「杭抜き工事」という言葉、人によっては耳慣れないものかもしれませんね。
建物を解体したのち、地中に埋まっている杭を引き抜く工事のことをいうのですが、ではこの杭は一体どんなものなのか?杭抜きは絶対にやらなければならないことなのか?やるとしたら費用はどれくらいかかるのか?
これらの疑問について、順に見ていきましょう。
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そもそも「杭」や「杭抜き工事」とは何?
杭とは何なのか
「杭抜き工事」で抜かれる「杭」というのは、新築時に建物を支えるために地中深くに打ち込む棒状のもののことです。
地盤が弱いなどの理由で浅い基礎だけでは建物を支えられない場合に使用され、建物と地盤をしっかりつなぎ、建物の強度を高める役割を果たしています。
「支持層」と呼ばれる固い地盤まで打ち込む「支持杭」、また何かの理由で支持層まで杭が届かない場合に用いる「摩擦杭」といったものがあり、これらの杭を打ち込む工事を杭基礎工事といいます。
しかし全ての建物に杭基礎工事が必要というわけではなく、地盤やその他の状況によって、杭の必要性を判断しているのです。
杭抜き工事とは何なのか
杭抜き工事とは、その名の通り、前述した「杭」を引き抜く工事のことで、地上部分の建物を解体した際に行うものです。
といっても、この杭抜き工事も「絶対に行わなければならない」というものではないところがポイントです。建物解体工事後の土地の活用方法によっては、杭を残しておくという選択肢もありえるのです。
たとえば、更地にして土地を売り出す場合、すぐに新築工事を始める場合…などなど、どのように土地活用するのかということによって、杭抜き工事をするべきかそうでないかが変わってくるというわけです。
次項では杭抜き工事をするべき場合、しなくてもいい場合、またそれぞれの場合のメリット・デメリットなどについて詳しく見ていきましょう。
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杭抜き工事が必要かどうかは、ケースによって変わる
選択肢は3つ!杭を「抜く」「カットする」「抜かない」
杭抜き工事を行うべきかそうでないかは、古い建物の解体工事後、土地をどのように活用するかということで変わってきます。
さらに、杭を抜くか抜かないかだけではなく、「カットする」という選択肢も、場合によっては出てきます。
これら3つの選択肢について、細かく見ていきましょう。
1:杭抜き工事をする!抜くことのメリット・デメリット
杭抜き工事を行うメリット…というよりもむしろ行う「べき」といったほうが良いケースが、土地売却を考えている場合です。
もちろん土地を売却する場合でも、絶対に杭抜き工事を行うべきだというわけではありません。
しかし、新しい所有者が新築工事を考えている場合、地中に杭が埋まったままでは邪魔になって工事が中断してしまうなどといった恐れがあります。
そういった不利益があるため、売主は必ず購入者に杭が残っていることを伝えなければなりません。そうすると土地の価格が下がってしまったり、買い手がつかなくなってしまったりする可能性も出てくるということです。
売却を考えているのであれば、杭抜き工事は行っておくほうが良いといえるでしょう。
杭抜き工事を行うデメリットを挙げるとするなら、費用がかなり高額になるという点でしょう。
杭抜き工事は建物の解体工事とは全くの別物として扱われるため、費用もそれなりにかかります。解体工事費用だけで考えていたら、杭抜き工事の費用も加わって完全に予算をオーバーしてしまう、ということになる可能性も出てきます。
2:杭を切る!カットすることのメリット・デメリット
「杭抜き工事は行っておくに越したことはない」ということはわかっても、やはり費用面で折り合いがつかないこともあるかもしれませんね。
そういった場合は、杭を途中からカットしてしまうという処理方法もあります。抜いてしまうよりはコストもかからないため、特に杭の本数が多い場合には、杭のカットという方法は選択肢のひとつに入ってくるでしょう。
ただしデメリットとしては、杭自体は結局地中に残ってしまうため、地価が下落してしまう可能性は否定できないという点です。
工事費用はコストダウンできるけれど、売却価格は下がってしまう。メリットとデメリットをよく比べて、最適な判断ができるといいですね。
3:杭抜き工事をしない!抜かないことのメリット・デメリット
杭抜き工事をしない選択をした場合の最大のメリットは、やはり大幅なコストカットができることでしょう。
更地にしたあとに建物を新築する予定がなく、駐車場などとして活用する場合など、そもそも杭抜き工事をする必要がないケースもあります。
デメリットは、杭抜き工事をするべきケースの項目で触れた通り、地価が下がる可能性が大きい点です。
土地の売却を考えている場合には、大きなデメリットとなるでしょう。また、売却せずに自分で利用する場合でも地盤沈下などのトラブルを誘発する恐れがつきまといます。
さらに、杭を残す場合は行政に確認と許可が必要になることもあります。杭は地中にそのまま残してしまうと産業廃棄物の扱いとなり、お住まいの自治体によっては所有地内であっても産業廃棄物を残しておくことが禁止されているからです。
場合によっては不法投棄の扱いを受けてしまうこともあるので、事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。こういった手間も、デメリットといえるかもしれませんね。
結局、用途で決めるのがいい
土地売却や新築を考えているなら杭抜き工事は行ったほうがいい、駐車場などでの土地活用を考えているなら行わなくても問題はない、中間をとってカットでも対応できるならカットする…など、土地の活用方法によって杭を残す・残さないの選択を考えられるということがわかりましたね。
上記の他にも、たとえば新築する際でも一部の杭は残しておいて問題がない場合があるなど、最終的には実際に残っている杭の状態や本数にもよるところが大きくなり、本当にケースバイケースです。
それぞれの方法のメリット・デメリットを踏まえて選択したいですね。
杭抜き工事の費用について
杭抜き工事の費用は、一般的には大きく次のような項目に分けられます。ただし項目の名前はあくまで例であり、業者によってはさまざまな名称で見積書に記載されているため、不明な点は見積の段階でしっかり確認しておきましょう。
1:杭抜き費用
地中に埋まっている杭を引き抜く作業にかかる費用です。1本あたりいくらという価格設定が多いようで、その単価×杭の本数で計算することができます。
1本30,000円の杭を30本抜く場合に必要な杭抜工事費は、900,000円となる計算です。
杭の引き抜きには特殊な重機を使うことも多いため、杭抜き費用は高額になる場合が多くなっています。とはいえ単価がいくらかという点については、杭の種類などで業者によりかなり差があるため、見積の段階でしっかり確認が必要です。
2:杭処分費
引き抜いた杭は産業廃棄物に該当するため、この処分費用もかかります。こちらも杭1本あたりの単価×本数で計算することになります。
処分費用が1本3,000円かかる場合、杭を20本処分する際にかかる費用は60,000円です。こちらも業者によって費用は上下します。
3: 重機回送費
杭抜き工事では一般的に大型の重機が必要となりますが、重機は公道を自走することができないため、運搬車両が必要となります。この車両の手配にかかる費用が、重機回送費などと呼ばれる項目です。
杭抜き工事費や杭の処分費の価格が業者によって差が大きい一方で、この重機回送費については相場が大体1回2万~2万5,000円になっているようです。
4:その他諸経費
上記の他にもこまごまとした費用が「諸経費」としてひとくくりにされている場合もあります。内訳についても、納得がいくまで確認しておくようにしましょう。
杭抜き工事はその後の土地利用を考えて有無を判断しよう
建物解体工事後、その土地をどう利用するかで杭抜き工事を行うべきかそうでないかを判断できます。ご自身の事情や状況・予算などをしっかり踏まえたうえで、判断をしたいですね。
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