解体工事というと、重機で建物を少しずつ壊して最終的に何も残らないようにする…というイメージですよね。その際には、普段は隠れていて目にしないものももちろんきれいに処理するわけですが、そこで重要なのが「ライフライン」の撤去です。
ではライフラインとは一体何か、解体工事の際に撤去が必要なライフラインにはどんなものがあるのか、具体的にはどのように撤去を進めていけばいいのか。今回はこの点について詳しく見ていきましょう。
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1 ライフラインとは
1-1 ライフラインって具体的に何?
ライフラインという言葉には「生活・生命を維持するための水道・電気・ガス・通信などの施設のこと」という意味があります。「インフラ」という言い方もしますよね。
「解体工事に伴うライフラインの撤去」という場合は、ガス管や電線などの撤去を表しています。建物の解体の際には、外側を壊すだけでなく、こういった普段は隠れている設備部分の撤去も必要であり、またライフラインの撤去を行っておかないと外側の解体作業に重大な支障をきたすということもあって、解体工事を考える際には知っておかないといけないポイントがたくさんあるのです。
1-2 解体工事の際に処置を考えるべきライフライン
基本的には、解体工事を考える際には以下のライフラインについて停止や撤去を行う必要があります。
・ガス
・電気
・水道
・電話
・光ケーブルやケーブルテレビ
・浄化槽
次項からは、解体工事前にこれらをどのように処理していけばいいかを確認していきます。
2 解体工事前のガスの扱い
解体工事前に必ず供給停止を要請しておくべきものの筆頭が、ガスです。扱いを誤ると重大な事故につながる恐れがもっとも大きいものなので、十分に注意して慎重に対応を進めましょう。
2-1 まずは供給停止の連絡を入れる
家庭に供給されているガスには、大きく分けて3種類の方式があります。
・プロパンガス
・集中プロパン
・都市ガス
基本的にはガスボンベやガスメーター、もしくは毎月の請求書などに記載されているガス会社に連絡すれば間違いありません。ガスの種類による連絡先について、細かく見ていきましょう。
2-1-1 プロパンガス(個別プロパン)
プロパンガスには2種類の供給方法があり、多くは個別プロパンといって、ガス会社がガスを充填したボンベを各家庭に設置して使用するものです。
この個別プロパンの場合は、たいていガスボンベにガス会社の連絡先が記載されているので、そこに連絡を入れましょう。または、ガスメーターに記載されている設置会社に連絡が必要なケースもあります。
ガスの開栓時の契約書類などにも詳しい連絡先が載っているので、そちらを確認してみるのもいいでしょう。
2-1-2 プロパンガス(集中プロパン)
個別プロパンに対して集中プロパンというのは、まとまった住宅街や集合住宅、または工場などの事業者に、まとめて1ヶ所に貯蔵しているガスを供給する方法です。安定性や安全性に優れており、ガス代も比較的安いという特徴があります。
2-1-3 都市ガス
こちらは地域を管轄するガス会社に連絡することになります。規模の大きい会社が多いため、対応は比較的速いことが期待できますが、それでもスケジュールには余裕をもって連絡を入れるようにしましょう。
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2-2 連絡内容
ガス会社に連絡を入れる際にもっとも注意しなければいけないのは、単純に「供給停止依頼」だけではなく「解体工事をするための撤去依頼」だという旨も伝えなければいけない点です。そうでないと単に停止するだけの扱いになったり、ガス管の撤去まで必要なのにそれがなされなかったりということで大きなトラブルにつながる恐れがあります。
都市ガスの場合は特に、「地境撤去(じざかいてっきょ)の依頼」という言葉を使用すると、スムーズに話が進むでしょう。
また、ガス会社に連絡を入れる際には、具体的に以下のことも伝えられるようにしておきましょう。
・撤去する場所の住所
・契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・撤去する時期
・お客様番号もしくはメーター番号
2-3 連絡の際の注意事項
先述した通り、解体工事の際にガスが供給されている管を重機などで損傷してしまうと、引火・爆発といった大事故を引き起こす恐れがあります。工事前の供給停止・撤去依頼の連絡は絶対に忘れないように気をつけましょう。
また、ガス停止の際には依頼主の立ち合いが必要となります。会社側のみならず自分のスケジュールも関係してくるため、余裕をもった日程で早めに連絡するようにしたいものですね。
2-4 状況に応じた対応
ガス管の場所などの状況によっては、ガス管の撤去が必要ない場合もあります。まずはガス会社の担当者に現場を見てもらって、解体工事前にどのような処置が必要になるかを確認してもらい、判断を仰ぎましょう。
2-4-1 ガスメーターの閉栓
これでガスの供給が停止の扱いとなります。解体工事といっても建物の一部だけなど小規模な工事の場合には、閉栓だけで問題ない場合もあります。
2-4-2 ガスメーターの撤去
ガスメーター自体が解体工事の妨げになる場合は、機器の撤去を行ってもらう必要があります。建物の解体予定部分にメーターが設置されているような状況であれば、撤去が必要になるでしょう。
2-4-3 ガス管の切断・撤去
解体工事を行う敷地の地中にガス管が埋設している場合は、確実に供給停止を行ったのち管を撤去してもらう必要があります。
閉栓やメーターの撤去は無料であることが多いのですが、一般的にガス管の切断や撤去には費用がかかるので、予算に組み込んでおきましょう。
2-4-4 解体工事中にガス管が出てきたら
解体工事前に万全を期したつもりでも、いざ工事を始めたら地中の思わぬ場所からガス管が出てきた、という事例もあります。
何度も述べている通り、ガス管は扱いを誤ると大事故につながる恐れがあるため、こういった場合もすぐにガス会社に連絡して専門の担当者に判断と指示を仰ぎましょう。
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3 解体工事前の電気の扱い
3-1 ガス同様、連絡は最重要
解体工事前に電気の停止と電線の撤去を済ませておくことは、ガス管の撤去と同様に最重要事項といっても過言ではありません。
なぜなら、もしも解体工事中に電気を停止していない電線を重機が引っ掛けるなどして切断するというようなことが起きたら、大惨事になりかねないからです。負傷者だけでなく死亡者も出る恐れがある大事故につながる可能性があるため、電気の停止・電線の撤去は必ず行いましょう。
3-2 きちんと解体工事であることを伝える
電力会社に連絡する際にも、単に電気の停止依頼だけではなく「解体工事を行う」ということもはっきりと伝えるようにしましょう。
なぜなら、通常の電気停止だけではアンプブレーカーやメーター、引き込み線などの撤去までは行わないからです。解体工事を行う際には、こういったものもすべて撤去してもらう必要があるため、ガスの場合同様しっかりと解体工事を行う旨を説明しましょう。
電力会社に連絡を入れる際には、具体的に以下のことも伝えられるようにしておきます。
・電気を停止する場所の住所
・契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・撤去する時期
・お客様番号もしくはメーター番号
3-3 余裕をもった連絡を
解体工事に伴う電気の停止・電線などの撤去には、時間がかかることが多々あります。解体工事の開始前ぎりぎりに連絡すると、撤去作業が間に合わず、工期を延ばすはめになるということもありえます。電気撤去だけに限りませんが、「今日連絡したら明日撤去」というものではないため、スケジュール的に余裕をもって業者に連絡するようにしましょう。どんなに遅くても工事開始10日前までの連絡が望ましいといえます。
また、電線などの撤去の際には立ち合いが必要になることがほとんどです。そのため施主のスケジュールにも影響が出てくる作業となります。この点も踏まえて、早めに動いておくようにしたいですね。
3-4 工事中に電気を使う場合はどうなる?
解体工事の際に業者が電気機器を使用する場合、すでに電気が撤去されてしまっていたら電源や電気代はどうなるのでしょうか?
まず電源に関しては、業者が仮設の電気設備を用意することがほとんどです。それを用いて電気機器も使用するため、心配はいらないでしょう。
そしてその際の電気代は、契約の内容によります。見積の際に電気代という項目があったり、諸費用の中に組み込まれていたりする場合は、施主負担という扱いになるでしょう。業者負担となっているケースもありますが、あらかじめはっきりしておかないと、追加請求になるなどのちのちトラブルになる可能性も生じます。
見積のときにきちんと確認しておきましょう。
4 解体工事前の水道の扱い
4-1 水道は停止も撤去もしない!
ここまでガスと電気については、供給停止と設備撤去の依頼をしなければならないというお話をしてきましたが、三大ライフラインともいえるものの残りのひとつ、水道に関してだけは、解体工事前に停止も水道管の撤去も行わないでください。
というのは、水道だけは解体工事中でも確実に使用が予定されているものだからです。
解体工事には塵やほこりの飛散がどうしてもつきものであり、それらを抑えるために「散水」といって、水をまきながら作業を行います。それなりの量の水が必要となるため、電気のように業者が仮設の設備を用意する、というわけにはいかないのです。
「解体工事中も使用するため、水道だけは事前の停止を行わない」ということをしっかり覚えておいてくださいね。
4-2 工事前に精算だけは済ませておく?
解体工事中に多くの水を必要とするということはわかりましたが、その分の水道代は業者と施主のどちらが支払うのでしょうか。
これも電気代同様、特に「どちらが払わなければいけない」という決まりなどはなく、ケースバイケースです。しかし、双方の認識違いで後々のトラブルにならないように、あらかじめ見積の際にどちらの支払いになるのか、またその場合はどのように精算するのか、などという点を確認しておくようにしましょう。
とはいえ解体工事中の水道代は業者側がもつ、というのが大半の工事で当てはまるようです。それぞれのケースについて見ていきましょう。
4-2-1 業者の支払いになる場合
もし工事中の水道代が業者負担ということであれば、工事の前にいったん水道代を精算し、施主がそれまでに使用していた生活用水の水道代と工事でこれから発生する水道代を分けて管理できるようにしておきます。
また、業者によってはあらかじめ水道会社に、工事期間中の水道代の請求は業者にするようにとの依頼まで済ませてくれていることもあります。
4-2-2 施主の支払いになる場合
あまり多くはないケースですが、もし施主側の負担になるのであれば、工事前に特に水道代の精算は必要ありません。解体前までに使用していた生活用水の水道代と、工事中に発生した水道代の両方を施主が支払うため、精算して区別する必要がないからです。
気になるのは請求金額ですが、そんなに高額になることはなかなかないでしょう。季節や現場の状況などにもよりますが、大体5,000円程度と見ておけばまず問題はなく、たとえどんなに多くても1万円以上になることはめったにないといえます。つまり「5,000~1万円」と考えておけばいいでしょう。
4-3 もし水道を止めてしまったらどうなるか
万が一何かの手違いで水道を止めてしまったり、水道を使うこと自体ができなかったりした場合は、「電気のように業者が仮設の設備を用意する、というわけにはいかない」と先述はしましたが、業者が仮設の貯水タンクなどを使用せざるをえなくなると考えられます。
ただし、この場合は仮設の設備や水の実費が施主の負担となってしまうことがほとんどです。見積段階で状況がはっきりしていなかったとしたら、元々の見積金額から追加して請求を受けるということになるでしょう。
たとえ水道代が施主負担のケースでも、水道さえ使えればそこまで高額になることはないのに、停止してしまったばかりに費用も、業者側の作業負担も増えてしまう…ということになりかねないのですね。
「水道は止めない」という点については、さまざまな点でしっかりと把握しておく必要があるのです。
4-4 水道の扱いについて・結論
結論としては、水道については解体工事前に停止したり管を撤去したりする必要はなし (というかむしろ停止してはいけない) 、精算をするかどうかは工事用水代が施主負担か業者負担かで変わる、ということですね。
そういうわけなので、解体工事前に精算を行う場合には、大体以下のような点を伝えられるように準備しておきましょう。
・精算する場所の住所
・契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・精算する時期
・お客様番号もしくはメーター番号
・今後の使用予定(精算後の支払予定者など)
5 解体工事前の電話線の扱い
5-1 契約会社には早めに連絡を入れる
最近は携帯電話の普及により、固定電話を使用している家庭はずいぶん減りましたが、もちろん電話線を引いているお宅もまだまだあるでしょう。
解体工事の際には、電話も止めて電話線を撤去しておく必要があります。これは電気の停止・電線の撤去とはまた別の手続きとなるため、電話を契約している通信会社に連絡することになります。
電気やガスなどと比べてついつい後回しにしたり、忘れがちになったりしますが、通信会社によっては停止や撤去に時間がかかることがあるので、早めの連絡を心がけましょう。
費用はかからないことが多いですが、こちらも会社によってまちまちであるため、連絡の際に確認しておくといいですね。
電話会社に連絡を入れる際には、具体的に以下のことも伝えられるようにしておきましょう。
・撤去する場所の住所
・回線契約者の氏名および連絡先
・連絡者の氏名および連絡先
・撤去する時期
5-2 もしも電話線を撤去せずに解体工事を始めてしまったら…
電話線の撤去をせずに解体工事を行ってしまうと、電話線の垂れ下りが生じたり、重機によって電話線を切断してしまったりして、思わぬ事故が発生する恐れがあります。
電話線の垂れ下りが起きると、通行人の転倒や車の事故につながる可能性が考えられます。特に自転車やバイクなどが引っかかると、大事故になってしまう恐れがあります。
また、電話線を切断してしまうと感電の危険の発生のみならず近隣の電話が不通になるという状態にも陥り、多数の人に迷惑をかけてしまうことにもなりかねないでしょう。電話線は地中に埋設されている場合もあり、その場合は特に電話線の存在に気づかず重機で切断してしまうこともあります。
電気やガスほど存在感が大きくはないため、ついつい忘れてしまいがちですが、損害賠償責任を負わなければいけない事例もあるほどなので、電話線の撤去も必ず行うべく、通信会社に連絡を入れるのを忘れずにおきましょう。
6 解体工事前の光ケーブルやケーブルテレビの扱い
こちらも基本的には電話線の撤去同様、契約している通信会社に「解体工事を行うため、回線を撤去してほしい」という連絡を入れます。やはり早めのスケジュールで動いておきましょう。
7 解体工事前の浄化槽の扱い
ライフラインからは少し外れますが、場合によっては浄化槽が存在する土地もあるでしょう。
浄化槽とは、下水道が整備されていない地域などで、一般家庭から排出される汚水を河川に流せるレベルにまで衛生的に処理する装置のことです。し尿だけを処理できる浄化槽、それに加えて生活排水までも処理できる浄化槽もあります。地下など目立たない場所に設置されていることが多いため、見たことがないうえに解体工事を行うまで存在自体も知らなかった、ということも少なくない設備です。
浄化槽の設備そのものの撤去は解体業者が行うことがほとんどですが、もしも中に汚水が入ったままの状態で解体作業を進めると、汚水が地下に流れ出してしまい、悪臭や汚染を引き起こすなど環境に悪影響を与える可能性があります。つまり浄化槽に中身が入っていると撤去作業を行うことはできないため、解体工事の前には浄化槽の清掃・消毒を完了させておく必要があるのです。
清掃・消毒を行ってくれる業者も場合によっては連絡してすぐに来てくれるとは限らないため、こちらも工事開始前に余裕をもったスケジュールで依頼しておくようにしましょう。
まとめ
解体工事の際には、あらかじめ供給停止や設備撤去の依頼をしておくべきライフラインが数多くあります。基本的には「水道以外は撤去しておく」と考えておきましょう。中には撤去を怠ると重大な事故やトラブルにつながる恐れのあるものも存在するため、スケジュールに余裕をもって、各業者に連絡を行うよう心がけたいですね。
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