リフォームの1つに『減築』があります。家族が家から離れ、大きい家が不要になったり広い庭が欲しいなど理由はそれぞれですが、減築をする場合どれくらいの費用が必要か気になるのではないでしょうか?
減築は年々ニーズが高まっているリフォーム・改築工事です。
- 減築を行う意味
- 減築の費用
- 減築のメリット・デメリット
住まいの減築を検討している人が気になる、費用やメリット・デメリットなどを詳しく解説していきます。
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減築とは?
減築とは建物リフォームの1つですが、部屋を撤去して建物の床面積を減らすことです。
たとえば、使用しなくなった部屋をまるごと撤去する、2階の部屋の床を撤去して吹き抜けを作るなどの方法があります。
部屋を壊して新たに作り直すなどは減築にはならず、家族が家を離れて独立したり、ライフスタイルの変化によって今の住宅が広すぎると思う場合に、減築を考える人が多いです。
維持管理の軽減、2階部分の撤去により身体的な負担軽減、採光や通風の確保、庭を増やすなどのために減築を検討する人もいます。
減築にかかる費用の相場は?6つのパターンごとに紹介
減築は建て替えなどとは異なり、部屋自体がなくなってしまう『取り壊し』工事になります。
減築にかかる費用の相場は、施工面積1㎡あたり10~15万円くらいです。工事の内容によって差があり、場合によっては1㎡あたり20万円以上かかることもあります。
建物が木造か鉄骨か、施工範囲の広さはどのくらいか、どのような工事内容なのかによっても大きく変わります。
地域によっても人件費なども変わるので、実際に減築をする場合には見積もり(できれば数社から見積もりを取る)『相見積もり』を行いましょう。
減築の費用の相場について6つのパターンごとに詳しく紹介します。
平屋の一部だけを取り壊したい場合
平屋の建物の一部だけを取り壊す場合の費用の相場を紹介します。
「建物の一部を取り壊して駐車場や庭を作りたい」「隣の家との間隔を広げたい」などの理由で行われます。
平屋の取り壊しの場合は、住宅を縦に取り壊す・2階建てを平屋にするなどに比べて費用が安いです。
解体費と壁の補修費で、相場は1平方メートルあたり約9万円の費用がかかります。
取り壊す面積が60平方メートルの場合、約540万円の費用がかかります
2階建ての半分を取り壊したい場合
2階建ての建物の半分または一部分を取り壊すので、1階部分の半分と2階部分の半分を合わせて取り壊すことになります。平屋の建物の一部だけを取り壊す場合と同じように、「建物の一部を取り壊して駐車場や庭を作りたい」「隣の家との間隔を広げたい」などの理由で行われます。
この場合、解体費と屋根の補修費、壁の補修費などで1平方メートルあたり約13万円の費用がかかります。たとえば50平方メートルの範囲を取り壊す場合、1階と2階を合わせて100平方メートルになるので、減築費用は約1,300万円になります。
2階建てを平屋にしたい場合
2階建ての建物を平屋にする場合の減築は以下の通りです。
「家族が減り2階を使わなくなった」「階段の上り下りがつらくなった」「介護生活を楽にしたい」「家の耐震性を高めたい」などの理由で行われることが多いです。
この場合、2階の解体費と屋根の設置費などで1平方メートルあたり約10万円の費用がかかります。2階の床面積が100平方メートルの場合、減築費用は約1,000万円になります。
5. 2階建てに吹き抜けを作りたい場合
2階の床を取り壊し、2階と1階の部屋をつなげて吹き抜けを作る場合の費用です。明るくゆとりのある空間を作り、夏を涼しく過ごせるようになります。
この場合は、解体費などで約500万円かかります。
6. 庭を作りたい場合
建物の一部を取り壊して庭を作る場合です。
床面積によって変わりますが、解体費用や壁の補修費・廃材の処理費などを合わせると、約300万円〜690万円の費用がかかります。
取り壊し後に整地をしたり、庭を作り上げるなどすると費用がさらにかさみます。減築工事とは異なる工事になるので、造園業者に相談をしましょう。
減築するメリット5つ
建物の一部分を減らし住居をコンパクトにすることには、さまざまなメリットがあります。
たとえば「建物の手入れがしやすくなる」「冷暖房費などの光熱費や税金が削減できる」「防犯や耐震など安全性が向上する」などがあります。
それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
1. 掃除や換気の負担を減らせる
減築して家を小さくすることで掃除や家のメンテナンスなどの負担を減らし、手入れをしやすい家にすることが可能とです。
たとえば子どもが独立し高齢者だけの世帯になった場合、使っていない部屋の掃除や換気は段々と負担になってきます。2階建て、3階建て住居の場合、階段の上り下りも大変になってくるでしょう。
減築し使っていない部屋を撤去することで、撤去した部屋の掃除や換気をする必要がなくなります。生活動線がスムーズになるので、全体的な家事の負担を減らすことができます。
2. 光熱費をおさえられる
減築により不要な部屋を撤去することで、光熱費を大幅に抑えることが可能です。
家が広いと冷暖房の効きが悪く、電気代が高くなるので、減築し不要な部屋を撤去することで冷暖房の効きが良くなり、結果的に光熱費の削減につながります。
また住宅密集地などでは、減築によって庭を広くすることで隣の家との間隔が広くなり、日当たりが良くなることが期待できます。風通しも良くなるので、結果的に冷暖房にかかる光熱費をおさえることができるでしょう。
3. 防犯性の質の向上が期待できる
減築することには防犯面でも効果があります。
長期間使っていない部屋があると空き巣に狙われやすく、2階やリビングから離れた部屋などは、窓から侵入されても気づきにくいです。
減築することによって、目配りの行き届く家になり、防犯面での効果が期待できます。また、減築して隣の家との間隔をあけることによって、防犯上の死角を無くすなどの効果もあるので、高齢夫婦だけの世帯、単身者の場合におすすめです。
4. 耐震性の向上が期待できる
減築することで耐震性の向上が期待できます。
2階以上の建物の場合、1階部分には上の階の重さがかかっています。減築によって2階の一部を撤去、または2階全体を撤去することで、1階部分への負担を減らすことができます。
それにより建物全体が軽くなり、建物の劣化を防ぎやすくなります。さらに地震の際は揺れの影響を小さくするなど耐震性が向上します。
5. 固定資産税を軽減できる
減築によって固定資産税を軽減することができます。
固定資産税とは、土地や建物を所有している人が負担する税金です。固定資産税は、土地や建物に固定資産税評価額が付けられ、それをもとに納税金額が決まります。固定資産税評価額は、土地や建物の延べ床面積の合計によって変わります。
使っていない部屋であっても、家全体の床面積が広いとその分固定資産税は高くなります。
減築し床面積を減らすことによって固定資産税評価額が下がり、固定資産税を軽減できます。
固定資産税は、その年の1月1日時点で所有している固定資産に対して課税されるので、歳の途中で減築をした場合、翌年の1月1日まで固定資産税の変更はありません。
減築をする場合には、減築をする時期も考えて行うことも大切です。
減築するデメリット5つ
減築はメリットと多いことであることがわかりましたが、減築をすることでデメリットも発生します。
メリットばかりに目がいき、デメリットに気づかずに、後から困ることがないようにする必要があります。
減築する際に注意すべき点について説明します。減築を考える際には、これらの注意点も理解しておきましょう。
1. 予想していたより高くなることがある
減築工事を行うと、予想していたよりも高い費用がかかってしまうことがあります。
減築する際は建物を一部だけ解体することになるので、重機が使用できません。手作業で解体しなければならないのでその分人件費が多くかかってしまいます。とくに2階建ての家を平屋にする工事の場合は、足場を組まなければならないのでその分より高額になります。
減築の工事中に外壁や屋根、柱などからシロアリによる被害が発見され、見積もりをしていた時にはわからなかった問題により、補修工事が必要になることがあります。
耐震のための補強材を撤去したことによって、改めて補強工事が必要になることもあります。このように追加工事を行うことで、当初予想していたよりも高額な工事費用がかかることがあるので注意しましょう。
工事の前に現場を確認したり業者と入念に打ち合わせを行ったりして、どのような追加工事の可能性が考えられ、どのくらいの費用が発生するのか確認しておくことが大切です。
2. 仮の住まいが必要になる
減築のための工事を行う場合は、仮の住まいを用意しなければならないことがあります。
工事中は粉塵や騒音、振動が発生します。減築工事は取り壊し場所によっては住みながら工事を進めることも可能ですが、2階の減築、水道やガス・電気などを止めてしまう場合には、住みながらの工事は難しくなります。
その家で暮らすことができない場合は、一時的な仮住まいが必要になります。工事中に生活するための仮住まいを用意したり、家に置いてある荷物を整理したりする手間がかかってしまいます。
仮住まいが必要になる場合は、ホテルや賃貸物件などの宿泊費がかかります。とくに、工事が数ヶ月など長期間に及ぶ場合は、ある程度まとまった費用が必要です。さらに工事前と工事終了後には引っ越し代金も発生します。
リフォーム業者によっては仮住まいの手配や引っ越しのサポートを行っているところもあるので、事前に相談しておくのがおすすめです。
3. 雨漏りすることがある
減築工事では屋根や壁を一度解体し、補修を行います。なので施工箇所の防水対策が不十分だと雨漏りが発生することもあります。
雨漏りを防ぐためには減築についての知識や実績があり、不安に思う点に対してきちんと説明できる業者に工事を依頼するようにしましょう。
業者ごとに得意分野もあるので、相見積もりなどをして、希望に沿った工事をしてくれる業者を選ぶことをおすすめします。
4. 収納スペースに困ることがある
減築すると部屋の数が少なくなり、収納スペースも減ります。なので家にある荷物を減らすことなくそのままの状態で減築を行うと、後になって収納スペースに困ることがあります。
後で収納スペースに困ることが無いよう、減築工事を行う前に不要な荷物を処分しておくようにしましょう。また減築工事の際に、押入れなどの収納スペースを増やす工事も行うのもおすすめです。
事前にリサイクルショップや不用品買取業者に相談し、不用品を買い取ってもらうことをおすすめします。
5. 登記申請が必要になる
減築によって住宅の床面積が変わると、法務局で建物の登記簿の変更申請が必要になることがあります。
変更から1ヶ月以内に申請する必要があります。申請手続きには費用がかかり、司法書士などに申請の代行を依頼する場合は数万円の費用がかかるのでさらに多くの費用がかかります。
出典. 建物の表示に関する登記|大田区
減築で利用できる補助金やローン
減築の工事をする際に利用できる補助金やローンについて紹介します。減築の工事には多くの費用がかかるので、負担になる場合は補助金やローンを積極的に利用しましょう。
耐震補助金
「耐震補助金」は、行う減築が耐震工事のためと認められた場合に利用できる補助金です。とくに2階建てを平屋に減築する場合には、耐震改修工事として補助金の対象になる可能性が高いです。
このような減築を検討している場合は、業者に相談してまずはじめに耐震診断を行ってもらいましょう。
住宅ローン
減築の工事にかかる費用は住宅ローンを組んで支払うことができます。リフォームローンというものもありますが、住宅ローンの方が低金利で費用を借りることができ、返済期間も長期で組めます。なので毎月の返済額を抑えることができ、より負担を少なくできます。
住宅ローンとして費用を借りる場合は、住宅ローン審査をするために、「リフォームの見積書」や「間取り図面」を用意する必要があります。住宅ローンを借りる金融機関によって必要な書類は異なるので、利用する金融機関に確認してみてください。
見積書を作成するためには業者に建物を見てもらう必要があるので、業者に伝えておきましょう。
減築費用の相場を知って適切な工事を
減築と減築の方法や減築をする際のポイント、メリット・デメリットについて紹介しました。
減築は、これまでの住宅の広さが不要になったり、庭や駐車場を作りたい際にできるリフォーム方法の1つです。
建物の床面積を減らすことで、生活もスマートになり、固定資産税も少なくなります。
減築の方法によって費用は大きく変わるので、リフォーム業者など専門業者に相談し、最適な方法で減築を行いましょう。
減築の費用は地域差や工事方法で異なりますが、相見積もりをすることで地域の相場を知ることができ、適切な価格で減築ができます。
住みやすい家にするための減築なので、メリットを十分生かした減築を行いましょう。
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