【葬儀後の不動産相続問題】遺産に空き家が含まれていたら、どう扱うべき?

解体工事

近年、空き家の増加が社会問題となっています。

これは、家を持つ親世代が亡くなった際の相続で、うまく空き家の活用方法や処分方法が見いだせなくてそのまま放置してしまうことが一因となっています。

人が亡くなって葬儀が終わると、悲しんでいる時間もなくさまざまな手続きに追われ、相続についても考えなければなりません。すんなりと解決すればよいのですが、これまで住んでいた人が亡くなり空き家となってしまった実家が残ってしまったなどの場合、いろいろと悩みのタネが出てきてしまいます。

相続財産の中に不動産が含まれている場合はどうしたらいいのか…空き家は一体どう扱うべきなのか。空き家問題も絡めて、解説していきます。

空き家を放置するとどんな問題が?

空き家は、放置するとデメリットしかありません。だからこそ、空き家を相続したらすぐに「そのまま売却する」「リフォームなどをして再利用・売却する」「解体して更地にし、再利用・売却する」などの行動を起こすべきなのです。

「空き家の相続」について詳しく触れる前に、空き家を放置することによって起きるデメリットにはどんなものがあるのかを見ておきましょう。

安全上の問題

空き家は老朽化していることが多く、そのまま放置することで壁が崩れたり屋根が飛んでしまったり、さらに悪くすると倒壊してしまう恐れさえあります。近所の住人や通行人にも危険を及ぼしてしまう可能性も出てくるでしょう。

治安・防災上の問題

手入れや管理の行き届いていない空き家は、犯罪者に狙われやすくなりがちです。建物に不審者が棲みついてしまったり、放火の対象にされてしまったり、庭にゴミの不法投棄をされてしまったり。

これも空き家の持ち主だけではなく、周辺の住民にまで迷惑をかけてしまう問題に発展してしまいます。

衛生上の問題

雑草が伸び放題の庭、掃除のされていない家屋内には、野生動物や害虫が棲みついてしまう恐れが出てきます。庭木が伸びてしまって、道路や隣家を落ち葉だらけにしてしまうことも考えられ、見た目にも不衛生です。

資産価値の問題

人が住んでいない空き家はどんどん劣化が進み、それに伴って資産価値も下がっていく一方になります。いざ売却をしようと思っても、そのままではとても買い手がつかないという状態にまでなってしまいます。

また、管理の行き届かない空き家がある地域は景観的にも問題があり、地域全体の資産価値までもが下がってしまう恐れもあります。これもまた、空き家の持ち主だけではなく周辺住民を巻き込んでしまう問題となりえるのです。

「特定空家」に指定されてしまう恐れがある

以上のような理由から、「空家対策特別措置法」という法律に基づいて、自治体から「特定空家(そのまま放置したときに安全面・衛生面・景観面に極端な悪影響を及ぼし、放置することが不適切である空き家)」に指定されてしまう恐れも出てきます。

こうなってしまうと行政から助言や指導が入り、それに従わなければ勧告・命令という手順を踏んで、最終的に強制解体されてしまうこともあります。もちろん、強制解体といっても解体費用は所有者に請求されます。さらに、指導に従わないと50万円以下の過料が科せられることもあるのです。

また、もっとも大きなデメリットは、特定空家は固定資産税や都市計画税の軽減措置の対象にならないため、これらの税負担が非常に大きくなってしまうという危険をはらんでいる点です。

経済的負担がかかる

実家を相続した際、すでに自分の住まいを持っていれば、実家には当然住まないわけですが、家というものは住んでいなくても固定資産税が課税されます。

自分の住まいの固定資産税に加え、空き家の固定資産税も、ということになるのは、かなり負担が大きくなるでしょう。さらに前述した特定空家に指定されようものなら、増額した税額を払うことになるため、負担はさらに増してしまいます。

また、経済的負担は税金面におけるものだけではありません。火災保険料や光熱費の基本料金もかかり続けますし、維持管理のための費用も大きくなります。

前述したように、空き家は放置しておくことによって、近隣住民に対してもさまざまな危険をおよぼす要因を多く含んでいます。こうしたことを回避するためには、維持管理の手間や金銭的負担が発生するのです。

定期的に空き家に通い、換気や掃除を行い、庭の草むしりを行うなど、治安や衛生上問題のないように保つのは、もし現在住んでいるところと空き家になった実家との距離が大きければ大きいほど、負担は増大していくでしょう。

税制面の優遇措置が受けられなくなる恐れがある

空き家状態の実家を放置していると、「譲渡所得税」といって、空き家を売却した際に得た利益にかかる所得税に対しての優遇措置が受けられなくなる可能性が出てきます。

〇「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

譲渡所得税を計算する際に「相続税額の一部」を差し引けるようになる制度です。譲渡所得税額を抑えることができるのですが、利用するには「相続発生から3年10か月以内に売却する」ことが条件となっています。つまり、それ以上の期間、空き家のまま放置していると、この特例は使えなくなってしまいます。

〇被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

通称「空き家特例」といって、相続した居住用財産を売却した際に、いくつかの条件を満たすことで、譲渡所得税の計算過程で3,000万円を控除できる制度です。

こちらも「相続発生から3年以内に売却する」ことが条件なので、やはり売却活動もせずこの期間が過ぎてしまうと利用できなくなってしまいます。

自分の子孫に負の財産を残すことになる

いま現在、自分の親の残した実家に対してどのような対応をしたらよいかと頭を悩まされているのであれば、もしこれを放置してしまえば、自分の子や孫の世代にも同じ苦労をかけることになります

相続は、さまざまな手続きを怠ると世代を経るにつれどんどん複雑で大変なものになっていきます。リスクや面倒を自分の代で終わらせるためにも、ここでしっかりと向き合う必要があるといえるでしょう。

空き家相続の流れ

被相続人の葬儀後、あわただしくさまざまな手続きを済ませ、ようやく一息つける…と思う頃に、今度は相続についての対応がやってきます。

実際に、空き家を含めた不動産の相続が発生するところからの流れを確認していきましょう。

1:不動産の持ち主死亡により相続発生

元々空き家だった家屋の持ち主、または現在の住人の死亡によって空き家になってしまう家屋の持ち主が亡くなると、その空き家の相続が発生します。

このときにまず必要なのは、「故人の死亡を知ってから7日以内に死亡届を提出すること」および「故人の遺言書の有無を確認すること」です。

「遺書」や「エンディングノート」は、法的拘束力を持たないため、相続人や相続分に影響がある内容は「遺言書」に書かれているものだけが相続に効力を発揮します。必ず有無を確認しておきましょう。

相続とは直接関係ありませんが、被相続人の年金や健康保険・生命保険などに関する手続きもこの時期に行っておきます。

2:相続人を調査する

被相続人の財産を相続する権利のある人たちは何人いて、誰なのかということをまずはっきりさせます。

3:財産内容を調査する

被相続人の財産の種類・内容・総額を調査し、確定させます。

預貯金などの現金は比較的わかりやすいのですが、不動産や有価証券、またゴルフ会員権や自動車といったものも財産に含まれ、調査時にわかりづらいこともあります。

また、借金や住宅ローンなどの「マイナスの財産」も相続の対象になるため、こちらも確認しておきます。

5:相続放棄

財産内訳や遺言書の内容を確認し、もし相続放棄を選択するのであれば、「相続を知った日から3か月以内」に手続きをしなければなりません。期限があるため、ここまでの手順は早めに踏んでおくことが重要です。

6:遺産分割協議を行う

次に、相続人となる人全員で遺産の相続について話し合います。

遺言書がない場合は、民法に則り法定相続割合で遺産を分割しますが、「遺言書がなく、さらに法定相続割合で分けない」場合は、あとからもめないように相続人全員で相続割合について話し合うことになるのです。これが、「遺産分割協議」です。

空き家の所有を誰にするか、ということも協議します。

遺産分割協議は、実際に顔を合わせての話し合いに限らず、電話やメールなどでもかまいません。

7:遺産分割協議書の作成

遺産分割協議で話し合った決定事項をまとめたものが、「遺産分割協議書」です。

そこに「相続人全員で協議した」という文言・相続人全員の署名・実印押印を加え、遺産の中に不動産がある場合は、相続する不動産の「登記事項証明書」を書き写すことも必要になります。

☆遺産分割協議で折り合いがつかなかったら…

元々遺言書がなく、法定相続割合で分割しないというケースで行われるのが遺産分割協議であるため、相続人全員の希望がすんなりまとまらない場合も多々出てきます。

その際には、家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員会が意見を調停して解決を図ります。

しかしそれでもまとまらなければ審判へと移行し、さらに和解が成立しなければ家庭裁判所が不服申し立てをしている当事者の主張や証言に基づいて判断を出す、という流れになっていきます。

☆分割相続

遺産に不動産が含まれている場合は、現金などのように簡単に「割合で分割」とはいかないため、
「現物分割(不動産を分筆して共有持分権者が所有する)」
「代償分割(誰かが不動産現物を所有し、分割分に値する価値のものを代償金などで支払う)」
「換価分割(不動産を現金化して分割)」
「共有(複数の相続人で共有名義にする)」

などといった方法で相続します。

もちろん、協議によっては相続人のうちのひとりが不動産をまるまるひとつ相続する、という決定になることもありえます。

8:相続財産の名義変更

相続分が決定したら、金融財産については銀行口座などの名義変更を行います。

不動産であれば、法務局に必要書類を持参し、相続登記を行って名義の変更をします。これを行ってはじめて不動産の所有権が相続人に移り、売却などが可能になります。

これまでは相続登記に特に期限はありませんでしたが、2024年4月からは義務化されているため、必ず行わなければならないものとなりました。

仮に期限がなかったとしても、相続登記を行わなければ不動産の処遇を決めることはできないため、早めに進めておくことが大事です。

また、万が一相続登記を行う前に次の相続が起こるような事態になれば、権利関係はさらに複雑になってしまいます。手続きは迅速に進めていきましょう。

前述の遺産分割協議書・相続登記申請書・不動産の固定資産評価証明書・不動産の全部事項証明書・被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本・被相続人の住民票の除票・相続人全員の印鑑証明書および住民票、と必要書類はたくさんあるため、不足なく準備をしておきましょう。

なお、相続登記の際には登録免許税として、不動産評価額の0.4%の金額を納付します。

こちらも相続とは直接関係ありませんが、故人が自営業者であった場合などは、相続の開始から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。これは故人に代わって相続人が、故人の本来するべきであった確定申告を行うことです。

9:相続税の申告・納付

相続税が発生する場合は、「相続を知った日から10か月以内」が申告・納付の期限となります。

空き家を相続したらどうする?

前述したように、空き家を空き家のまま放置しておくことにはデメリットしかありません。

もしも相続財産の中に空き家が含まれている場合は、今後それをどうしなければいけないかを考えなくてはならないでしょう。

方法としてはいくつかありますが、どれを考えるにしてもなるべく早めに動いていくことが重要です。また、こちらも前述したように、空き家をどう利用・処分するにしても名義の変更は必ず行っておかなければなりません。まずは相続登記、という流れは大前提であるということです。

1:空き家を再利用して住む

まだ住める状態の家屋であれば、相続人のうちの誰かが、そのまま引き継いで住むことも十分視野に入れられるでしょう。

もちろん相続人も持ち家がある場合は、現在住んでいる家をどうするかという問題はありますが、その点とうまく折り合いがつけられるのであれば、再利用して居住することはもっともシンプルな手段であり、選択肢のひとつとなりえます。

実家の住宅ローンが完済さえしていれば、家賃などの費用面でもかなり助けになるうえ、親とともに過ごした思い入れのある実家をそのまま維持できるというメリットもあります。また、このように相続した住宅にそのまま居住するような場合は、「小規模宅地等の特例」というものが利用できるため、相続税を大幅に抑えることもできます。

総合的に見て将来的にももっともコストがかからない方法になる可能性もあります。

実家の老朽化の具合、間取りや設備が現在の生活様式に合わない、などということから、リフォームやリノベーションが必要であれば、それも含めて考えていくといいでしょう。ただし、リフォームをしてまで住む価値があるかという点に関しては、立地や周辺環境なども加味して検討しなければなりません。

また、相続人が複数いる場合、実家を相続した相続人がほかの相続人に対して、その代償分の財産を渡さなければならない可能性も出てきます。十分な現金資産などが手元にないと、実家を売却するしかない状況になってしまうこともあるでしょう。

2:空き家を活用する

2-1:賃貸物件として貸し出す

上記と同じく空き家の状態が良いのであれば、自分で住むだけではなく「人に貸し出す」という方法も考えられます。

とはいえ、この際にもリフォームやリノベーションが必要になるケースは多いでしょうし、不動産経営となると素人が手を出すのは少しハードルが高いと感じられることもあるでしょうから、少し上級者向きの活用方法ではあるかもしれませんね。

メリットとしては、家賃収入が得られること、思い出のある家屋を守れること、相続人が複数いる場合は家賃収入の収益を分配できること、などが挙げられます。

2-2:空き家を解体して更地にしてから活用する

家屋の老朽化が深刻である場合は、建物を解体してしまって、更地の状態にしてから土地活用するという方法もあります。

立地によっては有料駐車場やコインパーキング、貸し物置、貸し農地などとして収益を得ることも可能になります。

ただしこちらも立地条件などによっては、集客が難しいこともあるでしょう。さらに更地にすることで固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられなくなるため、これらの税金の負担が増すことも、デメリットとして挙げられます。

3:売却する

3-1:そのまま売却する

再利用も活用も考えていない場合は、すぐに売却してしまうことがベストというケースも数多くあります。

たとえば、実家を相続しても相続税を払えるほどの現金資産などがない場合。空き家となった実家に資産価値があれば、その売却で得た利益で相続税を納めたり、相続人全員で分配したりすることが可能になります。したがって、実家を相続した人とそうでない相続人との間で余計なトラブルが起きることを防ぐ方法ともなります。

当面住む予定のある相続人がおらず、活用方法も見いだせないということであれば、空き家として放置することで資産価値がどんどん下がってしまう前に、売却することを視野に入れるのがよいでしょう。

リフォームも何もせず現況引渡しで売却する場合には、リフォーム代も解体工事費用もかからないため、手軽に売れるというメリットはありますが、その分売却益にはあまり高値は期待できないうえ、なかなか買い手がつかない可能性があるというデメリットもあります。思い入れのある実家を手放すことに精神的なつらさを感じることもあるかもしれません。

空き家の売却方法としては、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」が一般的ですが、会社によっては直接「買取」をしてくれるところもあります。相場よりは安価な売却価格となってしまいますが、早めに売ってしまいたいときにはこの手段も有効です。

さらに、自治体が運営する「空き家バンク」に登録してもよいでしょう。空き家を売りたい人と買いたい人、または貸したい人と借りたい人をマッチングしてくれる制度です。ただ、空き家バンクは買い手や借り手が現れた際に、すべて自分で対応や手続きを行わなければならないため、不動産業者に仲介を依頼する場合と比べると、少しハードルが高いと感じられるかもしれません。

3-2:解体してから売却する

では建物を解体して、更地にしてから売却する場合はどうでしょうか。

この場合は、空き家を現況引渡しで売却する際のメリット・デメリットがそのまま裏返しとなります。すなわち、解体工事費用の負担がある一方で、買い手が見つかりやすくなるのです。

新築住宅を考えている買い手としては、更地の状態の方が購入しやすいからです。買い手にとっては下手に空き家が建ったままの状態の土地だと、地盤の状態がわからなかったり、解体工事費用も自分で負担しなければならなかったりというデメリットが発生してしまうため、空き家付きの土地は敬遠してしまう傾向にあるためです。

ただし更地にしたのになかなか買い手がつかない、という状態になると、軽減措置がなくなった固定資産税や都市計画税を支払わなければならないという事態にもつながります。

更地にする際には、事前に十分な検討が必要です。

4:無償で譲渡する

どうしても売れない場合には、「無償で譲渡する」という手段もあります。

たとえば、「自治体に寄付する」。もちろんすべての空き家の寄付を受け付けているわけではなく、利用価値のある建物や土地でなければ、自治体も受け取ってはくれません。まずは相談してみるところから始めましょう。

「隣家に贈与する」。隣の土地が手に入ることにより、自分の土地が広くなるというメリットがあるため、意外にもらい手がつきやすい方法です。ただし、個人間の贈与となると受け取った側に贈与税の申告・納付義務が発生するため、その点にはあらかじめ注意が必要です。

それから「相続土地国庫帰属制度の適用を検討する」。この制度は2023年4月から開始されていて、一定の条件(建物は解体していなければならないなど)を満たしていれば国庫に帰属させられる、要するに国に「もらってもらえる」というものです。費用はかかりますが、どうしても不要な土地を持て余してしまうのであれば、この手段も有効であるといえます。

5:相続放棄する

これはもう一段階前、遺産分割協議の段階にお話が戻ってしまいますが、空き家の相続がどうしても難しい場合は「相続放棄」という方法もあります。

ただし、この場合は「空き家の相続だけを放棄する」ということはできないため、他に預貯金などのプラスの遺産があったとしても、それもすべて放棄することになってしまいます。

そのため、「相続する財産は完全に空き家のみ」という場合であれば相続放棄も十分視野に入れていいかもしれませんが、状況によって良し悪しは変わってきます。

相続放棄を考える際には、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

☆相続放棄しても「管理義務」は残る?

実は、2023年3月までは、たとえば「相続人が1人だけである」「相続人が全員相続放棄した」という場合、相続放棄をしても空き家などの管理義務責任は残ってしまう、というケースがありました。「相続財産管理人」を選任することで、管理義務責任をようやく免れることができたのですが、それもそれで非常に手間であり、制度が見直しされることとなったのです。

2023年4月の民法改正で見直されたのは、以下のような点です。

〇「管理義務」を「保存義務」という呼称に変更
〇「相続財産管理人」を「相続財産清算人」という呼称に変更
〇「現に占有している者に限り、相続放棄後の管理義務を負う」ことに変更

「現に占有している」とは、被相続人が亡くなるまで同居していたり、現在も住んでいたり、と「実際に支配・管理している」状態を指します。

つまり、たとえば遠く離れて暮らしていた親が亡くなり、その実家が空き家になった場合、子どもは「現に占有している」とは言えない状況であるため、保存義務(管理義務)は免れる、ということになるのです。

不動産を相続して「売却」するときのポイント

相続財産のなかに「家」があった場合、どう扱ったらよいかという具体的な方法をいくつかご紹介してきました。ここでは、特に相続した家を「売却する」際に知っておいた方がよいポイントを見ていきましょう。

不動産を相続・売却した際に関連がある税金4種

相続した不動産を売却する際には、4種の税金がかかります。

1:相続した際にかかる「相続税」

売却時というよりも「相続が発生したとき」に関連するのが相続税です。もちろん、不動産以外にも相続財産がある場合には、財産総額に対してかかります。

【相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人】

まずはこの基礎控除額の算定式を覚えておきましょう。この式から算出される金額よりも相続額が少なければ、相続税の納付は必要がないため、実は国内の約8割の人は相続の際に相続税が発生しないといわれています。

たとえば、法定相続人が3人いたとしたら、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となり、財産総額が4,800万円以下の場合は相続税の申告も納付も必要ないということになります。

この例において、財産総額が6,000万円あった場合、6,000万円-4,800万円(基礎控除額)=1,200万円で、この1,200万円に税率をかけ、控除額(基礎控除額外)を差し引いて最終的な相続税額が算出されます。税率と控除額は、課税対象額に応じて異なります。

2:相続登記の際にかかる「登録免許税」

財産に不動産が含まれていて、被相続人から相続人に名義変更することを「相続登記」といいます。この手続きの際にかかるのが登録免許税です。

【登録免許税=固定資産税評価額×0.4%】

固定資産税評価額は、その不動産がある市町村から毎年送付される固定資産税納税通知書で確認できます。

3:不動産を売却する際にかかる「印紙税」および再度「登録免許税」も

印紙税とは、売買契約成立の際にかかる税金であり、収入印紙という金額が記された切手のようなものを書類に貼ります。印紙税の金額は、成立した契約の売却額によって異なります。

また、売却するということは所有者が買い手に移るということなので、新たな相続登記が必要となるため、ここでも登録免許税が発生します。

4:不動産を売却した後にかかる「譲渡所得税」

相続した不動産を売却して利益が出た場合にかかる税金が「譲渡所得税」です。

【譲渡所得税=譲渡所得×税率】

ここでまず重要なのが、「譲渡所得」自体の算定式です。

【譲渡所得=売却価格-取得時にかかった費用-売却時にかかった費用】

譲渡所得は単純に売却時に出た利益の額ではなく、その不動産を取得したとき(新築したときや中古住宅を購入したときなど)および売却するときにかかった費用を経費として差し引いた金額となるのです。

譲渡所得税は、このように取得費と売却時にかかった費用を差し引いた金額に対して、税率をかけて算出されます。

税率は家を所有していた期間によって異なり、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得税」5年超の場合は「長期譲渡所得税」となって、下記のような税率に定められています。

【短期譲渡所得税=譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)】
【長期譲渡所得税=譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)】

相続した不動産売却時の節税方法

「相続した家や土地を売却するだけでこれだけ税金がかかってしまうのか」と驚いた方も多いでしょう。しかしこのように煩雑な手続きや税金の支払いが嫌だからと相続した不動産を放置していると、住んでもいない空き家に、今度は固定資産税や都市計画税といった税金がかかってしまいます。

相続した不動産を売却することに決めたのであれば、行動は早めに移すべきといえるでしょう。

前項で解説した各種税金に関しては、節税の方法もあります。しっかり把握して、少しでも税金の負担を抑えられるようにしましょう。

1:取得費をはっきりさせる

譲渡所得税額は、譲渡所得額に税率をかけます。つまり、譲渡所得額が少ないほど、税額も少なくなりますね。

譲渡所得額は、売却利益から「取得費」と「売却時にかかった費用」を差し引いた金額です。ということは、取得費が明確にわかっていてそれが高額であれば、譲渡所得額がかなり抑えられるともいえます。

正確な取得費を知るためには、被相続人がその不動産を購入したときの書類が必須になります。これが見つからず取得費がわからない場合、取得費は一律「譲渡所得×5%」として計算されてしまいます。これは本来かかっていた取得費よりもかなり低い金額であるはずです。なんとしても取得費が正確にわかる書類を見つける必要があるといえるでしょう。

2:売却時の費用をすべて算出する

売却(譲渡)時にも、さまざまな費用がかかります。たとえば不動産業者に払う「仲介手数料」や、売却前にリフォームなどした「補修費」なども売却時費用として考えられます。

ほかにも以下のようなものが挙げられます。
・売却のために宣伝広告した場合、その広告費
・売却する建物の測量費
・売却する建物の不動産鑑定費
・売買契約書の印紙代
・売却のために借家人を立退かせるために支払った立ち退き料
・買主の登記費用で負担した分
・売買契約後に契約を解除した場合の違約金
・売却のために必要とした交通費や通信費など

こんなものまで売却時に費用になるのか、という費目は多いことでしょう。漏れなく計上しておくことで、譲渡所得からかなりの金額を差し引けることになり、結果的に譲渡所得税額の節税につながります。

3:「取得費加算の特例」を利用する

前述したように、取得費はしっかりと正確な金額で出すことにより節税につながりますが、どうしても購入当時の書類が見つからないときなどには、「取得費加算の特例」というものを活用することで、一定の取得費用を加算することが認められます。

・相続や遺贈により財産を取得している
・財産を取得した人に相続税が課税されている
・相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、不動産を譲渡している

以上の条件を満たしていれば、

【譲渡所得=譲渡価額-取得費-取得費に加算する相続税額-譲渡費用】

「取得費に加算する相続税額」とは、
【取得費に加算する相続税額=相続税額×相続税の課税価格の計算の基礎とされた譲渡財産の価額÷相続税の課税価格+債務控除額】
という計算式で算出します。

取得費の金額の証明が難しい場合でも、この特例を利用することができれば、かなりの節税になることでしょう。

4:「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用する

少々要件が厳しいものではありますが、一定の条件を満たすと「相続空き家の3,000万円特別控除」というものが使えます。要件は以下のようなものです。

・相続開始の直前に被相続人のみが居住していた家屋である
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
・区分所有建築物(マンションなど)以外の家屋である
・相続から譲渡まで空き家である
・家屋を取り壊さずに売る場合、その家屋が現行の耐震基準を満たしている、もしくは買主が耐震改修工事を行う
・相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する
・売却額が1億円以下である

5:「小規模宅地等の特例」を利用する

面積が330㎡までの宅地を売る場合、最大80%土地の評価額を減額できる特例です。

宅地の種類によって要件が異なるため、詳しい点については国税庁のホームページに見たり、問い合せたりすることをおすすめします。

6:「低未利用土地等を売却したときの100万円特別控除」を利用する

都市計画区域内の特定の未利用地などを売却した場合、譲渡所得の金額から最大100万円を控除できる制度です。

売却価格が500万円以下の場合に適用されますが、2023年1月1日から2025年12月31日に売却された土地に関しては、一部800万円に引き上げられています。最新の情報は国税庁のホームページなどで確認しておくことをおすすめします。

また、「譲渡の年の1月1日において、所有期間が5年を超えること」という要件もあります。

売却査定額が500万円を下回る場合は、ぜひ活用を検討してみましょう。

実家を放置したままにしないためには?

ここまで見てきたように、空き家となった実家を放置することにはさまざまなデメリットがつきまといます。そのような事態に陥らないためには、どうすればよいのでしょうか。

被相続人の生前の内から実家の処遇を決める

相続が発生してから「実家をどうするか」と決めるのが大変なのであれば、被相続人(親)の生前の内から実家を売却するなどの方針を、家族で話し合っておくのがよいでしょう。

空き家となる前に売却すれば、分割が大変な不動産ではなく「現金」としての財産になるため、相続人同士で分配するのが容易になるというメリットもあります。

もちろん、その場合は親の今後の住まいをどうするかということも考えなければなりません。親本人はもちろん、相続人となる子どもとしても、さまざまな選択肢を考慮して検討しなければならないでしょう。

早めの方針決定を心がける

相続という局面では、ただでさえ面倒や手間が多く起こります。まして空き家となってしまった不動産を扱うとなると、相続の方針を決めるのが遅くなればなるほど相続人たちの負担が増えていってしまうでしょう。

「空き家をどうするか」ということにはさまざまな選択肢がありますが、どれを選ぶにせよ、それぞれのメリット・デメリットを理解して、とにかく早めの方針決定を目指すのがよいでしょう。

まとめ

今やまったく他人事ではなくなった空き家問題。相続が発生すれば、大体の場合空き家をどうするか、という問題も付き物になってきているのです。

そもそも相続すべきか。相続したら活用するのか、処分するのか。活用するならばどう活用するのか。考えることはたくさん出てきます。まずは相続の流れや活用方法のメリット・デメリットをしっかり押さえ、知識をつけておいたうえで、相続に備えるようにしていきましょう。

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