建設現場や解体工事現場には欠かせない「養生シート」。でもその言葉の響きは、日常生活ではあまり聞かないかもしれませんね。養生シートとは、簡単にいうと工事現場をぐるりと囲んでいるシートのこと。目にしたことはあるのではないでしょうか?
今回はこの養生シートの役割や必要性だけではなく、養生シートの設置の仕方から「業者のよしあし」を見分ける方法まで見ていきましょう。
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養生シートとは
養生シートとは、建築・解体工事現場を覆うシートのことで、その役割は多くあります。たいていの場合、現場ではこの養生シートを使用して安全や安心を確保してから工事に取り掛かるため、設置がない場合にはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
もし養生シートがなかったら
養生シートの詳しい役割については後述しますが、もっとも重要なものとして「騒音軽減」と「防じん」が挙げられます。
これらは作業員や施主のためというよりも、周辺の住民や住居に対しての配慮という色が濃いものといえます。
工事現場というのは、周囲への迷惑がどうしてもつきものであり、中でも騒音と粉じんの飛散という二点については容易に大きなトラブルに発展しやすいものです。そういった近隣トラブルをできるだけ防いでくれるのが養生シートなのです。
また、養生シートの丁寧な設置はそれだけで近隣住民に「きちんとした業者なんだな」という安心感を与える効果も期待できるでしょう。
養生シートの大きさ
一般的な養生シートの大きさには、1.8m×3.6mサイズや1.8m×5.4mサイズといったものがあり、業界では前者が「一間二間」、後者が「一間三間」と呼ばれています。これを現場の大きさに合わせて組み合わせ、単管という鉄パイプのようなものに接続して設置していきます。
養生シートは重機や資材を引っ掛けるなどすると、破けたり汚れたりする消耗品です。現場の広さや建物の高さに比例して、使用する養生シートの数も当然増えるため、解体工事では消耗品である養生シートの費用負担が施主にもあることを、ある程度は把握しておくべき点といえます。
養生シートは設置しなくても違法ではない
養生シートは安全・安心の面で欠かせないアイテムということがわかりましたが、実はその設置が法的に義務付けられているわけではありません。
騒音規制法というもので定められている基準値以下の騒音レベルであれば、養生シートで防音する必要もないし、散水などを行って粉じんの飛散対策をしていれば、こちらも必ずしも養生シートで防じんしなければいけないというわけでもないのです。
また、国土交通省の「建築物解体工事共通仕様書」というものには、騒音・粉じん対策をはじめ安全に工事を行うための対策が示されており、業者はこれに従って工事を進めるのですが、こちらにも法的拘束力はないため、要は養生シートを使用しなくても「法的に罰せられることはない」ということなのです。
しかし、だからこそ養生シートの扱いでその解体業者の質を見極めることもできるといえるでしょう。
こちらも詳しくは後述しますが、法的拘束力がないからといってシートを使用しない…という業者が果たして優良といえるのか?ということですよね。
以下のようなケースでは養生を行わないこともありますが、裏を返せばこのケース以外でも養生を行わないような業者には、依頼するのを避けた方が無難だといえます。
- 解体現場周辺に他の建物も近隣住民もいない場合
- 散水で粉塵の飛散を防ぐよう対策をとっている場合
- 隣家との間隔が極端に離れている場合
解体工事における養生の役割
粉じんの飛散防止
解体工事では、細かい粉じんやホコリなどが舞い散ることが多く、近隣住人や通行人へ健康被害を与えてしまったり、外に干している洗濯物・車などを汚してしまったりすることもあります。
そこで養生シートで現場全体を覆うことによって、発生したゴミが外に舞い飛ぶことを最小限に防ぐ効果が期待できるのです。
騒音軽減
解体工事現場の騒音は、思った以上に大きなものです。重機の作動音や建物が崩れる音、がれきが下に落ちる音などなど、普段の生活では聞くことがあまりない、大きくて不愉快な音が鳴り響くことも珍しくありません。これはどんなに丁寧に作業していてもある程度は仕方のないものですよね。
これらをなるべく外に漏らさないようにするのも、養生シートの役割のひとつです。
シートで大きな音が防げるとは驚きですが、解体工事現場で使われる養生シートは遮音性に優れた素材で作られているものが多く、大きな効果を発揮します。
落下・転落時の被害を最小限に留める
工事現場での落下事故というのは、さまざまな状況で起こりうるものです。
たとえば、誤って高所から工具や資材を落としてしまった場合、下に作業員や通行人がいた場合大きな事故になりかねません。
このようなことが起きてしまったときも、養生シートがきちんと設置されていればシートの外に物が落下することを防止する手助けにもなるでしょう。
物だけではなく、人の落下事故もありえます。足場を踏み外したり、強風にあおられたり、ということが原因として考えられますが、これらの要因も養生シートで現場及び足場を覆っていればある程度危険を軽減することができるでしょう。
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解体で使用する養生の種類と費用の目安
1:足場養生シート
足場養生シートは、足場が組みあがったら足場を含めて建物全体を覆う、一般的な養生シートです。粉じんの飛散を防いだり、工具や資材の落下を防いだりする役割があり、費用の目安は1,500~2,000円程度/㎡です。
ただ、養生シートは通気性があまりないため、風が強い日はシートがあおられて事故につながる恐れも考えられます。そのため、普段から風が強いなどの地域ではメッシュ素材の養生シートを使うなどして対策されることもあります。
2:防音シート・パネル
防音シートはその名の通り、特に騒音対策に使われ、0.5~1mm程度の厚さを持つ、銀色や黒の養生シートです。費用の目安は2,000~5,000円程度/㎡です。
一般的な養生シートより厚めの素材でできているため、建物全体を覆うことにより防音効果が期待でき、住宅密集地などで使われます。
防音パネルは板状のもので、シートタイプと比べると密度の高い造りになっています。防音シートが家屋などの小規模な解体工事で主に使われるのに対し、防音パネルはビルやマンションなど大きな建築物の解体工事でよく使われます。
3:仮囲い養生
仮囲い養生とは、主に工事範囲を明確にするガードフェンスやパネルなどのことで、費用の目安は2,000~2,500円程度/㎡です。
その名の通り仮囲いの意味で使うため、粉じんの飛散や防音に関してはあまり期待はできません。しかし危険な工事範囲を囲って明確に示すことで、近隣住民や子どもなどが現場内に入らないように促したり、また侵入者を防いだりする役割を持ちます。
4:水撒き養生
水撒き養生とは、解体工事を行うタイミングで散水をすることです。水を撒くことで粉塵の飛散を最小限に抑えます。費用の目安は300~400円程度/㎡となります。
足場養生シートに水撒きをすることで、粉じんの飛散防止の効果がさらに上がることが期待されるため、組み合わせて利用されることもあります。
養生シートの扱いから解体業者の質を見極める
そもそも養生シートを使っていない業者…NG
前述した通り、養生シートは主に騒音軽減・防じんなどの効果を期待して使用するもので、近隣住民への迷惑を最小限に抑えることや作業員の安全を目的としています。
したがって、使用することに法的拘束力はないからといって養生シートの設置を怠るような業者は、安全面についての配慮に著しく欠けているといっても過言ではないでしょう。
養生シートは消耗品ですが、そこにきちんとコストをかけられない業者はとても優良とはいえない、ということですね。
破損した養生シートをそのまま使っている業者…NG
遮音性・防じん性が求められる養生シートなのに、破れているようなものだったらその性能には疑問が生じますよね。音も粉じんも、破損部分から漏れ出てしまうでしょう。
破れた部分に解体した資材や破片がひっかかり、大事故につながることも考えられます。
そのような状態のシートを使い続ける業者には、やはり安全面の管理や配慮に不安が生まれます。 破損してすぐに取り換えるのはコストもかかることですが、その点についてどう考えているかがわかる部分です。
古くても状態のよい養生シートを使い続けている業者…OK
養生シートは防じん効果も求められるため、汚れているのが当然です。
見るからに汚れていて古いけれども破損のない養生シートを使い続けているということは、それだけシートの扱いが丁寧なのだといえるでしょう。こういう業者は、作業も慎重で丁寧な施工をしてくれることが多いものです。
養生シートの設置自体も、ずれていて隙間ができていたり、大きさが合っていないシートを使っていたり、というようなことがなくきちんとした張り方をしている業者は、やはり丁寧な工事をしてくれる業者だといえそうですね。
会社名がプリントされた養生シートを使っている業者…OK
消耗品である養生シートに、会社名を入れるコストをかけられるということは、経営が安定している業者だといえます。
また、大々的に社名を宣伝できるということで、それだけ自信があるということもうかがえるため、安心してまかせられる業者だと判断してよさそうです 。
さらに、養生シートに会社名が入っているということは、何かあれば第三者でもすぐに連絡ができるという利点があります。近隣住民に安心感を提供できるという面でも、信頼できるでしょう。
解体業者のよしあしは養生の有無や質でわかる!
解体業者を探す際には、費用面ももちろん気になるところですが、仕事の質という面では、機材や備品、養生の組み方などからその業者の仕事ぶりを垣間見ることもできます。正しい方法で養生をし、正当な理由なく養生を省略する業者はNGと判断しましょう。
養生シートは消耗品です。しかし必要以上に丁寧に扱う職人は、当然仕事のクォリティも高いと考えられます。
シートの扱い方ひとつでもその業者が信頼に足りるかどうかも判断できてしまいます。解体工事の業者選びの際には、こういった面からもチェックしてみるとよいでしょう。
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