所有する際に、注意する点をみていきましょう。
古い家は年月を経て、設備も古くなっており、資産的評価も下がっています。いざ、増改築によって再利用しようとする場合には建築書類を役所に提出する必要がありますが、紛失していれば認可がスムーズにいかないこともあるでしょう。
- 資産価値が低く売却しにくい
- 隣家との土地の境界が曖昧になる
- 増改築が難しい場合がある
- 水道管の工事が必要になる場合がある
1:資産価値が低く売却しにくい
建物の資産価値は、築年数により減少していきます。
国税庁の「減価償却資産の耐用年数表」では、一般的な木造住宅では22年となっています。国土交通省のデータでも木造戸建て住宅では、築20年後の資産価値はほとんどなくなるとしています。
住宅部分の価値がほとんどなくなって、資産価値として低い場合、持ち主にとっては売却しにくいでしょう。
2:隣家との土地の境界が曖昧になる
時間の経過や所有者が移り変わったことなどにより、隣地との境界が曖昧になる場合もあります。
敷地境界トラブルが起きた場合、土地家屋調査士など専門家の第三者の立ち合いによる話し合い、民事の調停制度による申し立て、境界問題相談センターの介入、民事訴訟などによる解決ができますが、次の活用を考える際に手間と時間がかかります。
このようなトラブルを予防するには、有資格者の作成した実測図を確認し、書類の保管に努め、売却、譲渡する場合も現物と併せて渡すようにしましょう。
3:増改築が難しい場合がある
増改築しようとする場合、確認済み証や検査済み証、建築台帳記載の有無やその他の建物に関する資料を役所に提出する必要があります。しかし、もしこれらの書類を紛失してしまうと認可されにくいことがあり、活用を検討する際には注意が必要です。
この場合も、小規模改修工事などはできることがあります。
4:水道管の工事が必要になる場合がある
厚生労働省の参考資料として「水道事業者等における更新実績を踏まえた実使用年数に基づく更新基準の設定例」では、管路は法定耐用年数40年とされています。
上下水道の本管までにつながる敷地内の水道管は、個人の管理責任となりますので、水道管が劣化している場合は、交換工事などのメンテナンスが必要になることもあります。
出典:参考資料 実使用年数に基づく更新基準の設定例|厚生労働省
老朽化した家の4つの対処方法
古い家を持つ人の中には、身内の住宅としては現在必要がないけれど、固定資産税の軽減を見込んでそのまま空き家にしているという人も多いのではないでしょうか。
家を維持するためには適切なメンテナンスが必要なのですが、それも難しい場合や次の活用を検討する場合の方法をみていきましょう。
- 現在の耐震基準に合わせてリフォームする
- 古家付き土地として売却する
- 解体し土地として売却する
- 更地にし駐車場として活用する
1:現在の耐震基準に合わせてリフォームする
賃貸として活用する場合、旧建築基準によって建てられた家は、現行の耐震基準に見合った強度の耐震性をもたせるためにリフォームする必要があります。
耐震改修の費用は自治体独自に補助金が出ることがあるため、興味のある方は該当地域の自治体に問い合わせてみることをお勧めします。
2:古家付き土地として売却する
家をそのまま古屋付きの物件として売却することもできます。価格を抑えつつ自分でリフォームして住みたい人や地方へ移住希望の人などが古屋付きの物件を検討する可能性があります。
物件を売却後は、売主には固定資産税や管理の負担がなくなるメリットがあります。
不動産会社に仲介してもらって販売することもできますし、自治体の空き家バンクに登録して購入希望者との橋渡しや不動産会社仲介の連絡をとってもらう方法もあります。
仲介無しの売買では、瑕疵(かし)担保責任があることを押さえておいたほうがいいでしょう。ここでいう瑕疵は、構造耐力上主要部分や雨漏りの侵入を防止する部分についての欠陥です。つまり物件に雨漏り、シロアリ被害、耐震強度が弱い、地盤沈下などがあった場合のことです。
瑕疵担保責任では、購入者が知らされていない不具合について、修復費用は販売者負担で修復する必要があり、重大な不具合や欠陥は、売主が買主に事前に知らせ、了承を得ておく必要があるのです。
中古住宅売買後のトラブルを避けるために、専門家による「建物状況調査(インスペクション)」、瑕疵があった場合の「既存住宅売買瑕疵保険」も利用できるので詳しく知りたい方は調べてみるといいでしょう。
3:解体し土地として売却する
古家を解体して更地にすると、古家つきの物件よりも更地にしたほうが高く販売できる可能性があります。
売主にとっては解体時の費用がかかることと固定資産税が上がることはデメリットになりますが、買主にとっては土地のみを求めている人が自由な発想で活用できるので求めやすくなります。
4:更地にし駐車場として活用する
更地にし、駐車場を経営する場合、地面に直接車を置くタイプの駐車場であれば初期投資は少なく、管理もほとんど必要ありません。ただし、立地条件や利用者が多くいることが収益を上げることの前提になります。
更地にするために解体費用が必要で、固定資産税の軽減もなくなるので、立地や需要などと考え併せて検討してみることをお勧めします。
老朽化した家を有効活用しよう
老朽化した家は地域住民に対して防災、衛生、景観などの生活に悪影響を与える可能性があります。「特定空家」に指定された場合には、固定資産税の軽減措置の対象外にもなります。
老朽化した家を持つ人には、家の定期的な管理維持に努めることが大切で、維持管理が難しく家を利用する予定がない場合には、次の活用方法を検討してみることをお勧めします。
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