屋根にはさまざまな「形」がある！それぞれの特徴を徹底解説

日本は南北に長い国土を持ち、気候も風土も地域によって全く違うため、住宅の屋根にもさまざまな形状が見られます。

どんな屋根があるかを知ることによって、住宅の新築や屋根のリフォームの際にもその知識を役立てることができるでしょう。

今回は住宅の屋根について、「形状」の面にスポットを当ててお話していきます。

屋根の形状
- 代表的な屋根
- 特徴的な屋根
まとめ

屋根の形状

代表的な屋根

寄棟屋根

寄棟屋根は、「よせむねやね」と読み、この種類の屋根を持つ建物を寄棟造(よせむねつくり)といいます。

世界中で見られる一般的な屋根のひとつで、日本でも多く見かける屋根の形状です。

寄棟屋根は、屋根の四方から中央にかけて勾配があるのが特徴で、上から屋根を見た時に、2面(平側)が台形、残りの2面(妻側)が三角の面で構成されています。

※平側　棟に対して平行な両面に対して垂直側が妻側。寄棟屋根の場合は台形の屋根が平側。対して三角形の屋根が妻側となります。

メリット

寄棟屋根には、特有の重厚感と安定感があるので、落ち着いた雰囲気の外見になるのが魅力の一つとして挙げられます。

この屋根の形状は古くから取り入れられていますが、デザインによっては現代的な印象にもなり、和風、洋風問わず用いられています。

もう一つは、耐久性が高いことが挙げられます。寄棟屋根は四方に軒があるため、雨風や日差しによるダメージを外壁から守りやすくなります。外壁の劣化を抑えることによって、結果的にマイホームの寿命を延ばす効果があります。

デメリット

寄棟屋根は屋根裏の空間が狭く、十分なスペースが取れないことがあるため、屋根裏を利用した収納スペースが取れないことが挙げられます。また、屋根裏の換気がしにくい形状でもあるため、通気性を確保し、結露の発生を防ぐ対策が必要です。

また、寄棟屋根はその形状から、太陽光パネルを設置するのにはあまり向いていないといっていいでしょう。日差しが当たる南側には設置できますが、切妻屋根などと比べるとその面積が小さく、設置できるパネルの数が制限されます。

切妻屋根

切妻屋根は、「きりつまやね」と読み、こちらも一般的な屋根で最も親しみやすい形状の屋根です。屋根の最頂部から2方向に傾斜が付いていて、横から見た時に本を伏せたような「へ」の字の形になっています。マンガやアニメで描かれる家に多いといえば、イメージが湧くでしょうか。

シンプルな見た目なので、個性を出すには難しい形状ですが、こちらも和風、洋風問わず、幅広いデザインの外壁と合わせることができます。

メリット

複雑な形状をした屋根になると、谷と呼ばれる部分が発生する恐れがあります。その谷こそが、雨漏りが一番発生しやすい場所だともいわれています。

切妻屋根はシンプルな形状なので、谷がありません。そのため、切妻屋根は雨漏りのリスクが非常に少ない屋根形状だといえます。

また、切妻屋根は構造上、室内または屋根裏が三角になります。そのため、風通しがよくて換気しやすいといった効果を得られます。湿気の多い日本では最適な形状といえるでしょう。

デメリット

屋根がかかっていない妻側の外壁や破風などには、太陽光による紫外線や雨のダメージを直接受けてしまい、平側よりも妻側の劣化が起こりやすくなります。劣化の状況によっては、メンテナンスの頻度を分けて考える必要があり、メンテナンス費用も多くなる可能性もあります。

※1破風や※2鼻隠しといった場所は屋根の中でも最も劣化が激しい場所といわれています。

方形屋根

方形屋根は、(ほうぎょうやね)と読み、こちらも日本で見られる古くからある屋根の形状のひとつです。

頂点から四方に同じ角度で屋根が流れる形状で、ピラミッドのような形をしています。

方形屋根は、寄棟屋根の一種で、神社や寺院で用いられることが多く、広く知られているところでは、法隆寺の夢殿があります。

メリット

耐久性が高く頑丈。方形屋根は上から見ると正方形のバランスの取れた屋根だということがわかります。屋根内部の構造を頑丈にしやすく、風圧や、地震に対しても強い造りとなっています。

また、他の形状の屋根は雨や雪の落ちる場所が偏りますが、方形屋根を形成している4枚の屋根は、面積も傾きも全て同じなので、四方に均等に分散されます。

そのために、受ける面が偏る他の屋根とは異なり、雨どいに雨水があふれ出るといったこともなく、さらには、四方の軒先の先端部分の※3「軒の出」が出ていて、全ての面の外壁を均等に雨や太陽の紫外線などから守れるといった恩恵があります。

一方で、方形屋根は※4大棟がないため、屋根裏に換気扇を設置しにくい構造です。

屋根裏は湿気の貯まりやすい場所ですので、注意が必要です。

また、屋根の頂点からの雨漏りが起こりやすいといったことです。そのために雨の多い地域には向いていない形状だともいえるでしょう。

片流れ屋根

片流れ屋根は、(かたながれやね)と読み、その名の通り片方だけに傾斜がついています。

切妻屋根を半分にしたような形状で、とてもシンプルなため、新築時の工事費用は安い傾向にあります。

屋根が一面しかないため、屋根で受けた雨が集中してしまいます。雨どいに雨水があふれ出るリスクが高いので、雨どいや縦といの定期的なチェックが必要です。

屋根全体で太陽光を浴びてしまうため、屋根の温度が上昇しやすい傾向にあります。回避策としては、太陽光を受けるので、そこを利用した太陽光パネルの設置がよいでしょう。

地域によっては、場所を選ぶ屋根といった印象があります。

特徴的な屋根

ここまでは一般的によく見られる屋根の形状のお話をしましたが、ここからは少し変わった屋根や特徴的な屋根のお話をします。

入母屋屋根

入母屋屋根は、「いりもややね」と読み、寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せたような形状をしています。昔ながらの日本家屋や社寺建築に多く見られ、その二重屋根構造からどっしりとした印象になります。

重厚な日本家屋の代表的な屋根なので、見栄えもよく、瓦との相性も良くなっています。今では珍しくなってしまいましたが、茅葺屋根でも多く見られます。

屋根部分の特徴としては、屋根部分の※4ケラバだけの部分がなく、屋根周辺全体が軒先となるために、4面に雨どいの設置が可能です。

切妻屋根と寄棟屋根のいい点を併せ持った形状のため、四方に軒があり、メンテナンスを少なく抑えられるという特徴を持っています。そのため、外壁の保護にもつながります。

屋根の換気は、妻換気と軒換気を併用できるため、大幅に軽減されます。湿気の多い日本ならではの屋根といえるでしょう。

しかし、複雑な造りのためにどうしても雨漏りに対してのリスクは上がります。基本的なメンテナンスは切妻屋根や寄棟屋根と変わりませんが、構造が複雑な分、費用とリスクは高くなります。

越屋根

越屋根は、「こしやね」と読み、屋根の上に小さな部屋があるような形状です。日本でも古くから用いられていて、迫力があり、存在感や風格が備わります。

由緒ある建造物にも採用されています。見栄えもよくデザイン的にも一目を置かれる屋根でしょう。

しかし、デザイン的な要素だけではなく、機能的にも昔ながらの知恵が凝縮されています。

小さな部屋を設けることで、立ち上がりの部分に採光窓を設置することができ、光を住居内へ取り込むことができます。

住宅内は新鮮な空気を取り込み、通気性を確保した設計で、常に室内の空気が循環していることが大切です。通気口は高いところにある方が効果を得られるため、屋根の部分に風が通る場所を設けられる越屋根は、昔ながらの知恵といえるでしょう。

こちらの屋根も造りが複雑なため、雨漏りのリスクが高くなります。越屋根の立ち上がり部分を多少保護したとしても、屋根全体の施工部分が増えるため、どうしても避けては通れない造りとなっています。

そして、その複雑な造りから、建築費用やメンテナンス費用も高くなります。

はかま腰屋根

はかま越屋根とは、「はかまこしやね」と読み、切妻屋根の妻側にある、破風の頂上の三角屋根部分を切り落として、寄棟屋根のようにした形状です。袴をはいた格好に似ていることからつけられた名前で、他にも半切屋根や隅切屋根、ドイツ屋根ともいわれています。

道路に面した立地や家が密集している地域などで、道路斜線規制の法的基準を満たすことを目的に選ばれることが多く、はかま腰にして高さを調節する効果があります。また、室内面積を減少させずに建てることができるので、間取りに対しても空間に対しても影響が出にくく、室内のデザインを変えずに設計できるといった利点もあります。

反対に、妻側の屋根の鼻隠しが切り落とされているせいで、一部が水平になり、継ぎ目も多い構造になるために雨漏りなどのリスクが高くなります。

どんな屋根の形状であれ、複雑になれば雨漏りのリスクも上がり、メンテナンスの費用も高くなる傾向になります。