今や社会的な課題になっている、空き家の増加問題。人の住まなくなった家屋というのは、驚くほど急激に老朽化が進み、周囲に危険を及ぼし迷惑をかける存在となりえるものです。
では、空き家はもう使わないからといって簡単に解体してしまっていいものなのか、相続上で何か問題はないか、税金などはどうなるのか、疑問点はいろいろわいてくるでしょう。
そこで今回は、空き家問題とその解体工事、そして工事で利用できる補助金について、いろいろな観点から押さえておくべきポイントを網羅しています。
順に見ていきましょう。
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すぐにでも解体すべき空き家とは
空き家には「空き家」と「特定空家」という2つの定義がありますが、「特定空家」については解体する必要性があると言えます。
「特定空家」とは放置することが不適切な空き家のことです。具体的には「倒壊する危険性がある空き家」や、「衛生上著しく有害になる可能性がある空き家」などを指します。
このような適切な管理が実施されていないような特定空家は、近年問題視されています。
本記事では、このように空き家の問題で頭を悩ませている方に、一軒家の解体費用相場が変動する要素や解体補助金制度、併せて費用を抑えるポイントや業者に依頼する際の注意点などを解説していきます。
空き家の解体工事を検討している方はぜひ参考になさってください。
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空き家を管理するうえでの5つの注意点
空き家は普段人が住んでいないため、通常の住まいとは違う形で維持管理が必要になります。
これを怠ると、場合によっては周囲に危険を及ぼしたり、大きな迷惑をかけたりということや、空き家自体の老朽化を早めてしまう恐れがあるため、注意すべき点を5つ例に挙げて解説していきます。
1:空き家の電気代
空き家は、当然普段は使用していない家屋であるため、光熱費は全くかからないのでは?というイメージがあります。
しかし、防犯面や衛生面で定期的に管理が必要な場合、掃除をするときに「明かりもつけられないし掃除機も使えない」、「給湯器も使えないからお湯も出ない」というようなことがあっては不便なので、電気の契約自体を解除するというのは得策ではありません。
そうはいっても空き家の光熱費はできるだけ節約したいものですよね。
大体の電気会社の契約では、電気の使用量にかかわらず基本料金や月額最低料金は発生するものです。料金が安い電気会社もあるので、そこに切り替えるということもひとつの方法です。
また、基本料金がかかる契約の場合でも、アンペア数を最低段階まで下げておくという手も有効です。アンペア数は大きくなればなるほどその基本料金も高くなるからです。
めったに使わない空き家の電気であれば、最低段階のアンペア数でも問題はあまりないでしょう。
2:空き家の水道
空き家において水道は、電気よりも契約を維持しておくべきといえるライフラインです。
というのも、空き家になって使用が少なくなるもしくは全くなくなることにより、水道管はむしろ劣化してしまいやすくなるからです。傷んでサビが出たり水漏れしたりということにつながると、水道管の交換など修理の必要も出てきてしまいます。
これを防ぐためには、定期的に水道管に水を通す「通水作業」が必要になります。台所や浴室、洗面所などの蛇口をひねり、水を出すという作業を1ヶ月に1回以上、掃除や換気とともに行うようにしましょう。
また、ネズミや害虫などの侵入を防ぐ「排水トラップ」という部分に一定量の水を貯めておくためにも、通水作業は不可欠です。
空き家になっても水道の契約は解約せず、このように定期的なメンテナンスが必要になります。
3:空き家の庭木伐採
空き家の庭の手入れについては、隣家などとのトラブルに発展しがちな要素のひとつです。
たとえば、伸び放題の雑草が景観上や衛生面で問題になったり、庭木が伸びて隣家の敷地内に入り込んでしまったり、ということが起こりうるからです。
法律上、空き家の所有者以外の人が、空き家の庭木などを伐採することは禁じられているため、隣家の住民がもし迷惑を被っているとしても自分たちでできることはなく、我慢している相談事例も多く見受けられます。
雑草を刈ったり、庭木を伐採して切り株の処理までできたりすれば完璧ですが、最低でも景観を整える・衛生面に配慮するという観点である程度の庭の手入れはしておくべきですね。
4:空き家のブロック塀
近年、「危険なブロック塀」に注意が払われています。長年の劣化により地震などがきっかけとなって倒壊し、通行人などに害を及ぼす可能性のあるブロック塀が非常に増えているのです。
こういったブロック塀の撤去を進めようとした際、大きな課題のひとつに空き家のブロック塀が挙げられるのです。空き家の所有者に連絡がつかない、そもそも所有者がはっきりしないという事態も多いからです。
まずはブロック塀、すなわち空き家の所有者を明確にすることから始めて、撤去までつながなければいけないため、大変な労力や費用がかかることもあるのです。
自分の空き家にブロック塀がある場合、くれぐれも倒壊などの事故には留意し、場合によっては早めに撤去しておくことも視野に入れておくべきです。
5:空き家のブレーカー
前述したように、空き家においても電気の契約は解約せずに残しておいた方がいいのですが、できるだけ余計な料金がかからないようにする対策のひとつとして、普段は「ブレーカーを落とす」ということも忘れずにしておきましょう。
また、電気料金の節約という点だけでなく、安全面においてもブレーカーを落とすことは重要です。
たとえば配線の劣化などが進んでいても、空き家だと気づくのが遅れてしまい、修理に至らずに漏電を起こし火災につながる…などといった事故も防ぐ効果が期待できるでしょう。
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空き家のままにしておくメリット・デメリットとは
使っていない空き家は、解体して更地にすべきなのでしょうか?それとも、そのままにしておくべきなのでしょうか?
それは、不動産の「目的」によって結論が変わってきます。そのため、ここでは空き家のある土地を更地にしないでそのままにしておくメリット・デメリットについて両方見ていくことにしましょう。
空き家のままにしておくメリット3選
1: 資産運用を考えることができる
空き家にまだ十分住宅としての機能が残っていて、賃貸物件などとしての資産価値がある場合は、そのまま資産運用をすることも可能です。
リフォームや修繕のための費用が必要になる場合もありますが、それを見越しても家賃収入によって利益につながるのであれば、考えてみてもよいでしょう。
2:古家付き土地として売り出せる
上記同様、空き家にまだ資産価値が十分に残っているのであれば、「古屋付き土地」として売り出すことが可能です。この場合、空き家を解体する費用を浮かすこともできます。
もちろん、すべての空き家に買い手がつくほどの価値があるとは限らないので、十分な見極めが必要になることには注意しましょう。
ただし資産運用を考える場合、メリットとデメリットは裏表です。空き家に資産価値があるのなら、もちろん残しての運用が良いでしょうが、更地にすれば「駐車場やコインパーキングとして運用」などといった別の資産運用の方法も出てきます。
どちらがよいかは、状況によって異なるため、不動産会社などによく相談して考えることが重要です。
3:固定資産税の減免措置が受けられる
不動産というものは、所有しているだけで固定資産税と都市計画税という税金を納めなければなりません。
これらの税は、土地に建物が存在している場合、条件を満たしていれば金額の軽減措置が受けられます。固定資産税が最大約6分の1、都市計画税が3分の1までという軽減になるため、税金の節約としては非常にありがたいでしょう。
もしも更地にしてもすぐに売り出す予定がない、更地での運用を考えていないということであれば、空き家は解体せずに残しておく方が税金面では節約になりえるのです。
空き家のままにしておくデメリット2選
1:管理が大変・維持費用がかかる
空き家を不動産として売り出すにしても、今後の利用を考えるにしても、その間に管理は必要になります。
たとえば、管理が行き届かず雑草が伸び放題で外から家が見えづらいと、犯罪に利用されたり、不審者が棲み着いたり、動物や害虫の巣窟になってしまう恐れがあります。放火の対象にもなりえるでしょう。
また、単純に景観的によくないうえ、そのような空き家が近所にあるということで近隣住民に大きな迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
そのような事態を防ぐためには、定期的に空き家を訪れて防犯チェックをしたり、安全面の確認や手入れをしたりなどの管理が必要で、そこに手間や時間、また維持費用がかさむことにもつながってしまいます。
2:資産価値によっては、買い手がなかなかつかなくなる
先述したように、メリットとデメリットは裏表の関係です。
先述した通り、まだまだ価値も需要もあるような古家であれば、空き家付きの土地にはその分付加価値もありますが、すでに資産価値がほとんどない空き家が建っていると、その土地の買い手がなかなか見つからないのです。
リフォームが必要だったり、解体費用が必要だったりということになると、買い手側としては初めから更地になった状態の土地を探す方がいいからです。
空き家がある方が土地は売れやすいのか、その逆なのか、きちんと見極める必要があるでしょう。
空き家の活用成功事例を知ろう
空き家をそのまま放置することの危険性やデメリットは、これまで述べてきた通りです。
加えて、状態が悪い空き家を放置することで「空き家等対策特別措置法」により「特定空家」に指定されてしまうと、固定資産税の軽減措置が受けられなくなるというさらなるデメリットも発生します。
ここでは、そういった危険性を排除し、うまく空き家を活用する方法について見ていきましょう。
空き家のリノベーション
劣化して資産価値のない、住居としても適さなくなってしまった空き家は、リノベーションやリフォームを施し、新しい形で利用することが可能な場合があります。
倒壊の危険や犯罪の温床となる危険性を除くことができ、なおかつ資産価値を上げられるため、自宅として使うにも性能が向上する他、賃貸運用をしたり売り出したりしても借り手・買い手がつきやすくなるというメリットが発生します。
古い柱や構造、現在では貴重となった資材を活かし、おしゃれなヴィンテージ感を出すなどといった付加価値を乗せることも可能になることがあります。
費用の面においても、新築するよりコストを抑えることができるだけでなく、耐震リフォームに対する補助金を利用することができたり、リフォーム減税といって所得税の減税制度や固定資産税の減額措置が受けられたりすることもあるのです。
特に補助金については、自治体によって受けられる条件や金額に大きく違いがあります。うまく活用すれば非常に頼もしい味方になってくれるでしょう。
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空き家のサブスクリプション
サブスクリプション、略して「サブスク」とは、一言でいうと「定額制サービス」のことです。
一定の期間、一定の金額を支払えば、その範囲内で好きなだけサービスを受けられるというもので、最近は「空き家サブスク」というものも注目されてきています。要するに「定額全国住み放題サービス」です。
空家サブスクを活用すると、定額料金を支払えば、全国どこへでも、好きなときに好きなだけ移住・居住することができるので、ライフスタイルに合わせて住まいを変えることが可能です。
「リモートワークをしながら環境のよい場所を転々としたい」「さまざまな土地でいろいろな出会いをしたい」「都会と田舎の両方で暮らしたい」「旅をしながら生きたい」など、いろいろなニーズに対応できるのです。
現在展開されている代表的な空き家のサブスクは、定額料金に光熱費も含まれ、家具家電つきで敷金・礼金・仲介手数料無料、なおかつ面倒で煩雑になりがちな賃貸契約が必要ない、というものがほとんどです。
そのような気軽さ・手軽さから幅広い年齢層のさまざまな生活スタイルを持つ人々が利用しています。
都会など人の出入りの多い土地でないと、空き家を賃貸住宅にしたところでなかなか居住者が現れない恐れなどがあります。売りに出したとしても、買い手がなかなかつかないということもあるでしょう。
しかし空き家サブスクの登録空き家として活用するのであれば、そのような心配も解決できるかもしれません。
空き地のおすすめ活用方法
空き家のある土地を資産運用したいと考えたとき、「空き家を利用する場合」と「更地にして運用する場合」に分けて考える必要があります。
空き家として利用する場合は、前述のようにリフォームやリノベーションも視野に入れた戸建賃貸・賃貸併用住宅としての活用や、空き家サブスクの物件として登録するといった資産運用の方法があるでしょう。
空き家を解体して空き地にするのであれば、たとえばそこに駐車場やトランクルーム、太陽光発電などの設備を用意して活用することができます。また、資材置き場としての利用など土地のまま貸すという方法も見えてくるでしょう。
土地の環境や状況などさまざまな要素を踏まえて、どう活用するのがベストなのかをしっかり検討する必要があります。
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空き家に関する6つの疑問点について解説
空き家を所有・管理していると、さまざまな面から疑問点が出てきます。
ここでは税金や相続についてなど、維持管理や近隣住民との関係などの観点から特に6つ例に挙げて、疑問を解消していきましょう。
1:空き家の固定資産税と譲渡所得税の特別控除
空き家問題周辺の税金関連で、まず気になるのが固定資産税でしょう。先に少し触れましたが、「更地にしてしまうと固定資産税が跳ね上がってしまう」というお話を耳にしたことがあるかもしれませんね。
これはどういうことかというと、元々固定資産税には「住宅用地の特例」というものがあり、住宅用地であれば、建物がある(=更地ではない)場合、固定資産税が6分の1まで減免されるのです。
この措置があるため、空き家をいつまでも解体せずに置いておき、これが空き家増加問題の原因の一端となっているという節もあります。しかし、前述した「空き家等対策特別措置法」によって、管理の行き届いていない老朽家屋は「特定空家」に認定されてしまい、この固定資産税の特例措置が受けられなくなるという恐れがあるのです。
また、空き家の税金としては売却した際の譲渡所得税における「3,000万円特別控除」というものもおさえておきたいポイントです。これについては前述の項を参照してください。
2:空き家の相続
親から相続したものの中に空き家があった場合、注意すべき点がいくつかあります。
まずは所有権移転登記。空き家となってしまった家屋の所有権を相続人に移したという登記が必要になります。これは「相続登記」といい、これまでは必ずしも必要ではなかったのですが、2024年4月からは義務であるため、忘れてはいけません。
次に、相続といえば多額の相続税を納めなければならないのでは…というイメージ。
大した資産価値もない空き家を相続して高額な相続税を払わなければいけないのかと心配になりますが、実は相続税の基礎控除額は「3,000万円 +(600万円×法定相続人の数)」もあるため、相続財産がこの額を上回らなければ、相続税もかからないのです。実に日本国民の9割以上は、相続税の納税義務の基準を満たしいていないといわれています。
また、相続放棄といって相続の権利をすべて放棄することも可能ですが、相続を放棄しても管理責任は残ってしまうというデメリットもあります。
空き家を相続しても遠方にあるため管理ができない、資産価値もない…という理由で相続放棄したら、権利は放棄したのに維持管理責任だけ残る、という事態になるため注意が必要です。
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3:空き家の苦情
空き家をそのまま放置しておくことは、所有者だけの問題にとどまらず、周辺住民からの苦情やトラブルにもつながることがあります。
たとえば老朽化が進み、屋根や壁が剥がれ落ちて隣家を傷つけたり通行人にケガを負わせたり、というリスクや、雑草が伸び放題で害虫や動物の住処になるなどして衛生面の問題が起きる、という恐れなどが考えられます。
また、空き家を解体する工事の際にも近隣との関係は気をつけたいところです。
危険な工事における安全管理や粉塵対策、工事中の騒音対策は、もちろん工事を担当する業者が注意すべき点ですが、施主にも責任の一端はあります。
開始前に行う解体工事のお知らせ、工事完了後の片付けも含め、業者がきちんと行ってくれているかどうかを施主も自ら確認すべきといえるでしょう。
4:空き家の維持管理
人の住まなくなった家屋は、劣化が加速するものです。いずれどのように処置するかに関係なく、管理はしなければいけません。
たとえば、定期的に通水(蛇口をひねって水道に水を流すこと)や換気、掃除、草刈りなどを行うこと、屋根や壁に破損はないかチェックすること、防犯体制を整えておくことなどで、近隣住民へ迷惑をかけることを防げてトラブル回避にもつながります。
ただし、維持管理にはある程度の費用が必要になることも念頭に置いておかなければなりません。
光熱費や空き家まで赴く交通費、また不動産にかかる税金である固定資産税もかかり続けます。その際に、このまま維持管理すべきか、解体すべきかを考える段階においても重要なポイントとなるでしょう。
5:空き家の別荘
かつての別荘ブームで購入した別荘も、使用しなくなって放置してしまい何年も経過…今や廃墟同然で売却することも難しくなってしまった、という事例は少なくありません。
そのまま放っておいてはどんどん老朽化し、周辺に被害や迷惑を及ぼしたり、維持管理費用ばかりがかさんだり、とデメリットばかりです。
もしもまだ資産価値がある別荘であれば、早急に売却を検討し、そうでなければ解体して更地にしてからの売却も視野に入れるのがよいでしょう。
最近では別荘のように遠隔地にある建物の解体工事でも、見積もりや立合いを代わりに行ってくれる業者なども存在するので、うまく利用できるとよいでしょう。
一方、親からの相続などで手に入れた実家を別荘として利用する、というケースでは、やはり維持管理の面での問題をクリアする必要があります。
老朽化した部分の修繕や、定期的な換気や掃除といった管理などで想像以上にコストがかかる場合もあります。
そのような問題をクリアできるのであれば、実家を別荘として利用するというのも効果的な空き家活用法のひとつであるといえます。
6:空き家の仏壇
「空き家に仏壇が置きっぱなしだが、どう対処していいかわからない、お祓いなどが必要なのだろうか」と考えるのは、さほど信心深い人でなくてもごく自然なことでしょう。他のゴミと一緒に処分することに抵抗がある、というのも当然の心理です。
仏壇や神棚は、細かいことは宗派などにもよりますが、まず「魂抜き」などと呼ばれる儀式を行ったうえで移動や処分を行います。
空き家から別の家に移動した場合は、今度は「魂入れ」のような儀式も行いますが、処分する場合はお焚き上げなどを行ってくれる場所に持ち込むといいでしょう。
全国の空き家ランキング
空き家が少ない 空き家が多い
国土交通省による「空き家」の定義とは「1年以上人が住んでいない、使われていない家」というものです。
今や空き家増加は日本全国各地で問題となっています。では、実際どんな地域でどれほどの空き家が発生しているのか。その数値が「住宅・土地統計調査」で明らかになりました。
空き家率の高い地域とは?
調査では、47都道府県で空き家率がもっとも高いのは、山梨県(21.3%)でした。そこから2位に和歌山県(20.3%)、3位に長野県(19.5%)と続きます。
さらにそこから4位徳島県(19.4%)、5位高知県(18.9%)、6位鹿児島県(18.9%)、7位愛媛県(18.1%)、8位香川県(18.0%)、9位山口県(17.6%)、10位栃木県(17.4%)となっていて、10位内に四国の4県がすべて入っているという結果になりました。
別荘も空き家としてカウントされていることから、別荘地や地方での空き家率が高くなっているということがわかります。
空き家数の多い地域とは
ちなみに、空き家率では45位で一見空き家が少なそうに見える東京都(10.6%)ですが、空き家の「数」でいうとダントツの1位で、その数字はなんと80万9千戸。人口が多いので当然といえば当然ではあるのですが、さすがに目を見張る数ですね。
次いで2位大阪府(70万9千戸)、3位神奈川県(48万3千戸)となっていて、やはり大都市には空き家の数も多いということがわかります。
空き家問題の解決に向けて
空き家率と空き家数の数値を見てみると、地方の一軒家だけでなく大都市のマンションなどでも空きが出ているという問題が見えてきます。
どこの地域でも新築物件に比べて中古物件の人気が低いという傾向があり、それが空き家問題に拍車をかけているという一面があるのです。
特にマンションでは一戸一戸の部屋を新築同然にリフォームしても、マンション全体の管理の質が低いなどという要因があると、その物件はなかなか売れません。
欧米などで空き家率が高くない国の状況を見ても、やはり中古物件の利用をいかに推進できるかという点に、空き家問題解決の道筋が見えるといえるでしょう。
空き家バンクとは
空き家問題の解決の一助として、注目を浴び始めてきた「空き家バンク」という制度。仕組みや利用方法、メリット・デメリットを見ていきましょう。
空き家バンクとは何か
空き家バンクとは、全国の地方公共団体(自治体)が取り組んでいる制度で、地元の住民などから得た空き家の賃貸・売買の物件情報をまとめ、必要としている人に提供する、いわば空き家の「マッチング」サービスです。
地域への定住を目指して20年以上も前に設立された制度なのですが、近年の空き家問題への注目などからも広く人々に知られるようになったのは最近のことです。
制度要綱としては「空き家を有効活用し、都市住民との交流及び定住促進による地域の活性化を図る」「空き家の情報収集及び情報発信を行うことによりその有効活用を図り、定住促進による地域の活性化に資する」というものがあり、単に「手ごろな空き家に住む」ということではなく、その地域に「移住・定住したい、交流したい」という他地域からやって来る人々のための制度です。
運営しているのはほとんどが自治体の職員であるため、他地域から移住を希望して空き家バンクを利用しようとする人たちにとって、見知らぬ土地での不安を解消し理解を得やすくなるというメリットもあります。
空き家バンクの仕組み
空き家の所有者で、「貸したい」「売りたい」と希望している人からの物件情報を地方公共団体が集約し、地域の宅建業者とも実務上の連携をしながら、空き家を「借りたい」「買いたい」と思っている移住者などに仲介を行う、というのが空き家バンク制度の主な仕組みです。
各地方公共団体の空き家バンクを利用するには、まず「貸したい」「売りたい」側は物件の登録が必要になります。
「借りたい」「買いたい」側は、空き家バンクのサイトから希望物件の写真や間取りなどの細かい情報を確認し、内覧へと進みます。このとき、空き家バンクの利用者は他地域からの移住希望者であることがほとんどなので、内覧というよりも数日間実際に住んでみる体験入居となることも少なくありません。
このような手続きや流れは自治体によって多少の違いがあります。
まずは自治体のホームページで確認するようにしましょう。また、そもそも空き家バンク制度自体がない自治体もあるので、注意が必要です。
空き家バンク利用の2つのメリット
1:賃貸物件を見つけやすい
田舎は人の出入りが多くないので、賃貸物件を探す場合も一苦労、ということが多いのですが、空き家バンクを利用すれば民間の不動産屋にはない空き家情報を得られる場合が多く、希望の物件に出会える可能性が高くなります。
2:金銭面で得がある
民間の不動産屋であれば、仲介手数料などの費用が発生しますが、空き家バンクであれば登録もマッチングも無料になります。また、空き家バンクにより自治体の補助金や助成金を受け取れる対象になることもあり、さまざまな金銭面で得な部分があるでしょう。
空き家バンク利用の2つのデメリット
1:能動的に動く必要がある
空き家バンクは民間の物件仲介とは性格を異にするため、売り手・貸し手側は空き家バンクに登録しただけで安心せず、空き家の積極的な管理や修繕、プロモーションや販促活動も自ら行う必要があります。
また、空き家バンク制度はあくまでマッチングが目的であるため、売買契約や賃貸借契約なども自分で行わなければいけません。
同様に買い手・借り手側としても、空き家の所有者と直接交渉・契約などを行う必要があるということになります。
無料で済む面がある分、手間はかかる側面があるということも念頭に置いておかなければいけないのです。
2:知名度が高くない
自治体によってもばらつきがありますが、知名度が高い制度とはいえないため、買い手・借り手が見つかるまでは時間がかかる、苦労することが多いでしょう。
また買い手・借り手側からの視点でいっても、希望通りの物件が簡単に見つかるとは限らないのです。
メリット・デメリットを踏まえて、空き家バンク制度を活用するか、民間の不動産業者を利用するかを検討しましょう。
空き家の解体工事の費用相場
空き家のままで置いておくのはやはりリスクが大きいので、解体撤去をしたい、となるとやはり気になるのは空き家の解体工事費用でしょう。
空き家の解体費用は地域や条件によって異なりますが、数十万~数百万円程度の費用がかかります。
たとえば、建物の構造別での費用相場を見てみると、木造建築の場合は1坪4万~5万円程度、鉄骨造の場合は1坪6万~7万円程度、RC造の場合は1坪6万~8万円程度が目安となっています。ただし、あくまでも目安であり、同じ坪数でも立地条件や築年数などによって、費用は変わってきます。
そのため、現在空き家を所有している方は、空き家を解体したくても高額な費用がかかるため困っている、というケースも多いのではないでしょうか。
まずは、空き家の解体費用相場はさまざまな条件によって異なってくることを認識しておきましょう。ここでは、費用相場の目安と共に、どのような要素で費用相場が変動するのか、具体的に解説していきます。
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解体費用変動要素1:建物の構造
同じ一軒家でも、平屋や2階建てなど住戸の階数、木造や鉄筋コンクリート造(RC)などの建築構造によって、費用相場は大きく変動します。
同じ坪数である一軒家の1階建てと2階建てで比較すると、2階建ての方が費用が安くなるケースが多いです。なぜなら、基礎や屋根部分の解体工事に、費用の違いがあるからです。
30坪の一軒家で例えると、2階建ての場合は屋根や基礎の部分が1階建ての約半分になるため、それに伴い費用も安くなります。
また、地下室のある一軒家は、通常とは違った特殊な解体作業をしなければならないため、費用がかなりかかると認識しておいた方が良いでしょう。
解体費用変動要素2:家の立地
解体工事を考えている建物がどのような場所や環境にあるのかによっても、費用は違ってきます。解体する家が隣りの建物と近すぎたり、重機を持ち込むことができない狭い場所にあるなど、通常より工事に手間がかかる場合は費用が高くなります。
たとえば、重機を持ち込めなければ作業員の手作業になりますし、狭い場所であれば交通整理をする作業員も必要です。
工事がスムーズに行えない環境であると、手作業になることが多くなり、その分人件費がかかることになります。
解体費用変動要素3:付帯工事費用
解体する一軒家にアスベストが使われている場合は、アスベスト法の規定に沿った適切な処理をしなければなりません。
特殊な解体方法が必要になるため、費用も必然的に高くなります。
他にも、空き家の敷地内にある外構撤去や浄化槽の撤去作業をする場合は、別途に費用がかかることも、覚えておくとよいでしょう。
解体費用変動要素4:依頼する解体業者
一軒家の解体を依頼する業者によって、費用が異なることはよくあります。また、工事を依頼する時期によっても、費用が大きく変わることがあるのです。
通常は12月と3月が繁忙期になるため、できればこの時期を避けた方が、安くなる可能性が大きいでしょう。
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空き家の解体費用を抑えるポイント
空き家の解体費用は、少しでも安くしたいものです。ここでは、費用を安く抑えることができるいくつかのポイントを解説します。
解体費用を抑えるポイント1:複数の業者から相見積もりを取る
先述したように、依頼する解体工事業者によっても費用相場は違ってきます。それぞれの業者で利益率の設定基準が異なっていたり、拠点から解体現場までの距離で変わってくることがあるからです。
また、安いからといってすぐに決めてしまうことも、おすすめできません。なぜなら、契約した後に、次から次へと追加料金を請求してくるような悪徳業者も存在するからです。
1つの業者だけでなく複数の業者に見積もり依頼をするようにし、金額はもちろんのこと、対応のよさや仕事の質などについても比較してから決めるようにすることで、よい業者に出会える確率は高くなるといえます。
解体費用を抑えるポイント2:自分で処分できるものはしておく
空き家の中、あるいは敷地内の残置物や庭木の撤去を業者にお願いすると、解体費用とは別に撤去費用がかかります。
自分でできる範囲のものであれば、あらかじめ撤去しておくと、その分費用を削減することができます。業者が工事を始める前に、自分でできることはないか、チェックしてみましょう。
解体費用を抑えるポイント3:補助金制度を活用する
補助金に関して、詳しくは後項で詳述します。別項をご参照ください。
解体費用を抑えるポイント4:解体ローンを利用する
空き家の解体費用が高額であり、捻出することが難しい場合は、空き家解体ローンを組むという方法もあります。「費用を抑える」という点では多少意味合いが異なりますが、費用捻出としては有効な手段といえるでしょう。
また、更地にした後に新築工事を行う予定がある場合は、新築の住宅ローンに組み込むことができる場合もあります。
空き家を解体する時の注意点
空き家を解体する際には、思いもよらないトラブルが発生することもあります。なるべくトラブルを回避できるように、空き家の解体に関する注意点を見ておきましょう。
1:建物滅失登記を忘れずに行う
空き家の解体後は、建物滅失登記を行うことが重要です。
建物滅失登記をしなかった場合は、すでに除去している空き家に対して固定資産税がかかったり、その後の建替えの許可が出なかったりすることもあります。
また、地域の自治体によっては罰金を科せられることもあるため、十分注意しましょう。
2:更地にするメリットとデメリットを確認する
状態の悪い空き家付きの土地であると、買い手は解体費用も負担することになるので、躊躇する確率が高くなります。
そこで、空き家は解体してしまい更地の状態にすることで、買い手が見つかりやすくなる可能性が高くなるいうメリットが生まれます。
また、逆に更地にするデメリットは、固定資産税が上がることです。
固定資産税は、建物がある状態の土地であれば減税される措置があるのですが、更地にして建物がなくなると、その措置が適用されなくなってしまい、実質的に固定資産税の金額が上がることになります。どのくらいの負担になるのかという点を、事前に確認しておきましょう。
3:解体せずにそのまま売却することも検討しよう
土地を売却をする意向があるならば、すぐに解体を決断せずに、不動産に相談してみることをおすすめします。空き家の状態によっては、古家付きの土地として売却した方がよい場合もあるからです。
家屋を解体して売却するか、しないで売却するか、立地や建物の状態などを専門家の立場から総合的に判断してもらえるでしょう。
空き家の解体工事に関する補助金・助成金制度とは?
先に少し触れましたが、解体工事費用には多くの補助金・助成金制度が用意されています。
空き家を解体する場合、基本的に解体費用は一括で支払う必要があります。解体工事には高額な費用がかかるため、助成金制度があれば利用したいという方は多いでしょう。
実は、空き家の解体工事に特化した補助金というものは存在しています。ただしそれは国土交通省、すなわち「国」から支給される補助金ではなく、「地方自治体」からの補助金だという点に気をつけましょう。
ちなみに国土交通省からの補助金は、「個人に対してではなく地方自治体に対して」という位置づけであるといえます。そのため、個人で解体工事の補助金を申請する相手はあくまで国ではなく自治体であるということを注意しておくとよいでしょう。
補助金支給はどのような条件なのか、最大いくらまでの補助金が出るか、などといった詳細は自治体によって違います。まずは自治体のウェブサイトで、情報を確認することから始めてみましょう。
多くの自治体において、空き家の解体工事に補助金や助成金制度を利用できるようになっています。まずは該当する自治体のホームページなどで、要件を確認してみるとよいでしょう。
補助金と助成金の違いについて
補助金も助成金も、原則返済不要で国や地方自治体などから支給されるものです。
利用する側にとってはどちらも大きな違いはありませんが、補助金は予算が決まっているという違いがあります。そのため、補助金は場合によっては抽選になるケースもあるため、申請しても支給してもらえない可能性があります。一方、助成金は要件を満たしていれば支給されます。
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補助金にはどのようなものがあるか
空き家の解体工事には高額な費用が掛かりますが、補助金制度を利用すれば、解体に掛かった費用のいくらかを補助金で賄うことができます。そのため、住んでいる自治体がどのような補助金制度を設けているのかあらかじめ確認しておくことが大切です。
ここでは空き家の解体工事で利用できる補助金制度をいくつか紹介していきます。細かい名称は自治体によって異なりますが、大まかに「このような名称の補助金はどんな要件となっているのか」という点を確認してみてください。
1:「木造住宅解体工事費補助金」など
木造住宅の倒壊などの被害を防止するために解体工事費用の一部を補助する制度です。
古い木造住宅は地震などによって倒壊する危険があるため、一定基準の耐震性を満たしていない木造住宅の解体工事の費用などを補助してくれます。
例として「一定の耐震基準を満たしていない木造住宅の解体費用の23%(上限20万円)、先着200戸」などというものがあります。
2:「老朽危険家屋解体工事補助金」など
老朽化などが原因で、倒壊する可能性の高い空き家の除去を促進するための補助金です。
空き家の危険性や耐震性の判定を受け、補助金を受ける対象であると認定されることが必要となります。地域の自治体で金額は異なりますが、解体費用の2~5割程度が支給されるケースが多いようです。
3:「建替え建設費補助金」など
空き家の解体工事及び新築費用の一部に対して補助を行う制度です。
一定の条件を満たした空き家が対象になり、地域の自治体によって千差万別です。
4:「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」など
長期間に渡り放置されている空き家があることで、都市の景観を損なうことを防止するための補助金制度です。
解体工事後に景観形成基準に沿った土地利用をすることが条件になっています。
補助金制度の要件の例
空き家の解体工事に補助金や助成金を利用できれば出費を抑えることができますが、誰でも補助金や助成金の申請が下りるというわけではありません。
前項では大まかに補助金利用の要件を挙げましたが、ここではどのような要件があるのかもう少し細かく見ていきましょう。
1:腐朽破損レベルが基準を超えているか
空き家は空き家でも、特に傷みがないような空き家では補助金や助成金が受け取れないケースがあります。しかし基準を超えた腐朽破損レベルであれば、地震が発生した場合に倒壊するリスクがあるため、補助金や助成金が受け取れる可能性が上がります。
腐朽破損レベルとは倒壊の危険性を示したもので、自治体によっては耐震診断を使用するケースもあれば、目視や調査によって測るケースもあります。
2:前年の所得が低い
所得が多い人は補助金などを利用しなくても費用を賄えると判断されるため、前年の所得がある程度低い必要があります。
自治体によって判断基準は異なりますが、前年の所得が1,000万円以上あると補助金や助成金を受け取れない可能性が高くなります。
また、所得に限らず貯金額や資産についても判断基準になるケースがあるため、財政状況に余裕がある人のための制度ではないことを押さえておきましょう。
3:税金の支払いを滞納していない
解体工事の補助金の財源は、元はといえば税金です。
そのため、たとえ他の条件を満たしていても、住民税などの税金の支払いを滞納している場合は、補助金や助成金を受け取ることはできません。
自治体から支給される補助金であっても、もともとは国民の義務である税金から出ている点を押さえ
4:空き家であること
空き家の解体工事の補助金を受け取るには、当然ながら空き家であるという条件があります。
長期間誰も住んでいない状態であり、さらに「特定空家」に認定されていれば、補助金や助成金を受け取れる可能性が上がります。
放置された空き家には、倒壊の可能性や害虫の温床になるリスクがあり、周辺環境にも悪影響を与えます。そのため、自治体としては補助金を支給してでも対処する必要があるのです。
5:現在の耐震基準を満たしていない
1981年以前の旧耐震基準で建築された古い建物は、現在の耐震基準を満たしていないため、自治体としても早めに解体したいと考えています。
したがって現在の耐震基準を満たしていないような築年数の古い空き家は、補助金や助成金を受け取れる可能性があります。
6:新築工事に伴う解体工事ではない
必ずしも条件に含まれているわけではありませんが、新築工事に伴う解体工事ではないことが条件に含まれているケースもあります。
空き家の解体工事の補助金制度はあくまで古い空き家を取り壊すことを目的としていることから、新築工事を行う(建替えする)ための解体は支給対象外になる補助金もあるということです。
7:自治体の空き家バンク等に登録されている
自治体の空き家バンクなどに登録されていることが、支給条件に含まれているケースもあります。
空き家バンクとは、空き家を売りたい人や貸したい人と、空き家を買いたい人や借りたい人を「マッチング」するための制度です。自治体によっては空き家バンクへの登録が条件の1つになっているケースもあります。
8:抵当権設定がされていない
抵当権設定がされていないことが支給条件に含まれているケースもあります。
抵当権とは住宅ローンなどを借りる際に住宅と土地を担保とする権利のことです。
抵当権が設定されているということは、住宅ローンを完済していない、もしくは完済しているのに抵当権を外していないことを意味していて、空き家であっても補助金や助成金が受け取れなくなる可能性があるため、注意が必要です。
空き家の解体工事の補助金制度で注意すべきポイント5つ
ここまで解体工事の補助金制度の条件について解説してきましたが、これらの条件を満たしていたとしても、必ずしも補助金を受け取れるわけではありません。また、先に解体費用を支払った後で補助金が後払いで支給されるなど、補助金制度にはいくつかの注意点があります。
ここでは最後に、空き家の解体工事の補助金制度で注意すべきポイント5つを紹介していきます。
1:必ず補助金を受け取れるわけではない
各自治体によってさまざまな補助金制度が用意されていますが、申請したからといって必ずしも補助金を受け取れるわけではありません。
それぞれで所定の審査があり、予算に達し次第受付終了となるケースもあります。
そのため、あらかじめ審査条件なども確認し、必要であれば事前に問い合わせを行っておくことが大切です。
2:審査が終わるまで時間がかかる
補助金を受け取るには審査に通る必要がありますが、この審査には時間がかかります。
自治体はきちんと建物の状態や土地の場所などを確認したうえで審査を行うため、手続きを行ってから数週間~1ヵ月程度の時間がかかると考えましょう。したがって、ある程度の時間がかかることを想定し、早めに申請の準備を行うことが大切です。
3:補助金・助成金は後払いである
補助金や助成金を実際に受け取れるのは、解体工事がすべて終わってからです。
補助金制度はかかった費用の何割かを補助する仕組みになっているため、工事が終わって領収書などの証明書を受け取るまでは補助金や助成金を受け取ることはできません。
つまり、業者への支払いはいったん自己負担で行わなければいけないということです。この点はしっかり念頭に置いておきましょう。
4:自治体によって補助金制度の条件などが異なる
空き家の解体工事のための補助金制度は、国が一律で基準を作っているわけではありません。
そのため、繰り返しになりますが、自治体によって補助金支給の要件は異なるので、自己判断で補助金の支給要件を満たしていると考えずに、問い合わせを行って条件を確認することが大切です。
5:基本的には自分で手続きを行ったほうがよい
解体工事の補助金や助成金の申請は、解体業者や建設会社に代行してもらうことも可能です。
しかし代行を依頼すると、その分手数料がかかるため、せっかくの補助金を100%利用することができなくなります。
そのため、補助金の申請はできるだけ自分で手続きを行うようにしましょう。
空き家問題に対処する手段5選
全国各地の空き家の増加、所有する空き家の維持管理など、空き家にまつわる問題にはさまざまなものがありますが、行政などが補助金だけではなく、いろいろな側面からの対策や措置を用意してくれています。
いくつか例を見ていきましょう。
1:空き家類焼損害補償特約
通常、隣の家屋の火事により自宅が損傷したという場合、損害賠償を請求することはできません。故意だった、もしくは重大な過失があったと判断された際には可能な場合もありますが、ほとんどの場合、補償は受けられないのです。だからこそ火災保険の加入の重要性が見えてきます。
これが反対の立場だったとき、つまり自分の家の火事が原因で隣家に損害を与えてしまった場合も当然同様で、責任を追及されることは通常ありません。自宅だけでなく「自分の所有する空き家」の火事が原因であっても同じです。
ただ、法的な責任の追及がないとしても、道義的な責任(つまり罪悪感)を抱くのは人として当然でもあります。こういったときに活躍してくれるのが「類焼損害補償特約」なのです。
これは、「類焼してしまった隣家が火災保険に未加入もしくはそれだけではカバーしきれない損害を与えてしまった際に、支払われる保険」です。これがあれば、多少の償いは可能となります。
火事の原因でもっとも多いものは、放火だといわれています。
廃屋や廃墟、廃坑などは放火の対象となりやすく、自分の所有する空き家からも火事が出る可能性は否定できません。そのようなときにはこの類焼損害補償特約が強い味方となってくれることもあるでしょう。
2:空き家等対策特別措置法とは
適切な管理がなされず、防犯や衛生上の観点からも周囲に迷惑や危険を及ぼしていると判断される空き家が増え続けている昨今、危険な空き家に関して適切な処置が迅速に行われるよう促すために定められたのが、「空き家等対策特別措置法(正式名称:空き家等対策の推進に関する特別措置法)」です。
それまで多くの自治体で「空き家条例」が制定され、独自に空き家問題に取り組んでいましたが、法的拘束力があるものではなかったため、なかなか根本的な解決が進まなかった状態でした。
そんな中、空き家対策特別措置法という法律では、自治体が「空き家所有者への適切な管理の指導」「特定空家の指定」や、「特定空家に対して助言・指導・勧告・命令や行政代執行」、さらに「敷地への立ち入り」「住民票や戸籍などの個人情報の確認」まで行えるようになったのです。
この法律の施行によって、空き家対策の総合的な推進が可能となりました。
3:空き家の防犯策
長く使われていない空き家は、犯罪行為のターゲットにされてしまうことも多くあります。たとえば不法侵入や棲み着き、内部にある物品の窃盗、さらに放火なども考えられます。
空き家の防犯・防災には「危機管理に力を注いでいる」という点をアピールするだけでも変わってきます。所有者が定期的に出入りしている、管理をしっかり行っている、ということを示すのです。
雑草が茂らないようにする、ポストに入っているチラシなどを処分する、ダミーの監視カメラやセンサーライトなどを設置する、という対策を行うことで大きな防犯効果をあげることが期待できるでしょう。
また、侵入者は「大きな音が鳴る」ことは避けたがり、「手間や時間がかかる」ことには手を出しづらくなるという傾向があります。
そのため、窓ガラスに防犯シートを貼る、ドアに補助錠を何重にもかける、という方法も効果的だといわれています。
4:空き家を売却する際の税金における特別控除
不動産を売却する際には、その売却金額に対して所得税や住民税といった税金がかかります。
課税対象は譲渡所得という部分の金額で、
「収入金額 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得」
という計算式で算出します。
譲渡所得の約20%が税金として徴収されるのですが、これが自宅の売却であれば最大3,000万円の控除が受けられる「特別控除」というものが存在するのです。
ただし、この特別控除を受けるためには条件がいくつもあり、多少複雑です。まずは不動産会社に相談して確認しましょう。
空き家を解体する際はよく調べよう
空き家を取り巻く課題は、ひとつの側面だけではなくさまざまな要素が絡まり合い、社会全体の問題となっています。老朽化が進んだ空き家の存在は、所有者の金銭面や管理面での問題だけでなく、周囲への危険や迷惑という観点からも大変差し迫った議論の対象なのです。
では、今すぐに空き家を解体すべきかというと、そうとも限りません。適切な維持管理を行ったうえで空き家を残しておいた方がいいケースもあるのです。空き家が建っていれば受けられる固定資産税の軽減措置というものもあるため、解体後すぐに売却する予定がないというようなときも、そのケースに当てはまります。
それでももし解体という方法を選ぶ場合、もっとも大きなメリットはその維持管理という手間やコストから解放されるという点でしょう。さらに、売却を予定しているのであれば、建物を解体して更地にしてしまった方が、不動産の買い手が見つかりやすいという利点もあります。
ただし、解体工事を行う際には、特に業者選びは慎重に行いましょう。実際に業者選び次第で避けられる近隣とのトラブルというものは存在します。立合いや見積もりでじっくりと、信頼できる業者を見極めることが重要です。
空き家の所有でお悩みの場合、まずは解体すべきかそうでないか、自分の状況に合わせてしっかり検討し考えたうえで決断してくださいね。
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