解体工事における分離発注の意味とメリット・デメリットについて詳しく説明します。また、一括発注との違いや選び方についても解説します。実際に分離発注を行う際の流れも紹介するので、ぜひ質の良い解体工事を行うための参考にしてください。
解体工事の後に内装工事や建て替えを考えている場合は、分離発注がおすすめです。分離発注を行うことで、さまざまなメリットが生まれます。
その他にも、土地を売却する際、不動産会社に土地の売買と解体工事を合わせて依頼できることがあります。しかしここでも同様に、仲介手数料を不動産会社に支払う必要があります。費用を少しでも抑えたい場合は、分離発注がおすすめです。

解体工事における分離発注とは?
解体工事における分離発注とは、施主が専門の解体業者に直接工事を依頼することです。
主に解体工事と建て替えを同時に行う場合などに、分離発注が必要となります。解体と建て替えはそれぞれ専門とする業者が異なるためです。
解体工事と建て替えを同時に検討している場合、ハウスメーカーなどが一括で工事を依頼してくれる場合があります。これを一括発注と呼びます。施主側にとっては自分で発注する手間が省けて楽に感じる場合もありますが、代わりに仲介手数料を取られるケースがほとんどなので注意しましょう。
分離発注をすれば、施主が自分で解体業者を探して契約することになるため、仲介手数料など余計な費用がかかる心配がありません。
時間や労力に余裕がある場合、分離発注を選択するのがおすすめです!
解体工事における分離発注のメリット3選
①解体費用の削減に繋がる
一括発注では、解体工事は住宅メーカーが下請けの解体業者に委託します。そのため、ここで仲介手数料が発生します。
分離発注では、施主が業者に直接依頼するため、仲介手数料を支払う必要がありません。金額は工事費用の20%から30%程度にあたるともいわれ、出費は大きくなります。分離発注にすることで、こういった負担を軽減できます。
②事前の意思疎通がしやすい
分離発注には、施主が業者と意思疎通をしやすいというメリットもあります。解体工事を行う際に、分離発注では施主が直接業者とやり取りを行います。そのため、一括発注よりも施主の意向が業者に伝わりやすいです。
その点一括発注では、住宅メーカーを通してやり取りを行います。撤去の範囲に関する食い違いなど、トラブルが起こる可能性もあるでしょう。トラブルを防ぐためには、工事の流れに関する意思疎通を丁寧に行うことが大切です。
③より質の高い解体工事を期待できる
施主が解体業者と打ち合わせを行うことで、解体工事の質を上げることも期待できます。分離発注では施主の意向を直接伝えられます。そのため業者側も解体工事の流れがスムーズになり、質の良い工事が行えるでしょう。
また分離発注では、施主が業者を選びます。そのため、工事を依頼する前に業者の振る舞いや言動なども確認することができるので、安心して工事を進められます。

解体工事における分離発注のデメリット4選
①自分で業者を探す必要がある
分離発注におけるデメリットは、業者を自分で探さなければならないことです。一括発注では、住宅メーカーに解体から建て替えまでを依頼できます。そのため業者を探す手間と時間が省けます。業者を探す手間と時間を省くために、仲介手数料がかかるといえるでしょう。
②解体業者の比較検討が必要になる
解体工事を直接依頼する場合、複数の解体業者に見積もりを出してもらい比較検討する必要があります。打合せなども多くなるため、手間や時間が掛かりストレスに繋がるかもしれません。
また1社だけの見積もりでは、金額が適正かどうかを判断することができません。最低2社、できれば3社程度の見積もり依頼を行いましょう。工事内容や金額が適切かどうかを見極めるためにも、業者の比較検討は重要です。
③時間や手間が負担になる

一括発注では、全ての打ち合わせを自分でやらなければなりません。建物の解体は解体業者と打ち合わせをし、建て替えは住宅メーカーと打ち合わせをします。
解体業者と住宅メーカーの両方と話を進める必要があるため、日程調整や事務手続きは多くなります。 そのため時間に余裕が無くなったり、手続きが負担になる場合もあるでしょう。
④住宅ローンが適用されない
一括発注では、解体費用が住宅建設費用の中に入るため住宅ローンが適用されます。しかし分離発注では、解体費用は住宅ローンに含まれません。解体工事のみでは建物が無くなるだけなので、住宅ローンは下りないのです。
分離発注は注目され始めてからまだ日が浅く、解体業者は個人のお客様との取引実績が少ないです。そのため、解体工事にかかるローンの商品が銀行側には無いのが現状です。どうしてもローンを組みたい場合は、一括発注で工事を依頼しましょう。
解体工事の分離発注の流れ
業者検索と見積り依頼
分離発注を行うには、まず業者を探すことから始めます。インターネットや知人から情報を集め、見積もりを頼む業者を決めましょう。
見積もりは3社程度行うと、価格競争から良い結果が得られやすいです。依頼するときに相見積もりになることを伝えておくと、最終的に断わりやすくなります。
現地調査と見積りの比較検討

依頼する業者を決めたら、解体業者に現地調査を行ってもらいます。この時に施主も同席し、正確な解体範囲を伝えることが重要です。
現地調査を終えたら、提出された見積書を比較検討しましょう。税の表記や養生範囲、アスベストに対する解釈は業者ごとに異なることがあります。
契約と各種申請
見積もり書を確認し解体業者を選んだら、契約を行います。建設業法で定められている通り、契約書には工事金額、工事時期、契約解除の条件などが記されていますので、よく確認しましょう。業者との契約が決定したら、住宅メーカーにも解体工事社名と解体スケジュールを伝えます。
また、工事前に必要な申請を行います。これらは基本的に解体工事会社が行うので心配の必要はありません。 建築リサイクル法の届出と道路使用許可申請を、役所と警察署にそれぞれ提出します。
ライフラインの撤去と近隣住民への挨拶回り
工事前には、電気やガス、電話などの引き込みを撤去します。これらは施主が連絡をすると各会社が撤去を行ってくれます。繁忙期にはすぐに来てもらえない場合があるので、工事が決まり次第早めに連絡をするのが良いでしょう。
また、近隣の方への挨拶回りも大切です。解体工事社だけでなく施主も一緒に回ることをおすすめします。
着工前立ち合いと工事実施

工事範囲について、着工前にもう一度立ち合いをします。スプレーなどで記しをつけておくと解体範囲がわかりやすいです。また、可能であれば住宅メーカーの担当者にも立ち会ってもらいこの時点で仕上げ方の確認をしましょう。
立ち合いを終えたら実際に工事を開始します。施主のもとに万一近隣からの苦情が入った場合は、取り急ぎ解体工事会社に伝え対応を促すことが必要です。
仕上がり確認と支払い
工事を終えたら仕上がりを確認します。整地方法や近隣の建物などに傷を付けていないかも確認しておくと良いでしょう。支払い前に住宅メーカーの担当者にも見てもらうことがおすすめです。
確認ができたら、工事代金を支払います。一般的には振り込みが多いですが、現金の手渡しの場合は領収書を必ず受け取りましょう。
また、解体業者によっては着手金や中間金を求める場合があります。リスク軽減のためにも工事の進捗に比べて不自然に早い支払いの場合は、交渉が必要になります。
滅失登記とマニフェストの受け取り
登記簿謄本から取り壊した建物を消します。これは土地家屋調査士に依頼もできますが、自身で行うと費用を抑えられるでしょう。
解体工事の3週間後ごろには、解体工事会社に廃棄物を適正に処理した証としてマニフェストが送られます。確認のため施主もコピーをもらうことがおすすめです。事前に依頼をしておけば、施主の手元に解体工事完了後1か月程度で届きます。
解体工事における分離発注の仕組みを覚えておこう!

分離発注のメリット·デメリットと流れについて紹介しました。解体工事と建物の再建を行う場合は、分離発注の方がメリットが多いことがわかりました。
また分離発注と一括発注は工事に合わせて使い分けることが大切です。時間に余裕のない方や解体工事の費用を住宅ローンに含めたい場合は、一括発注を検討しましょう。
逆に費用を出来るだけ抑えたい場合や工事の質を上げたい場合は、分離発注がおすすめです。分離発注の流れを理解し、質の良い工事を行いましょう。