耐用年数を過ぎた木造アパートの4つの対応策|建物寿命を延ばすコツも解説

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建物の耐用年数とは

耐用年数とは、建物などを使用できる年数のことです。建物の耐用年数は、建物の材料や使用用途によって決められた「法廷耐用年数」を意味することが多いです。

しかし実際の建物の寿命は法廷耐用年数と異なる場合があります。ここでは、建物の耐用年数の定義について解説します。

法定耐用年数

法定耐用年数とは、国税庁が主に課税のために定めた、建物を使用できる年数です。建物は年数が経過することによって劣化していきます。この建物の劣化具合を課税額に反映させるために定められたものが法定耐用年数です。耐用年数は減価償却の期間を決めるものでもあります。

建物の場合は、構造や材質、使用用途によって法定耐用年数が異なります。また土地には法定耐用年数が定められていません。

出典:昭和四十年大蔵省令第十五号 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 一般の減価償却資産の耐用年数 第三条 二|e-GOV法令検索

実際の建物の寿命は法定耐用年数とは異なる

法定耐用年数と建物の寿命とは異なります。建物は一定期間ごとに大規模な修繕をすることで、法定耐用年数を過ぎても使用し続けることが可能です。逆に法定耐用年数以前に使用できなくなる可能性もあります。

建物の寿命の主な原因は、構造躯体や配管などの設備の経年劣化です。地震大国である日本では、新しい耐震性能を確保するために、旧耐震基準の建造物の建て替えが進められています。

日本の建物の寿命は他の先進国と比べて短く、国土交通省の調査で滅失住宅の平均築後年数を国際比較してみると、日本は32.1年、アメリカが66.6年、イギリスが80.6年となっています。

出典:我が国の住生活をめぐる状況等について|国土交通省

アパートの構造別の耐用年数3つ

アパートの 法定耐用年数は構造によって異なります。アパートの構造別の法定耐用年数を見ていきましょう。

出典:減価償却資産の耐用年数表|藤枝市

1:鉄骨アパート

鉄骨アパートは、主要構造体部分に鉄骨を使用している建物です。

鉄骨造は、鋼材が引っ張る力に対して強いものの、一定の温度を超すと強度が弱くなる特徴があります。鉄骨アパートの法定耐用年数は、骨格材の厚みによって異なります。

骨格材の厚み3mm以下の場合

「減価償却資産の耐用年数表」によると、「金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートル以下のものに限る。)」の「住宅用のもの」の法定耐用年数は19年となっています。

骨格材の厚み3mmを超え4mm以下の場合

「減価償却資産の耐用年数表」によると、「金属造のもの(骨格材の肉厚が3ミリメートルを超え4ミリメートル以下のものに限る。)」の「住宅用のもの」の法定耐用年数は27年です。

骨格材の厚み4mm以上の場合

「減価償却資産の耐用年数表」によると、「金属造のもの(骨格材の肉厚が4ミリメートルを超えるものに限る。)」の「住宅用のもの」の法定耐用年数は34年となっています。

2:木造アパート

木造アパートは土台や壁、柱などの構造体にスギやヒノキなどの木材が使用され、軽くて加工しやすく、断熱性が良い建物です。逆に燃えやすく、虫害や腐朽しやすいという点がデメリットになります。

「減価償却資産の耐用年数表」によると、「木造または合成樹脂造のもの」の「住宅用のもの」の法定耐用年数は22年です。

3:鉄筋コンクリート鉄筋

コンクリート造を採用しているアパートもあります。鉄筋コンクリート造は鉄筋を組んでコンクリートを打ち込む構造で、耐久性が高い一方、コストも高くなります。

「減価償却資産の耐用年数表」によると、「鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造のもの」の「住宅用のもの」の法定耐用年数は47年です。

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減価償却とは

減価償却とは、固定資産の購入費用を使用可能期間にわたって分割して計上する会計処理のことです。減価償却は、年数が経つことで資産価値が減っていくという考えに基づいて設定されています。

減価償却費は経費の中でも割合が多いため、減価償却を行うことは不動産所得税を軽減させることにつながります。

減価償却の計算式は下記のとおりです。

減価償却費=取得価額(アパートの取得費用)×償却率

減価償却で節税できる

アパートの購入にかかった費用を耐用年数期間に配分して減価償却費として計上することで、不動産取得税を節税できます。一定期間、所得税を節税できるのです。

例えば5,000万円で新築した木造アパートは22年間、230万円を減価償却費として経費計上できます。この場合は22年間、所得税を節税することが可能です。

アパートの減価償却の計算は「定額法」

減価償却の方法には「定額法」と「定率法」があります。アパート経営の場合、新築物件では「定額法」を用います。

定額法は定率法に比べて初期の償却額が少ないです。そのため新築のほうが需要があり満室になりやすく初期の方が収益が安定しやすいアパート経営に向いています。

法定耐用年数と減価償却率

法定耐用年数(減価償却ができる期間)と減価償却率をアパートの構造別にまとめると、下記のようになっています。

【アパート・マンションの法定耐用年数(減価償却ができる期間)と減価償却率】

構造法定耐用年数(減価償却ができる期間)定額法償却率
木造22年0.046
軽量鉄骨造19年(厚み3㎜以下)27年(厚み3㎜超4㎜以下)0.0530.038
重量鉄骨造34年0.03
鉄筋コンクリート造47年0.022

法定耐用年数は減価償却ができる期間を表すものでもあり、建物の減価償却費を計算するために必要な数値の一つです。

アパート経営やマンション経営、不動産投資などを行う場合は、減価償却費の元になる法定耐用年数を踏まえて資金計画を立てましょう。

付属設備の法定耐用年数と減価償却

アパートには建物の他に電気設備やガス設備、エレベーター、ゴミ置き場などの付属設備があります。

建物附属設備の耐用年数については、電気設備(蓄電池電源設備を除く)や給排水衛生設備、ガス設備は15年、エレベーターが17年、エスカレーターが15年、消火・排煙などの設備が8年、金属製のアーケードが15年というように定められています。

木造・合成樹脂・木骨モルタルの建物は、付属設備も建物と一緒に一括で法定耐用年数を適用してもよいとされています。

しかしこのような減価償却ができる資産は個別に計上することをおすすめします。耐用年数が短い分、1年間に経費計上できる金額を高くすることができるからです。

参考:減価償却資産の耐用年数表

アパートのリフォーム費用も減価償却ができる

建物の資産価値を高めるものや、アパートに新たに価値が加えられるようなリフォームをした場合は、資本的支出として減価償却で計上します。間取りの変更や、設備の追加・入れ替えなどのリフォームなどがあてはまります。

一方、原状回復や、定期的に行っているメンテナンスを目的としたリフォームをした場合は、修繕費で会計処理します。

ここで例をあげます。築27年の鉄筋コンクリート造りのアパートで、構造を強化するために1,000万円のリフォームをするとします。このリフォームを行う場合の計算は下記のとおりです。

1,000万円(リフォーム費)×0.022(償却率)=22万円(減価償却費)

先ほどアパートの新築物件では定額法を用いるとご説明しましたが、システムキッチンなどのような設備を一新する場合は、定額法でなく定率法で計上することも可能です。

システムキッチンを入れ替えるために150万円のリフォームをした場合の初年度の減価償却費、計算式は下記のようになります。

(150万円-0)×0.133(15年の定率法償却率)=199,500円

法定耐用年数内にローンを完済するのがおすすめ

法定耐用年数を超えると、減価償却ができなくなるため、納税額が高くなってしまいます。そのためこのことを見越して、法定耐用年数内にローンを完済しておくことをおすすめします。

ローンの支払いは、アパート経営において支出が大きいものです。ローンの支払いはその金利部分しか経費として計上できないということもあり、法定耐用年数を超えた後もローンの支払いが残っていると、キャッシュフローが悪化してしまう可能性があります。

このような問題を避けるためにも、可能であれば、法定耐用年数内にローンを完済しておくのがおすすめです。

木造アパートが法定耐用年数を超えた場合に起こる問題2つ

木造アパートの法定耐用年数を超えても、問題なく住むことができれば使用し続けることは可能です。実際、古くなったアパートが取り壊されることなく、住人が長い期間住み続けている例は多いでしょう。

しかし、法定耐用年数を超えたアパートを経営することには問題点があります。木造アパートが法定耐用年数を超えた場合に起こり得る問題について、確認しておきましょう。

1:減価償却ができなくなり税金が高くなる

法定耐用年数を超えると減価償却ができなくなります。法定耐用年数を超えることで減価償却ができなくなることによって、税金が高くなってしまいます。

減価償却期間中であれば、帳簿上利益が減るため、支払わなければならない所得税や住民税などの課税額が少なくて済みます。

例えば、4400万円で木造アパートを取得した場合、22年間は減価償却ができ、1年あたり200万円の減価償却ができます。これにより大きな節税が可能です。

しかし木造アパートの法定耐用年数(減価償却期間)の22年を過ぎると価償却ができなくなるため、23年目からは減価償却ができなくなります。そのため納税額がかなり増えてしまいます。

法定耐用年数は節税できる期間であるといえます。そのため耐用年数を超える頃からは、アパートの建て替えや売却など対策を考慮し始めるのもひとつの手です。

2:売却しにくくなる

法定耐用年数を超えると売却しにくくなってしまいます。アパートの購入において多くの場合はローンを利用します。

法定耐用年数を超えた建物は、ローンでの購入がかなり難しくなり、現金一括で購入できる買主に限られてしまうことが多いのです。このような理由から、アパートが売却しにくくなってしまいます。

木造アパートが古くなった場合の対応策4つ

前述したとおり、木造アパートが法定耐用年数を超過した場合、税金が高くなったり、売却しにくくなったりするため、経営者は対策をとる必要が出てきます。

ここからは、木造アパートが古くなってきたときの対応策を紹介します。

1:アパートを建て替える

古くなってしまったアパートは、建て替えてしまえば問題はなくなります。木造アパートが古くなってくると、大規模な修繕費用が必要になる場合があります。リフォームしても「中古物件」であることは変わらないため、新築の形で建て替えるほうが経営上有利になる傾向があります。

特に立地条件が良く、将来的に安定した経営が見込めるのであれば、アパートの建て替えを検討するのも良いでしょう。十分に収益を得た後で建て替えることができれば、トータルでの収益を増やすことができます。

新築時には、より品質がよく耐久性のある建物になるようにするのがおすすめです。建物の法定耐用年数は構造によって異なります。木造のアパートだと22年しか法定耐用年数がありませんが、4mm以上の重量鉄骨造であれば34年、RC造であれば47年の法定耐用年数になります。

ただし一般的に木造より鉄骨造やRC造の方が価格が高くなるため、法定耐用年数と新築価格のバランスを見ながら総合的に判断することが大切だといえます。

ハウスメーカーによって得意な構造が異なるため、ハウスメーカー選びを慎重に行いましょう。

2:耐用年数が残っていればアパートの建物ごと売却する

木造アパートの老朽化が進んできたら、耐用年数を超過する前に、アパートの売却を検討する経営者もいるでしょう。建物が古くなると借り手がつきにくくなるため、売れ残りのまま維持費を支払い続けることになりかねません。

特に自己資金が少ない人などは、アパートの修繕に費用をかけず、建物ごと手放して売却益を得たほうが賢明な判断となる場合があります。

3:耐用年数が過ぎていたらアパートを更地にして売却する

耐用年数が過ぎてしまったら、建物に資産価値はありません。そのため、木造アパートを取り壊し、更地にして売却するケースが多いでしょう。更地にすれば使用用途が限定されず、早い段階で買い手がつきやすくなるからです。

木造アパートの解体は、軽量鉄骨造などに比べて費用が割安になるものの、植栽や塀、駐車場などを撤去する費用もかかるため注意が必要です。更地での売却を検討する場合は、解体費用を確認し考慮しておきましょう。

4:リフォームをしてアパートをきれいにする

古くなった木造アパートの建て替えや売却をせず、リフォームして賃貸経営を続けたり、取引物件としたりする場合は、耐用年数の残存期間が長く、建物の老朽化が少ないことが条件となります。

リフォームして内外装や設備を一新すれば借り手がつきやすくなったり、大規模修繕を行えば再び減価償却を行えたりします。そのようにリフォームをすることで得られる利益アップや節税効果と、多額な修繕費用とのバランスを勘案して、リフォームするか否かを決めましょう。

木造アパートの寿命を延ばすためのコツ5選

木造アパートの寿命の目安は、法定耐用年数である22年です。しかし、法定耐用年数に関わらず、木造アパートの寿命を延ばすことも可能です。場合によっては、法定耐用年数以上の木造アパートに問題なく住めることもあります。

木造アパートの寿命を延ばすためのポイントを見ていきましょう。

1:丁寧に土地を選ぶ

アパートを建設する際は、地盤がしっかりしている土地を選びましょう。

建物の寿命は、土地の地盤強度も影響します。地盤が弱い土地に建物を建てると、耐用年数を経過する前に、建物が沈下する可能性があります。家が傾いたり、基礎にひびが入ったりするため、たとえ建物自体に傷みがなくても住めなくなります。

建物の構造に関係なく、アパートを建設する土地を選ぶ際は、地盤がしっかりしている土地を選びましょう。

2:メンテナンスまで行ってくれるハウスメーカーを選ぶ

アパートを建設する際、アフターフォローが充実したハウスメーカーを選びましょう。素人では気づきにくい設備の交換時期や修繕部分などを確認してくれたり、定期的なメンテナンスの手配などを一任できたりするハウスメーカーもあります。

長く住み続けられる建物の耐久性・耐火性や性能に加えて、アフターフォローについてもハウスメーカーによって大きく異なるため、ハウスメーカー選びは慎重にしましょう。

3:長期にわたって安サポートしてくれるハウスメーカーを選ぶ

減価償却を利用した節税や、減価償却年数を超えた後の戦略も視野に入れ、長期にわたって安定したアパート経営をサポートしてくれるハウスメーカーを選ぶことが大切です。

そのためには、価格が安いことばかりを売りにするメーカーを選ばないようにしましょう。長い期間品質を維持できて将来改修の金額が抑えられるようなアパートを建てられる大手ハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。

しっかりした減価償却の計画についての相談にも乗ってくれるような実績豊富なハウスメーカーがおすすめです。

4:細かいメンテナンスを定期的に行う

雨どいの掃除など、細かいメンテナンスを定期的に行うようにしましょう。

建築後数年が経過すると、徐々に内外壁や設備に劣化が見られるようになります。そのまま何もしなければ、補修工事をする必要が出てきます。しかし、定期的に外壁や雨どいなどにひび割れがないかを確認し、清掃しておくことで寿命を延ばせる可能性が高くなります。

また、木造アパートについてはシロアリ対策も欠かせません。定期的に点検および防蟻処理を施して、シロアリの発生を予防しましょう。何も対策をしないでシロアリの発見が遅れてしまうと、大規模な修繕工事が必要になるケースもあります。

5:築10年頃に大規模修繕を一度は行う

建築後10年を過ぎた頃になると、外壁や屋根の塗り替えなどの大規模な修繕を行う必要があります。さらに、その10年後の耐用年数に近づいてくる頃は、外壁だけでなく内装や設備などを一新する修繕が必要になるでしょう。

当然、大規模修繕は多額の費用がかかります。新築時のローンが残っていると追加融資を受けることは難しいため、建築する時点で長期修繕計画を立てておきましょう。

木造アパートの耐用年数を知り建物に合った対応策を考えよう

木造アパートに限らず、法定耐用年数と建物の寿命は異なります。法定耐用年数を超えた場合は、支払う税金が増えたり、買い手がつかなくなったりするなどの問題が出てきます。

経営リスクを回避するために、木造アパートの耐用年数を確認し、状況に応じた適切な対応策を実施しましょう。

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