70坪の建物の特徴
建物の解体は構造と坪数で基本的な費用が決まるため、建物の特徴を調べる必要があります。建物の構造とは、家を作り上げている材質の組み合わせのことです。このような建物の特徴がわかると、建物の解体方法や解体費用が把握しやすくなります。
70坪は約230平米で、建物としては2世帯以上が住める2~3階建ての住宅はもちろん、マンションやアパート、貸店舗などもあります。
本記事では、70坪の建物を解体するための費用に関して解説していくため、参考にしてみてください。
建物を解体するときに必要となる主な費用
建物を解体する場合、気になるのが解体費用です。前述の通り、建物の解体費用は構造や広さで大きく異なります。硬い構造ほど解体費用の単価が高くなり、広くなるほど解体面積が増えるためコストも上がるのが一般的です。
解体費用の内訳としては、解体工事費用約3~4割、廃棄物の処分約4~5割、仮設工事約1~2割、整地約1割、諸経費約1割となります。
ただし、解体しやすい建物かどうかで人件費や建材の廃棄料が変わり、全体の解体費用も増減していきます。
養生などの仮設工事費用
解体工事を進める際には、工事に必要な足場や工事用トイレ、養生などを仮設します。養生とは足場を組んだ後、建物を騒音や振動、ホコリ防止のための保護シートで囲むことです。
仮設工事費用の目安は工事費全体の約1~2割のため、70坪なら約10万円前後になるでしょう。工事には、トイレ・水道・電源・足場・養生シートなどの設置が含まれています。
一坪当たりの解体費用
解体費用を見積もる場合、主な基準が「構造」と「広さ」です。広さが同じでも、構造が違うと料金も異なります。
目安として、木造は約3万~5万円、鉄骨造は約4万~6万円、鉄筋コンクリート造は約6万~8万円が、坪当たりの単価になります。
人件費
解体費用には人件費が加算されます。解体には工事の作業員だけでなく、警備員やトラックの運転手などが工事に関わっているためです。
1日の人件費は地域や職種によって異なりますが、1人あたり1.5万円程度とされています。また、重機を使用する場合はガソリン代や重機のリース代も必要なため、別途約3~5万円が重機回送費として加算されます。
廃棄物処理費用
解体費用の中でも多くを占めるのが、廃棄物の処理費用です。建物を解体すると木材やコンクリートなど、非常に多くの廃棄物が出ます。一般ゴミとして処理できないため、産業廃棄物として処理します。
廃棄物の処理費用は、解体費用の約4~5割が相場です。木造70坪の一戸建てを解体するのに解体費用が約280万円だとしたら、廃棄物の処理費用は約125万円前後になるでしょう。
アスベスト対策費用
建物にはアスベスト(石綿)が含まれていることがあります。こうした場合は、建物を解体する前にアスベストの除去作業が必要です。作業単価は、処理する面積によって異なります。
国土交通省の回答によると、 アスベスト含有吹付け材の除去費用の目安(2007年データ)は、300平米以下の場合は1平米あたり約2万~8.5万円が相場です。
整地のための費用
建物を解体した後には、土地を整地します。整地とは土地を平らにならすことです。整地に問題がない土地であれば、整地の費用は1平米あたり500円~1,500円程度かかります。
ただし、大きな段差あったり、抜根や地盤の改良が必要だったりする場合は追加料金が発生するため、解体業者にあらかじめ確認しておきましょう。
付帯工事のための費用
基本的な解体工事には、建物本体以外の解体は含まれていません。そのため、樹木やブロック塀、倉庫などの解体は、すべて付帯工事になります。建物を解体する際は、付帯工事の検討も必要です。
付帯工事の費用は、撤去するものによって異なります。樹木の撤去費は大きさにもよりますが、1本約1万~5万円が目安です。ブロック塀は面積で計算し、1平米あたり2,000円程度が相場となります。門扉や倉庫などは、1個に付き2万円程度です。
駐車場代
解体工事の見積もりには、借地料として駐車代金が計上されることがあります。ここでいう駐車代とは、工事車両を停めておくための駐車料金です。この駐車代については特に決まりはありませんが、必要な場合は費用として加算されることが多いです。
駐車場代は場所によって異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。1時間あたり約300~1,000円と、料金にもかなり差があるでしょう。
建て替える場合は建て替え費用
解体工事後に家を建て替える場合は、建て替え費用がかかります。建築費用は一般的に坪単価で計算し、木造の場合は坪あたり約30万~75万円、鉄筋コンクリート造の場合は約60万~100万円です。
この費用の他に、設計費や引越し費用、仮住まい費用、諸経費(測量・地盤調査・税金・保険)などがかかります。
70坪の建物の解体費用相場
建物の解体費用は構造により異なりますが、坪あたり約3万円~8万円が相場です。建物の延床面積が70坪であれば、約210万~560万円になります。費用を計算するには建物の延床面積が必要なため、登記謄本で前もって確かめておきましょう。
建物の構造によって解体費用に大きな差が出るため、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、どのような構造かも把握することが必要です。
プレハブ造70坪の建物の解体費用相場
プレハブの解体費用の相場は、1坪あたり約2.5万~4万円です。70坪のプレハブであれば、解体費用の目安は約175万~280万円になります。ただし、プレハブの材質の違いで費用が変わってくるため、注意が必要です。
木造70坪の建物の解体費用相場
木造を解体するための費用単価は、1坪あたり約3万~5万円が相場です。木造70坪の建物の場合は、約210万~350万円が目安といえます。
解体業者や地域・条件により坪単価が異なるため、事前に確認するようにしましょう。
鉄骨造70坪の建物の解体費用相場
Steel(スチール)の頭文字を取ってS造とも呼ばれる鉄骨造は、骨組みに鉄骨を用いた建物のことです。鉄骨造の解体費用は、1坪あたり約4万~6万円が相場です。70坪の鉄骨造の建物であれば、約280万~420万円が目安になります。
鉄筋コンクリート造70坪の建物の解体費用相場
鉄筋コンクリート造とは、鉄筋を組んで型枠を作製し、その中にコンクリートを流し固めて造った建物です。鉄筋コンクリート造の解体費用は、1坪あたり約6万~8万円が相場です。70坪の鉄筋コンクリート造の建物であれば、約420万~560万円が目安になります。
解体費用が高価になる理由
解体業者の見積もりが、思っていたより高くなる場合があります。それは、基本的な解体費用は建物の大きさと構造で決まりますが、その他に建物の立地や廃棄物など、費用が増える複数の要因があるためです。
それでは、どのような要因があるのか紹介していきます。
建物が密集している場所である場合
建物が密集している場所などで解体工事を行う場合は手作業が増えるため、解体費用が高くなります。
解体工事は重機で建物を壊し、建物の残骸をトラックに積み込んで捨てるのが一般的です。しかし、解体場所の周辺道路が狭かったり、道路や敷地内に段差があったり、交通量が多い場所であったりすると、重機やトラックが使えなくなります。
また、密集しているため周辺との騒音問題も起きやすいでしょう。
こうした場合は手作業するしかなく、騒音で決まった時間しか作業できないため、その分人件費が高くなり全体の解体費用も増えていきます。
撤去するものや廃棄物が多い場合
撤去物や廃棄物が多い場合も、解体費用が高くなります。場合によっては施主が撤去や廃棄できるものもありますが、ほとんどは業者に頼んで処理するのが一般的です。
建物本体以外の撤去物には、物置やブロック塀、カーポート(簡易車庫)などがあります。建物以外に残される物として多いのは、古い家具や日用品、一般ゴミなどです。
アスベストが使われている場合
アスベストが建物に使われている場合、建物の解体前にアスベストを除去する必要があります。石綿とも呼ばれるアスベストは、軽い繊維状の天然鉱物です。
アスベストは人体に有害なため、建物を解体する際に飛散しないよう取り除く必要があります。
70坪の建物の解体費用を安く抑えるポイント
ここでは、70坪の建物を解体する際に、費用を安く抑えられるポイントについて紹介します。
解体工事の費用を節約するためには、業者の選定から補助金の利用方法まで、さまざま項目を入念に確認する必要があります。解体の際は、こちらの内容を参考にしてみてください。
一括資料請求サービスを利用する
70坪のような大きな建物の解体工事では、業者の選定が非常に重要です。業者選びを間違うと、作業の質や料金にも影響します。しかし、施主が自ら解体業者を探すのは手間がかかり、時間的にロスになる場合が多いでしょう。
解体業者を探すのが難しい場合は、見積もりを複数の業者に一括で請求できるサービスを利用してみましょう。専門のスタッフが対応するため、手間が省け費用も抑えられる可能性があります。
複数の業者から相見積もりを取る
見積もりの一括請求サービスを利用しない場合は、少なくとも2~3社程の解体業者から見積もりを取るようにしましょう。各業者の条件や、契約内容を比較して決めることが大切です。
現在、相見積もりは一般的になっていますが、相見積もりを断る業者もいるため、頼む前に相見積もり可能かどうか確かめておきましょう。
見積もりの内容をよく精査する
解体費用を節約するためには、見積もりの内容をよく精査することも大切です。見積もりの内訳をよく見ずに頼んでしまい、失敗する例もあります。見積もりの内容を詳細に記載する業者は、比較的安心できる業者が多い傾向にあります。
見積もりの内容を把握する際は、建物本体以外の解体費用や残置物の撤去、安全対策などはしっかりチェックしましょう。もし、見積もりに不明な点があれば、業者に確認する必要があります。
高額になる時期を避けて解体する
解体工事も繁忙期と閑散期があり、繁忙期の方が解体費用が高くなります。繁忙期とは解体工事が多い時期のことで、繁忙期は人件費や廃棄物の処理費用も上がるため、全体の解体費用も跳ね上がります。
一般的には11月~3月頃が繁忙期とされており、それ以外の期間は閑散期になります。ただし、解体場所の地域や業者によっても異なるため、事前に確認しておきましょう。
廃棄物を自分で撤去しておく
施主が廃棄物を処理する場合、解体費用を抑えられることもあります。そのため、廃棄物の処理については、業者に細かく確かめておくことが大切です。廃棄物の項目を調べた上で、行政の無料回収に出せる物は自分で出すようにしましょう。
中間業者を入れないようにする
中間業者が解体業者との間にいる場合、マージンが発生して解体費用が割高になることがあります。中間業者を入れず、解体業者と直接契約すれば費用を抑えることも可能です。
大手の解体業者は下請け会社に仕事を任せることが多いため、その分料金も高くなります。このような点も、細かく確認しておきましょう。
建て替えをする場合は同じ業者に依頼する
工務店やハウスメーカーに、建て替え工事を依頼する際、解体業者を紹介されることがあります。この場合、紹介料が発生するため、解体費用は割高になるケースが多いです。
ただし、建て替えと解体作業を同じ業者に依頼した場合、二重手間が省ける分目に見えないコストが減らせます。建て替え工事が伴う解体は、この点も踏まえて検討しましょう。
補助金を利用する
住宅の解体には、補助金を出す自治体があります。空き家の倒壊や犯罪利用を防ぐために、一部の自治体ではこのような補助金を用意しています。ただし、補助金の有無や金額、条件などは自治体によって千差万別です。
建物の解体費用に活用できる補助金の例
ここでは、建物を解体する際に自治体から受けられる補助金の具体例を紹介します。
建物を解体する前には、自治体の補助金制度について調べておくことも大切です。もし、補助金を受けることができれば、解体費用の削減に繋がります。
木造住宅除却工事助成事業
東京都大田区では、耐震住宅への建て替えを望む区民が増えたため、木造住宅の除去費用を一部補助金として支給しています。
対象になる建物は、専門家の木造住宅耐震コンサルタントが診断し、危険と判断された木造住宅です。この補助金は令和6年3月末までと助成期限があります。
補助金の算定基準は、解体業者が区内中小企業の場合、工事費用の2/3(75万円限度)、区内中小企業以外の場合、工事費用の1/2(50万円限度)です。工事費用は「実際の工事費用」、または「単価(3.41万円/平米)×延床面積で算出した金額」のいずれか低い金額になります。
出典:木造建築物耐震化助成事業のご案内|東京都大田区 防災まちづくり課
老朽危険家屋等解体撤去補助金制度
福岡県田川市では老朽化した危険な空き家について、市内の解体業者を利用する場合に限り、費用の一部を補助金として交付しています。補助金は経費の1/3(上限20万円)です。対象者は市内にある空き家の所有者で市税の滞納がないか、所有者から委任を受けた方に限ります。
ただし、対象物件に指定されるためには、昭和56年5月31日以前に建築された木造の建築物であることなど、いくつかの条件があります。詳細については、市のホームページで確認するようにしましょう。
出典:老朽危険家屋等解体撤去補助金制度について |福岡県田川市
老朽空家等解体補助制度
兵庫県神戸市では、昭和56年5月以前の建物で腐朽や破損している家屋の場合、解体工事に補助金を支給しています。
補助金を受けられるのは腐朽や破損した空き家ですが、居住家屋や破損していな空き家でも幅が2メートル未満の道路に接する家屋、面積60平米未満の土地に建つ家屋も該当します。
補助金は解体費用の1/3(上限60万円)ですが、家屋に接する道路幅や建物の面積など、条件によっては上限100万円まで交付されます。
危険廃屋解体撤去補助金
鹿児島県曽於市では、市内の危険な廃屋を取り壊す際に、市内の解体業者を利用すれば解体経費の一部を支給しています。対象物件は、所有者が居住または使用していない空き家が前提です。
補助金額は工事費が30万円以上の工事で、工事費の30%(30万円限度)まで補助しています。住宅以外の店舗、事務所、物置、工場、倉庫なども対象物件です。
老朽建築物の除却助成
東京都江東区では、建物を解体する際にかかる費用の一部を補助金として支給しています。建て替えを推進することで、市街地の耐震化や不燃化を進めるのが目的です。
補助金は解体費用の1/2で、上限50万円までです。対象物件は、昭和56年5月31日以前の建物ですが、着工時期により手続きや対象要件が異なるため、ホームページで確認しておきましょう。
出典:古くなった老朽建築物の除却費用最大50万円助成します!|東京都江東区
70坪の建物の解体費用相場を知ろう
解体費用の相場を知るためには、まず解体する建物の坪数を計算する必要があります。基本的な解体費用は、建物の延床面積と建物の構造で計算するためです。延床面積は、建物の登記事項証明書や固定資産納税通知書などで調べられます。
解体費用の相場をよく調べてから、解体業者に見積もりを出してもらうようにしましょう。