近年、増え続ける空き家が引き起こすリスクは、もはや空き家所有者個人のものにとどまらず、全国で社会問題化しています。これに対して、地方自治体や国が主体となって「空き家対策」に乗り出しており、そのひとつとなるのが「空家等対策の推進に関する特別対策措置法(通称・空き家対策特別措置法)」です。
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空き家対策特別措置法とはどんな法律?
「空き家対策特別措置法」は、年々増加している空き家の放置を防止するために制定された法律です。正式名称を「空家等対策の推進に関する特別対策措置法」といい、2015年5月に全面的に施行されました。
また、同法によって以下のようなことを行政が行えるように定められています。
- 空き家の実態調査
- 空き家の所有者への適切な管理の指導
- 空き家の跡地についての活用促進
- 「特定空家」の指定
- 「特定空家」に対して、助言・指導・命令ができる
- 「特定空家」に対しての罰金・行政代執行が可能
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)の概要 | 国土交通省
空き家対策特別措置法においての「空き家」の定義
空き家対策特別措置法では、「空き家」とは建築物や付随する工作物であり、居住などの使用がなされていない状態であるものを指します。
1年間を通して、人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況などから総合的に見て「空き家」かどうかを判断します。
その中でも、「特定空家」となる空き家の定義には以下の4つが挙げられます。
・倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある状態
・著しく衛生上有害となる恐れがある状態
・適切な管理が行われないことで著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家については、次項以降で詳しく解説していきます。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 | 国土交通省
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「特定空家」に指定されてしまう4つの条件
「空き家対策特別措置法」で定義されている「特定空家」は、前述の4つの条件を満たすことで指定を受けてしまいます。ここからその条件の詳しい内容や、特定空家に指定されてしまうとどうなってしまうのか、ということを見ていきましょう。
1:倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある状態である
1つ目は、そのまま放置すれば倒壊する可能性がある空き家です。
「建物が倒壊する恐れがある」「屋根や外壁が脱落する恐れがある」「擁壁が老朽化し危険となる恐れがある」といった条件に該当するかどうかで判断されます。
たとえば、建物が著しく傾斜していたり、基礎や土台部分に損傷があったりする場合などが該当します。
2:著しく衛生上有害となる恐れがある状態である
2つ目は、汚物やゴミなどによって衛生上有害で周囲に悪影響を与える状態の空き家です。
「建物や設備に破損がある」「ゴミの放置や不法投棄などが原因でそのような状態になっている」という点に該当するかで判断されます。
たとえば、浄化槽の放置や破損によって汚物が流出していたり、ごみや不法投棄などによって悪臭が発生してしまったりで、地域住民の生活に支障を及ぼしているケースなどが該当します。
3:適切な管理が行われないことで著しく景観を損なっている状態である
3つ目は、適切な管理が行われないことで近隣周囲の景観を損ねる空き家です。
たとえば、景観法にもとづいて景観計画を策定している場合において、景観計画に定める形態意匠などの制限に適合していない状態となっている場合が該当します。
また、ほかにも屋根や外壁の傷みや落書きが放置されている、窓ガラスが割れたままになっている、敷地内にごみが散乱しているなどの状態で、周囲の景観と不調和になっている場合も該当します。
4:その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態であること
4つ目は、適切に管理されず犯罪の温床になっていたり、害獣が住み着いて周辺の生活環境にトラブルを発生させたりする可能性がある空き家です。
施錠されていない、窓ガラスが割れていて不審者が出入りしていたり、住みついた動物の鳴き声や抜け毛、糞尿などの被害によって地域住民の日常生活に支障を及ぼしてしまっていたりするケースなどが該当します。
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空き家対策特別措置法による特定空家の処分命令の流れ
空き家が「特定空家」に指定され、その後どのような流れで処分が進んでいってしまうのか、というポイントを見ていきましょう。
1:空き家が調査され「特定空家」に指定される
特定空家は、近隣に悪影響を与えるかどうかがポイントになるため、自治体では、まずは通報や苦情があった空き家に対して調査を行います。
その結果、前述した条件に当てはまった場合、特定空家として指定されます。
また、所有者には特定空家の要件に当てはまる可能性が高い場合のみ、連絡があります。
2:適正管理を求める「助言」
行政から所有者に対して、適正管理を求める助言が行われます。助言の時点では法的な拘束力は持たないため、所有者の判断で助言への対応を決めても問題はありません。
ただし、この時点で近隣住民からのクレームや通報あったということは深く受け止め、できるだけ早く対処するようにしましょう。
3:適正管理を強く促す「行政指導」
助言に従わなかった場合や、複数の住民から苦情が入った場合には、助言よりも強い行政指導が行われることになります。
たとえば、特定空家に関する苦情で特に多いのは、立ち木や雑草などが敷地の外にまで伸びてきているケースです。
このような場合、助言の時点では「庭の草木の除草を行ってください」という内容であっても、行政指導になると「ただちに庭の草木の除草をしなさい」など、より強い内容で指導されることになります。
4:状況改善の「勧告」
助言や行政指導にも従わなかった場合は、市町村から所有者へ状態改善の勧告が行われます。
勧告を受ける段階まで進んでしまうと、固定資産税の住宅用地特例措置が受けられなくなるため、固定資産税が更地と同様に最大で6倍となる可能性があります。
ただし、勧告を受けてもすぐに市町村の担当者に連絡を取り、速やかに状態を改善することで、特定空家の指定を解除してもらうことができます。
そのため、どう対応してよいかわからないまま空き家を放置してしまい、勧告を受けてしまった場合は、まず市町村の担当窓口に連絡し、今後の対応を相談するようにしましょう。
5:改善の「命令」
勧告を受けても従わなかった場合、市町村から所有者に対して改善の命令が出されることになります。
命令とは行政処分に相当するものなので、これまでよりも重い措置となり、従わなかった場合は「50万円以下の過料」を科せられてしまいます。
6:最終手段「行政代執行」
命令にも従わなかった場合、行政代執行に移る可能性があります。特定空家に強制的に解体工事などが行われ、その際にかかった費用は所有者に請求が行きます。
「特定空家」に認定されている家の数
国土交通省の令和2年度の調査では、「特定空家」に認定された住宅の数は、全国で約3万件でした。
3万件の内訳は、
- 助言・指導…17,026件
- 命令…131件
- 代執行(行政代執行と略式代執行)…196件
となっており、ここから空き家の除去に至ったのは7,552件にのぼりました。
空き家対等策特別措置法の施行による空き家対策は、一定の効果をあげたものとみられています。
出典:市区町村の取組による管理不全の空き家の除却等の状況|国土交通省
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特定空家に指定されると起こる3つのリスク
空き家対策特別措置法によって特定空家に指定されてしまった場合、速やかに状態の改善を行うことが重要です。
前項の内容も踏まえて、特定空家に指定されてしまった場合のリスクやデメリットをまとめておきましょう。
1:固定資産税優遇措置の対象外となる
特定空家に指定され、行政から勧告を受けた時点で、固定資産税の優遇措置の対象外となります。
もともと居住用の住宅が立っている住宅用地は、特例が適用されて固定資産税が最大で6分の1まで減額されています。また、都市計画税についても最大3分の1まで減額されています。
しかし特定空家として勧告を受けると、固定資産税は更地の場合と同様の扱いになるため最大6倍、都市計画税も最大3倍の金額に上がってしまいます。
2:命令違反による過料が科せられることがある
自治体からの改善命令に従わなかった場合、空家等対策の推進に関する特別措置法第16条に基づき、所有者に対して50万円以下の過料が科せられます。
命令は「行政処分」であるため、正当な理由なく命令に背けば過料が発生するのです。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法 第十六条 | e-Gov法令検索
3:強制撤去される恐れがある
自治体からの改善命令に従わなかった場合、自治体側は特定空家を強制撤去することができます。
また、当然強制撤去の際にかかった費用は、あとから所有者に請求されることになります。
このように、空き家対策特別措置法では特定空家を放置すればするほど厳しい罰則が設けられており、行政側も厳しい対応ができるようになっているのです。
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特定空家に指定されないためにできる対策
空き家対策特別措置法によって空き家が特定空家に指定される原因は、所有者が適切に空き家を管理していないことにあります。そのため、空き家であっても適切に対処すれば、特定空家に指定されることはありません。
では最後に、空き家対策特別措置法によって特定空家に指定されることを防ぐための具体的な対策を紹介します。
1:放置せずきちんと管理する
空き家を適切な状態に保つには、普段からのメンテナンスが必要です。
建物自体のヒビや傾き、屋根瓦の状態だけでなく、庭木や雑草の手入れ、郵便物の回収、ごみが放置されていないかなど定期的に管理・メンテナンスを行いましょう。
将来的にまだ空き家を利用する予定がある場合は、空き家管理を行う専門の業者サービスを利用するのもよいでしょう。
たとえば遠方に住んでいて、所有者が自分自身で清掃や手入れなどの管理を定期的に行うことが難しい、泊まりがけで作業を行う必要がある、という場合は、自分で管理するよりも業者サービスを利用する方が、労力や時間を節約できることもあるはずです。
総合的に見て、自分で管理するよりもコストパフォーマンスがよいと判断される場合は、業者サービスを利用することも一考してみる価値があります。
2:需要がある場合は賃貸住宅として活用する
空き家の状態が良好な場合、第三者に貸して賃貸収入を得ることも検討できます。
都市部や駅に近いなど、需要がある場合には考えてみてもよい方法といえます。建物を持ち続けることができるほか、人が住んでくれることで老朽化を遅らせられるというメリットもあります。
ただし空き家の状態によっては、貸し出す前に多額のリフォーム費用がかかるため、本当にそこまで費用をかけてもいいのかどうかという慎重な検討が必要です。
3:解体して更地にしてしまう
空き家対策に悩んでしまった場合、思い切って建物を解体して、更地にすることも考えてみましょう。
解体して更地にするメリットは、建物のメンテナンスが必要なくなるほか、土地が売却しやすくなることです。解体して更地にした土地を駐車場などにして、有効利用することも可能です。
デメリットとしては、解体費用がかかることに加え、更地のまま所有していると固定資産税の特例措置から外れることです。解体後の活用方法がしっかりと決まっていない場合は、おすすめできない方法といえます。
4:可能であれば売却してしまう
空家対策として、可能であれば売却してしまうことも一つの選択肢です。
売却によって、空き家の管理などの必要がなくなるほか、相続が発生した場合は遺産分割しやすくなります。
また、「空き家対策特別措置法」の税制措置によって、一定の条件を満たした場合に空き家を売却すると、譲渡所得から3,000万円が控除されます。
空き家対策特別措置法の指導を受ける前に適切な対処をしよう
空き家等対策の法律の内容を知ることで、空き家の管理にも役立てられることが多くあるはずです。
「空き家対策特別措置法」には、「空き家等対策計画」に沿った空き家の活用や除去などの財政援助も含まれています。空き家のことで困った場合は、まず地方自治体の窓口に相談するのがよいでしょう。
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