「空き家バンク」とはどんな制度なのか。誰でも使える?意外に知られていないデメリットとは?

解体工事

空き家の増加が社会的な問題になっている、というお話をあちこちで耳にする機会が増えましたね。放置された空き家は所有者個人だけでなく、地域的・社会的にも大きな問題を引き起こします。

国も自治体も、空き家問題解消のためにさまざまな対策を考えていますが、「空き家バンク」の制度もそのひとつです。

聞いたことはあるけれど、本当に使えるものなのか?使い方は?という疑問にお答えするのが、今回の記事です。

特に地方への移住を考えている人にとっては、知っていて損はない知識ばかりです。ぜひ参考にしてみてください。

そもそも空き家バンクとは?

空き家バンクの仕組み

自治体の「空き家情報提供サービス」に、所有する空き家を貸したい人・売りたい人が物件を登録し、空き家を借りたい人・買いたい人がそこから希望の物件を検索して探し出す、というのが基本的な仕組みです。

要するに、空き家を貸したい人と借りたい人、売りたい人と買いたい人を仲介してくれる「マッチング」サービスといえばわかりやすいでしょうか。

空き家バンクの目的

空き家バンクのようなサービス自体は、実はかなり以前から存在していましたが、あまり知られていなかったといえます。

それが近年、社会問題ともなりつつある全国的な空き家増加を背景に、広く知られる制度となりました。

空き家バンクは自治体が運営主体であるため、民間の不動産仲介会社と違い、営利ではなく地域活性化などを目的としていることがほとんどです。

また、自治体としても空き家が増える=人口が少なくなって税収が減る、ということなので、空き家を積極的に貸したり売ったりすることで、多くの人がその地域に移住してくれることを望んでいます。そのため、最近になって空き家バンク制度に力を入れ始めた自治体も多く存在するのです。

特に田舎の奥地にあるような空き家は、存在自体を知られていないことが多いので、このような物件の情報を広く提供することで、需要に応える助けになるのでは、と考えられています。

空き家バンクへの登録方法【貸す側・売る側】

空き家を貸す側・売る側が空き家バンクに登録する流れについて、順を追って見ていきましょう。

空き家バンクに登録できる要件

実は、空き家であればどんな物件でも空き家バンクに登録できるというわけではないのです。

自治体によって細かい内容は変わりますが、おおよそほとんどのところで以下のような要件があり、こういったことを満たしていないと空き家バンクを利用することはできないのです。

〇その自治体に存在している住宅…別の自治体に建っている住宅は不可

〇不動産業者と媒介契約を結んでいない住宅…すでに不動産会社に売却を依頼している物件は不可

〇建築基準法に違反していない住宅…土地の面積に対しての住宅の面積割合が基準に反していないということ

〇各自治体の最高責任者(市長など)が不適切と判断していない住宅…たとえば事業用不動産などは、空き家バンクの趣旨に合っていないため、不適切とされることが多い

その他の細かい要件に関しては、空き家バンクを利用しようとする自治体に、まず詳しく問い合わせてみることをおすすめします。

空き家バンクへの登録ステップ

自治体に登録申請書を提出

まずは各自治体に、空き家バンクに登録を希望する旨、申請書を提出します。

担当者が空き家の状態を調査しに来る

空き家バンク担当課の職員が、空き家の状態を調査・確認しに来ます。場合によっては、不動産業者が一緒に来ることもあるでしょう。

担当者が不動産業者を選定する

自治体は実際の賃貸や売買契約にかかわる仕事まではしないため、貸す側・売る側の人はここで自治体に選定された民間の不動産業者と媒介契約を結ぶことになります。

もちろん、不動産業者を間に入れずに、空き家の購入希望者と直接交渉や契約を結ぶこともできますが、その場合はさまざまな注意点があります(後述参照)。

物件情報が自治体のホームページに掲載される

空き家バンクへの登録申請が通ったら、自治体の空き家パンクのホームページに物件情報が掲載されます。

載せられる情報は、自治体によって、またその他さまざまな要因によってまちまちです。

例を挙げるなら、「所在地」「売却希望価格」「構造や面積」「築年数」「設備」「間取り」「写真」などですが、本当に最低限の外観写真と間取り図しかない、などという場合も存在します。

そのため、ホームページだけで物件の全容がわかるものにはなかなかなっていない、というのが現状です。

ホームページに掲載されたら、あとは空き家を欲しがる人が現れるのを気長に待つことになります。

空き家バンクの使い方【借りる・買う側】

空き家バンクを利用して、借りたい・買いたい物件を探す場合の流れを確認しましょう。難しいことはありませんが、不動産業者を通しての物件探しとは多少勝手が違う部分があります。

自治体の空き家バンクサイトから物件を探す

まずは希望の物件を検索します。情報をいろいろ閲覧して「これは」というものが見つかったら、次にさまざまな「規制」の有無を確認しておきましょう。たとえば「再建築不可物件」のように、今建っている建物を一度取り壊してしまうともう新しい建物を造れない、というような制限のついている物件だと、購入してから後悔することもあるでしょう。

こういった規制・制限のついた建物でないかどうかを、この段階でしっかりチェックしておきましょう。

また、補助金や優遇制度を用意してくれている自治体もあります。こちらも確認し、利用できるものは利用させてもらいましょう。

内覧スケジュールを決める

空き家の存在地が地方であれば、日帰りで内覧に行くのが難しいこともあるはずです。せっかく宿泊するのであれば、気になる物件候補を数軒用意しておいて、いっぺんに見学しておくスケジュールを組むとよいでしょう。

また、自治体によっては「宿泊体験」を用意してくれているところもあります。こういったものに予定をうまくかぶせるという方法もありますね。

入居申込

「空き家バンク交渉申込書」などのような書類が自治体で用意されているので、それに必要事項を記入し、提出します。

入居交渉と契約

たいていの自治体での空き家バンクに関する業務はここで完了し、入居希望者は空き家の持ち主とさまざまな交渉や賃貸契約・売買契約を行います。

自治体によっては、協定を結んだ不動産会社が交渉の仲介や契約業務を行ってくれるところもあります。

空き家バンクのメリット

空き家バンクを利用することによって生じるメリットは、「借りる・買う側」と「貸す・売る」双方に存在します。それぞれで分けて見ていきましょう。

【借りる・買う側メリット】とにかく安く空き家を見つけられる

不動産会社を介して家を借りたり購入したりすると、仲介手数料がかかるものです。これは営利を目的にしている以上当然のことですが、自治体が非営利で行っている空き家バンクであれば、仲介手数料はかからず、しかもかなり安く購入ができる可能性があります。

のちほどデメリットの部分で触れますが、空き家バンクに登録されている物件には、不動産的価値がほとんどないために破格の値段で購入できる、という空き家もたくさんあります。空き家の状態と値段のバランスをうまく見極めることが重要とはなりますが、それでも「安く手に入る」ということ自体は十分メリットとして考えられるといえるでしょう。

また、古民家カフェなどの開業・起業を考えている人にとっても、格安で空き家を見つけられるというシステムは役立ちます。資金的に都心部で店を構えることは難しいような場合でも、地方で安く空き家を手に入れて活路を見出す、ということは十分可能であるはずです。チャンスが大きく広がるとも考えられるのではないでしょうか。

【借りる・買う側メリット】物件選びの際には地元のサポートが受けられる

空き家バンクを利用する人のほとんどは、見知らぬ土地に移住をしようとする人たちです。これから生活する住まいの周辺環境や公共機関について、気候や風土、生活情報についても、自治体の職員をはじめ地元の人たちが豊富に情報を提供してくれることでしょう。

安心して、物件を選べるというメリットが生まれます。

【借りる・買う側メリット】掘り出しものが見つけられる可能性がある

都市部と違い、田舎ではなかなか賃貸住宅というものは見つからない傾向にあります。民間の不動産会社も扱っていないことが多く、そもそも数自体が少ないということにも起因します。

こういった地域でも移住・定住を目的としている空き家バンクであれば、表にはなかなか出てこない物件情報を見つけられる可能性が高いでしょう。

ただしその分、自分から能動的に、積極的に物件探しに動く、という姿勢が求められます。

【貸す・売る側メリット】売りにくい空き家も広く知ってもらえる

前項の借りる・買う側のメリットの裏返しになりますが、貸す・売る側としても立地などの条件でなかなかアピールが難しい空き家や、そもそも不動産会社が存在していない地域で賃貸も売却も大変な空き家を、空き家バンクであれば広く情報公開できるというメリットがあります。

空き家を求めている人を探す間口を広げられるようになるわけです。

【双方とものメリット】補助金が利用できることが多い

空き家バンクの利用には、手厚い補助金が用意されていることが多く、そのため借りるとき・購入するときの初期費用や改修工事費用などにそれを充てることが可能になります。

格安な空き家は老朽化が進み、状態が悪くてそのままでは住みづらいということもありますが、補助金を利用して改善することで、快適な住まいに生まれ変わらせられるかもしれません。

これは借りる・買う側にとってももちろんありがたいことですが、貸す・売る側にとっても大きなメリットとなります。リフォームができないまま空き家バンクに登録したような物件でも、買い手側が「補助金で改修できるなら購入します」と言ってくれることもあるかもしれないからです。

空き家バンクのデメリットと注意点

【借りる・買う側のデメリット】貸借・売買契約は所有者と直接交渉しなければならない

空き家バンクの運営主体は自治体であっても、自治体が行ってくれるのは情報の提供までで、実際の契約や仲介には関与してくれません。

そのため、希望の物件に出会ったらその所有者と直接さまざまな交渉や契約を行わなければならないのです。

実はこのように、空き家バンクは自治体が運営しているといっても、ある段階以上まで話が進んだ後は、何かサポートをしてくれるというわけではないのです。所有者と直接の交渉中に何かトラブルがあったとしても、自治体が責任をもって何かしてくれる、ということもありません。

とはいえ、自治体によっては、協定を結んだ不動産会社に交渉や契約をサポートしてもらっているところ、不動産会社の利用は任意としているところ、などさまざまです。

交渉までは個人同士で、しかし契約は業者を通して、というような利用のしかたができれば、安心につながりますね。

【借りる・買う側のデメリット】物件情報は最低限のものしか閲覧できない

不動産会社の物件情報サイトは、営利目的であるがゆえにさまざまな趣向が凝らされ、顧客が求める情報が探しやすく、見やすく構成されているものばかりです。

しかし空き家バンクの情報サイトは、物件の最低限の情報しか載せられていないということがほとんどです。

そのため、サイトだけで借りる・買うことを決断することはなかなか難しく、どうしても現地におもむいて実物を内覧・確認する必要が出てくるでしょう。遠方であれば、その分手間も増えるといえます。

【借りる・買う側のデメリット】「移住者」でないと利用できない場合もある

そもそもの空き家バンクの目的が、よその地域からの移住者をたくさん受け入れ、定住してもらうことである以上、登録されている空き家の紹介対象者は、移住希望者に限定されている場合があります。

これは、自治体によって異なるため、以前からの住民で住替えのための新居探しにも空き家バンクを利用できるのか、ということに関しては、お住いの自治体に確認が必要となるでしょう。

【貸す側・売る側のデメリット】利益は期待できない

空き家バンクには、不動産価値のほとんどないような物件でも、前述した要件さえ満たしていれば登録自体は可能です。これは、貸す側・売る側にとってもメリットのように思えますが、結局選ぶのは借り手側・買い手側であるため、住めそうにないような物件はいつまでも残り続けることになります。

空き家バンクは営利を目的としていないため、登録されている空き家を売る・貸すための積極的な営業活動というものは一切されません。よって、貸し手側・売り手側が何らかの対策をする(リフォームする、すぐにでも住めるようにととのえておく)ことがなければ、借り手・買い手がつくことはなかなかないでしょう。

したがって、物件をできるだけ高値で売却したい、すぐにでも売りたい、という希望を持つ物件所有者にとっては、空き家バンクの利用は適していないといえます。

【貸す側・売る側のデメリット】不動産業者の助けを借りるべきかで悩む

空き家バンクで自治体が役目を果たしてくれるのは、借り手・買い手と貸し手・売り手を引き合わせてくれるところまでです。入居希望者がいなかったとしても、そこに自治体が責任を取ってくれるということも一切ありません。

とはいえ、前述したように、自治体によっては協定を結んだ地元の不動産会社に交渉や契約手続きをまかせているところもあります。

売買・賃貸契約を交わすなどということは、素人にはなかなか難しい部分なので、本来であれば貸す側・売る側は不動産業者に依頼して契約などの手続きはまかせる方が安心なのですが、そうすると仲介手数料が発生してしまう、というデメリットがあります。

しかし、素人同士の売買契約では、トラブルの種が尽きません。

仲介手数料を支払ってでも、業者にまかせられるところはまかせたほうが、スムーズに、またお互い気持ちの良い取引ができることでしょう。

空き家バンクの現状と問題点

空き家バンクを利用するにことにおいての最大のメリットは、借りる側・買う側にとっては「とにかく安く物件を見つけることができる」「なかなか物件が見つからない地域でもスムーズに希望の物件を探せる」という点であり、貸す側・売る側にとっても現状ではどうにもならない空き家の新しい使い手を見つけられやすい、という利点があります。

しかし、最大の問題点は「交渉」の点です。何度も前述したように、入居希望者と所有者の直接交渉が生み出すメリットはあるものの、のちのちのトラブルの発生可能性を考えると、それがデメリットに変わってしまうこともあるからです。この点を解決するためには、やはり民間の不動産会社が仲介に入らざるを得ないこともあるでしょう。

また、自治体によって空き家バンクがうまく機能しているところ、していないところの差が大きいという問題点も散見されます。

自治体をあげて空き家バンク事業に力を入れ、入居希望者の年齢制限を撤廃したり、短期滞在であっても積極的に受け入れたり、という街がある一方で、空き家バンクへの登録自体がなかなか伸びないという自治体もあります。住んでいない空き家はあるけれども、「先祖代々の家だから見ず知らずの他人を住まわせることに抵抗がある」「人が住める状態に改修する経済的余裕がない」などという理由で、需要はあっても供給が増えないこともあるのです。

このように、需要と供給のミスマッチがまだまだ課題となっている空き家バンク事業。とはいえ改善の余地はまだまだあるため、うまく歯車が嚙み合えば空き家増加の社会問題にもいい対策となるはずです。

まとめ

空き家増加問題に一石を投じる事業として期待される「空き家バンク」。しかし、自治体が面倒をみてくれる範囲は思いのほか広くなく、望んでいたサービスとはちょっと違っていた…という利用者が出てくることも否定できません。

もちろんメリットもたくさんあります。そのメリットに合致すれば、大いに活用できる制度であることもまた間違いないでしょう。

まずは自分のニーズを分析してみること。そのうえで空き家バンクのサービスが自分に合うものであれば、積極的に活用していってみることをおすすめします。

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