古いアパートを所有している人の中には、物件のリフォームや建替え時期を悩んでいる人も多いでしょう。特に親などから引き継いだ物件は、かなりの築年数が経過しており、老朽化が進んでいるはずです。ニュースで老朽化したアパートの危険性が報じられることも増えています。
物件の老朽化が進むと、家賃を下げなければ入居者が集まらず、収入が減少してしまうことも考えられます。また、同時に物件の修繕を行う必要があるため、修繕費が必要になります。このような場合に検討したいのが、アパートの建替えです。
本記事では、アパートの建替え時期の目安や、メリットやデメリットを解説します。建替えで必要となる立ち退きの手順もご紹介していきます。
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アパートの解体費用の相場
アパートの建て替えを行う際、老朽化したアパートを解体する必要があります。アパートの造りによって、解体費用は異なります。
また、広大な敷地を持つアパートを解体する場合、アパートの敷地内に解体に必要な工事車両の乗り入れが可能となるため、解体費用が安くなることもあります。
一方、狭い道の奥にあるアパートは、警備員や作業員を多く配置する必要があるため、解体費用が高くなります。このように、施工条件によって解体費用が大きなバラつきがあります。
アパート解体費用を左右する条件には、さまざまなものがあります。具体的に見ていきましょう。
アパートの構造
アパートの解体にかかる費用は、主に木造や鉄骨造などの構造と広さで決まります。
壊すのが困難になるほど解体費用は高くなり、プレハブ造<木造<軽量鉄骨造<重量鉄骨造<鉄筋コンクリート造の順に解体費用が高くなっていきます。
構造 | 解体費用の坪単価の相場 |
プレハブ造 | 2.5~4万円 |
木造 | 3~4万円 |
軽量鉄骨造 | 4~5万円 |
重量鉄骨造 | 5~6万円 |
鉄筋コンクリート造 | 4~10万円 |
たとえば1階と2階がそれぞれ30坪で延べ床面積が60坪の2階建ての物件の場合、木造なら180万~240万円、鉄筋コンクリート造なら420万~600万円が解体費用の相場です。
しかし同じ構造や広さであっても、立地などその他の条件によっても解体費用は変わってきます。
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アパートの立地
アパートの解体費用は、アパートが建っている地域によっても差があります。
東京・神奈川・埼玉などの首都圏にあるアパートの解体費用は、その他の地域に比べて高くなる傾向があります。首都圏は人件費や維持費が高いことなどが理由になっています。
また、同じ東京都内であっても、郊外よりも繁華街などの方がアパートの解体費用は高額になる傾向があります。理由として、建物が密集している場所での解体工事は作業に手間がかかることや、廃棄物の処理費用が高額なことなどがあります。
正面にある道路の広さ
解体するアパートの正面にある道路が狭いと、重機やトラックが入れないため、アパートの解体費用が高くなります。
重機やトラックを利用できないと、作業員が手作業で解体作業しなければなりません。そうなると多くの日数がかかるため、その分多くの人件費がかかるので、アパートの解体費用が高額になるのです。
付帯工事の有無や残置物の量
アパートを解体する際は、塀・木・砂利・駐車場・外階段・貯水槽などの撤去が必要になる場合があります。その場合は工事費用がより高額になります。
残置物が多い場合も、解体工事にかかる費用は高くなります。たとえばアパートの部屋の中に多くの家財やゴミが残されている場合は、それらを処分するための費用がかかるからです。
隣接する建物との距離
解体するアパートと隣接している建物との距離が近い場合は、解体費用が高くなります。
特に建物と建物の間隔が1m未満である場合などは、高額の解体費用がかかります。建物同士の距離が近いと、アパートを解体する際に重機を使うことができず、手作業で解体しなければならないからです。
アスベストの有無
アパートの建材にアスベスト(石綿)が使われている場合は、アスベストが飛散しないように配慮した解体工事をしなければなりません。この場合は人件費や処分費がかかるため、アパート解体費用は高くなります。
アスベストは1975年頃まで断熱材として広く使用されていました。しかし近年になってからアスベストは発がん性物質を含んでいることが発覚したので、今では使用することが禁止されています。
アスベストを含む建物を解体する際は、作業者が防塵マスクや防護服を着用したり、飛散するのを防ぐために湿らせてから除去したり、作業に手間がかかります。
アパートの建替えに必要な費用(解体工事費用の内訳)
「建替え」ということは、旧建物の取壊しと、新建物の建築工事が必要です。
まずは取壊しの際の工事にはどのような費用がかかるのか、内訳を見ていきましょう。
仮設工事費用
仮設工事は、近隣住民に迷惑をかけずに安全に解体工事を行うために必要な工程です。工事業者によっては仮設工事費用を「養生費用」としていることもあります。
仮設工事費用の相場は、1㎡あたり450~1,000円といわれています。仮設工事費には以下のような作業が含まれます。
- 足場や防塵シートを設置するのにかかる費用
- 敷地に重機が入るための敷き鉄板を設置するのにかかる費用
- 敷地を囲うゲートを設置するのにかかる費用
- 仮設トイレや仮設水道・電気を準備するのにかかる費用
アパートの解体工事費用
解体工事には、内装の解体、屋根の解体、外壁の除去、基礎の解体があります。
内装の解体では、キッチンやトイレ、風呂、窓ガラスなどを解体します。その後、石膏ボードなど鉄骨以外を解体します。
内装の解体では重機を中に入れることができず、手作業で解体することになるので、高額になります。
屋根の解体について、屋根に瓦が使用されている場合は手作業になるのでその分高くつきます。屋根材にアスベストが含まれている場合も工事に手間がかかるので費用が高くなります。
その後、外壁や基礎を重機で解体します。木造か鉄筋コンクリート造かといったアパートの構造や坪数などによって価格は変わってきます。
付帯工事費用
アパートの解体工事費用とは別に、付帯工事費用がかかることがあります。
付帯工事費用とは、ブロック塀や浄化槽、樹木、駐車場などを撤去する工事にかかる費用です。
付帯工事費用の金額は、その工事の内容によって異なります。
整地費用
整地とは、解体工事が終わった後に埋設物などを撤去して土地を整える作業です。
整地費用は、方法によって価格が変わります。もっとも価格が安く済むのは簡単に整地する「粗仕上げ」です。この粗仕上げの相場は、1㎡あたり300~600円になります。
駐車場にする場合は、コンクリート舗装など次の土地活用の方法に合わせた仕上げが必要です。
廃材処分費用
アパートを解体した後に発生した廃材を処分するのには、廃材処分費用がかかります。
アパートの廃材を処分する際は、家庭ゴミではなく「産業廃棄物」として適切に分類して処分しなければなりません。
廃材を運搬し、処理業者が廃材を20種類に分類し、最終処分場へ運搬されます。このように多くの工程が必要なので、廃材処分費は解体にかかる費用全体の中でもかなりの割合を占めます。
廃材の処分費用は1立方メートルあたり1万5千円~3万円が相場です。別途運搬費が1台あたり2~3万円ほどかかります。
諸経費
諸経費に何が含まれるかは業者によって異なりますが、次のようなものを含むことが多くなっています。
- 近隣へアパート解体のあいさつまわりをする際の粗品の代金
- 工事車両を近隣の駐車場に停める駐車場代
- 各種届出や手続きを行うための費用
- トラブルや追加費用に備える準備費用
諸経費の相場は、総額の5~10%です。
アパートの建替えに必要な費用(解体工事費用以外)
アパートの建替えには、建物の解体工事にかかる費用の他にも、準備しなければならない費用があります。「入居者の立ち退き費用」と、新しい建物を造る「新築費用」です。
入居者の立ち退き費用
アパートを解体するのなら、現在アパートに入居している人たちに立ち退きをお願いしなければなりません。
アパートの住民は、建替えが決まったら転居先を探す必要があります。引越しには、かなりの労力と費用がかかるため、オーナーは立ち退き費用として、引越しに必要となる費用を負担します。
立ち退きをお願いする際、引越しにかかる費用として、立ち退き料を支払う必要があります。立ち退き料は一般的に家賃6カ月分が妥当と考えられています。この立ち退き料を入居者の人数分用意しておかなければなりません。
ただし、立ち退き費用は、入居者とオーナーの信頼関係によって異なります。良好な関係を築けている場合、立ち退き費用を払わずに、手続きを進められることもあります。
詳しくは後述します。
新築工事費用
建替えというからには、古い建物を取り壊したあとに、アパートの新しい建物を建てる必要があります。
アパートの新築工事に必要な費用は、木造で坪80万円前後、軽量鉄骨造で坪75万円前後、重量鉄骨造で坪90万円前後となります。
とはいえ、同じ広さでもさまざまな条件で金額に差が出るため、坪単価だけでは建築費が比較できません。
そのため、施工会社を選ぶ際には、実際の見積もりにある「総額」を比較しましょう。
建物の基礎や構造、内装、外装、バス・トイレ・キッチンなどの設備費用や、給排水工事、ガス埋設管の引き込み工事、メーター設置、電気工事、空調工事、また駐車場や地盤改良工事費用、市区町村の定める上下水道負担金などが内訳となっています。
さらに諸費用として、不動産所得税、登録免許税、印紙税などが必要です。また、司法書士に支払う報酬や各種保険、アパートローンの融資手数料なども発生します。
建築業界は高齢化にともない、職人が減少しています。人手不足もあり、年々建築費が上昇しており、建築費が下げることが困難になっています。
そのため、アパートの建替えも早ければ早いほど、費用を安く抑えられます。
多くの職人が在籍している会社は、新築工事費用を安く抑えることも可能です。類似したプランでも、会社によって新築工事費用が全く異なります。
複数の業者に見積もりを依頼し、新築工事費用を比較してみましょう。
アパート解体費用を安くする方法5つ
アパートの解体には多くの費用がかかりますが、工夫することで安く抑えることが可能です。
ここではアパートの解体費用をできるだけ安く抑える方法を紹介します。
複数の業者の見積もりを比較検討する
同じアパートの解体工事であっても、依頼する業者によって金額は変わってきます。複数の業者から見積もりをもらって比較検討しましょう。
しかし見積もりの金額が安すぎる場合も要注意です。産業廃棄物の処分費用を抑えるために廃材が不法投棄される可能性や、人件費を抑えすぎて工期が大幅に伸びる可能性があります。
多くの項目が「合計で〇円」とざっくり見積もってある場合も注意が必要です。見積もりの項目と価格を詳細に提示する業者は、算出方法がきちんと決められているので安心できます。
適正な金額の見積もりを出してきた業者の中から、解体工事の実績が豊富で対応のよい業者を選びましょう。
自分で処分できるものを処分しておく
アパートの中の家具やごみは、解体工事の前に自分で処分しておくことで、費用を安く抑えられます。
本来家庭ゴミとして出せるゴミも、解体業者に処分をお願いすると、他の産業廃棄物と一緒に処分することになるので、余分に費用がかかってしまいます。
それぞれのゴミの日に出したり、リサイクル業者に引き取ってもらったりして処分しましょう。
仲介手数料を取る業者に依頼しない
仲介手数料を取る業者に依頼しないようにすることで、その分費用が安く済みます。
自社で工事を請け負っていない業者に解体工事を依頼すると、仲介手数料が取られてしまうからです。直接契約できる業者や、自社施工の業者に依頼しましょう。
安く解体できる時期に依頼する
アパートを解体する時期によっても、費用は変わってきます。
解体業者の繁忙期にあたる12月や3月は、解体費用が高くなる傾向にあります。繁忙期である12月や3月を避けて解体工事を依頼しましょう。
補助金や助成金を活用する
アパートを解体する際に、自治体の補助金や助成金を活用するという方法もあります。
近年は老朽化した空き家や空きアパートが社会問題になっているので、この問題を解消するために各自治体が補助金を用意しています。
自治体ごとに補助金や助成金制度が用意されていて、補助金制度の有無や適用条件は自治体によって異なります。自治体の窓口に問い合わせて確認してみてください。
使える補助金があれば、最大限に活用しましょう。
アパートの建替えを考えるべきタイミング
アパートで収益を得る上で、建て替えのタイミングを見極めることは大切です。
アパートの建替えの目安となるタイミングを3つ紹介します。
目安1:アパートの築年数が30年以上経った
築年数が30年以上経つ物件は、建替え時期の目安となります。
アパートの耐用年数は、構造によって異なりますが、木造アパートは22年、鉄骨造アパートは27年といわれています。
つまり、築30年以上のアパートは建物の耐久性や耐震性に不安が出てくる頃なのです。
耐震補強や改修という方法もありますが、築30年となると修繕だけではカバーできないこともあります。とくに木造アパートは耐久性や耐震性に不安があるので、建替えると安心です。
目安2:空室が増えた
空室が5割以上になった場合は、建替えの検討を始めましょう。しかし、建替えには住民の立ち退きなどで、立ち退き費用を支払う必要が出てきます。
アパートの経営は、借入金額が多い場合、空室状況が4割以下でも経営が難しくなります。そのため、空室状況が4割以下で建替えを行うと、アパートの経営自体が苦しくなります。また、建替えには、住民の立ち退きが必須です。
ただ、残っている世帯が多いと、膨大な立ち退き費用が必要となります。そのため、空室状況が5割になったら無理に入居者を募集せず、空室状況が8割以上になったら、本格的に建替えを検討しましょう。
これは、10戸のアパートであれば、入居している世帯が2世帯以下というイメージになります。立ち退きは失敗すると、裁判沙汰になるため、慎重に行う必要があります。
目安3:ローンを完済した
一般的にアパートローンは、耐用年数内でしか借りることができません。そのため、築30年以上経った物件は銀行からの借入れが終了していることがほとんどです。
銀行からの借入れが終わるタイミングということもあり、築30年以上経ったアパートは建替えのタイミングとなります。建替えは、解体費用や新築費用、設計費用などがかかりますが、銀行からの借入れが終了しているため、オーナーの負担も軽減されます。
また、ローンを完済していると、金融機関からの信用度が上がります。これによって建替え費用の融資が得やすくなるので、アパートを建替えるならローンを完済したタイミングが最適なのです。
目安4:アパートのデザインや設備が時代に合わなくなってきた
アパートが建って年数が過ぎると、部屋の間取りや外観などのデザインが現在のニーズとマッチしなくなることも多くあります。
20~30年経つと、周囲の環境や家族構成も異なってきます。そのため、単身向けのアパートを経営していた場合でも、周囲に核家族が増えた際には、家族向けのマンションに建替えるだけで、入居者が増える可能性もあります。
特に注目されているのが、室内の洗濯機置き場の有無や洗面台などの水回りです。水回りが古いと、現代の生活に合わずに、入居者が集まりません。
間取りだけでなく、最新設備を導入したアパートは人気があり、多くの入居者が集まります。
最新の設備を体験したい人は、家賃が高くても入居を希望するからです。
立地が良い場所にあるアパートは、建替えの際に最新設備を導入してみましょう。
キッチンやトイレ、風呂などを全面的にリフォームするオーナーも少なくありませんが、大規模なリフォームを行う場合は、建替えで新築にした方が入居率が上がります。
目安5:老朽化の程度がリフォームの範囲を超えている
古くなった物件は入居率が下がり、家賃収入も減少します。入居率を上げたり、賃料を上げたりするためには、キッチンなどの水回りや間取りを大幅にリフォームする必要があります。
また、和室を洋室に変更するなど、現代のニーズに合ったリニューアル工事が必要です。
大規模なリフォームを行うことで賃料を上げられますが、リフォーム費用がかかります。莫大なリフォーム費用がかかる場合は、建替えを検討したほうがよい場合もあります。
アパートの建替え費用の工面はどうする?
自己資金を用意する
アパートの建替え費用の工面も、十分に検討する必要があります。
建替えの費用は、アパートローンを利用する人が多くなっています。物件価格の7~8割をアパートローン、残りを自己資金で支払うのです。
アパートローンの審査は、土地の担保価値や建替え後の収益性、経営実績がチェックされます。金融機関によって、アパートローンの条件は大きく異なるので、複数の機関に相談してください。
国から融資を受ける
金融機関以外では、国から融資を受けるという方法もあります。日本政策金融公庫から、不動産投資目的の融資を受けられるか相談しましょう。
注意点として、事業計画書などが必要になること、融資の審査は厳しいということが挙げられます。
また、取壊しを行って、新しく建築したアパートを担保に入れるのが条件です。建替えを行う中で、どのように資金を用意するか、十分に検討しましょう。
アパート解体の流れ4ステップ
アパート解体の流れを知っておくことは、スムーズに解体工事を進めることにつながります。
ここではアパート解体のおおまかな流れを紹介するので、アパート解体を実施する際に参考にしてみてください。
1.不動産会社に相談する
まず契約している不動産会社へ相談します。
本当に建替えを行うべきなのかなどを確認する必要があるからです。アパート経営を始めた頃とはアパートの周辺の環境が変化している可能性が高いので、どのようなアパートに建替えするべきかについても再調査するのがおすすめです。
不動産会社は建替えに関する知識やノウハウを備えています。本当に建替えが必要なのか、またどのようなアパートに建替えするべきか、不動産会社にさまざまなアドバイスをもらいましょう。
2.スケジュールを立てる
建替えにどれだけの資金が必要になるのか、またどのくらいの期間で完了するのか、スケジュールを立てましょう。
資金については物件の種類によって必要な準備金の金額が異なります。建替え後の収支についても計算しなければなりません。
スケジュールは建築会社や施工会社と相談しながら検討する必要があります。入居している人たちの立ち退き期間も含めて検討することが大切です。
3.立ち退き依頼
現在アパートに入居している人たちへ立ち退き依頼をします。
ここで重要なのは「契約更新しない旨は、最低でも期間満了の半年以上前に告知しなければいけない」という点です。
アパートに入居している人たちへ、期間満了の半年以上前に告知するようにしましょう。
4.解体工事・新築工事
入居していた住民が全員立ち退いたら、解体業者による解体工事が始まります。
工事が始まる前に、近所の方たちに挨拶まわりをして迷惑をかける旨を説明して謝罪しておきましょう。こうすることで近隣からのクレームを防止できます。
アパートの建替えを行うメリット
メリット①収入が増える
アパートを建替えすることで、収入が増えるというメリットがあります。一般的にアパートは年数が経つほど、賃料が安くなります。一度、賃料を下げると、上げることは難しくなります。
アパートの建替えは、一度更地にしてから建設を行うため、賃貸物件紹介時には「新築」と表記されます。新築物件や築浅物件を望む人も多く、入居率を上げて、家賃収入を増やせます。
また、同じ立地の場合でも、現在のニーズに合った間取りやデザインにすることで、建替え前の家賃よりも高めの家賃設定にできます。最近では、収納スペースを重視する人も多いですが、リフォームでは収納スペースを確保することが難しくなります。
建て替えは、部屋の間取りを大幅に変えられるため、ニーズに合った収納スペースやキッチン、浴室などを間取りに取り込めます。建替えは、デザイン性にこだわった、おしゃれなアパートに生まれ変わらせることも可能です。
おしゃれなアパートは、入居者が集まりやすく、従来の賃料よりも高い賃料に設定できます。また、屋根や設備を耐久年数が長いものにすることで、メンテナンス費用や修繕費も抑えられます。
メリット②災害に強くなる
住居の安全を重視している人も多く、建物の安全性は最優先で考える必要があります。
旧耐震基準で建てられた物件は、安全面に不安が生じます。しかし、アパートを建替えすることで、新耐震基準を満たす建物が建てられます。
また、耐火性能に優れた素材を使用することで、火災に強いアパートを作れます。近年、自然災害の被害に見舞われる人も多いため、災害に強い建物は注目されています。
メリット③相続税対策効果が高まる
アパート経営の目的として、相続税対策も挙げられます。老朽化したアパートの建替えは、相続税対策にも効果的で、相続税を軽減できる可能性もあります。
老朽化が原因でアパートの空室が増えている場合、空室部分は賃貸をしていることにならず、相続税評価額を下げられません。建替えを行い、空室を埋めることで、相続税評価額を下げて節税につながります。
アパートの建て替えを行うデメリット
デメリット①立ち退き費用が必要
入居者がいる場合、建替えを行う際に立ち退きしてもらう必要があります。当然、立ち退きを依頼する際は、入居者に対して立ち退きの説明と、立ち退き費用を支払う必要があります。
デメリット②時間がかかる
建替えとリフォームのどちらを行うかで悩むオーナーも多いでしょう。
しかし、物件の建替えはリフォームより工期がかかります。もちろん、工事中は家賃収入がないため、収入がなくなります。
デメリット③一時的な出費が大きい
アパートの建替えで、最も大きなデメリットといえるのが、費用がかかるということです。
アパートの建替え費用は、アパートの新築費用だけではなく、立ち退き費用や解体費用もかかります。解体と新築工事を行う業者は基本的には別になるため、業者によって必要な費用が異なります。
新築にすることで家賃収入が上がるメリットはありますが、そこに至るまでの間の出費も大きく、費用の工面に労力が必要となってしまいます。
建替えより現状維持する方がよいケースも
かなりの築年数が経過し、老朽化している物件でも、現状を維持する方がよいケースもあります。
たとえば空室がほとんどなく、アパートのローンの支払いが残っている状態の場合、建替えは不向きです。
空室がない状態では、確実な家賃収入を見込めるため、経営に不安がないことがほとんどです。そのため、無理に建替えを進める必要はありません。
また、建替えには立ち退き費用など、さまざまな費用が発生します。築年数が経っている場合でも、よほど老朽化が進み、深刻な問題ではない限り、建替えを急ぐ必要はありません。
また、築年数が20年未満の物件は、比較的デザインや設備が新しいはずです。そのため、老朽化が進んでいない場合は建替えでなくリフォームでも、新たな入居者を見込める場合があります。
アパートの建替えで必要になる立ち退きの手順
手順①立ち退きの説明
アパートの建替えが決定したら、住民に立ち退きの説明を行います。まず、決定した段階で、書面にて立ち退きの経緯や、おおよその時期を説明します。書面の作成は弁護士にも依頼可能で、作成した書面はポストに投函しましょう。
書面だけでは、立ち退きに納得しない住民も少なくありません。そのため、書面で立ち退きについて伝えた後、口頭で立ち退きの時期などの説明を行いましょう。
立ち退き交渉の開始時期は、半年から一年前に行いましょう。
ついつい、建替え直前まで入居してもらってぎりぎりまで家賃収入を得たくなるかもしれませんが、引越し準備を考えて半年前には通知するべきです。退去通知や更新停止の通知と、実際の退去までの時間が短いと、容易にトラブルに発展します。
また、入居者が多いアパートでは、それよりも早い時期に退去通知を行ってもよいでしょう。契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する「定期貸借契約」もおすすめです。
手順②立ち退き料の交渉
説明会で住民の納得を得られる場合もありますが、得られない場合は、住民との立ち退き料の交渉が必要です。立ち退き料を支払わずに済むケースもありますが、ほとんどのケースでは支払うことになります。
立ち退きの理由に納得していない住民も、立ち退き料の額を増やすことで納得してもらえることもあります。
〇立ち退き料の相場
住民に支払う立ち退き費用は、決まった額やルールはありません。しかし、住民から納得を得られる金額を提示することが必要です。
立ち退き費用は、家賃の6ヵ月分、または、40万~80万円が相場といわれています。
しかし、入居者との交渉がスムーズに進めば、相場よりも安い費用で済むこともあります。
特に、入居者が家賃を滞納していたり、建物の老朽化が著しい場合は、立ち退き費用を安く抑えられます。
一般的に、立ち退き交渉は長引けば長引くほど、オーナーに負担がかかります。長く居座ることで、立ち退き費用を吊り上げようとする入居者もいるため、オーナーと入居者の信頼関係を築いておく必要があります。
立ち退き料の費用を安く抑えるためには、オーナー側からあえて提案しないという方法もあります。
建替えに納得し、退去通知を素直に受け入れてくれる住人もいるため、あくまで、相手側に納得してもらえない時に、立ち退き料の支払いを検討してください。
何よりも、残戸数が少なくなってから交渉をするのがおすすめです。アパートを建替えする場合は、自然退去を見守りながら、新しい入居者は入れないようにしましょう。そして、残戸数が1,2戸程度になった段階で交渉を行うことで、費用を抑えられます。
とはいえ、一方的に建替えの事情を押し付けることは、トラブルにつながります。入居者ごとの事情を汲んだサポートが大事です。
手順③退去手続き
すべての住民が立ち退きに納得したら、住民の退去手続きを行います。住民に転居先を紹介するケースもあります。
立ち退きをスムーズにするポイント
アパートの立ち退きは、オーナー都合で行われるため、立ち退き料を支払ってもスムーズに交渉が進まないこともあります。
立ち退きをスムーズに行うためには、立ち退きの理由や時期を明確にする必要があります。
オーナー都合で行われる立ち退きは、入居者にとっては納得しづらいものです。耐震基準の関係で立ち退きを行う場合は、入居者も損害を被る可能性があることを、しっかりと説明しましょう。
また、転居先の情報を提供することも効果的です。
入居者が立ち退きを言い渡された時に、転居先の問題が発生します。老朽化が原因で建替えを行うアパートは、家賃が低く設定されているケースがほとんどです。
そのため、同等の家賃のアパートを探す必要があります。転居先問題を解決するためには、建替え時期が決まったら、早急に不動産会社などで転居先となるアパートを探しましょう。
所有する物件がある場合は、その物件を紹介したり、知り合いのアパートのオーナーに相談するのもおすすめです。
また、立ち退き時期が決定したら、立ち退き期間を設けましょう。入居者にとって、短期間で退去準備を行うことはストレスになります。立ち退き期間が1年あると、入居者はゆっくりと次の物件を探したり、準備を行えます。
引越しは大変な労力がかかるため、建替えが決まったら、早い段階で書面での説明と住民への説明会を行いましょう。
立ち退きの注意点
立ち退き交渉がうまくいかず、オーナーと住民の間でトラブルが発生するケースもあります。
立ち退き交渉でトラブルが発生した場合は、早めに弁護士や専門家に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、法的なアドバイスを受けることも可能です。また、弁護士が仲介に入ることで、スムーズに交渉が進むこともあります。
また、トラブルを未然に防ぐために、住民との交渉記録を残しておきましょう。立ち退き料を多く支払うことで解決するケースもありますが、住民が納得しない場合は、最終的には裁判に発展します。
アパートの建替えの注意点
解体費用と立ち退き費用には銀行からの融資が受けられない
アパートの建て替え費用には、解体費用と立ち退き費用、新築工事費用が必要です。すべての費用を銀行のローンを組んで支払う予定のオーナーも多いでしょう。
しかし、解体費用と立ち退き費用は、銀行から融資を受けることができません。そのため、解体費用と立ち退き費用は、オーナーの貯蓄から捻出する必要があります。
100坪の木造アパートで3世帯が残っていた場合、解体費用として400万、立ち退き費用で150万円が必要になります。合計で550万円の現金が必要となるため、オーナーにとっては負担になります。
立ち退き費用は残っている世帯数が多ければ多いほど必要となるため、空室状況を把握する必要があります。建物の規模は変えられないため、解体費用を抑えることは難しくなります。
そのため、物件の建替えにかかる費用を抑えたい場合は、立ち退き費用を抑えることがポイントです。融資の受けられない解体費用と立ち退き費用は、コストをかけないように注意しておきましょう。
建て替えの必要性が低いケースもある
アパートを建替えするには、費用や労力がかかります。そのため、建替えの必要性があるかはしっかり検討しましょう。空室状況やアパートのローン、築年数や建て替えによるメリットが判断材料です。
入居者が多い状態であれば、無理な取壊しは必要ありません。また、注意点として、以前のような入居率になるかも検討してください。せっかく取壊して新しい建物にしても、空室が目立つような状態では資金繰りに困ることになります。
注意点として、現在のアパートのローンが残っている状態では、建替えのために担保にすることができません。この注意点とあわせて、自分の資金をよく考えて、建替えを行ってください。
リフォームやリノベーションも検討する
アパートの建替えが難しい場合は、リフォームやリノベーションを検討しましょう。それぞれにメリットとデメリットがあり、費用も大きく異なります。
リフォームは、建替えと比較すると費用が安くなるのがメリットです。工事期間が短いので、場合によっては立ち退きをせずに行えます。改修が必要になった部分だけで済むのも、メリットといえるでしょう。
しかし、根本的な建物の築年数は変わらないため、継続的にメンテナンスを行っていかねばなりません。新築扱いにならないので、警戒される可能性もあるでしょう。とはいえ、建替えの相場と比較すると、6割から7割程度の費用で済むのは大きなメリットです。
綿密な収支計画を立てる
いずれの形を取るにしても、アパートの扱いは綿密な収支計画が必要です。現状のままメンテナンスを続けるのか、建替えするほうがメリットがあるのか、考えなければなりません。
新しいアパートにすることで、賃料アップや最新の間取りを取り入れることができます。それで入居者が増えれば建替えの費用を支払っていけるでしょう。しかし、資金に余裕がない状態で見切り発車は危険です。
ローン年数の組み方や、建て替え費用の内訳など、さまざまなデータや情報をチェックしてください。綿密な収支計画を立てて、アパートの建替えを決断しましょう。
アパートを建替えして収益物件にするコツ
入居者の生活環境に配慮した設計プランを立てる
注意点の部分でも紹介しましたが、アパートは綿密な収支計画が重要です。そのため、アパートを建替えするときに、収益物件にするコツをおさえておきましょう。
まず、入居者の生活環境に配慮した設計プランを立ててください。間取りを住みやすい形にし、日当たりや風通しのよい間取りにすることで、住人の満足度が得られます。
また、遮音性も重要です。遮音性が低いと住人同士のトラブルにつながり、アパートの評判を大きく損ねます。アパートの建替えのときは、費用がかかっても遮音性の高い間取りにしましょう。
こういったポイントに注意することで、入居者を確保し、アパートの建替えにかかった費用を返済することができます。
セキュリティ設備を整える
近年はさまざまな犯罪が増えており、アパートのセキュリティにお金をかけるオーナーが増えています。アパートの建替えのときには、セキュリティが高い建物にしましょう。
建替え費用の内訳の中に、防犯カメラやオートロックなども含めておくのがおすすめです。また、アパートの管理人や警備会社も検討してください。セキュリティの高いアパートであれば、安心感の高い住居を探す人が興味を持ちます。
こういった部分に初期投資しておくことで、結果的に費用やトラブルを減らすことにつながるでしょう。防犯意識の高いアパートに建替えすることで、トラブルを未然に防ぎましょう。
周辺環境・賃貸需要を確認する
アパートの建て替えでは、費用だけでなく周辺環境や賃貸需要を確認しましょう。せっかく新しいアパートを建てても、需要が低い状態では費用を返済できません。注意点として、需要や人口増加、周辺環境、再開発計画などを忘れずに確認するようにしましょう。
今のアパートを建てたときは、賃貸需要があっても、人口減少や周辺環境の変化で、新しい入居が見込めないこともあります。周辺にあった大学や大きな工場の移転は、賃貸需要に大きな影響を与える部分です。
この注意点に気をつけることで、アパート建替え後の入居者を想定できます。また、賃貸需要があれば、費用をかけたアパートを建設しても、返済に困らない状態になるでしょう。
地域の人口の増減に対応した設計プランを立てる
建て替えの注意点として、地域人口の増減にも対応した設計プランを立てるようにしましょう。
近隣に再開発計画があるかは、今後のアパート運営に重要な要素です。地域全体に活気があれば、入居者が増えて建替え費用も返済しやすくなります。
逆に人口流出が続いている場合、建替え費用を計画通りに返済できないかもしれません。設計プランを立てる注意点として、周辺環境や開発計画は必ずチェックしておきましょう。もし、人口流出が続いている場合は、建替えを断念することも検討してください。
アパートの建替えにかかる費用を確認しておこう
アパートの建替えには、アパートの解体工事費用の他、入居者立ち退き費用や、付帯工事費用、そして新しいアパートの建築費用など、さまざまな費用がかかります。
どのような費用がかかるのか、合計で金額はいくらになるのか、確認しておくことが大切です。信頼できる不動産会社などの専門家にも相談しながら慎重に進めていきましょう。
アパートの建替えでは、セキュリティ面や入居者が住みやすい間取りにすることも重要です。建替えにかかる費用を丁寧に確認し、新しいアパートに入居者が集まるように準備してください。
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