住宅の中を快適に保つためには、光を採り入れたり、換気をしたりと、窓の存在は欠かせません。
もし、窓がない家があるとしたら、外から見たときにはとても異様なものに見えるでしょう。しかも、とても快適に暮らせるとは思えません。
人が快適に住む家には窓は必要不可欠な窓ですが、夏の太陽から受ける日差しの熱や、冬の冷え込みによる寒さも窓を通して入ってくるので、ある程度の断熱性は必要となります。
そこで今回は、気になる二重のガラスや三重のガラスなど、窓ガラスに関する断熱効果を詳しくお話します。
断熱窓の種類
単板ガラス(一般的な一枚ガラス、断熱窓ではない)
昔ながらの住宅に使用されていた一枚のガラスで、これは断熱性はなくサッシにガラスが一枚挟まれているものです。
最近の住宅には、断熱効果や気密性を重視するために、単板ガラスはほとんど使用されなくなりました。
複層ガラス
2枚のガラスの間に空気層を設けることで、断熱性を持たせたガラスです。
近年の新築住宅に使用されることが多く、一般的なものとなっています。
二枚のガラスの間の空気の層を厚くすることによって断熱効果も向上します。断熱効果を上げるためのリフォームとしては、複層ガラスの検討は必須といえるでしょう。
Low-E複層ガラス
複層ガラスの室内側か室外側のいずれか一枚に「Low-E膜」と呼ばれる金属膜をコーティングしているガラスです。「Low-E膜」をどのガラス面にコーティングするかによって効果は変わります。
室内側にした場合には、日射熱を取り入れながら室内の熱を逃がさず閉じ込めるので、断熱効果を高めることができ、室内側のガラスの表面温度が下がりづらくなることで、結露もしにくくなります。
反対に室外側のガラスにした場合には、コーティングにより太陽光を反射し、日射熱が室内に侵入してくることを抑えるので、遮熱効果が期待できます。
また、空気の層をアルゴンガスにすることでより断熱性を高めることができます。
トリプルガラス(Low-E複層ガラス)
二枚のガラスを用いての複層ガラスより、さらに断熱効果を向上させたのが、トリプルガラス(Low-E複層ガラス)です。
「Low-E膜」を二枚のガラスにコーティングしているものと、一枚にのみ用いたものがあります。コストはLow-E複層ガラスより高い分、高性能なガラスとなります。
トリプルガラス(複層真空ガラス)
複層ガラスは、ガラスとガラスの間に空気やアルゴンガスなどを封入されていますが、この空間を真空にすることで「真空ガラス」となります。
真空ガラスも複層ガラスの一種で、構造は同じものです。
ガラスとガラスの間の空間を真空にすることによって従来の空気のものに比べると、断熱効果は2倍ほどになり、その効果の高さから結露対策や断熱を目的としたリフォーム用のガラスとして注目されています。
サッシの種類
窓ガラスは、ガラスを固定させているサッシとで構成されています。
断熱性を高める上ではサッシも重要な要素となり、ガラス部分の性能とサッシの性能が高くなければ、効率の良い断熱効果を得ることができません。
アルミサッシ
多くの住宅に使用されているのが、このアルミサッシです。
アルミサッシはコストが低く、軽くて耐候性がとても高いことから広く流通しています。
しかし、アルミサッシは熱伝導率が高いことから、断熱性能は他の素材に比べると著しく落ちてしまいます。
樹脂サッシ
樹脂サッシとは、プラスチックで作られたサッシです。
アルミサッシに比べると熱伝導率は低く断熱性能は高いので、徐々に普及しています。コスト面ではアルミサッシに比べると高くなります。
アルミ樹脂サッシ
アルミサッシのコスト性と強度の高さ、樹脂の熱伝導率の低さを併せ持ったのがアルミ樹脂サッシです。
アルミ枠を使用しながら、室内側が樹脂でカバーされていることで断熱性能を向上させる働きがあり、断熱性、コスト性がともにアルミサッシと樹脂サッシの中間となるものです。
木製サッシ
古くから日本では木製の窓枠が使われてきましたが、樹脂製と同じく熱伝導率が低い素材です。
アルミのような複雑な加工が難しく、素材自体の断熱性は高いものの気密性の確保が難しいことが難点とされていました。
しかし、近年では気密性を確保した木製のサッシが登場し、断熱性の高さに加え、アルミや樹脂製品にはない木の暖かさを持ち、和室などのインテリアにも調和しやすいことが特徴です。
一方では、メンテナンスフリーではなく、コスト面もアルミや樹脂製に比べると割高になります。
複層ガラスの特性
断熱性
複層ガラスは一般的な単板ガラスと比べると、断熱性が高くなります。
複層ガラスの二枚のガラスに挟まれる空気の層が熱を伝えにくく、暖房熱を維持することができます。
そのため、寒い冬でも室内の暖かさを保ちます。エアコンや暖房などの設定温度を下げ、稼働時のエネルギーを抑えることができるので、省エネにも効果があります。
防犯性
従来の単板ガラスに比べると、複層ガラスは空き巣被害に対する防犯性が高いといわせています。
その理由として、戸建て住宅の空き巣による侵入手口は「ガラス割り」が最も多いためで、複層ガラスだと割って開錠するのに手間がかかってしまい、諦める傾向にあるのです。
また、複層ガラスだと気付いた空き巣は侵入に時間がかかることを恐れて、その時点で諦めてしまう可能性もあります。
複層ガラスの防犯性をさらに高めるのであれば、強化ガラスの使用や鍵を二重にするのも効果的です。
結露防止
従来の単板ガラスに比べると複層ガラスは結露がしにくい構造になっていますが、全くしないわけではありません。
窓ガラスの結露の原因は、外気温が低い冬などに室内温度を暖房で温めている際、窓ガラス付近の空気が外気によって冷やされ、空気中の水蒸気が水に変化することで起こります。
単板ガラスだと、ガラス一枚を隔てた先は屋外になるので、どうしても結露がしやすいのですが、複層ガラスは空気の層があるので、結露がしにくいのです。
メーカーや仕様で異なりますが、単板ガラスの場合は、室内温度が20℃、湿度60パーセントで外気温が8℃以下になると結露が発生します。
複層ガラスの場合には、外気温がマイナス1℃以下にならなければ結露はしません。
紫外線カット
もともとガラスには紫外線をある程度カットする性質がありますが、単板ガラスに比べると複層ガラスはガラスの枚数が多い分、紫外線をカットする効果も2倍3倍と増えます。
透明のガラスであれば、太陽の明るさを損なわず有害な紫外線だけをカットしてくれます。
Low-E金属膜をコーティングしている複層ガラスでは、紫外線のみならず太陽熱も遮断するため、日射熱による室内の温度の上昇も抑えてくれます。
よく見かける似た名前
ペアガラス
ペアガラスとは、ガラスメーカーの複層ガラスの登録商標です。つまりは商品名ということになります。
しかし、その商品名があまりのもメジャーになってしまったために、複層ガラスのことをペアガラスと一般呼称のように使われてしまっているものです。
二重窓
二重窓は、複層ガラスと混同されてしまうことも多く、誤解されているケースがありますが、全くの別のもので、既存の窓ガラスの内側に新たに窓を設置する方法です。
二重窓の別の呼び方としては、内窓やインナーサッシ、二重サッシといった呼び方があります。
まとめ
断熱効果を効率よく発揮させるには、窓ガラスの構造や仕様を変えるのはもちろんのこと、窓ガラスのサッシにも注意しておかなければいけません。
断熱効果だけではなく、結露の防止や防犯にまで効果を発揮する複層ガラス窓。
日本でも北国の方では複層ガラス窓と二重窓を併用したものもあり、防犯や結露対策と外気温・室内温度をうまくコントロールしているのです。