共有名義の建物を解体する方法とは?建物を壊す際の注意点を解説

解体工事

しばらく人が住んでいない空き家など、建物の取り壊しをしたいけど名義人が複数いる場合は、勝手に建物を壊すことはできません。

不動産を共有している場合は、所有者全員の同意が必要なので、勝手に取り壊してしまうと、トラブルに発展してしまう場合があるので、正しい手順で取り壊しまで進める必要があります。

この記事では、共有名義の建物を解体する方法と、建物を取り壊す際の注意点や共有者から同意を得られない場合の方法を紹介していきます。

共有名義とは?

共有名義とは、1つの建物や土地を複数人が共同して所有することです。協働所有者の間で権利の割合だけ定められている場合に、共有名義といいます。

両親の財産を複数の子どもが相続したときなどにも共有名義が生じます。

共有名義の建物を解体する方法

共有名義の建物を解体するには、共有者全員の同意が必要です。そのため、解体しようと決めたら、まずは共有者全員に共有している建物の取り壊しをしたい旨を伝えましょう。

しかし、共有者が全員同意しない場合は、スムーズに取り壊しができない可能性もありますので、注意しましょう。

また、共有者が亡くなった場合は、その相続人が共有者となるので、相続人へ連絡して同意をもらう必要があります。

亡くなった共有者の相続人がわからない場合は、共有名義不動産の登記簿を確認することで調べられます。ただし、まだ不動産の相続が済まされていない場合は、取り壊す前に不動産の相続を済ませておくことが大切です。

土地と建物で所有者が違う場合

所有している土地に、他人の建物が建てられている場合は、土地と建物で所有者が異なることになります。

そのような場合は、土地所有者が勝手に建物を解体するのはできません。建物の取り壊しができるのは、建物の所有者のみだからです。

自分の土地に他人の建物があっても、建物の所有者ではないため、勝手に解体することは法律上認められないので、注意しましょう。

倒壊の危険がある場合は同意なしで取り壊しできる

老朽化した建物は、倒壊する恐れがあるため近隣住民にも迷惑がかかってしまいます。

そのような場合は、建物が倒壊する危険がある場合のみ、共有者の同意がなくても取り壊しが可能です。

建物の倒壊を防ぐために解体を行なう場合は、「保存行為」であると判断されるので、共有者1人で解体が行えます。

しかし、共有者に連絡をせずに解体するのはトラブルが起こる可能性があるため、事前に解体することは伝えておきましょう。

共有名義の建物を解体する際の注意点

共有名義の建物を解体する場合は、勝手に解体を行ってしまうと、最悪の場合は裁判になったり、さまざまなトラブルを起こす可能性があります。

そのようなリスクを減らすために、事前に共有名義の建物を解体する際の注意点を把握しておくことが大切です。

勝手に解体をしたらトラブルになる可能性が高い

共有者に相談や同意を得ずに、独断で解体工事をしてしまうとトラブルに発展する可能性が高いです。

最悪の場合、訴訟を起こされて裁判になる可能性もあるので注意が必要です。必ず共有者全員から同意をもらったうえで、工事を行いましょう。

話し合いが長期になることも

共有者が複数人いると、お互いの意見が異なって話し合いが長引く可能性があることも覚悟しておくべきです。

工事スケジュールには余裕をもち、話し合いする日にちを設けるのが適切です。

解体工事会社に見積書を作成してもらっておくと、解体の話し合いがスムーズに行える場合もあるので、用意しておくのがおすすめです。

建物滅失登記は単独で申請ができる

建物を取り壊したあとは、建物滅失登記を法務局へ申請する必要があります。

建物滅失登記とは、登記してある建物が解体などによって、なくなった場合に、取り壊しから1ヶ月以内に法務局に申請することをさします。

建物滅失登記は、協働所有者のうち1人が申請人になれば、単独でも手続きを進められます。

未登記でも勝手に解体はできない

土地を所有していて、未登記の建物がたっている場合でも、権限がない土地所有者が勝手に建物を解体はしてはいけないので注意しましょう。

建物がたっている限りは、必ず誰かに所有権があります。仮に、誰のものでもない場合は、最終的に国の所有物になります。

未登記であっても建物は存在しているため、通常の適切な方法で解体まで進める必要があります。

住宅ローン返済中の建物は金融機関の許可が必要

住宅ローンを払い終えている場合は、共有者全員の同意があれば、建物の解体はできます。

しかし、住宅ローン返済中の場合は、金融機関の許可をもらわなければ、建物の取り壊しはできません。

住宅ローンを契約するときに、金融機関は建物の抵当権などの担保として設定しているからです。

担保権が設定されている建物を勝手に取り壊してしまうと、住宅ローンの契約違反になってしまうので、ローンの残債を一括請求される可能性もあります。

そのため、住宅ローンが残っている建物を解体する場合は、必ず金融機関から許可をもらいましょう。

共有者から同意が得られない場合

共有名義の建物を解体する場合に、共有者に伝えてもさまざまな理由で、同意が得られない場合もあります。

このような場合にどのように対処するべきか方法を紹介します。

共有者の持ち分を買い取って単独名義の不動産にする

共有名義の建物を取り壊すときに、所有者全員の同意を得られなかった場合は、共有名義の不動産から単独名義の不動産にする方法があります。

ただし、単独名義にするには、共有者全員の持ち分を買い取る必要があります。すべてを買い取って、自分だけの単独名義の不動産にすることを「全面的価格賠償」といいます。

単独名義にできれば、共有者はいないので、単独で取り壊しができます。

デメリットとしては、所有者全員の持ち分を買い取れるだけの資産が必要な点と、所有者が買い取りに応じない場合もある点です。

共有名義を解消する

今後のトラブルを避けるために共有名義を解消する方法があります。

共有名義を解消する方法は、現物分割・換価分割・裁判による分割の3つの方法があります。

現物分割

取り壊しをおこなったあとに土地を現物分割する方法です。それぞれの土地をわけて、単独名義にします。

共有者の人数にわけて登記することを「分筆」といいます。土地ごとに名義人が登記されて、地番も新しくつけられます。

土地の分け方によっては、使い勝手が悪くなる場合があり、土地の評価額も下がる可能性があるので注意する必要があります。

換価分割

換価分割とは、共有している不動産の持ち分を一括売却して、持分の割合に応じて分配する方法のことです。

換価分割の場合は、所有している不動産を売却するので、第三者の手に渡って、共有者は誰でもなくなってしまいます。

売却して得られた利益を持分の割合で分けるので、揉めることがなく公平性を保つことができるのが特徴です。

裁判による分割

協議がすべて断られた場合に、裁判によって分割する方法があります。

共有物分割訴訟といって、裁判所が関与してどのように分割するかを決めます。

これは、意見がまとまらない場合に有効な方法です。しかし、建物の場合は分割ができないため、競売にかけて代金を分割するなど、価格賠償という方法がとられることが多いです。

まとめ

共有名義の建物を解体を行うときのトラブルを避けるためには、必ず共有者に取り壊しの同意を得る必要があります。

ただし、老朽化が進んでいて倒壊の危険がある建物は同意が得られなくても取り壊しを認められるケースもあります。

スムーズに建物を取り壊すには、共有者と話し合いをしたうえで、最適な方法を探す必要があります。

同意が得られなかった場合は、共有関係を解消することが適切なケースもあります。

共有名義の建物を取り壊す際の注意点を把握したうえで、正しい手順で建物の解体を行いましょう。

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